『こういうことよっ!
「なっ! なんだとォーーーーッ!?」
俺が困惑している間にもスペルは効果を発揮し、遠い空の彼方から飛来する光が見えてきた。考えるまでもなく大島さん……! バシュゥっと独特の着地音を鳴らし、俺の目の前に降り立つ。そして。
『さっきぶりね! ついでに……
「っ!? ちっ、なんの!」
間髪入れずにスペル攻撃かましてきた大島さんに対し、俺は石剣を振ってその効果を打ち消した。
『読めてるわ! さらに
「何枚持ってんだ!?」
だが俺の行動を予想していたかのように、初撃から少しズラす形で二発目の
「やってくれたな……どこから調達した?」
『ほっほっほ♪ アップデートの全貌はお互いに知らないってことよ。アタシも驚いたわ、まさか行商人が
「なっ、そんな追加要素が!?」
『すっごく高い買い物だったけどね……見つけた瞬間画面にテキスト出して、みんなにコメントしないようお願いしたのよ!』
なるほど、チャットで大島さんにナイスっつってたのはそういうことか。俺が先にマサドラを発見した時、出遅れないように隠し持っていたんだろう。もし大島さんが移動系スペルを入手したと知ってたら、マサドラ見つけたって嘘ついて無駄撃ちさせてたろうし。確かにナイス判断と言える。
『トラエモンの時にしてやられた借りは返したわ! ここからが本当の勝負よ!!』
「ふっ、望むところだ。次はこちらもスペルで応じさせてもらうとしよう!!」
まずは俺がしてやられた形になったが、PVP企画的にはやっとスタートだ。次に呪文を使うときは互いに指定ポケットカードを持っていて、その奪い合いになると考えていい。滾るぜ……!
突き合わせたマ〇クラのスキン、キャラクターの顔に互いのニヤリとした笑みを幻視して、俺と大島さんはマサドラの入り口で別れた。クリア条件でそれぞれの動きは変わるから、こっちも向こうも立ち回りは予想できない。
俺の場合はまず手持ちアイテムを換金して、No23、ランクB指定ポケットカードの"アドリブブック"を探す。こいつは村や町に生成される建物、その内部の本棚にランダムで紛れ込むはずだ。それら一つ一つに
ま、手持ちのアイテムって全部カードからゲインしたものだから、換金レートがかなり落ちるんだけど。レアアイテムがある訳でもなし、リスポーンのために全部アイテム化することもなかったか……と思っちゃうがそこは割り切ります。俺もアプデされたばかりの仕様には不慣れなのだ。しゃーなしだな!
そして、それから三時間ほどは前回と同じような様相だったので割愛。お互いの反応に一喜一憂しつつのカード収集。しかし手に入れたカードは絶対にばれないよう立ち回る。指定被ってたらマジでやばいですね☆ 最終的に奪ったもん勝ちになっちゃうからね!
どんどん時間が過ぎていき、それぞれの
「ふむ、ふむ、ふむ……」
呟きつつ自らの点数を計算する。残念なことに、俺が入手できたクリア条件の指定ポケットカードは"アドリブブック"に加えて、No49、ランクB指定ポケットカードの"手乗り人魚"の二種類のみ。こいつは水辺の土地で専用MOBをガラス瓶に汲めば入手できる比較的難度の低いカードなんだが、いかんせん他の指定カードがよろしくない。どれも特定の街や土地で発生するイベントをこなさないと手に入らない類のものだ。
なもんで、前回は大島さんの指定にいくつか含まれていた宝石系のカード取得に集中。副産物で手に入るバニラの宝石も売れば
入手できた"レインボーダイヤ"や"孤独なサファイヤ"もろもろ合わせて210点。ここに呪文カード分が加わるが、これは換算に入れなくていいだろう。250点に届かなかったのはちょいと無念だが、そこは重視してないので問題ない。みんなスペル合戦見たいだろうしね!
ちなみに"
と言うわけで俺の戦法は勝ち逃げ。時間制限まで自分の手持ちカードを守り抜ければ勝利である! アイテムスロットをすべて
『……頃合いかしらね。どう? 調子は』
残り時間ももうわずかになり、とうとう大島さんが切り出してきた。せやろな、こっちが向こうのカードを把握してるのと同様に、大島さんも俺が優位なことは承知の上。だから俺はこう返すのだ。
「もちろん上々だ……そちらは奮わない様子ではないか? 悠長におしゃべりしていて良いのかね? うん?」
コメント
:煽りよるわ
:ねぇどんな気持ち? ねぇどんな気持ち?
:殴りたい、この男w
『ふん、どうやら手加減は必要なさそうね! いいわ、こっちから会いに行ってあげる!
"
「フッ。デートの誘いとは心弾むが、燃えるのが怖いので遠慮させてもらおうか!
コメント
:燃えるのが怖いは草
:残当
:スペル合戦キターー!!
:キリちゃんのお誘い断るとか正気かテメー
:こっからが熱い
:三時間待った甲斐があったw
『っ、さすがやるわね! あとデートなんかじゃないんだからっ!
大島さんの着地が完了する寸前にスペルを発動し、俺と大島さんの鬼ごっこが始まった。
大島さんがさすが、と言ってくれたが。これは俺が使って向こうが追うほど彼女の所持する
そんなこんな
空を移動中にも俺はアイテムスロットのスペルを手早く補充してるし、それは大島さんも同じはずだ。コメント欄を確認する余裕はあまりないけど、流れが速いので盛り上がってるのは間違いない。
そして、先に移動手段がなくなったのは俺だった。早い段階で"
『あら、鬼ごっこは終わりかしら? ならカードを渡してもらうわよ……!