竈門炭治郎に憑依   作:宇宙戦争

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遊郭攻防戦 肆

西暦1915年(大正4年) 9月 吉原 遊郭

 

 

 

雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷

 

 

 

 雷のエフェクトを纏った刃の猛烈な斬り上げ。

 

 獪岳は何故か雷の呼吸の使い手の中では壱ノ型だけ使えないという人間ではあったが、それ以外の弐~陸ノ型までなら十分に使える。

 

 また隊士時代は意外にも準柱級の力を持っており、もう1年程頑張れば、もしかしたら柱になっていたかもしれない腕を持っていた。

 

 更に彼の血鬼術は“斬撃を加えた相手の肉体を罅割って焼く”という効果を持っており、その厄介さは妓夫太郎と然して変わらない。

 

 原作ではこれを喰らった善逸は一応獪岳に勝利はしたが、もし愈史郎と珠世の薬の存在が無ければ、すぐに獪岳の後を追う事となっただろう。

 

 しかし──

 

 

 

水の呼吸 弐ノ型 水車

 

 

 

 体を縦に回転させる回転斬り。

 

 水のエフェクトを纏っていること以外は火車と同じに見えるが、水の呼吸は柔軟性が重視されるが故にどうしても威力は劣ってしまうため、火車よりは威力が低い。

 

 しかし、それが今回は幸いし、獪岳の斬り上げを防ぎつつその反動を利用して、獪岳の顔を縦に真っ二つに斬ることに成功する。

 

 

「あがっ!・・・くそッ!!」

 

 

 だが、その斬撃での傷はすぐに塞がってしまう。

 

 どうやら先月に風柱やたくさんの人間や隊士を喰ったことで、上弦の鬼に相応しい回復力を得ているらしい。

 

 だが、先程の上弦の鬼とは違い、冨岡は確かに手応えを感じていた。

 

 

(この鬼は先程の鬼より弱い。あともう少しすれば倒せる。問題は上弦の伍の方だが・・・)

 

 

 冨岡はそう言いながら、先程から上弦の伍が居る筈の方向をチラリと見る。

 

 柱である彼がこのような行動を取ることからも分かると思うが、既に冨岡は上弦の陸を問題にはしていなかった。

 

 獪岳は確かに強いし、上弦級の力もある。

 

 一般隊士ではかまぼこ隊のような相当な逸材でもない限り、あっという間に殺られてしまうだろう。

 

 しかし、柱である冨岡には明らかに剣術レベルで劣る上に、力も持て余し気味。

 

 少なくとも、今戦い続けても獪岳が敗北するのは時間の問題だった。

 

 

 

雷の呼吸 陸ノ型 電轟雷轟

 

 

 

 広範囲で炸裂し、敵の全身を切り裂く雷のような斬撃。

 

 相手にダメージを与える技であり、基本的にこの技は頸を斬る技ではない。

 

 しかし、人を相手にするならば致命傷になりかねないのも確かであり、おまけに獪岳の技量や上弦の力のことも考慮すると、この技は並みの一般隊士ではほぼ絶対に防ぐことが出来ないと言っても良かった。

 

 だが──

 

 

 

水の呼吸 参ノ型 流流舞い

 

 

 

 それを防ぐことが出来るのが柱でもある。

 

 冨岡は独特な足運びをする技で“電轟雷轟”を避けると、そのまま獪岳の頸へと刃を走らせようとする。

 

 だが、その瞬間──

 

 

「喰らいなさい!!」

 

 

 今まで静観していた上弦の伍の片割れである堕姫から帯での攻撃が冨岡へと向かった。

 

 

「!?」

 

 

 目を外してはいなかったが、いきなりの攻撃に驚き、慌てて冨岡は獪岳から距離を離しながら、慌ててそちらからの攻撃を防ぐ。

 

 そして、堕姫からの攻撃を防ぐことに成功した冨岡だったが、彼はこの時、重大なミスを犯してしまう。

 

 それはこの場で絶対に目を離してはいけない存在である妓夫太郎から目を離してしまったことだ。

 

 

 

 

  

血鬼術 飛び血鎌

 

 

 

 

 

 妓夫太郎から放たれる剃刀のような無数の薄い刃。

 

 

 

 

 

 ──その1つが冨岡の腕を僅かに切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炭治郎の斬撃にザシュッという音と共に頸を斬り裂かれた猗窩座。

 

 その音を聞いた時、炭治郎はこれで殺したと思った。

 

 何故なら、この角度と距離ならば、完全に相手の頸を断てるという確信を抱いていたからだ。

 

 しかし──

 

 

「!?」

 

 

 猗窩座の頸はギリギリのところで繋がっていた。

 

 

(こいつ!紙一重で頸を完全に絶ちきられるのを避けやがった!!)

 

 

 そう、炭治郎の斬撃は猗窩座の頸を相当深くまで斬っており、本来ならそのまま頸を完全に断つところまでいった筈だった。

 

 原作では頸を斬られる前に飛び退かれたことで、僅かに猗窩座の頸を切り裂く程度で終わるが、この世界の炭治郎が放ったこの一撃は、原作炭治郎より若干早いスピードと深い角度で放たれているのだから。

 

 しかし、頸を斬られるほんの一瞬前に猗窩座が陽炎で誤魔化された刃の部分に気づいたことが、その運命を無理矢理変えてしまった。

 

 そして、驚異的な反射神経を発揮して全力で回避を行った結果、猗窩座の頸は文字通りの意味で首の皮一枚で繋がり、どうにかやられることだけは避けることに成功したのだ。

 

 

(往生際の悪い奴め)

 

 

 炭治郎はそう思いながらも、追撃のために更なる技を展開しようとしたが、その前に猗窩座が技を繰り出そうとしていることに気づき、慌てて防御の姿勢に入った。

 

 

 

破壊殺 脚式 流閃群光

 

 

 

日の呼吸 肆ノ型 灼骨炎陽

 

 

 

 2つの技が同時に衝突する。

 

 そして、炭治郎は灼骨炎陽によって猗窩座の技の威力のほとんどを相殺した他、その両足を絶つことに成功するが、技の力そのものは流閃群光の方が若干強かった為か、炭治郎はその場から吹き飛ばされた。

 

 そこに猗窩座が伸びる腕を使って追撃をかける。

 

 

 

破壊殺 空式

 

 

 

 虚空を拳で打ち、衝撃波によって敵にダメージを与える技。

 

 攻撃の軌道が目に見えないという特性のため、回避や防御はなかなか困難な技だった。

 

 しかし──

 

 

 

日の呼吸 拾壱ノ型 幻日虹 

 

 

 

 それでも回避や防御が出来ないという訳ではない。

 

 炭治郎や原作の煉獄のように必要な技量と技の威力さえ足りていれば、回避も防御も可能だった。

 

 そして、幻日虹で猗窩座の攻撃を回避した炭治郎はそこから反撃を開始する。

 

 

 

日の呼吸 拾参ノ型 円環

 

 

 

陽華突

 

 

 

炎舞

 

 

 

 日の呼吸の事実上の奥義である円環。

 

 それによって炭治郎は2つの技を立て続けに繰り出す。

 

 まず最初に行ったのは日の呼吸唯一の突き技である陽華突。

 

 狙うは猗窩座の左胸、すなわち心臓。

 

 脚を失ってまだ再生が済んでいない猗窩座がそれを避けるのは不可能であり、おまけに頸で無かったのもあってそこはノーガードな状態であり、その矛先はあっさりと心臓を突き刺す。

 

 そして、そこから更に縦の高速2連撃である炎舞によって、猗窩座は左の肩口を完全に斬り飛ばされ、左4本の腕は完全に落ちてしまう。

 

 

(!? しまった!!)

 

 

 猗窩座は左肩を丸ごと斬り飛ばされたことにより、左側ががら空きになってしまったことに気づき、どうにか右側の腕で左側をカバーすることを目論む。

 

 しかし、炭治郎はその隙を見逃さず、素早く猗窩座の左側に移動すると、無慈悲にも猗窩座の頸へと刃を振るう。

 

 

 

 

 

日の呼吸 壱ノ型 円舞

 

 

 

 

 

 ──そして、とどめの横凪ぎ一閃によって、猗窩座の胴体と頸は完全に斬り離された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(頚が切り落とされた。俺は死ぬのか?)

 

 

 円舞によって頸を斬られ、今まで頸を斬られて散っていった鬼と同様に、自分の頸と体が崩壊していくのを実感しながら、猗窩座はそう思っていたが、同時にこんなところで終わる自分を認められなかった。

 

 

(終われない。こんな所で。俺はもっと強くなる)

 

 

 それは執念とも言うべき猗窩座の習性。

 

 彼に人間時代の記憶はない。

 

 無惨に鬼にされた時に忘れてしまったからだ。

 

 だが、それでも強くなりたいという思いは歪に増長される形で彼の中に残っていた。

 

 

(誰よりも強くならなければ)

 

 

 そうしなければ護れないし、あの時(・・・)の二の舞になってしまう。

 

 心の奥底にあるその思いによって、猗窩座は就き動かされていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(強く!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 崩壊する体を前にして、猗窩座は足掻く。

 

 普通に考えれば、半天狗や妓夫太郎達のような頸を斬られていない時の保険が存在しない猗窩座は死から逃れる術はない。

 

 だが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もっと強く!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──その凄まじい執念による強さへの渇望によって、猗窩座は覚醒した。


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