公子様に過労死寸前まで酷使されたので転職します   作:きのこの山 穏健派

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仕事が忙しく、かなり時間が空いてしまい本当に申し訳ない。恐らくこれが今年最後の投稿になります。次回投稿は未定ですが来年も何卒宜しくお願いします。


第八話 今宵は神の祝福(呪い)があらんことを

 

時刻 00:06 ファデュイ璃月支部にて

 

 

夜空は雲で覆われ月光が遮られた璃月は深夜であるにも関わらず、街は明るく、そして賑わい、その存在を浮かび上がらせていた。

 

ただ本来と違う点を挙げるならーーー

 

 

 

 

ーーー街の周辺が火に包まれていた事だろう。

 

それだけでなく悲鳴や助けを求める声、爆発音が璃月に鳴り響く。

 

まるで宴のように。

 

 

 

「公子様! 璃月周辺にて何者かの無差別による襲撃が発生しています! 指示を!」

 

「公子様! 現在璃月北橋にて先遣隊が交戦中! なんとか防衛に成功していますが重傷者及び敵多数! 増援を要請しています!」

 

「公子様! 千岩軍から伝令です! 璃月南橋で展開している千岩軍が交戦を開始されました! 此方も抑え込むのに成功していますが重傷者及び敵大多数! いつまで持ち堪えれるかは不明とのこと! もはや時間の問題です! 救援を!!」

 

 

深夜に突如として始まった奇襲、ファデュイ璃月支部は慌ただしく荒れていた。時同じく千岩軍、璃月七星も迅速な対応に追われているが璃月全体が混乱に陥り、一部の機能が麻痺してしまい、更に混乱の歯車が掛かる。

 

だが、それを今心配してはならない。

我々(璃月)は刻々として王手を掛けられているのだから。なんとしても阻止せねばならない。

 

 

「くっ....しかたない! デッドエージェントは璃月北橋の加勢に向かえ! 蛍術師及び先遣隊の混合部隊は璃月南橋の救援に向かい戦線を後退させろ! 最悪、橋を破壊しても構わない! 残った者は民間人の救助及び避難させろ! なんとしても奴等を璃月に入らせるな!!」

 

 

「「「了解(しました)!」」」

 

 

公子タルタリヤもまた、迅速かつ的確な対応に追われ指示を出し続ける。些細なミスが一瞬の命取りだ。公子の頭の中で民間人と部下の命が天秤に掛けられる。ほんの僅かでも間違えれば終わるコンテニュー無しの戦略遊戯(ゲーム)だ。

 

 

「クソッ! 一体全体何が起きている!? 璃月七星との連絡はまだつかないのか!!?」

 

 

悪態を吐くが無理もない。よりにもよって情報の伝達機能が麻痺しているのだ。人手が足りない。突破されるのは時間の問題。応援も無し。連絡途絶。生きているのは最前線で文字通り死に物狂いで守り抜いてる部下達の伝令のみ。

 

璃月が火に包まれ灰になるのは少しずつ近付いている。

 

公子は脳をフル回転させ、最適解を導き出そうとするが扉を勢い良く開けた部下により思考が乱れ苛立つが、様子が尋常じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「公子様!」

 

「今度は何だ!?」

 

「そ、空が」

 

「空がなんだっ....て......」

 

 

ふと外を覗き見ると雲で覆われていた空が幻だったかのように霧散してーーー

 

 

 

 

ーーー紅く輝く月が嗤うように空に現れた。

 

 

冷や汗が背中に流れる。

なにせ()()()()()()()()()()()なのだから。

 

 

「・・・・おいおい、まさか」

 

「公子様! 璃月北橋から伝令が!!」

 

「何!?」

 

 

公子に嫌な予感が膨れ上がるが、それはまだ膨らみ続けた。バタバタとやってきた部下は見るに堪えない姿だった。腹そして肩に深くナイフが刺さり、血塗れになった部下が肩を支えられながら伝令に来たが呼吸は浅く、もはや風前の灯火であった。

 

 

「おい! しっかりしろ!!」

 

「ガフッ...こ、こうしさま.....」

 

「至急医者を呼べ! おい、何があった!?」

 

「ゆくえ...ふめい、しゃ....が」

 

「チッ! 出血が酷い! 布でも何でもいい! 早く止血させろ!!」

 

「しゅうげきして...きた、なかに.....」

 

「口を動かすな! 安心しろ大丈夫だ! いいか!絶対に目を閉じるなよ!!」

 

 

急いで止血させるが、どう見ても血が流れ過ぎている。自身が血で汚れるのを構い無しに応急処置を施すが意味の無い行為だろう。脈も弱くなり始め、呼吸もゆっくりしてきた。

 

だが彼は、最後の力を振り絞り、己の仕事を全うさせた。

 

 

「れいくかん、に...てんかいされて、いた....ものが、てき、に......」

 

「・・・・・・嘘だろ」

 

「ほかに、も、ゆくえ....わか...い」

 

「おい!駄目だ!目を閉じるな!!」

 

「....あ...おね..し.....ま、す......」

 

 

最後にそう告げて彼は息を引き取った。

動かなくなった部下に公子は爪が肉に食い込み血が流れる程、拳を握っていた。

 

 

「公子様.....」

 

「・・・・・」

 

 

ーーー公子様!お茶をお持ちしました!お熱いので気を付けてください!!

 

 

「・・・・るな」

 

 

ーーー公子様!本部から報告の催促が来ましたが、どうされますか?え?ほっておけ?いやいや公子様、面倒かと思いますが仕事しましょう!?

 

 

「・・・・けるな」

 

 

ーーー公子様!璃月周辺に戦闘が発生しております!どうなさいますか!え?公子様?武器を持ってどちらへ?公子様自ら?いや何をおっしゃっているんですか!?ちょ!?公子様!??おい!公子様が殺り合う気だ!何がなんでも止めるぞ!!

 

 

「・・・・巫山戯るな」

 

 

ーーー公子様!後は我々がやりますので休憩をお取りになってください!え?我々もですか?いやいや公子様、我々は大丈夫ですから。ちょっ!?公子様!?お前達がキリ良いところまで待つからお茶の準備をしておく?いやほんと勘弁してください!?上に知られたら不味いです!!じゃあ早く終わらせろ?分かりましたから!お茶の準備をしようとしないでください!!

 

 

「一度足らず二度までも...()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とは.....どれだけ腐っていやがる」

 

 

 

 

 

「この恨み....是が非でも報わせてやる。俺の部下の為にも、俺自身の為にも」

 

 

 

ーーーそしてフライスィヒの為にもな。

 

 

 





誰かにとっての正義は悪となり、
誰かにとっての幸福は不幸となる。

ーーーもうすぐ一緒に、ひとつになれる。
   待っててね?処刑人さん♪









ーーー私と一緒に深く暗いところまで堕ちようね。

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