竈門炭治郎に憑依   作:宇宙戦争

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すいません。零余子は無惨に粛清されていたのを忘れていました。修正します。


刀鍛冶の里 参

西暦1915年(大正4年) 11月 刀鍛冶の里

 

 

「敵襲ぅ!!」

 

 

 刀鍛冶の里中に伝わる敵襲の悲鳴。

 

 それは刀鍛冶の里を大混乱に陥れていた。

 

 

「くそっ!増強したって言うが、大して役に立たねえじゃねえか!!」

 

 

 炭治郎は刀鍛冶の里を襲撃していた金魚の一匹を切り裂きながらそう罵倒する。

 

 この里には本来10人の上級隊士からなる戦力が常駐しており、今月からは御館様のテコ入れによって倍の20人に人員を増やしていた。

 

 しかし、それら全ては比較的腕利きが集められていたとは言え、所詮は一般隊士。

 

 上弦2つと下弦6つ全てという大戦力の前には紙切れ同然であり、襲撃から僅か10分で壊滅した。

 

 そのお蔭で現在、刀鍛冶の里は鬼に好き放題されるような事態となっている。

 

 もっとも、彼らが稼いだ時間によって炭治郎達が態勢を整えられたということも事実であり、結果的に不幸にも初っぱなに壺に吸い込まれた刀鍛冶を除いて、刀鍛冶の里の被害者はほぼ出ていなかったが。

 

 そして、炭治郎は先程、霞柱と月柱が上弦の参と交戦状態になったという報告を聞いて、そちらに向かおうとしていたのだが、ここで鎹烏からの更なる一報が入る。

 

 

『カァー、カァー!恋柱ガ上弦ノ肆ト交戦中ゥ!!』

 

 

 これを聞いた炭治郎は目標を変更し、恋柱の増援に向かうことに決めた。

 

 

(上弦の肆。原作では半天狗や鳴女だけど、半天狗が俺が倒したし、鳴女が自分から出てくることはまずあり得ない。更に猗窩座も倒したから、おそらく上弦の肆は妓夫太郎と堕姫のコンビ。例の毒もある以上、恋柱が相手にするには少々キツい)

 

 

 炭治郎はそう思った。

 

 半天狗と猗窩座を倒した現在、おそらく上弦の参は玉壺。

 

 となると、相性の良い霞の呼吸を使う霞柱が対処しており、更には月柱も居る今、彼らが玉壺に負ける可能性はほぼ無いと言える。

 

 だが、対称的に上弦の肆と思われるあの兄妹鬼を恋柱が1人で相手にするというのはほぼ不可能だろう。

 

 何故なら、あの兄が毒使いである事は既に甘露寺は知っているだろうが、2対1という数の差はそんなことに注意するような余裕を無くしてしまうからだ。

 

 加えて、甘露寺は原作の柱の中では下から数えた方が早い実力だった筈なので、なおさら耐えきれない可能性は高い。

 

 そう思って甘露寺の元へと急ぐ炭治郎。

 

 しかし──

 

 

「──ん?」

 

 

「えっ?」

 

 

 目標を変更した直後、片目に下陸と書かれた鬼と遭遇してしまった。

 

 当然、一度目にしてしまった以上は見過ごすわけにはいかない。

 

 放っておくと、そのうち別の場所に居るカナヲ達が片付けるかもしれないが、貴重な刀鍛冶師などが亡くなってしまうかもしれないからだ。

 

 別にそうなっても、別段、炭治郎の心情的には構わないのだが、ここで重大な後方支援拠点に大損害を受けるということは後々に響く可能性がある。

 

 

(・・・先にこいつを片付けるか)

 

 

 炭治郎はそう思うと、その遭遇した下弦の陸の鬼へ向けて斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炭治郎が下弦の陸と遭遇して戦闘を開始していた頃、刀鍛冶の里の一角では鎹烏が報告した通り、恋柱・甘露寺蜜璃と上弦の肆 妓夫太郎・堕姫のコンビが対戦していた。

 

 

 

恋の呼吸 伍ノ型 揺く恋情・乱れ爪

 

 

 

 広範囲をランダムに攻撃する技。

 

 ランダムで相手を攻撃するゆえに相手の頸を落とすにはあまり向いていない技であったが、逆に言えば軌道が読みづらいということでもあり、これを完全に防げる鬼は実は上弦でもそう多くはない。

 

 だが──

 

 

 

血鬼術 八重帯斬り

 

 

 

血鬼術 跋狐跳梁

 

 

 

 今回ばかりは相手が悪かった。

 

 相手もまたそういった戦い方を得意としていたのだ。

 

 

「もう!なんなのよ!!」

 

 

 長物同士が衝突し合うというこの珍妙な光景に、甘露寺は柄にもなくイライラしていた。

 

 あちこちに敵味方の斬撃が飛び交うので、物凄く戦いがやりづらかったからだ。

 

 もっとも、それは上弦の肆のコンビの方も同じであり、彼らもまた長く生きてきた中で初めて遭遇した自分達と同じような戦い方をする相手に戦いが思うように進まず、苛ついていた。

 

 

(くそっ!めんどくさい戦い方を!!)

 

 

 自分の事は棚に上げて苛々しげにそう思う堕姫。

 

 しかし──

 

 

 

ザシュ

 

 

 

「うっ・・・」

 

 

 ここで僅かに堕姫の帯が甘露寺の腕に若干の掠り傷を負わせる。

 

 不味いと思った甘露寺は一旦下がろうとするが、そこに妓夫太郎の追撃が入った。

 

 

 

血鬼術 飛び血鎌

 

 

 

 血液を剃刀のような薄い刃に変え、それを振るうことで無数の斬撃を相手に喰らわせる技。

 

 勿論、妓夫太郎の放つ技なので猛毒が伴っており、僅かに掠り傷を負うだけでも致命傷となる。

 

 過去、この技で何度も鬼狩りの柱を葬っており、つい最近でも水柱がこの技によって致命傷を負って絶命していた。

 

 だが、甘露寺も伊達に柱であるわけではない。

 

 咄嗟に受け流すために技を発動する。

 

 

 

恋の呼吸 伍ノ型 揺らめく恋情・乱れ爪

 

 

  

 先程展開したのと同じ技だったが、原作の上弦の肆との戦いでも分かる通り、受け流すことにも使える技だ。

 

 これにより、甘露寺は飛び血鎌を完全に受け流しつつ、後方にバックステップを行って上弦の肆から一旦距離を取った。

 

 

「あ、危なかったぁ」

 

 

 甘露寺は安堵しつつも冷や汗を流す。

 

 なにしろ、あの鎌が毒を纏っていることは水柱と上弦の肆の戦いを見ていた寛三郎(義勇の鎹烏)からの報告によって既に知っており、甘露寺自身も戦い中に警戒していたのだ。

 

 それ故に甘露寺はあの鎌の直撃を受けなかったことに心底安堵しつつ、先程堕姫から受けた怪我を確認する。

 

 

(あの女の子の鬼には毒はどうやら毒はないようね。でも、2対1はキツいわぁ)

 

 

 思わず泣きそうになる甘露寺だったが、逃げるという選択肢が最初から存在しない以上、頑張るしかないと改めて自分を奮い立たせる。

 

 

(他の人の増援が来るまでは私が粘らないと!)

 

 

 そう思いながら、時間を稼ぐために甘露寺は改めて上弦の肆に対して攻勢に出る。

 

 ──しかし、彼女は知らない。

 

 他の上弦への対処や下弦の掃討によって彼女の期待する増援は暫く現れないということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇40分後 刀鍛冶の里 某所

 

 

(不味い!不味い!不味い!本当にどうしよう!!)

 

 

 下弦の壱は物陰に隠れながら焦っていた。

 

 彼は他の下弦の鬼と共に刀鍛冶の里の襲撃を行ったのだが、常駐していた鬼殺隊の剣士達を片付けている間に鬼殺隊側は態勢を建て直し、逆に下弦の鬼達を蹂躙し始めていたのだ。

 

 その結果、下弦の弐から陸までの5体の下弦の鬼は既に討伐され、残るは彼だけになっていた。

 

 

(だいたいこんなところに柱が複数居るんだよ!!)

 

 

 下弦の壱は内心でそう罵る。

 

 元々彼の誤算(というか不幸)は幾つかあった。

 

 まず最初にこの刀鍛冶の里には柱が5人と準柱クラスの人間が2人居たこと。

 

 次に意外にもこの刀鍛冶の里の常駐剣士が多く、片付けるのに手間が掛かってしまったこと。

 

 更には自分達下弦に柱2人と準柱向けられたことと、その柱の内の1人が現鬼殺隊で最強を誇る日柱であったことだ。

 

 もっとも、日柱が下弦掃討に向かったのは単なる偶然であったが、それが彼らの運の悪さを象徴しているとも言えた。

 

 まあ、日柱は下弦の壱の姿を誤魔化す血鬼術を無効化する術(透き通る世界のこと)を持っていたので、それと遭遇しなかったのは彼の幸運でもあったが。

 

 

「とにかく、どうにかやり過ごさないと・・・」

 

 

 下弦の壱はどうにか柱達をやり過ごす算段を立てようとするが、残念ながら彼の幸運はそこまでだった。

 

 

 

日の呼吸 壱ノ型 円舞

 

 

 

 突如、背後から迫ってきた日柱・竈門炭治郎の手により、下弦の壱の頸は瞬く間に斬り落とされる。

 

 

(えっ、なんで・・・)

 

 

 頸を落とされ、その落とされた頚からの視界が自分の体を捉える中、零余子は自分に何が起きたのかを確かめようとするが、彼女にそのような時間は与えられなかった。

 

 何故なら、その身体と頸はあっという間に崩壊していき、彼の意識もまたこの世から無くなってしまったからだ。

 

 こうして、下弦の壱は何故自分の頸が落とされたのかも分からぬままにこの世から去る。

 

 ──そして、この下弦の壱の討伐をもって無惨配下の下弦の鬼は全滅し、十二鬼月の下半分は完全に消滅することとなった。


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