信用度0から始まる異世界生活〜魔王討伐したくない〜   作:京 けい

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疑問

 街の様子を見終えると2人はノートを見て、話を再開する。

「さぁ、これからどうする?」

 ミツルに聞かれるが俺の目はノートのとある箇所に釘付けになっていた。

 〈スマホ、起動??? 〉

 そう書かれていた。

「一昨日調べた時、スマホは起動しなかったよな」

 と問いかけると

「いや、実は俺のスマホはうっすらとだが光っていて起動していると思われる」

 とミツルが答える。

「嘘だろ!」

「いや、もしかしたらお前のスマホも起動できるかもしれん」

 そういうとミツルは、俺のスマホの電源ボタンを20秒ほど長押しする。

「ほら、見てくれ」

 確かに本当にわからないレベルでうっすらと光っている。

「お前よくこんなの気づいたな!」

「あの時は夜だったからな」

 ミツルの気づきに感心しながらも

「これ、ここからどうするんだ?」

 起動しても使えなければ意味がない。

「わからない」

 その返答は予想通りである。

 充電プラグの差し込み口がないスマホ。

 それは、元いた世界のそれとは明らかに別物である。

 

 

 起動方法がわかっただけでも大きい。

 

 

「まぁ、これについては後々考えて行こう」

 そう言って、スマホをリュックに入れて、会話を終える。

 

 ミツルのことだ。

 俺が思いつくようなことは、実践しているだろう。

 となると、使うには何か特殊な条件が必要なのだろう。

 

 その特殊な何かを今考えるのは、得策ではない。

 

 現実的に考えて、雨風を凌げる拠点作りや、食糧生産の方が先であろう。

「そういえば、なぜ俺たちは腹が空かない?」

 これだけ食べていないのに空腹にならないのは明らかにおかしい。

 満腹というわけではないのが、特段食べ物を欲しているわけでもない。

 

「考えられる可能性は2つ。

 ・俺たちが栄養のいらない体になった。

 ・体は栄養が必要だが、空腹を感じない体になった。

 前者だった場合はいいが、後者だった場合はまずい」

 

 

 生物が活動を行うには水が必要である。

 特に人間は、水と睡眠さえとっていれば、

 

 食料がなかったとしても2~3週間は生きられる。

 だが、水を一滴も飲まないと、4~5日程度で死んでしまう。

 

 

 俺たちがこの世界に来てから、2日が経つ。

 

 脱水症状が起きているのであれば、肌の乾燥、唇の乾燥、頭痛なにかの症状があるだろう。だがまだそのような症状はない。

 

 しかし、気づかないうちに脱水症状が進んでいたら……

 突然動けなくなっていたら……

 

 

 もしもの時のことを考えて水は、飲んでおくべきだろう。そう判断した。

 

 が、実のところを言えば、水を飲むのにまだ少し抵抗があった。

 この世界は、俺たちが今まで生きていた世界とは確実に異なる。

 俺たちの常識は通用しない。

 加熱で死なない細菌がいる可能性もある。

 

 もしものことを考えると多くの不安が襲う。

 だが、覚悟を決めなければならない。

「水を飲もう」




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