音楽好きとスクールアイドル。Zero to One   作:はくたか

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Switch貰って一日の大半を音ゲーに費すはくたかです


第8話 親友に会いに

「千ィー歌ァー?」

 

『ひっ!すみませんでした!どうかお許しを…』

 

「明日から新学期なんだよ?なんで宿題終わってないの?なんでそれで遊びに誘うの?アホなの?」

 

『誰がアホだ!』

 

「…とりあえず罰として今日は1日勉強。そっちにダイヤちゃん行かせたから。」

 

『なんでダイヤさんなの!?律くんでいいじゃん!』

 

「私は行かなきゃいけないところがあるから。ま、ダイヤちゃんにみっちりしぼられてきな。それじゃ!」

 

『え、ちょっ…』

 

 

夏休み最終日にもなって宿題をやらず遊ぶつもりだった千歌は、律の粋な計らいによりダイヤと1日勉強会に。電話を切った律は、カレンダーのピンク色のニコちゃんマークがついた日を見つめていた。カレンダーの横にはルビィと同じような髪型をした黒髪の女性の写真が飾ってある。それを見つめ、彼は涙した。

 

ニコちゃんマークのついた日…それは、彼の親友…矢澤 にこの命日なのだ。そしてその日が…今日なのだ。

 

彼はスーツに着替え、花束を持って車に乗りこみ、家を後にした。彼女が眠る場所まで1時間、車を走らせる。

 

その道中…彼女の事を何度も思い出し、その度に泣いていた。

 

 

彼女に初めて会った日の事。

 

彼女と笑った日の事。

 

彼女に怒られた日の事。

 

彼女と泣いた日の事。

 

 

そして…彼女を亡くした日の事。

 

 

にこは自分を庇って亡くなった。自分のせいで亡くなった。彼はそう感じていた。今の彼の心は、哀しみと罪悪感で埋め尽くされていた。きっと誰も許してはくれないだろう。そう思った。

 

 

そうこうしている間に目的地に着いた。窓の外には1本の木と墓石が。ここに彼女が眠っているのだ。彼は一瞬躊躇ったが、車を降り、墓石の所へ向かった。

 

その時、優しい風が吹いてきた。彼を包み込むような優しい風が。彼は思った。にこが来ているんだと。

 

彼は墓石の前で手を合わせ、話し出した。

 

 

「にこちゃん、久しぶり。ようやく会えたね。」

 

 

どこからも返事はないが、彼には聞こえていた。にこの声が。

 

 

「…ははっ、全くその通りだよ。待たせすぎちゃった。ごめんね。」

 

 

律は墓石を綺麗にしながら話を続けた。

 

 

「にこちゃん…私、スクールアイドルをまた手伝う事になったよ。そこの学校音ノ木坂とよく似ててさ、廃校寸前なんだよ。そこに9人のスクールアイドル…本当にμ'sそっくりだよ。リーダーはアホだし。…これは本当。夏休みの宿題を今日まで放ったらかしてるくらいだから。」

 

 

彼の耳には、にこの笑い声がはっきり聞こえてくる。

 

 

「でもね、私思ったんだ。この子達を何としてでもラブライブに連れていきたいって。学校を守りたいって。何でかは分からないけど…もしかしたらμ'sの皆のおかげかもね。だから見ててよ、にこちゃん。絶対ラブライブ優勝させてみせるから。そしたら…私もにこちゃんの所へ行くから。」

 

 

律は桔梗の花を供え、もう一度手を合わせる。

 

 

「じゃ、またね。」

 

 

彼が帰ろうとした次の瞬間である。

 

 

「…やっぱり、律くんだ。」

 

 

そこには、μ'sの小泉 花陽と星空 凛がいたのだ。

 

 

「律くん、覚えてる?私達の事。」

 

「うん…覚えてるよ。かよ姉、凛ちゃん。」

 

「…今までどこをほっつき歩いてたんだにゃ!?凛達、すごく心配したんだよ!!」

 

 

凛に肩を掴まれ、揺さぶられる。

 

 

「…心配してくれるのは有難いけど、その必要は無いよ。だって…にこちゃんは私が死なせたようなものだもの。」

 

「何言ってるんだにゃ!?そんな事ない!」

 

「その後に記憶を失ってるんだからどうしようもないよね、私。人を死なせておきながら…。皆に許してもらおうとは思わないよ。大切な友達を…」

 

 

その瞬間、頬に強い痛みが走った。花陽が思い切り叩いたのだ。

 

 

「にこちゃんは律くんのせいで死んだんじゃない。にこちゃんは…愛する家族の為に、自ら命を捨てたんだよ…。」

 

「…え?」

 

「にこちゃん言ってたの。

 

 

『もしアイツに命の危険が及ぶなら、こんな命捨ててやるわ。にこにとってアイツは親友じゃない…もう家族同然なの。なんでそう思ったかは分からないけど、ほっとけないのよね、アイツ。』

 

 

…って。」

 

「…私の為に命を捨てるなんて…バカヤローだよ…。もっとにこちゃんはこの先幸せになれたはずなのに…」

 

「にこちゃんはね、律くんと一緒にいる事が幸せだったの。」

 

「私といる事が…幸せ?そんなふざけた事ある訳…」

 

 

律が言葉を続けようとした瞬間、風が急に強くなり、また彼女の声が聞こえてきた。前よりも鮮明に、はっきりと強く。

 

 

 

 

 

そして…彼は涙を流した。

 

 

 

 

 

「バカヤローは…私の方だったか…。」

 

 

彼はまた墓石の前まで歩き、ゆっくりと座った。

 

 

「ありがとう、にこちゃん。あなたの思い、ちゃんと受け取ったよ。にこちゃんが繋いでくれたこの命、無駄にはしない。にこちゃんの思いは、私の中で生き続けさせる。」

 

「律くん…!」

 

 

彼は振り向き、2人に頭を下げた。

 

 

「2人とも、ありがとう。にこちゃんと話が出来たよ。」

 

「うん!凛達にも聞こえてたよ。にこちゃんの声!」

 

「大丈夫。律くんなら。なんてったって、私達の自慢のマネージャーだもん!」

 

「…じゃあ、3人のために歌を歌わせてもらうよ。聞いてくれる?」

 

「もちろん!」

 

「にこちゃんもいいよね?」

 

 

凛の呼び掛けに答えるように風が優しく吹いた。

 

 

「ありがとう。聞いてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ETERNAL LOVE。」




桔梗の花言葉は「永遠の愛」

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