ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド 宵闇の黙示録   作:放仮ごdz

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どうも、厄災の黙示録の終盤の展開に涙した放仮ごです。そのタッグはずるいて…

リンクとルーミアの珍道中第三話。みんなのトラウマ登場。ルーミアの事情もちょっとだけ明かされます。楽しんでいただけると幸いです。


第三話:少女の抱える闇

 翌朝、二人は始まりの塔を登っていた。他に三つあるという祠の居場所を探るために高い場所がいいと判断したのだ。もちろん、ルーミアは浮いて、塔の壁を足場を乗り継いで登るリンクに追従していた。

 

 

「最初は勝手に上がったからよかったけど改めて登るとなると大変そうなのだー」

 

「…ルーミア。お前、実は祠の場所を知ってるとか言わないよな?」

 

「行ったことはあるけど正確な地図の場所までは分からないのだー」

 

「変なところで役に立たないな、っと」

 

 

 辿り着いた天辺で。シーカーストーンが望遠鏡のようになることに気付いたリンクが、画面に記されるままに見つけた祠を片っ端からマーキング。地図上に浮かび上がるという便利機能で場所を確かめる。

 

 

「えっと…東の神殿跡と、南の断崖絶壁の上、西の雪山の頂上…ってこの台地は暖かいのに何であんな近くに雪山があるんだ?」

 

「台地は他の土地と違ってだいぶ上にあるから雪が積もりやすいって聞いたのだ」

 

「なるほど…こんな薄着じゃ寒そうだな」

 

「お爺ちゃんが防寒着持ってたからそれをもらえばいいのかー」

 

「ルーミアは大丈夫なのか?」

 

「私は人間じゃないからあれぐらいの寒さだったらへっちゃらなのだ」

 

「隠す気あるのかそうじゃないのかどっちなんだ…うん?」

 

「どうしたのだ?」

 

「遺跡にたくさんあるのは…ここに来るまでにあちこちでちらほら見たでっかいひっくり返ったツボ…か?」

 

「あー、あれは…近づかない方がいいのだ」

 

 

 遠い目をして答えるルーミアに、シーカーストーンから目を外して首を傾げるリンク。

 

 

「なんでだ?というか動くのか?あれ」

 

「あれは朽ちたガーディアンなのかー。私でも下手したら死ぬのかー。リンクなんか一撃なのだ」

 

「そ、そんなにか…気を付ける」

 

「もしかしたらリンクなら簡単に迎撃しちゃいそうだけどね」

 

「…記憶があった頃の俺ってどんな人間だったんだ?」

 

「剣一本でライネルを数匹討伐する化け物なのかー」

 

「ええ…」

 

 

 自称人外であるルーミアが化け物と呼ぶ記憶があった頃の己を幻視するリンク。ライネル一体もルーミアの助けなしでは生き残れなかった自分とは天と地の差なので深く考えないことにした。

 

 

「…とりあえず、塔から一番近い神殿跡を目指すぞ。…また下りないといけないのか」

 

「がんばるのかー」

 

「飛べる奴は気楽だな」

 

 

 

 

 

閑話休題~少年少女下降中~

 

 

 

 

 

 

 塔を降りて断崖沿いに南東を目指す二人。道中ボコブリンに襲われながらも難なく迎撃し、ルーミアは思い出したことをリンクに説明していた。

 

 

「魔物には基本近づかない方がいいのだ。弱いボコブリンでも群れを作ってると危険なのかー」

 

「なんでだ?」

 

「群れを作っていると高確率で上位個体がいるのだ。赤、青、黒、白って感じでどんどん強くなっていって、上位個体は赤色とは比べ物にならないぐらい強いのかー。たまに一匹だけいても色次第では殺されることも珍しくないのだ。まあ、この始まりの台地だと強くても一段階上の青ボコブリンだけどね」

 

「…そいつにも俺は、負けそうか?」

 

「百年眠って弱った体だと一撃なのかー」

 

「そうか…青いのには気を付ける」

 

「ちなみに下の道を通っていたらその青いボコブリンのいる群れが陣取る髑髏型の拠点があるから気を付けるのかー」

 

「塔に行く道中で遠目に見かけたアレか…でかい髑髏は魔物の巣と考えた方がいいのか?」

 

「うん、あとツリーハウスや空き地なんてものを陣取ってる魔物たちもいるのだ」

 

「へえ、色々あるんだな」

 

 

 そんな会話をしつつ小高い丘を上がり辿り着いたのは石造りの神殿跡地。警戒するルーミアに対してリンクは特に警戒せず足を踏み入れ、それは起動した。

 

 

「ん?」

 

 

 ピピピピピッと甲高い警告音の様な物が聞こえ、赤い光の線がリンクに差す。振り向くと、そこにはゴゴゴゴゴッと音を立てながら動き頭部のモノアイをこちらに向けるひっくり返ったツボの様なものがあった。百年前、ハイラル城下町で暴れていた自律行動ロボット兵器「ガーディアン」の成れの果てである。

 

 

「あれが…!?」

 

「ガーディアンなのか!リンク、盾!」

 

「あ、ああ!」

 

 

 言われるなりナベの蓋を構えるリンク。その瞬間、赤い光の線が一瞬消えてガーディアンのモノアイからビームが放たれる。咄嗟に打ち返そうとナベの蓋を振るうリンク。しかしタイミングがずれてナベの蓋は粉砕され、リンクは吹き飛ばされる。

 

 

「リンク!」

 

「来るな、ルーミア!」

 

 

 続けてチャージされ、放たれるビームから壁に隠れて逃れながらそう叫ぶリンク。ルーミアは言われた通り壁に隠れて、闇の中に手を突っ込んであーでもないこーでもないとボコブリンの武器類を放り投げる。昨日倒したボコブリン他、百年もの間溜めこんできた武具である。

 

 

「こっちだ!」

 

 

 リンクは壁を駆け上り、壁の上を走ってガーディアンを翻弄。ビームは放つ予兆は分かったので、壁に隠れて防ぐ。そんなことを繰り返していると、さすがにスタミナが落ちてきて登ろうとした壁からずり落ちてしまう。

 

 

「しまっ…」

 

「こっちなのだ!」

 

 

 するとルーミアが投擲したボコ棍棒がガーディアンに炸裂して照準をずらし、その間にスタミナを回復させたリンクは壁の上に何とか駆け上る。そしてその視界にオレンジ色の光がよぎった。

 

 

「ルーミア!祠を見つけた!そこのアイテムが使えるかもしれないから壁の上から行ってみる!」

 

「あと二体ぐらい動くのがいたはずだから気を付けるのだ!私も使えるものを探しておくのかー!」

 

「じゃあ、あとで!」

 

 

 そう言って祠に入って行くリンクと、逆に離れていくルーミア。宙に浮いてガーディアンの視界から逃れたルーミアは時の神殿跡地へと向かった。近くにいたボコブリンを軽く倒し、ボコ棍棒や盾を拾って背中に担ぎ、持ちきれないものは闇の中に入れながら近くの遺跡跡を探索するルーミアに近づく影が在った。

 

 

「確かここらへんの宝箱に…」

 

「ルーミア」

 

「っ!…おじいちゃん。何だか久しぶりなのかー?」

 

「まだ一日しか離れておらんじゃろ…それよりも、リンクの様子はどうじゃ?」

 

「今は祠の一つに潜っているのだ。昔の技術を体が覚えているのか結構強いのだ。でもスタミナ体力共に落ちて弱っていて、まだここから出すには厳しいのかー」

 

「そうか。百年の時はそれほど長いと言う訳じゃな。それと、リンクはいないしいつもの口調でいいのだぞ」

 

「……それもそうね」

 

 

 目つきが鋭くなり、口調を変えたルーミアに生唾を飲み込む老人。知性ある魔物ともいうべき「妖怪」であるルーミアから放たれる異様な圧に押し潰されないように咳払いし、ルーミアは続けた。

 

 

「心配しなくとも、この台地の祠を巡る冒険でリンクは着々と力を取り戻しつつある。知識も私が教えているし、咄嗟に私を守ろうとする勇気も百年前のまま。心配せずとも貴方の娘を取り戻すために私も死力を尽くす。贖罪だもの」

 

「…ルーミア。わしはお前を許していないし許すつもりもないが、百年近く共に過ごした友だとも思っている。…お前が罪に囚われて無茶をしないか心配じゃ。昨夜もイワロックの攻撃をまともに受けていたじゃろう」

 

「ちゃんとケモノ肉を食べたから心配いらないよ。それに私、人よりよっぽど頑丈だもの」

 

「回復したといっても完全とはいかないじゃろう。なにせお主の力の源は人の…」

 

「…それ、話したっけ?」

 

「100年前。悪い噂の立つ人間が次々と闇に消えていく事件があった。さすがにわしの元にも噂は届く。ケモノ肉と魔物の肝を好んで食べるお主の食を見ていれば自ずと察しがつくとも」

 

「まあそれだけじゃないんだけどね。私たち妖怪は魔物と違って自然的な存在。主に人間の「畏れ」を糧に存在している。故郷(ふるさと)を離れて101年…今は魔物や動物たちの畏れを供給して私という存在を保っているんだ。魔物の肝で魔力も取り込んでるけど、正直ギリギリ。後一年持っていい方かもね」

 

 

 そう笑って闇を出した手を握ったり開いたりして調子を確かめるルーミア。儚げなその笑みに、老人はそんなに危険な状態だったのかと戦慄する。

 

 

「なら帰ろうとは思わんのか?贖罪のためとはいえ、少しの間帰郷するという手も…」

 

「冗談。私が離れている間にリンクが死んだりでもしたらそれこそみんなに合わせる顔がない。百年もこの地にいたのも、万が一厄災ガノンにここの存在がバレて眠っている間を襲撃でもされたら私しか守れる奴がいないからだ。リンクを守ってハイラル城まで無事に送り届けるまで、私は帰るつもりはないよ」

 

「ううむ…ならば、なおさら急がなくてはならんな。厄災ガノンもいつまで封じ込められているか分からん。百年持ったのはあの子の力をもってしても奇跡と言ってもいいだろう」

 

「そのつもりで、これを探しに来たんだ。今のリンクの装備じゃあまりにも心もとないからね」

 

 

 そう言って見つけた宝箱から引っ張り出したのは、彼女には到底合わないであろうサイズのズボン。リンクの着ている物よりも丈が長く丈夫な素材でできているものだ。

 

 

「なるほど。邪魔したかの」

 

「私がちゃんと導くから、おじいちゃんは安心してスローライフを送っているといいのかー」

 

「ふむ。ではそうさせてもらおう。防寒着も用意しとくから例のアレ、よろしく頼むぞ」

 

「了解なのだー」

 

 

 そう言ってズボンを抱えて空に浮かび、東の神殿跡を目指すルーミアを見送り、老人は神妙な顔を浮かべていた。

 

 

「…人ならざる者なれど本来は関係なきはずの少女を酷使するのは、どうも気が滅入る……ゼルダ、わしはお前の友人に、どういう顔で接すればいいのだろうな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせルーミア。リモコンバクダンっていうものを手に入れたぞ」

 

「おかえりなのかー。こっちも今戻ってきたところなのだ。はい、これとこれ」

 

 

 ルーミアが戻るとちょうどリンクが祠から出てきて爆発を起こして目の前の岩を砕いていたところで、青く輝く球体を手に笑顔を浮かべるリンクに、ルーミアが手にしていたズボンと、背中に背負っていたボコ盾を手渡した。ちなみにボコ棍棒は自分の武器にするつもりなのか背中に背負ったままである。

 

 

「魔物達が使っていた盾か、助かる…けどズボン?確かに今履いているのは丈があってないけど…」

 

「今リンクが履いてるものよりマシなはずなのだ。それと、すぐ近くにガーディアンがいるから気を付けるのかー」

 

「よし。リモコンバクダンの力を見せてやる」

 

 

 そう息巻いて近くにいたガーディアンに意気揚々と青く輝く球体を投げつけ、シーカーストーンを構えるリンク。光の爆発が起きてガーディアンは一瞬動きを止めるものの、難なく動き出してリンクを狙う。

 

 

「なっ!?…もしかして、威力自体は低い…?」

 

「リンク!」

 

 

 そして放心するリンクに容赦なく放たれるビーム。ルーミアはそれを、咄嗟にリンクを突き飛ばしてまともに受けてしまい、祠の側まで吹き飛ばされ地面に力なく転がった。

 

 

「くっ…効いたぁ、のかー…」

 

「ルーミア!?この…っ!」

 

 

 己を庇って傷付き倒れたルーミアに、即覚悟を決めたリンクはガーディアンに向けて突進。

 

 

「いくらタイミングがよくわからなくても…近くなら、さすがにわかるぞ!」

 

 

 再度放たれたビームを、至近距離から盾を振るって跳ね返してみせ、己のビームの直撃を受けたガーディアンは機能を停止して爆発。ネジやら歯車やらがその場に転がった。

 

 

「ルーミア!大丈夫か!」

 

「ぐうっ…なんとか、平気なのかー」

 

 

 慌てて駆け寄ったリンクは目を疑う。確かにビームの直撃を受け、抉れて痛々しいことになっていたはずの腹部が服ごと何事も無かったかのように元通りになったからだ。心配して損したと思う一方、ゼーハーと荒い息を吐いて明らかに疲労困憊なルーミアに心配するリンク。

 

 

「本当に大丈夫なのか…?」

 

「大丈夫大丈夫、ルーミアは妖怪だからこれぐらい、なんとも…」

 

 

 そう笑顔で取り繕かったかと思えば、こてんと倒れて気を失うルーミアにリンクは慌ててルーミアを抱えて持ち上げた。

 

 

「えっと…とりあえず、爺さんのところに!ど、どっちだっけ…?」

 

 

 両手が塞がってるのでシーカーストーンも出すことが出来ず、女の子らしい匂いに一瞬意識が向きながらも、とりあえずと東の神殿跡地を後にするリンク。その先には、切り立った崖と、深い谷の側に高い木が立ち並ぶ林があった…




現在のリンクの装備
「古びたシャツ」
「古びたパンツ」→「ハイリアのズボン」NEW!
「旅人の剣」
「ナベの蓋」→「ボコ盾」NEW!
「ボコ弓(木の矢20本)」

本日のルート
・マ・オーヌの祠→始まりの塔→東の神殿跡地→ジャ・バシフの祠(時の神殿跡地側)→台地南の林

皆のトラウマガーディアン。今まで無敵を誇っていたナベの蓋を粉砕し、ルーミアまでもを負傷させるトラウマ要素は健在。初見にしてはリンクは頑張った。

明かされるルーミアの事情。リンクがいない時は口調が変わり、目つきも悪い本来のルーミアに。懼れ云々は半分くらいオリジナル設定。もしもの時はリンクの盾になるぐらいに闇を抱えてます。

 次回は崖の上へ。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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