この素晴らしい剣士に祝福を!   作:加治屋まるい

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とりあえず、書けました。

何か問題点が有りましたらご報告してください。


それではどうぞ


このすばらしい出会いに祝福を!

石造りの街並みの中、ブレインは周りを見回した。

 

(ここが、駆け出し冒険者の街アクセルか。想像よりリエスティーゼ王国の街などに構造は似ているな。だが、こっちの方がリエスティーゼ王国のそこらの街より街全体に清潔感があるな。冒険者の町と聞いてたからもう少し汚い街をイメージしてたんだがな。見たところはいい街だな)

 

それよりもブレインは街行く人に驚く。

 

(人間と一緒に獣人族にエルフが歩いてる。王国ではそう、見られないような光景が広がっているな)

 

ブレインのいた世界では人間の力は世界全体に見てあまり強くなく、人間の国家は決して多くない。だから、法国などでは人間に限りなく近いエルフの奴隷が居たほどだ。王国にはそういうのは少ないが、歓迎されている訳では無い。だからこそ、この共存している風景にブレインは驚いていた。

 

(こんな光景が見られたとはな。あいつが見たら喜ぶかもな。さて、とりあえず女神様とやらの指示に従っといた方がいいかもな)

 

ブレインは、エリスに指示されたとおりに冒険者ギルドに向かった。

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞー!」

 

ウェイトレスのお姉さんが、愛想よく出迎えた。

 

よく見ると酒場と併設されていた。ブレインは今の所、ガラの悪そうな奴は見つけられなかった。

 

(珍しいな。王国では冒険者ギルドに何かが併設されていたのはなかった。そして、ガラの悪そうな奴もいない。治安がいい証拠か)

 

そう関心していると、ブレインは視線がどことなく集まるのを感じた。

 

(なるほど、いうほど若くない新参者の男が見た事ない武器を持って駆け出しの街に来るのは珍しいってところか)

 

ブレインは集まる視線を無視し、空いていた受付へと向かう。

 

「はい、今日はどうされましたか?」

 

「訳あって、遠くの方から来た者でな。冒険者登録とやらをしたいんだが」

 

「そうですか。では早速ですが手数料を頂いてもよろしいですか?」

 

「手数料?」

 

ブレインは女神から金を渡されていないことに気付いた。誤魔化そうとズボンのポッケに手を入れ、探すフリをするとポッケに二枚の紙が入っていた。ブレインは自分の記憶になく、取り出してみる。そこには、『初期費用です』と書かれた紙と通貨に見える紙があった。

 

「これで足りるか?」

 

「はい。手数料は千エリスなので、お釣りは九千エリスです」

 

無事、危機を脱することができたようだ。安堵しているブレインに受付は説明を始める。

 

この世界の冒険者はどうやら王国とは大差ない感じらしい。しかし、ブレインにとって奇妙なのは経験値を表せるカードだった。今、ブレインは書類に記入しているが

書いた後にカードに触れれば、ステータスが分かるというものだ。そして、ステータスによって職業が決まるらしい。

 

ブレインはカードに触れ、受付に渡す。

 

「……はい、ありがとうございます。ブレイン・アングラウスさん、ですね。ええと……。す、凄いです!ほぼ全ての数値が圧倒的に高いです!唯一魔力だけが少し低くて、それ以外は知力と幸運も悪くないですし、これなら魔法職以外の上級職は全部つけますよ!」

 

「そうか……なら前衛の職業で適当なのを見繕ってくれないか」

 

「それなら、見た所、剣を持っているので、最強の攻撃力を誇る前衛の上級職、《ソードマスター》がオススメです」

 

「分かった。それでお願する」

 

「では、ソードマスター……っと。冒険者ギルドへようこそブレイン様。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!」

 

それに手を振り答え、ブレインはパーティー募集のボードへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一応ブレインは魔王討伐をお願いされて来たのだから、倒すつもりでいる。そして、想像するのは、

 

(魔王と言われれば、嫌でも魔導王を連想させる。だが、俺がスカウトされ、討伐をお願いされてるなら、流石にそんな異次元では無いだろう。少なくても一つの魔法で何万人も殺せないだろう。なら俺でも倒せる可能性がある奴ということだ)

 

しかし、一筋縄で行かないだろうことがわかるのでブレインは仲間を作ろうと考え、パーティー募集の紙を眺めていた。

 

魔王を倒そうとするなら慎重に仲間を決めるべきと思い見るが、中々いい所がない。

 

(やはり、駆け出しの町とあって、余りハードルを高く設定されてないな)

 

「ん?これは……」

 

今日は諦め、軽くクエストの張り紙を見に行こうとして目線を移動させた先に、それはあった。

 

「パーティー募集、上級職限定。職業指定なしか」

 

(これから推測できるのは、新たにパーティーを強く、作り直そうとしているか、自分のレベルが上がり、釣り合う人を募集。てところか。いずれにしても募集を掛けているのは何かしら強みを持ってるやつだな。行ってみてもいいかも知れないな)

 

仲間になれなくても、接点を作るだけでも何かしらいい事になると思い、接触をしてみることにした。

 

とりあえず、紙に書いてあった場に行くと、泣き声が聞こえてきた。

 

「嫌ーっ!回復魔法だけは嫌!嫌よおっ!私の存在意義を奪わないでよ!私がいるんだから別に覚えなくてもいいじゃない!嫌!嫌よおおおっ!」

 

何となくブレインは募集を掛けてる奴があんな奴でありませんようにと思ってしまった。しかし、現実とは上手くいかないものである。

 

(やはり、募集を掛けてたのはあいつらか、様子を少し見ていたが余計に行く気が失せるな。だが、とりあえず行ってみるか)

 

「すまない、募集の貼り紙を見て来た者だが少しいいか?」

 

「あっ、はい」

 

そう茶髪の少年が驚いた様に答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレインの横にカズマ、その向こう側に三人という風に座っている。

 

「えっと、とりあえず自己紹介を。俺の名前はサトウカズマです。職業は冒険者をやっています。一応このパーティーのリーダーをやっています。で、そこにいるのが」

 

「水を司る女神。ええ、そうよ。あの伝説の女神アクア様よ!ふふふ、今はアークプリーストだけど「ただの頭の痛いアークプリーストですのであまり気にしないでやってください」

 

「ああ……」

 

少し、ブレインの顔が引き攣った。

 

「ちょ!何勝手に妨害してんのよ!だからヒキニートなのよ!」

 

「なっ!それは関係ねえだろ!後、ヒキニートはやめろ!ニートじゃねえから!」

 

と二人は勝手に掴み合いの口喧嘩になっていた。

 

「ほら、二人ともやめてくださいよ。相手の人が困ってるじゃないですか。恥ずかしいですよ。ああ、気にしないでください。日常茶飯事なので聞き流していいですよ」

 

「そうなのか……」

 

(思ったよりヤバそうなところに来ちまったようだな。本当に来るところ間違えたかもなこれは)

 

「そして!我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者……!」

 

と、机に足を乗っけながら、女の子はさっきまでの静かさから一転し、そんな風に名乗りを上げた。

 

「めぐみん!それ、やめろっつったろ!初見の人からしたらマジの迷惑なんだよ!」

 

「なっ!?紅魔族の伝統ある名乗りを迷惑ですと!結構です!紅魔族は売られた喧嘩は買いますよ!さあ!表に行きましょう!」

 

「やめろ!掴むな!掴むなっ!てかお前が相手に迷惑かけるなって言っといて今迷惑かけでるだろ!矛盾させるな!」

 

「私はダクネスだ。一応クルセイダーを生業としている。しかし、攻撃が苦手で盾の役割をするものだ。よろしく頼む」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む。ブレイン・アングラウスだ。職業は一応ソードマスターだ」

 

あの二人よりは真面目そうだと思い、ブレインはダクネスの握手に応じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一旦落ち着いたところで話を続ける。

 

「それで、ブレインさん。僕達はこれから墓地に行って、ゾンビメーカーの討伐クエストを受けようとしているんですけど、とりあえず一回、一緒にクエストをこなしてそれから決めるってのはどうですか?」

 

「なるほど、俺に反対意見はない。話し合いよりも組んで、相性を確かめる方がわかりやすいしな」

 

(そうだ、少し性格があれかもしれないが、いざ組んでみると戦いやすいこともありえる。俺が冒険者に苦戦した時は大抵、力量よりその連携に苦戦したからな)

 

「ふふふ、私の圧倒的な力を見せてあげるわ!」

 

そんなセリフにカズマは頭が痛くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街から外れた丘の上の共同墓地。その近くでカズマ達は夜を待つべく、キャンブをしていた。

 

「あっ!カズマ!それは私が目をつけていた肉よ!あんたはこっちの焼けてる野菜を食べなさいよこっち!」

 

「俺、キャベツ狩り以降野菜が苦手なんだよ!焼いてる時に跳ねたり、飛んだりしないか心配でな」

 

と騒がしく、バーベキューをしていた。何かヤバいことを聞いた気がするが、ブレインは無視した。

 

「少し、墓地の方に湧いてないか、見張りに行く。遠くには行かないからゆっくりしてな」

 

「あっ、すみません。わざわざ」

 

「いや、気にするな。少し考え事をしたくてな。気分転換だ。じゃあ」

 

そう言い、墓地の中に入っていった。

 

 

めぐみんはカズマから水を貰い、それを飲みながら疑問を口にする。

 

 

「それにしても、珍しいですよねカズマ?あんな強そうな人がアクセルに来たなんて」

「ああ、そうだな。それにあの剣は……」

 

「カズマは知っているのですか?私はあんな形の剣見たことないですよ」

 

「いや、俺の故郷の剣に似ててな」

 

「へえ〜そうなんですか」

 

(多分、俺より前に来た日本人が作り方を誰かに教えたんだな)

 

 

 

 

 

 

 

 

墓地の中を歩きながらブレインは考える。

 

(あっちの世界はどうなったんだろうな。クライム君には無事でいて欲しかったが、恐らく……。いや、考えるのは止めとこう。それにしてもこの世界の数値化は鍛える上で便利だ。全体的に数値を上げるべきだな。その他には……)

 

警戒して《領域》を発動させていたらそれに何か引っかかった。

 

「……ゾンビか?」

 

その先に視線を向けると三体のゾンビと少しだけ見た目が良いゾンビがいた。あちらも気付いたようでこっちに来る。

 

(カズマ達を呼ぶか?いや、この程度なら俺なら瞬殺だ。しっかりこの世界でも攻撃型の武技が使えるか試してみるか)

 

ブレインは《領域》の範囲内に四体全員が入るまで抜刀の構えで待ち構えた。

 

(今だ!!)

 

その瞬間、武技《領域》《神閃》《四光連斬》を組み合わせた爪切りが炸裂する。

 

四つの斬撃が狂うことなくそれぞれの体に切り込まれていく。更に刀に宿った神聖な力の相乗効果によりゾンビ達は跡形もなく消え、ブレインしか動くものはいなかった。

 

それを確認したブレインは鞘に刀を戻した。

 

(そろそろ切り上げて戻った方がいいな)

 

ブレインは転生初めての戦闘に満足し、カズマ達の元に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その後カズマ達と合流し、暫くして墓地の中に入っていき、優しいリッチーと色々一悶着あった。その光景を見ながらブレインは似てるようで少し違うと再認識した。リッチーと平和的に解決し、一件落着と思いきや、その帰り道。

 

ブレインは気になって疑問を口にした。

 

「そういえば、ゾンビメーカーとやらの討伐クエストはどうなったんだ?カズマ?」

 

「「「「あっ」」」」

 

「やべぇ、どうしよう!今から戻るか?!」

 

「落ち着けカズマ!もうこの時間帯じゃいないぞ!」

 

「ああ!失敗かよ!」

 

「口を挟むのは悪いが、ゾンビメーカーってどんなやつなんだ?俺のいたところにはいなかったんだ」

 

「ゾンビを操る悪霊で自分は状態の良い死体に入ってる奴なんだ」

 

「……そうか。カードに倒した覚えがなかったのにゾンビメーカーを倒してたのは全員ゾンビだと思ってた内一体がそいつだったのか」

 

「えっ!ちょっと見せてください!」

 

ブレインが持っているカードを受け取り、仲間と確認する。

 

(この人だ!俺に必要だったのはこんな感じの常識人でこんなファインプレーをしてくれる人なんだ!こんなポンコツ三人組とは違う!ヤバい!早くこの人を引き止めないと俺がヤバい気がする!)

 

カズマはそう思うと恥を全て捨て、それはそれは綺麗な土下座をした。

 

「お願いします!是非とも俺たちのパーティーに入って下さい!」

 

「うわ〜。ないわー」

 

後ろでアクアが引いていたが、カズマは気にせずそのまま続けた。

 

「お願いします」

 

「そこまでしなくてもいいぜ。俺も迷ったが、もう少し一緒にいさせてくれ。お前たちはこの先なにか起こしそうな気がする。だからお前たちと一緒にいればそれに巻き込まれ、強くなれそうな気がするんだ。だから気にしなくてもいい。改めてよろしくな、カズマ君」

 

「はい!よろしくお願いします!ブレインさん」

 

厚く握手を交わし、こうしてブレインのパーティー入りが正式に決定したのだった。

 

 




ということでこのくらいで今回は終わらせていただきます。

それではまた次回がありましたらお会いしましょう

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