タグを「ある意味勘違い」にしたのはネット小説で主流の「勘違い(ギャグ)」じゃなくて普通に「勘違い(ガチ)」だからです。
例の件からもうすぐ1年。季節は終わりそうに無い冬の終わり。
春休み前最後の登校日だ。寒い。
しかしそんな記念すべき日にもかかわらず、俺は今問題を抱えていた。
いや、今日に限らず年中無休で抱えている問題なのだが。
この1年間、友達が全然できなかったのである。
だから絡みがあるのはキンジ、武藤、不知火の3人だけ。
キンジは星伽の親戚達?姉妹?と知り合いだし、それにこれからどんどん女の子を落としていく。
しかし俺は昔の知り合いがいたとして記憶がないし、現在は生徒達(特に女の子)に避けられている。
端的に言って、俺の交友関係がキンジ以下なのだ。
原作既読済みの方ならわかるかもしれないがこれは驚異的な数字である。
志摩子さんの見た目でこんなのあり得ない。
あり得てはいけない。
みんなに憧れられるどころかむしろ避けられている。
でも自業自得すぎて怒りを向ける先がないのだ。
例の件で、俺は今やすっかり変人扱い。
発情するとマジで視野が狭まるんだな。
あの失敗以来耐性をつけるため特訓したお陰かだいぶ耐えられるようになってきたが、また同じことになるかもと思うと迂闊には使えない。
でもキンジの近くにいれば使わざるを得なくなるんだろうなぁ……。
そういえば、俺は最近キンジと合わせて変人コンビとして知られている。
お互い性的指向に難があり(キンジは女嫌いを拗らせホモだと思われている)、同じ強襲科で、部屋も同じで、そしてどちらも
例の件で付き合ってるだの夫婦だのと言われることこそなくなったものの、これだけ共通点があればコンビ扱いもされるか。
ていうかSってやばくね?
入試を受けたのは本物の志摩子さんなんだけど。
その時に志摩子さんもキンジと同じく教官を倒していたらしい。
明らかにおかしいが、俺は気にしないことにしている。
考えたところでなにがどうなるわけでも無い。
すぎたことだし、それに俺は俺。
志摩子さんとは別人なのだからあまり踏み込むのも本人に悪いだろう。
1人寂しくとぼとぼと寮に帰宅。
ただいまの挨拶が暗い室内に吸い込まれて虚しさがココロに滲む。
今日のご飯当番はキンジか。
まだ帰ってきてないようだが、買い出しにでも行っているのだろうか。
だったら俺も付き合ったのに。
銃のメンテをやっていると時間が飛び、外が暗くなりだした頃に玄関から扉の開く音が聞こえた。
「どうした、早く入れ」
「は、はい!お邪魔しますキンちゃん様」
む?
その声まさかの白雪嬢ではないですか。
「お帰りなさい遠山さん。いらっしゃい白雪さん」
気まずいが、まずは挨拶。
志摩子さんの身体を使わせてもらっている身としてこれは欠かせない。
「喜べ藤堂。今日の晩飯は俺の手抜き飯じゃなくて白雪の超ハイレベル飯だ」
「こんばんは、藤堂さん。えへへ、そんな、毎日ご飯を作って欲しいだなんて///」
言ってねーよ、と心の中でキンジとシンクロする。
しかしキンジよ。
まさか飯を作るのが面倒だからって恋する乙女を利用するとは。
貴様地獄に落ちるぞ。
とりあえずキンジにはTVを観ててもらい、俺は白雪に話があったため彼女を手伝いに行った。
話というのは例の件に対する謝罪だ。
あれは向こうに非があった。
そこは変わらない。
しかしあの後大変な事実が発覚したのだ。
それは「大好きな幼馴染であるキンジへのためにずうっと取っておいた初キスを俺が奪ってしまった」という事だ。
そんな……それは許されませんよ(反省)。
武偵が自分から仕掛けた勝負に負けたのだから報復や罰を受けるのは当然だが、限度がある。
キンジによると、彼女に何度も謝られたそうだ。
初キスを奪われてごめんなさい、と。
キンジはなんで自分が謝られてるのか皆目見当もついてなさそうだったが。
まあ端的に言って、俺はやりすぎたのだ。
これは謝罪案件だろう。
「白雪さん、少しお話があるのだけど、いい?」
「な、なんでしょう……」
彼女は魚を捌きながら。
俺は野菜を切りながら話しかける。
彼女と学校で鉢合わせる機会はあったものの、まさか校内で「初キスを奪ってしまってごめんなさい」などとのたまうわけにはいかず。
いや周知の事実なのだがそういう問題でもなく。
結局こちらが謝罪の気持ちをうまく言葉にできずに、痺れを切らした白雪が会釈して立ち去るのがいつものパターンと化していた。
彼女は生徒会役員だから忙しい。
だから校内で無駄につぶせる時間も限られる。
だが今は。
今こそは絶好の謝罪チャンスではなかろうか。
「えっと、今更なんですけど……その、あの時はすみませんでした。後から聞いたのですが大切な幼馴染の為にとっておいた初キスだったそうで……。流石にやりすぎました。本当にごめんなさい」
どもりながらも覚悟を決めてひと息に謝る。
「あ、えっと……ハイ。たしかにキンちゃんのためにとっておいた初キスを奪われたのはショックだったけど、でもあれから時間が経って割り切れてきました。女の子どうしだからノーカン!ノーカウントなの!だから大丈夫!」
同性とのキス。
実際その通りなのだが、そう割り切るにはあのキスはあまりにも性的過ぎた。
まさしく性的凌辱。
キスというか口内を犯したと言った方が適切なほどだ。
しかし約1年の時とともにその感覚も薄れて、ようやくそこまで割り切れるようになったらしい。
この後勘違いで襲った事も謝られ、無事和解した俺たちは友達になった。
友達になってくれた。
対ステルス専用お助けキャラとか言ってごめんよ。
お詫びにキンジとの仲を応援させてくれ。
まあ中空知も同じくらい応援するつもりたが。
ヒロイン使い捨て系ハーレムラノベである緋弾のアリアでは、原作で既にメイン回を終えた彼女に日の目が当たることはおそらくもう無い。
でもキンジとくっついて欲しいと思った彼女たちが使い捨てにされるのはなんだかなぁと思うわけで。
原作は一読者として指を咥え見ていることしかできなかったが今は違う。
今の俺なら彼らの関係に介入できる!
ならば自分の推しカプを実現させたいと思うのは人情だろう。
恋愛的な意味でのカプなら今のところ同率一位で
キンジと中空知
キンジと白雪(new)
次点はまたもや同率で
キンジとネモ
キンジとジャンヌ
て感じかな。
「どうしたの?志摩子ちゃん」
ちゃん……。
恋敵は呼び捨てで仲良く無い人にはさん付けの彼女だが仲が良くて恋敵では無い同性の友人はちゃん付けらしい。
「大丈夫よ。少し考え事をしていただけなの。ごめんなさいね、白雪さん」
「友達になったんだし、呼び捨てでいいよ」
「いいえ、有り難いけどそれはできないの。ポリシーみたいなもので、気を悪くしたらごめんなさい」
「だいじょうぶ。人にはいろいろな事情があるものね。気にしてないから」
「改めて、こんな私でもよければ友達になってください」
「もちろん。喜んで」
この世界で、俺に初めて女の子の友達ができた。
過去の失敗の精算によって未来が切り開かれる。
キンジが白雪をベストなタイミングでオリ主に引き合わせたのは偶然。
彼にタイミングを見極めるほどの器用さはない。でも2人の仲はずっと心配してた。
本当にヒロイン使い捨てかどうかは今後の原作者様次第となるが僕は再び中空知がメインに返り咲く日を夢見てますから!
感想評価ここすきよろしくお願いします。
皆さんの推しキャラとかも教えてください。