【本編完結】サイコロステーキ先輩に転生したので全力で生き残る   作:延暦寺

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超お久しぶりです。

鬼滅の刃の刀鍛冶の里編がアニメになるということで、
そういえば主人公が戦ってない鬼が居たよなぁ?こちらも書かねば無作法というもの

ということで唐突に玉壺、半天狗編です。


もしも、刀鍛冶の里に猗窩座が来なかったら~壱~

 ――夜。

 蛍ちゃんとのイベントを経て、そろそろ鬼襲撃のイベントが来るなと予想した俺は炭治郎くん達に「今日は風が騒がしい、風がよくないものを運んできたようだ」と意味深な事を言って警戒するように忠告し、巡回へと出ていた。

 

 本当は来てほしくないのだけれど、原作的には絶対来るだろうしここで倒さないと最終決戦が死ねるので倒さないという選択肢はない。

 ……もし、遭遇するならばまだ玉壺の方がマシだろうか。

 

 半天狗に関しては、そもそも弱点らしい弱点がなく首もくっそ硬いため俺の攻撃力ではおそらく倒せない。

 原作でも、炭治郎くん達の主人公補正で何とかなったようなものだ。

 玉壺の方の能力もいやらしいが首を落とせば素直に死ぬだけまだマシと言える。

 

「……様。影柱様……!」

 

 俺がそんなことを考えていると、ぬぅっと暗闇からひょっとこが現れる。

 ……暗闇で急にひょっとこの面が出てくるとか、普通にホラーだよな。

 

「どうした?」

 

 俺は内心びっくりしつつも平静を装いつつ、相手に尋ねる。

 

「実は、温泉の帰りに妙な壺が地面に置かれているのを見つけまして……。そういえば、壺に気を付けよという通達があったなと思い出したところ、影柱様が通りかかったのでご報告にきました」

 

 その言葉を聞き、俺は一瞬げんなりしながらも頷く。

 原作では、確か何人かの被害が出ていたはずだったが、俺が警告を出したおかげでその被害も免れたようである。

 

 

 それにしても、玉壺……玉壺かぁ。

 あいつの能力、マジで意味不明なんだよな。

 触れられれば魚になるってのは凶悪なんだけど、なぜ魚なんだと。

 基本美形ぞろいのなかであいつだけ異様にキモいし(半天狗は能力でイケメンになるので除外)、あいつだけ過去が明かされないしキモいし、そしてキモい。

 十二鬼月の中でも異質な存在と言っていいだろう。

 

「影柱様? どうかなさいましたか?」

「あぁいや、なんでもない。それよりも、教えてくれてありがとう。……実は、その壺は鬼に関係していてね。おそらく、戦いになるだろうから鉄珍様に伝えてみんなで避難するように伝えてくれ」

「えぇ、鬼がっ⁉」

 

 俺の言葉に鍛冶師の人は驚きの声を上げる。

 まぁ、ここは徹底的に隠し通された場所だ。まさか、そこがいきなり鬼にばれたとなれば驚くのも無理はない。

 原作でも、どうやってバレたかは不明であったが、鳴女ちゃんの能力もあるし単純に情報収集能力に長けていたのだろう。

 その割に、青い彼岸花を見つけられないガバをかましているが。

 さすがはタコと同類の無惨様だぜ。

 

「詳しいことは言えないが、鬼が来たのは間違いない。あとは、俺が何とかするからあなたは逃げるといい」

「……分かりました。にわかには信じられませんが、柱である貴方がそうおっしゃるのならば言うとおりにします。武運長久を祈っております」

 

 鍛冶師さんはそう言うと、ぺこりと頭を下げてタタタと走り去っていく。

 

「さーて、やりますかっ」

 

 走り去るのを見送った後、俺は自分の両頬を叩き気合を入れる。

 今まで、上弦と出会ったのは他に柱が居た時だけで、今回単独で接敵するのは初めてだ。

 助けを呼びに行こうにも、その間に誰かが犠牲になる可能性もあるし半天狗の戦闘能力が異常すぎるのでこっちに割かせるわけにもいかない。

 

 さっきの人に、増援も頼んでおけばよかったと後悔しながらも俺は教えられた場所へと向かった。

 

 

 

 

「……あるなぁ、壺」

 

 何かの間違いであって欲しかったが、そこにはすごく見覚え(・・・)のある壺が地面に置かれていた。

 当初の予定としては、離れたところから壺を割ろうかとも考えていたが奴は壺から壺へと瞬間移動ができるので、隙を突いて首を落とすしかないだろう。

 まぁ、俺には猗窩座にすら効きそうな気がする秘密兵器がある。

 油断さえしなければ何とかなると信じたい。

 

「スゥー……ハァー…………ん? なんで、こんなところに壺が……?」

 

 俺は深呼吸をして気持ちを切り替えると、何にも知らない風を装って壺へと近づく。

 あんまり近づきすぎると何かしらの攻撃を喰らうので油断はしない。

 

「おや? ま、まさかこの壺は……! いや、間違いない! この造形美! 玉壺様(・・・)作か⁉ なんでこんなところに玉壺様の壺が!?」

 

 と、俺は大声でミーハー丸出しに叫ぶ。

 実は、玉壺は自身の作品を人間の世界に売りに出している。しかも、それが割と高く売れているというのだから驚きだ。

 俺の実家はそこそこ金持ちの家のため、芸術品なども買ってくることがある。

 以前、実家に帰った時、玉壺の作品が置いてあったときは我ながら目を疑ったものだ。

 しかも、あろうことかそのまま『玉壺』という名前で売り出していたのだから驚きだ。

 まぁ、奴は自称芸術家のナルシスト自己顕示欲モンスターなので、実名で売りに出すのは分からなくもない。

 奴の作品だと分かりやすかったので、俺としても助かるしな。

 

 ちなみに、俺は別にマジで玉壺のファンというわけではない。

 ぶっちゃけ芸術の良し悪しなんてよくわからないし、サイコパス芸術家の作品なんぞ認めたくもないしな。

 じゃあ、なんでこんな態度を取っているのかというと……。

 

「ヒョッヒョッヒョ、鬼狩りの割には多少審美眼がお有りのようですね」

 

 と、まんまと調子に乗った玉壺を誘き出すためだ。

 俺の露骨なよいしょに気をよくしたのか、玉壺は目の前にある壺からうぞうぞと這い出して来る。

 うーん、漫画で見たときもキモいと思っていたが実際に見るとさらにキモい。

 ここで取り乱さなかった俺を褒めてやりたい気分だ。

 

 まんまと出てきた玉壺にさらに調子に乗らせるためにヨイショを続けたいところだが、今の俺はまたしても何も知らない栖笛賽なので、あえて鬼殺隊らしい態度を取ることにする。

 

「――! この隠れ里に鬼だと⁉」

 

 と、俺は刀を構え臨戦態勢を取るフリをする。

 もっとも、ここで玉壺も戦うそぶりを見せればそのままバトルへと突入だが……。

 

「ヒョヒョ! まぁ待ちなさい。本来、あなたと私は敵同士。しかし、その前にあなたの素晴らしい審美眼に敬意を表して、冥途の土産に良いことを教えてあげようと思いましてね」

 

 しかし、俺の懸念をよそに玉壺はまんまと俺の策略にはまる。

 

「そう! 私が! 私こそが! あなたが敬愛する玉壺本人なのですよヒョッヒョッヒョ!」

 

 玉壺はまるでスポットライトでも浴びているようなテンションの高さでくるくる回りながらそう自己紹介してくる。

 

「さぁ、どうです? 憧れの芸術家に会えた気分は? 今ならば、あなたの死体は私の新しい作品の一部にしてさしあげますよ! 何せ、今宵はどういうわけか誰も私に近づこうとはせず、いい材料が集まりませんでしたからね」

 

 うーん、このクズっぷり。

 自分の行いがすべて正当化されてると思ってなきゃ出てこないセリフだなぁ。

 俺はそんな嫌悪感が表に出ないよう気を付けつつ、渋るような表情を浮かべる。

 

「お前があの玉壺様だと? にわかには信じられんな。あんな素晴らしい作品を鬼であるお前が作れるわけがないだろう」

「ぐぬっ。喜んでいいのか怒っていいのかわからんセリフを……!」

 

 俺の言葉に玉壺はプルプルと震えるが、何か思いついたのか体中に生えた小さな手をポンと叩く。

 

「あ、いや証拠ならここにあるではないか! ほら、見なさい! さっき、あなたもこれが私の作品だと認めたでしょう⁉」

「えー? でも、こう暗いとなぁ。さっきも、ぱっと見、あの方の作品かな? とは思ったけど、よく見てみないと何とも……」

「じゃあ、近づいて見ればいいでしょう! ほらほら!」

「……近づいた瞬間に殺さない?」

「殺しません! いや、最終的に殺しはしますが、まずは私が玉壺本人だと認めさせてからです!」

 

 俺の誘導に気づかず、玉壺はそう叫ぶ。

 うーん、他の鬼たちもこれくらい扱いやすかったらなぁ……。

 そんなことを考えながらも、俺は壺を確認するフリをするために玉壺へと近づく。

 

「あ、いや待ちなさい。私はまだあなたを殺しませんが、あなたが私に攻撃してこないとは限らない。その刀は地面に置きなさい」

 

 さすがにそこら辺の判断力は残っているのか、俺の刀を指さしそう指示してくる。

 ちっ、このまま近づいてあわよくばって考えてたんだけどな。

 とはいえ、ここで気分を害して戦闘に入ってもまずい。

 一応、暗器や秘密兵器はあるからここはおとなしく従っておこう。

 

「……これでいいか?」

「いいでしょう。それでは、じっくり気のすむまで眺めなさい! あ、もちろん夜明け前にはしっかり殺しますからね」

 

 俺は玉壺に気を配りつつも、さぁさぁと押し出された壺を眺める。

 ……まぁ、本当に玉壺作かどうかの判断はできないんですけどね!

 

 奴のプライドの高さを考えると、本当に玉壺作だろうなとは思うがそんなのは関係ない。

 要は、奴に警戒されずに近づけばいいのだ。

 

「どうだ? 素晴らしい壺でしょう? 私が玉壺と認めますね?」

 

 玉壺は俺の態度に微塵も疑わず、ウキウキとした様子で話しかけてくる。

 そうやってられるのも今のうちだ。

 俺は懐に忍ばせている秘密兵器を取り出し、玉壺にふりかけようと――。

 

「賽? 鬼と仲良くなにやってるの?」

 

 したところで、唐突に声を掛けられる。

 反射的に振り向けば、そこにはすでに臨戦態勢に入った無っくんこと無一郎くん。

 With道中で助けられたであろう小鉄少年と鉄穴森(かなもり)さんが立っていた。

 うぉぉい! なんでこのタイミングでやってくるんだ!

 普通戦闘音がしたら近づいて……近づいて……いや、戦闘音してなかったわ。

 そりゃ来るわ。

 だが、まだ挽回できる! 今、俺は玉壺のすぐそばにいる。

 このまま気にせず行動に移れば……。

 

「賽? ……もしや、小僧……栖笛賽か?」

 

 無っくんのセリフを聞いた瞬間、さっきまでヒョッヒョッヒョと笑っていた玉壺はシリアスな雰囲気を纏いながら尋ねてくる。

 うーん、めっちゃ嫌な予感がする。

 

「――そうだけど?」

「なるほどなるほど。貴様がそうか。あの方から話は聞いている。栖笛賽という人間は非常に卑劣極まりなく口先がえらく達者な卑怯者だと。そやつと出会った場合、話を聞かず問答無用で殺せと」

 

 玉壺はそう言いながら俺をぎょろりとにらんでくる。

 

 

 

 

 

 

 嫌な予感的中じゃないか!

 

 




玉壺の最終形態はちょっと好き、キモいけど

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