波動ポケモンルカリオは波導の勇者である   作:プロトタイプ・ゼロ

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蒼く気高き狼の逆鱗

 

 

相手の斬撃を躱しながら波動弾を撃ちまくる。このゲーム世界では一度強化すると永続になるらしく、俺は6段階攻撃力を強化した状態で、目の前で剣と盾を構える二匹の狼と対峙する。

 

「ウオオオォォォォォォン」

 

「フォォォォォォォォォン」

 

剣を咥えるザシアン。

 

鬣のような盾を持つザマゼンタ。

 

ポケットモンスターソードシールドに登場する伝説のポケモンが、まさかのBOSSバクスターとして俺の前に立ち塞がった。

 

コイツらは二匹でBOSSバクスター一体分らしく一匹倒しても意味が無い。

 

そうそう、今回戦闘に入るのが早いって思っただろ?俺も最初はまどろみの森で戦うのだと思っていたから森に向かっていたんだが、その途中にある平原で襲いかかってきたんだよ。

 

だからパラドに友奈を任せて俺はコイツらの相手をしているというわけだ。

 

さぁ、早く終わらせよう。一刻も早く友奈の心を取り戻す為にも。

 

『身体に闇が集まるのがわかる。だが無意味だ。俺は闇に堕ちない』

 

俺はゆっくりと歩き始めると、波動を使って剣を錬成する。その剣が宙に浮くと同じ剣が数本錬成されていく。

 

ザシアンとザマゼンタが次に俺を見た時には、自らの体に刺さる無数の剣だった。ポケットモンスターソードシールドでかなりの攻撃力と防御力を誇るザシアンとザマゼンタが瞬きした次の瞬間には無数の剣が刺さっているのを見て、パラドは面白いおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせる。

 

(おもしれぇなアイツ。あんな技持ってんのかよ)

 

さて、相手が予想外の場所に居てくれたのと俺の攻撃のバリエーションが増えたおかげで早く終わらせることが出来た。

 

『はぁ……疲れた。もうこんなのはコリゴリだ。いくら友奈を守るためとはいえ、な。まぁ、次に最後だし、楽勝だろ。場所は……』

 

そう言えば、俺は元いた世界では「フラグブレイカー」とか「フラグ創造神」とかの渾名があった。今でも意味が全くわからんけど、あれどういう意味だったんだ?

 

『ん?なんか近づいてきている?』

 

次の的を確認するためにマップを開くと、高速で俺の元に向かってくるポイントがあった。そして、その名前を確認しようとした時だった。

 

『……っ!!』

 

強力な殺気を感じて後ろに飛ぶ。するとそこに地響きと共に何者かが降りてきた。どうやら今のは俺を倒すための一撃だったみたいだ。

 

何者かが地響きを立てて降り立ったおかげで辺り一面砂煙で溢れた。あぁあ、どうしようかねぇ。

 

『何者かは知らんが、お前が最後の敵でいいな?』

 

両手に波動を纏わせいつでも対処できるように構える。だが、俺は次の瞬間には殴られ吹き飛ばされていた。

 

『っ!?』

 

突然の事に思考回路がショートしそうになったが、なんとか持ちこたえる。あぁ、地面に落ちた時にちょっとヒビ入ったな地面が。

 

『誰かは知らねぇが、これが最後なんだ』

 

俺は目を閉じて波動の力で相手の姿を確認する。

 

『……えっ?』

 

そして確認した俺は、目を開けた瞬間相手が信じられなかった。

 

何しろ、

 

『……友奈?』

 

「アハ♪アハハ♪アハハハハハ♪」

 

真っ黒な闇の勇者服に身を包んで楽しそうに嗤っている友奈だったから。

 

違う所があるとすれば勇者服の色とその身に宿す闇だけだ。髪の色も瞳も顔立ちも全て友奈そのものだった。

 

『……それは無いだろう。俺に、友奈を殴れってか?』

 

はぁ、そうかよ。

 

本当にコレばかりは許せねぇぞクソ神がああぁぁぁ!!

 

相手が本物の友奈ではないのは頭では理解出来ている。だが、それでも友奈を殴るのは躊躇ってしまう。できない。

 

だけど、俺がここで殺らないと、純粋な友奈は一生帰ってこない。やるしかないんだ!

 

わかってんだよ。わかっているんだよそんな事は……』

 

俺の中から黒く染った波動が溢れ出る。俺で求められないほどの闇が。

 

あぁ、ヤバいなこれは。心の底から全てを壊したい。全ての生命を無に還したい。友奈は闇を抱えてからずっと我慢してたんだなこれを。本当にすげぇよお前は。

 

俺と友奈じゃあ抱える闇も違うし、大きさも違うから闇を抱く事がこんなにも辛いんだな。

 

「アハ♪アハハ♪楽しいねぇ?楽しいよねぇ?好きだよねぇ?大好きだよねぇ?私の事?アハ♪アハハ♪アハハハハハハハハハハハ♡」

 

狂ったように嗤う闇友奈を見て、俺の心はキュッと締め付けられるような苦しみがくる。こんな友奈は見たくない。でも、友奈を殴りたくない。

 

『……覚悟を決めるか

 

俺は一つ深呼吸をすると体に流れる波動の力を静め、冷静にそして熱く波動を纏う。感情に揺さぶられてはいけない。感情に任せた戦いはルカリオのやるべき事ではない。それが俺の理想だ。

 

『さぁ、覚悟はいいな?友奈のなくした心の光、返してもらうぞ』

 

俺は再び拳に青い波動を纏わせるとキッと睨みつける。闇友奈は何故か頬を紅潮させている。意味わからん。

 

【瞑想】×6

 

心を落ち着かせて特攻と特防を6段階上昇させる。俺は波動ポケモンルカリオ。波動の勇者だ!!

 

【電光石火】【発勁】

 

目にも止まらぬ速さで友奈の懐に入り、勢いよく掌を突き出すことで闇友奈の体内に衝撃を与える。

 

「がはっ!!」

 

油断していた闇友奈は突然体内に衝撃を受けて吹き飛んでいく。吹き飛んだ側の闇友奈は何が起こったのかわからない顔をしているが、それでも感覚で俺だとわかったのだろう、キッと俺を睨みつけながら走ってくる。

 

【フェイント】【発勁】

 

今度はフェイントを用いて発勁を繰り出していく。二度、三度と発勁を打ち込むと闇友奈が突然倒れる。

 

倒した訳では無い。発勁の追加効果にある麻痺状態に陥ったのだ。身体の隅々がビリビリと麻痺った闇友奈は俺を睨む。

 

「……くっ!!」

 

俺は闇友奈の首を掴んで持ち上げると腹を蹴り上げて宙に浮かせる。そして右手に雷の力を、左手に氷の力を纏わせ、

 

【インファント】+【雷パンチ】+【冷凍パンチ】

 

俺の防御と特防が下がるのを覚悟で無数の拳撃を繰り出す。交互にビリビリヒヤヒヤと殴られた闇友奈は壁に直撃すると、雷と氷の力を本気で受けて立ち上がることすら出来なくなる。

 

『これで最後だ』

 

俺は右腰に両手を持ってくると掌で丸を作るように構える。すると両の掌に青い波動が集まり球体になっていく。

 

『これがルカリオの十八番……波動の力だっ!!』

 

極限まで威力を高めた波動弾を闇友奈に撃つ。今の俺が出せる最大波動弾。これで全てが決まる。

 

痺れて動けない闇友奈はまともに最大出力の波動弾を受けてしまい、闇と共に爆発した。

 

『これで終わりだ。ようやく友奈が……』

 

その後の事は正直覚えていない。これまでの戦いの中で一番力を使って、残り空っぽの俺は熟睡するように気絶してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜結城友奈〜

 

 

 

 

 

天の神と話してから少し経ったあと、ずっと暗い闇の中にいた私の目の前が突然光で覆われた。本当に突然の事で何が何だかわからなかったけど、その光からは心地いい温かさを感じた。

 

薄らと瞼を開けると、病院の壁が見えた。

 

「あれ?私何してたの?」

 

何故か気を失ってからの記憶がない。何があったんだろう?

 

「っ!?友奈ちゃん?目が覚めたのね!!」

 

「あれ?東郷さ……わっぷ」

 

隣で椅子に座っていた東郷さんが私に気づくと、涙を浮かべて抱きついてきた。

 

「ど、どうしたの?」

 

「どうしたもなにも、友奈ちゃんが突然起きなくなって心配になって。口の悪い友奈ちゃんも素敵だけど、やっぱり私は純粋な友奈ちゃんの方が好きよ?」

 

……何言ってるんだろう。ちょっと東郷さんの言ってることがわからない。たまに思うけど。

 

まぁ、東郷さんだし仕方ないかな。

 

「今日もお見舞い来たよ〜……ってゆーゆ!?もう大丈夫なの!?」

 

しばらく東郷さんの好きなように抱き着かせていたら、果物の入った籠を持った園ちゃんが涙を浮かべて嬉しそうにしてた。

 

嫌だから何があったの?

 

「あの、東郷さん?あれから何があったのか説明してくれると嬉しいんだけど……?」

 

「友奈ちゃん!!友奈ちゃん!!友奈ちゃん!!」

 

「うん、ダメだねこれ」

 

私の名前を連呼するばかりでそれ以外の反応を示してくれない東郷さんを見て、私は諦めの領地に入った。おかしいなー。いつもならもっと粘るのに。

 

「だったら俺が説明してやるよ」

 

「えっ?誰?」

 

突然聞こえた声の方に向くと、何だか奇妙な服を着た男の人がいた。

 

「俺はパラド。しばらくお前の面倒を見ていた」

 

「あ、私讃州中学勇者部所属結城友奈って言います」

 

「いや知ってるけど」

 

パラドさんに私が気を失ってからの出来事を全て聞いた。なんともその時の記憶がないからわからないけど、私はかなりみんなに酷い事言ってしまった。

 

「ゴメンね。東郷さん、園ちゃん」

 

二人に謝ると

 

「いいのよ。事情は全てパラドさんから聞いているから。今は友奈ちゃんが無事に目覚めてくれた事が何より嬉しいわ」

 

「うんうん。私も同じだよ〜。ゆーゆが目を覚ましたからきっとリオるんも喜ぶよ」

 

リオるんとは私といつも一緒にいるルカリオの事みたい。園ちゃんのいつもの癖で渾名を付けられたルカリオは最初こそはその名で呼ばれる事を拒否していたけど、最後の方で諦めたのかガックリと項垂れていたのを思い出す。

 

「あれ?ルカリオは?」

 

「今はお前の中で眠っているぜ」

 

どこにもルカリオが居ないことに不思議に思っていると、パラドさんが説明してくれる。そっかぁ。私の中にいるのかぁ。うん……うん?

 

「私の中で眠ってる!?」

 

「あれ?知らなかったのか?ルカリオはお前を助けるために、お前な深層心理に入り敵を倒したんだよ。おかげで力を使い果たしたのか、今はぐっすり眠っている」

 

ゴメンねルカリオ。私が心の闇なんかに負けちゃうから。本当にゴメンね。

 

「……」

 

そんな私をパラドさんはずっと見ていたけど、ため息を吐いて笑った。

 

「そんなに自分を責めるなよ。お前は何も悪くない。心って言うのは自分自身でも理解出来ねぇもんなんだからよ。まぁ、どうしても責めてしまうなら、今度ルカリオになにかしてやれ」

 

そう言って私な頭をわしゃわしゃと撫でたあと、用事があるからと病室を出て行った。

 

「そうだ!みんなを呼ぼうよ〜わっしー」

 

「そうね!せっかく目を覚ましたのだもの。友奈ちゃんの事を知らせなくては!」

 

「あはは……東郷さんはいつもどうりだね」

 

先代勇者二人はテンションが上がっているみたい。私はこんなにもみんなに愛されているんだなぁ。

 

その後勇者部の皆が集まって騒いでしまったのは語るまでもないと思う。病院の人達にも怒られちゃった。

 

私は胸に手を置くと、私の中で眠っているルカリオを思い浮かべて少しだけ笑う。

 

「ありがとうルカリオ。君にはいつも助けられているね」

 

ルカリオの事は大好きだよ。たとえルカリオが天の神の一部だったとしても。私達の仲間である事に変わりはないからね。

 

本当に大好きだよ。ルカリオ、愛してる。ずっとずっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんでこうなるんだろ?展開おかしくないよね?大丈夫だよな?

番外編か外伝をするか?

  • 番外編やろう!
  • 番外編やらなくていい
  • 外伝やろう!
  • 外伝しなくていい
  • どちらもやろうぜ!

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