君はプレインズウォーカーだ。   作:銅鑼銅鑼

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カードリスト:36:クエストとか☆ミ

 

バハルス帝国のある宿屋の一室にて、私様は頭を悩ませていた。

海上都市に向かうに至って。私様達は大きな課題に直面している。

 

それは、どうやって海上都市に向かうか。という根本的な問題。

最初は木材などを繋ぎ合わせたイカダを用いて、海の上を渡ろうとしたが、これは皆に却下された。

なんでさ☆ と私様が猛反発すると、出るわ出るわ問題の嵐。

 

海上都市に向かうのに、どれだけの時間がかかるのか分からないのに。それはあまりに非効率だ。

イカダの強度を考えるに、私様達五人を乗せるイカダを作るのに、かなりの労力が要るという事。

材料はどこから? 勝手に樹を伐採して運ぶ手間は? そもそも転移門(ゲート)で良いのでは?

とまあ、色々と問題があった訳だ☆

 

結局のところ、私様は楽しく冒険がしたかったのだ。

楽しく冒険するのに、面倒くさい事が重なってしまえば本末転倒だ。

面倒くさいのは、面白い。とはいえど限度があった。

 

これには私様も黙って意志を曲げざるを得ない。

結論として、転移門(ゲート)を用いて海上都市に向かう事になったのだが。

 

問題はもう一つあった。

 

そもそもの話、

海上都市を探索するのに、私様達だけでは手が足りないのではないか。というもの。

 

デミウルゴスに指摘されて、初めて気付いたぜ☆

そう。ここは現実だ。ゲームじゃない。

ダンジョンを探索して、ボスを倒して、ハイ終わり。ではないのだ。

 

宝箱なんて分かりやすいドロップアイテムは落ちていない。

場合によってはトラップの有無を確認する必要性も出てくる。

どういう場所かも分からないので、人手がとにかく必要なのだ。

 

ナザリックから人手を借りる、というのも考えた。

だが、それはあまりにも私様が意図している冒険とは遠くかけ離れてしまう。

だっておめー。冒険するのに数十人規模で行くか?という話だ。

そもそも、私様が思い描く冒険というものは、危険や危機があって良いものなのだ。

それは鈴木くんも同じようで、ナザリックから人手を借りる案は無しになった。

 

さて、困ったぞ。

……うん、本当に困った。

困った時のデミウルゴス☆ 君に決めた☆

 

 

「という訳で、私様。凄く困っているんだよ☆」

 

「なるほど。それで相談に来たという事ですね?」

 

 

今更ながら。鈴木くん達男性陣と私様達女性陣は別室だ。

そこまで部屋自体は悪くはねーけど、よくもない。ありふれた宿屋だった。

男性陣の部屋にやって来た私様は、デミウルゴスに言葉を続ける。

 

 

「まーね☆ 私様より、君の方が頭が良い、というのは前も言ったね☆

 たすけてー☆ デミちゃん☆」

 

「ふむ、では。こう言ったプランは如何でしょうか」

 

 

デミウルゴスの言った内容は次の通りだ。

 

研究と称して、海上都市の探索。及び研究に役立つものの回収に行く。

いち冒険者の手だけでは足りないから。ワーカーのチームを集める。というもの。

 

とは言え、あまり知らないワーカーに依頼を出すのはいけない。

信頼の出来るワーカーにのみ依頼を出す。

 

必要なのは、レンジャーや戦士などの脅威に対する斥候・防衛。

出来る事を全て、なにも私様達だけで済ませる必要はないのだから。

 

私様のあんまり賢くない頭では、これくらいを理解するのがやっとだった。

ふむふむ☆

確かにこれなら私様の想像している冒険とさほどかけ離れてはいない。

これならば鈴木くんも同意してくれる事だろう。

 

 

「ふむ、ワーカーとの合同のクエストですか」

 

 

デミウルゴスの言葉に、鈴木くんは暫く考える素振りをした後。

良いんじゃないでしょうか。と答えを出してくれた。

うんうん☆ やっぱり相談しに来て良かったよ☆ と私様が安心したのもつかの間。

デミウルゴスが、ですが。と言葉を濁した。

 

 

「転移門(ゲート)を使う以上。至高の御方の御力が露見してしまいます」

 

「「あー」」

 

 

ここで話が振り出しに戻ってきてしまう。

どうやって海上都市に向かうのか。という問題に突き当たる。

 

私様達が知り得ている情報では、転移門(ゲート)が使える現地の人間は居ない。

特に今のところ、高位の魔法が使える事が露見して不味い事はないのだが。

それでもやはり、可能な限り隠した方が良いだろう。要らない問題は、必要ないのだ。

 

となると、船で行くのが無難な落としどころだろうか。

資金は、偽造通貨が山の様にあるので心配はいらない。

金貨を偽造してもなんら問題ない事を知った私様に、今や資金難というものは存在しない。

――とは言え、あまりに使い過ぎると毒だから、あまり使いたくはないのだが。

 

ここでの毒と言うのは、世界にとっての毒、ということだ。

金の価値が下がってしまえば、物価が高くなる。

物価が高くなれば、人間皆が困ってしまう。

困らないのはいくらでも偽造通貨を作成出来る私様だけだ。

うん、こりゃあ害悪だわ。名前負けしてねーな。

なんて私様は自嘲気味に笑ってみせた。

 

鈴木くんも、偽造通貨を使う事に慣れて欲しくは無いし。

出来れば正当な手段を持って金貨を手に入れたいのだが、如何せん我々『ゴレンジャイ』は銅級の冒険者である。

多くの金貨を手に入れようとしてもどうしようもないというのが専らの問題である。

 

 

「という事で、船で行くとしようかね☆」

 

「まあ、その辺りが落としどころでしょうね」

 

「時に、鈴木くん。船酔いはする方かい?

 私様が特製の船酔い薬作ってあげようか☆」

 

「なんか要らないバフ付けてきそうなので遠慮します」

 

 

なんでや☆ 私様の特製のお薬はしっかり効くぞ☆

具体的には筋力があがったり、HPが増えまくったりするぞ☆

副作用として船酔いに効くだけだ☆

 

 

――さて。

信頼出来るワーカーを探す、という事で。

翌朝、私様達は再度歌う林檎亭に来ていた。

 

アルシェちゃんも――居た。

辺りを見回した私様の目に入った彼女の下に近付くと。

慎まやかながらもしっかりとある胸元へと抱き着いた。

 

 

「はろはろ☆アルシェちゃん☆

 昨日ぶりだね☆あの後はちゃんと帰れたかい☆ミ」

 

「――わっ!? ……えっと、星見さん?」

 

 

突然の事にビックリしたのかな?

アルシェちゃんは目をパチクリしている。かーわーいーいー☆(語彙消失)

あとちょっち胸は硬めだね、見かけによらず結構鍛えてるのかな?筋肉質だね☆ むきむき☆

 

 

「はい、ごめんなさいねウチの馬鹿が」

 

「あ、いえいえ」

 

 

至福の時間も長くはなかった。

鈴木くんに引き剥がされて私様はアルシェちゃんから離された。

 

なんだよぶー☆

もうちょっと居させてくれても良いじゃないか☆

 

まあ、良いか。私様はアルシェちゃんに目を向けると。

 

 

「アルシェちゃん、クエストしねーか☆ミ」

 

「クエスト……依頼ですか?」

 

「そそ☆ 私様ちょっと仲間探してんの☆ミ」

 

 

そう言うと、私様は空いているテーブルに座り。

対面にアルシェちゃんも座るように促す。

 

 

「まずは報酬の話をしようか。前払いで金貨200枚。

 クエスト達成で金貨500枚だ」

 

「……!!」

 

 

おや。目の色が変わったね。

まだ内容も話していないというのに、せっかちなことだ。

くつくつ。そう急くなよ。まだまだ話はこれからなんだからさ☆

 

私様は金貨200枚をテーブルの上にぶちまける。

じゃらじゃらと音を立てながら、テーブルの上に広がる金貨の山。

嘘じゃないことを先ずは証明しようじゃないか。

 

もちろん私様製の偽造通貨ではあるけどな☆

 

周りの目が気になるが、気にしない。

これは他のワーカーに対しての宣伝も兼ねているんだからな☆

 

アルシェちゃんはゴクリ、と息を呑んだ。

目の前の金貨の山に目を奪われているけど、私様の言葉にも耳を傾ける余裕はあるようだ。

いいね、欲には忠実だけど、冷静でいられるのはポイントが高いぜ☆ミ

 

 

「先ず、君を雇いたい。

 後は、そうだね。信用できるワーカーを何人か。

 斥候・防衛が出来るレンジャーと戦士が居れば尚良い。

 これに追加で報酬を出してやっても良い」

 

「……やります」

 

 

くつくつ。まだ内容も話してないってのに。アルシェちゃんは本当にせっかちだ。

自分がどんな困難に立ち向かうのか分かってないのに、無謀と言うか、何と言うか。

それでこそ冒険者なんだけどね。ああ、あと。

 

 

「マジック:ザ・ギャザリングを知っているかね」

 

 

宣伝・布教も忘れないでやっておかないといけない。

 

私様はカードの一枚を見せると、アルシェちゃんの顔色が変わった。

伝説級(レジェンド)の一枚だったんだけど。比較的強力な魔法を込めたカードの一枚。

「抹消/Obliterate」を見せると。彼女は口を押さえてえずきそうになる。

 

あらあら。可愛そうに。

私様はカードを仕舞うと、彼女は楽になったのか。テーブルにうつ伏せになる。

 

 

「私様は、これらのカードを用いて戦闘をする。

 いちいちそんな反応をされると、困るわけなのさ」

 

「……」

 

「ああ困ったな、やっぱりこの話は無かったことにしようか☆

 足手まといを連れて行くつもりは私様全くねーからな☆」

 

「……慣れます。慣れてみせます!!」

 

 

彼女は強い意志を持った瞳で私様を見る。

ふむ、声色と態度から判断するに、彼女は金が相当必要なようだ。

そこに付け込む訳じゃねーけど、私様は口の端を吊り上げて。

 

 

「なら、まずは練習から始めようか」

 

 

MTGの布教活動、兼クエスト達成に向けた訓練を始めることにした。

 

 

 

 

 

あ、言っとくけどMTGで遊びてーだけだから☆

特にそこまで深い理由はないぜ☆ミ

 

 

 


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