竈門炭治郎に憑依   作:宇宙戦争

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柱合会議(裁判?)

西暦1915年(大正4年) 2月 産屋敷邸 周辺 

 

 

(なんでこうなってる?)

 

 

 産屋敷邸の中を歩きながら、炭治郎は自問自答していた。

 

 ちなみに隣には炭治郎の師?である鱗滝左近次が禰豆子の入った籠を抱えながら歩いており、前方には第97代産屋敷家当主・産屋敷輝哉その息女であるくいな、かなたの2人と共に柱合会議の場に向かって歩いている。

 

 そして、禰豆子の箱を持ってきている時点で何が起ころうとしているかは分かるだろう。

 

 そう、原作の柱合裁判だ。

 

 まあ、あの時と違って炭治郎は拘束された状態で柱達の前に居たりはしていないので、それよりは状況がマシだったが、これから起こることを考えれば心が休まる筈もない。

 

 そもそも何故この場で公表することになったかと言えば、丁度半年に1度の柱合会議の場が有った為に輝哉がそのタイミングに合わせて禰豆子の存在を柱達に知らせようと考えたからだ。

 

 その為に禰豆子の預け主である鱗滝左近次も呼ばれていた。

 

 が、言うまでもなく炭治郎にとっては傍迷惑も良いところだ。

 

 そもそも禰豆子を鱗滝左近次の元に預けたのも、戦闘に邪魔な要素を少しでも排除したかったのもあるが、それ以上にバレるリスクを少なくしたいという思惑があったからだった。

 

 よくよく考えれば、禰豆子の存在が鬼殺隊にバレて良いことなど1つも無いのだから。

 

 つまり、知らぬが仏、バレなければどうということはない。

 

 そう考えていた炭治郎だったが、世の中そう都合よくは行かないらしいということが、今回の事でよく分かった。

 

 

(くそっ!これが歴史の修正力ならぬ原作の修正力という奴なのか!?)

 

 

 炭治郎は半ば現実逃避気味にそう思っていたが、同時にもう1つの要素もこの柱合会議で公表される要因となったことも察していた。

 

 そして、その要因とは──

 

 

(まさか、禰豆子がこの段階で太陽を克服してしまうとは・・・) 

 

 

 そう、実は鱗滝が目を放していた際に禰豆子はうっかり日向に出てしまい、その際に太陽を克服してしまったのだ。

 

 原作では刀鍛冶の里の時に禰豆子は太陽を克服しているので、あと10ヶ月くらいは先の話だった筈なのだが、この時点で太陽を克服したのは流石に誤算だった。

 

 

(・・・仕方ない。一応、バレた時のための訓練(・・)はしてあるし。おまけに刀は手元にある。いざとなれば力づくで止めよう)

 

 

 炭治郎はそう思いながら、2人と共に柱合会議の席へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柱合会議。

 

 それは半年に1度行われる文字通り、柱の面々が集められて行われる会議のこと。

 

 

「・・・」

 

 

 そんな中、蟲柱の横で佇んでいる彼女の継子が柱達の注目を集めていた。

 

 この柱合会議には本来なら継子ですら参加を許されていない。

 

 しかし、今回、下弦の伍を討伐したことの功績を盾に、しのぶは時透無一郎を例に出して新たな柱──花柱への就任を願い出ようとしていた。

 

 無論、柱の空きは既に埋まってしまっているので、自分の席を譲るつもりで。

 

 

「おい、胡蝶。そいつが新しく柱になる奴か?」

 

 

 しのぶにそう話しかけてきたのは音柱──宇髄天元。

 

 とにかく派手な事が好きであり、元忍ではあるが、隠密行動が多い筈の忍の風上にも置けない男であった。

 

 

「ええ、正確にはこれから御館様にお願いをするのですが、昨晩、下弦の伍を撃破しましたので」

 

 

「ほう!それはなかなか凄いな!最近の隊士は質が落ちてしまったと思っていたが、時透少年といい、まだまだ捨てたものでは無いらしいな!!」

 

 

 そう言ったのは炎柱──煉獄杏寿郎だった。

 

 どうやら彼もまた最近の隊士の質の低下には懸念を示していたらしく、新たな柱の誕生の可能性に素直に喜んでいる。

 

 

「はい、自慢の妹です」

 

 

 しのぶはきっぱりとそう断言した。

 

 なんだかんだ言って、彼女は義妹であるカナヲを家族として愛していたのだ。

 

 その家族が褒められて悪い気はしていなかった。

 

 もっとも、褒められた当のカナヲは顔色1つ変えず、何も喋る様子がなかったが。

 

 そして、同時にある事実も告げる。

 

 

「ですが、カナヲの同期にはもっと凄い子も居るみたいでしたよ?」

 

 

「ほう?それはどういう奴だ?」

 

 

「その子は下弦の伍を討伐した山と同じ場所に現れた上弦の壱と互角に戦っていました。・・・柱として恥ずかしいことですが、あの子が居なければ私は死んでいたと思います」

 

 

 しのぶはそう言ったが、それには柱達の全員が驚くことになった。

 

 それはそうだろう。

 

 なにしろ、今から4年前には歴代最強の女柱と言われた胡蝶カナエが十二鬼月の中で2番目に強いとされる上弦の弐に敗れ、途中で(・・・)介入してきた存在(・・・・・・・・)によって、どうにか生還はしたものの、肺に重大な傷を負ったことにより花柱引退にまで追い込まれている。

 

 そして、上弦の壱と言えば、当然のことながら上弦の弐以上に強い。

 

 それと互角に戦うなど最低でも柱レベル、いや、もしかしたら現鬼殺隊最強の岩柱すら越えている可能性があるという事だ。

 

 そんな存在が現実に居るなど、柱達からしてみれば信じがたいことでもあった。

 

 

「何かの間違いだろう。そんな存在が居る筈がない」

 

 

 そう言うのは蛇柱──伊黒小芭内。

 

 普段からねちっこい言い回しをしているが、そのくせ好きな同僚──甘露寺には告白の1つも出来ないという戦い以外では実にチキンな男であった。

 

 

「南無・・・それが本当であれば喜ばしいことだが、にわかには信じられんな」

 

 

 伊黒に続く形でそう言ったのは、今代の鬼殺隊最強の男──悲鳴嶼行冥。

 

 元坊主だが、過去の経緯から何処ぞの“るろうに”の話に出てくる破戒僧に存在が近く、かなり独善的な思考を持っている男だった。

 

 

「でも、確かに──

 

 

「「御館様のお成りです」」

 

 

 しのぶの言葉は2つの声帯によって遮られ、柱達は慌てるかのように跪く。

 

 そして、数秒後、御館様がその場へと登場した。

 

 

「──よく来たね、私の可愛い剣士(子供)たち。おはよう、みんな。今日はとてもいい天気だね、空も青いのか? 顔触れが変わらずに、半年に一度の柱合会議を迎えられたことを嬉しく思うよ」

 

 

「お館様におかれましても、ご壮健でなによりです。益々のご多幸を、切にお祈り申し上げます」

 

 

 御館様の言葉にそう答えたのは風柱──不死川実弥だった。

 

 どう見てもヤクザのような風貌であり、このようなセリフは似合わないのだが、どうやら御館様にはある程度の忠誠を誓っているようだ。

 

 

「うん、ありがとう。早速だけど、今日は紹介したい人が居るんだ」

 

 

「紹介したい人物、ですか?」

 

 

「うん。じゃあ、こちらに来てくれないか」

 

 

「「はい」」

 

 

 御館様がそう言った直後、2人の人物が居間へと入ってくる。

 

 1人は鱗滝左近次。

 

 水柱である冨岡の師であり、元水柱でもあり、現在は育手を勤めている人間でもある。

 

 そして、もう1人は──

 

 

(あれ?あの子は──)

 

 

 しのぶはその人物に見覚えがあった。

 

 まあ、当たり前だろう。

 

 つい数時間前に自分を助けてくれた人物なのだから。

 

 それと同時にこの場に呼ばれたことも、なんとなく納得出来た。

 

 おそらく、上弦の壱の情報を話すためにこの場に呼ばれたのだろう。

 

 しのぶはそう考えていたが、それは半分合っていて、半分は間違っている推測だった。

 

 そして、炭治郎が来たことに驚いている人物は実はもう1人居る。

 

 

「炭治郎?」

 

 

 それは意外なことに霞柱──時透無一郎。

 

 実は数年前、炭治郎と無一郎は1度だけ会ったことがあり、その時炭治郎が渡した日輪刀によって兄弟は無事に生存できた(・・・・・)という経緯があった。

 

 特徴がある顔だった為、顔も名前も覚えていたのだが、まさか鬼殺隊に入っているとは思わなかった上に、何故この場に呼ばれたのか分からず困惑している。

 

 そして、そんな中、御館様は口を開く。

 

 

「では、左近次。よろしく頼むよ」

 

 

「はい」

 

 

 鱗滝はそう言うと、持っていた箱の中身を開く。

 

 すると──

 

 

「「「「「「「「!!!?」」」」」」」」

 

 

 冨岡を除く8人の柱達は驚いた。

 

 それはそうだろう。

 

 その箱の中には自分達が殺すべき存在──鬼が居たのだから。

 

 特に風柱と蛇柱に至っては、早速殺気を向け始めている。

 

 

「これは・・・どういうことですかな?」

 

 

 柱達を代表する形で悲鳴嶼が御館様に聞く。

 

 しかし、表面上では冷静さを装ってはいるが、内心では若干動揺しており、件の鬼を何時でも殺せるように斧を握り締めている。

 

 

「うん、実を言うとね。人を喰わない鬼を見つけたんだ。みんなには彼女──禰豆子の事を認めて欲しいと思ってる」

 

 

 殺気立つ柱達の前で御館様は朗らかにそう言った。


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