竜王   作:ツケマツゲ

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久しぶりに筆を執ったけど確実に続かない。


竜王

 

 

 

 

努力をすれば夢は叶う。

 

 

この言葉を推す人はただ単に運が良いだけだといつも思う。たまたま何かを得ようとするタイミングで、それに会わせて物事が成功する。

それも本人達は何も悪気がないというのが達が悪い。

 

実際努力は必要だ。努力をしてなおかつ確率の話というだけで、彼らの行動が間違っているわけではない。

 

 

 

つまり何が言いたいかというと、「努力はしたが運がなかった人間」というのはどう救われるのかという話だ。

 

救いがないというのが救いなのか、誰かのために必死の思いで手にいれたナニカは無駄なのかという話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ピーヒョロロー

 

 

 

 

どこかで鳥が鳴いている。

見るからに豪華そうな馬車に揺られながら少女は空を見上げて思った。

本日の天気は快晴。出掛ける前に王宮の()()()()()に何度もせがんで占って貰ったのだ。早々簡単に雲って貰っては困る。

 

時刻は昼下がり、小刻みに揺れる馬車と先ほど食べた昼食のせいで眠気が襲うなか、馬車から空を見る少女に声が掛かった。

 

 

「見てリナ、きれいな湖が見えてきたわ。この様子だと魚もまだまだいるみたいね。」

 

「ああ、本当だ。王国の近くにはこれほど大きな湖はないからな、今のうちに見納めるとしょう。」

 

()()と呼ばれた少女の両親らしき者達が反対側の馬車の窓から外の景色を見ていた。

 

「もうっ!お父様とお母様のせいで全然見えないよ!」

 

 

小柄なリナからは年齢的なこともあって膝で椅子に立たないと外の景色は見えないのだ。両親ふたりが向かい合って外を見ている今、リナからはその泉は目にできない。

 

「ハッハッハ、悪かったなぁリナ、王室にこもっての日々なんだ。私も少々浮かれているようだ。」

 

リナの父親はリナを膝にのせながらもう一度外を眺めた。

 

もうすぐ日は暮れ、空は赤に変わったのちに黒へと暗転する。

 

 

 

 

 

まるで、彼らに待ってる運命を暗示しているかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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辺りはあっという間に暗くなり、最後の山を下りきった時。

事態は動いた。

 

遠目で見ると、彼女達が住んでいる王国、『バルグニカ王国』野町の明かりが見えている。

 

先ほどまで少し寝ていたリナも目を覚まし、この遠足が終わればまたあのつまらない貴族生活が始まるのかと気を揉んでる時。

 

突然強い風が馬車を揺らした。

 

『な、なんだ!ただの風にしては強すぎるぞ!』

 

『各自警戒を怠るな!なんとしても王女を守り通せ!』

 

外で護衛をしている兵士達がなにか叫んでいるのに気がついたリナは横に座っていた父親の手を握った。

 

それに気づいた父親は、「ははっ、大丈夫だよリナ。何かあっても彼ら兵士が守ってくれる。何せこの国でもっとも強い兵団の小隊だからね。」と怯えていたリナを元気付けるように言った。

 

しかし、

『おい!上になにかいるぞ!』

『なんだあれは、竜種か!しかしなんだあの大きさ、見たことがない!』

『お、おい!こっちに向かってくるぞ!対空魔法を急げ!』

 

 

外の緊迫した空気に、ついにしびれを切らしたリナの母親が口を開いた。

「ねえ貴方、なんだか外が騒がしくありません?なにか良くないことでもあったのでしょうか?」

 

「うむ、そうだな。私が少し見てくるとしよう。ふたりは少しここで待ってくれ」

そう言うなり父親は馬車を降り暗闇に消えた。

 

暫くして母と娘と二人きりで待っていたその時、勢い良く馬車の扉が開かれ

 

 

「お前達、今すぐ逃げる準備をしろ!!」

服の至るところに傷をおった父が、必死の形相で叫んだ。

 

「え、お父様それって」

「今はなにもいうな!とにかく急いでこの場から」

 

 

突然帰ってきた父に戸惑いもを見せながらリナが事を聞こうとした時

その瞬間に勢い良く馬車が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ううんっ、ここは?」

 

体で土の感触を感じ、地面からゆっくり起き上がると

 

「・・・・・えっ?」

 

 

辺り一面が燃え盛る火の波で溢れていた。

 

山の木々はすべて燃えて赤くなり、辺りには今まで兵士もされていた者達がころがっている。

 

 

「そんなっ・・・っ!お父様とお母様はどこに!?」

 

辺りの悲惨さに心をえぐられながら、小さな体にあちこち痛んでいながらもリナは父母を探しに足を動かし、そして・・・

 

 

「そんなっ、う、そ!?」

 

身体中が燃えている母と、下半身が失くなり事切れている父を見つけた。

 

 

「あ、ああ、あああああああああああああああああ!!」

 

とてつもない吐き気と負の感情が込み上げできた。

 

今までずっとそばにいた父母が、いつも笑っていた父が、厳しくしつけながらも最後はいつも頭を撫でてくれた母が。

そんな彼らがこの世から消えたとわかった瞬間、なにもかんがえれなくなった。

 

 

そして

 

『グルルルルルルルル』

 

後ろから聴こえてきた低い唸り声がリナの心臓を縛り上げた。

 

「ひっ」

 

何度も身で感じる風、後ろから感じる圧倒的プレッシャー、それらによってリナの頭はゼンマイのようにギギギと後ろに回り、そして

 

 

()()()()()()()()()()

全身が黒光りする図体。射殺さんばかりの青い目。度々口から溢れる炎。

 

むかしリナは聴いたことがあった。

曰く、それは黒の巨竜。曰く、それは世界に13頭いるとされる神龍。曰く、それは絶望を司る竜。

 

 

その黒龍の名を

 

虚無竜ドレイサ

 

 

それを見た瞬間、リナに更なる絶望がのし掛かった。まるで息をすることそれ事態がそれの前では罪であるかのような、そんな錯覚に陥るほど。

 

「ぁ、ああ」

 

かれた声と共にそれを見上げる。

あまりの恐怖で、自分の股から出てきた()()にも気がつかないほど。

 

ドレイサはそんなことは気にせず、アリを潰すかのようにリナを殺そうとし。

口に炎を溜めだす。

それが吐き出される瞬間が自分の終わりだとリナは察し、思わず目を瞑ってしまう。

 

そして、虚無竜の火砲が放たれたそのとき、

 

 

 

 

 

ギィィィイン、と甲高い音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

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「こいつぁどういうことだ」

 

 

いつまで立っても火砲が放たれないどころか、知らぬ声が聴こえてきた。

それらを不思議に感じたリナが目を開けると、

 

 

月と炎に照らされた銀髪の青年が立っていた。

 

 

いや、少年というには余りにも達観した雰囲気で、黒ずくめの服装と、何より手に持った東洋の刀が印象的な。

 

思わず死神、と言いたくなるようなそれほどの漆黒。

 

リナが彼に見とれているのを気にせずその青年は()()()()()()()地に付したドレイサを見る。

 

「ただのとかげかと思えば、随分と忌々しいものが飛んでたもんだ。」

 

そう言うなり青年は手にした刀を上から振り落とす。

まるで大地ごと切り伏さんばかりの勢い、しかし虚無竜も片翼ながらそれを後ろに飛んでかわす。

 

バランス悪く空へ飛びながら口に炎を溜めだし目的に向かって吐き出そうとする虚無竜。

 

しかしそうはさせないと青年は()()蹴り、竜の後ろ首に飛んでもない速度で回る。

 

 

ギャウ!?

 

 

 

あり得ないものを見たと驚いてる竜を流し目に見つつ、青年は体ごと回転させながら竜の首に堕ちる。

そして、

 

 

 

スパンッ

 

 

首を跳ねた。

 

13頭しかいない伝説の竜を、

王国最強の兵団、その一小隊を壊滅させた竜を、

立った一人の青年が、月明かりと共に首を切ったのだ。

 

圧倒的な力

その光景をただ黙ってみていたリナはただそれだけを感じた。

 

 

するとようやくリナに気づいたその青年はそちらに足を動かす。

意識が朦朧とするなか、ただならぬ緊張に息ができないリナは、ただその青年を見ていた。

 

そして、

「生き残ったのはお前だけか?」

 

答えた。

「うん」

 

「さっきのかやったのか?」

 

答えた。

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

「死にたくないか?」

 

っっ!?

 

 

 

 

 

答えた。

 

 

 

 

「ヴンっ!!」

泣きながら答えた。

 

 

 

 

意識が朦朧とするなか、死神と王女の初会合は、炎の中に起きたのだった。




言っておくが絶対長くは続かない。


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