昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
プラエの牽制、ネプギアの攻撃、ユニの援護攻撃、ロムとラムの魔法の連携で徐々にフェンリルを追い詰めていく女神候補生達。
「……グゥゥゥ……」
ネプギア達に翻弄されて、悔しそうな呻き声を上げるフェンリル。
「どう? ネプギア」
ユニは通信でネプギアの現状を確認する。
「問題ないよ。けど、やっぱりタフだし、それにかなり怒ってるから油断できないかも」
ユニの質問に落ち着いて答えるネプギア。
モンスターは怒ると攻撃力とスピードが大きくアップする。
その為、戦闘を優位に進めていても油断はできない。
現在、ネプギアは攻撃と回復を繰り返し、ヘイトコントロールをしながらHPゲージを五割~七割を維持して戦い、その後ろでプラエが牽制とアイテム役、ユニが援護射撃、ラムが攻撃魔法、ロムが補助魔法とヘイトに気を付けながらネプギアを回復していた。
「それと、少しMPが少なくなってきたかも……」
ネプギアは繰り返しヒールを使っている為に、徐々にMPが減少して来て、現在のMPゲージは残り三割程である。
「わたし達のMPもちょっと減ってきたわ」
「疲れた……(へとへと)」
ロムとラムが通信に割り込んで、自分たちもMPが残り少ないことを伝える。
ネプギア程ではないが、彼女達のMPゲージの残りは五割以下になっていた。
「MPドリンクなら、プラエが持ってるよ」
プラエがそう言うが、「いえ、そろそろケリをつけた方がいいわね」とユニはあごに手を当て考える仕草をしながらそう言うと、「敵のHPは分析できたの?」と続けてネプギアに質問した。
「うん、推定5万。今は3万ぐらいダメージを与えてるよ」
ネプギアがユニの質問に答える。
彼女の頭の左側に付いている十字の髪飾り【脳波コントローラー】には高性能なカメラが内蔵されている。
それにより、戦闘を続けていく内に敵の観察を行い、データを蓄積していく。
蓄積したデータは無線でNギアに送信して、Nギア内のアナライズ機能で解析し、ブレイン・マシン・インターフェイスを通じてネプギアの脳に直接送られてくるのだ。
「そろそろ、相手の底力にも気をつけなきゃいけないわね」
ネプギアの答えにユニが考え込む。
ガッツによるパワーアップが出来るのは、ネプギアだけではない。
モンスターにもその能力が備わっているのだ。
先のギガベーダーやハエトリソーは、ガッツが発動する前に一撃で倒してしまったから発動しなかったのだ。
決め手のないまま、ボスモンスターにガッツを発動されると泥仕合になる可能性どころか逆転すらされてしまうかもしれないのだ。
「よし! みんな、一気に決めましょう。まずは部位破壊からよ」
ユニが通信で提案をしてくる。
【部位破壊】とは特定の部位にダメージを与え、それを破壊する事。
ゲイムギョウ界のモンスターは、部位破壊をすると基本的には戦闘能力がダウンする。
他にも貰える報酬が増える。
「うん、わかった。Nギアの解析では破壊可能な部位は、頭、右前足、尻尾って出てるよ」
ネプギアはユニの提案をOKすると、同時にNギアで解析した破壊可能な部位を伝える。
更にNギアに入っている分析データを、ユニ達に送るよう、ブレイン・マシン・インターフェイスでNギアに指示をする。
「フォーメーションを変えるわ。まずはアイツの動きを止めるわよ」
「オッケー! 任せてよユニちゃん」
ユニの指示にラムが了解の合図をする。
同時にユニは銃を操作し特殊弾モードに変更すると、ブレイン・マシン・インターフェイスを使って弾丸を呼び出す。
ユニは、その弾丸を特殊弾専用の装填場所にセットする。
特殊弾とは名前の通り、特殊な効果を持った弾で、主に一発ずつ装填して発射する。
「ボルボルトサンダサンダラーバリバリシア……」
ユニがスコープを覗いて狙いを定めている頃に、ラムは呪文の詠唱を始めていた。
「痺れなさい! パラライズショット!」
ズキューン!
ユニの銃が火を噴くとフェンリルの体に弾丸が命中する。
「パラライズマジック!」
バリバリッ!
同時にラムが魔法を発動すると、ラムの杖から電撃が発射されフェンリルに命中する。
「ギャウンッ!」
ダメージは合計で400程度と低めだが、ダメージを受けたフェンリルが痙攣して動きを止める。
【麻痺】状態である。
麻痺は動きを止める状態異常で、麻痺の状態異常量を蓄積させることで発動する。
ユニの放った【パラライズショット】は、麻痺の状態異常を持った銃弾。
ラムが放った【パラライズマジック】も、同じく麻痺の状態異常を持った雷属性の魔法。
状態異常になるかどうかは、蓄積された状態異常量が相手の抵抗力を上回る必要がある。
今回はユニとラムの同時攻撃により、一気に麻痺の状態異常が蓄積し、フェンリルの麻痺抵抗力を上回り麻痺が発動したのである。
このようなユニの特殊弾とラムの状態異常魔法のコンビネーションは優秀で、同時に素早く当てることで、あっという間に状態異常を発生させることができる。
状態異常は有効な手段だが、使うたびに相手にも抵抗が付いて抵抗力が上がってくる。
その為、いざという時に効かなくなるので、ここぞという時に使うべきである。
「アタシの腕の見せ所よ!」
フェンリルの動きを止めたことで、ユニは銃を一旦しまい前方に走り出してフェンリルとの距離を詰める。
長距離の狙撃では部位破壊に向いた強烈な弾が使えない為である。
ピンポイントに狙えるスナイパーにとって、部位破壊は重要な役目である。
遠くで援護射撃をするだけがスナイパーではないのだ。
ちなみにユニからフェンリルまでは3キロメートル程離れているが、彼女は女神である上に毎朝ランニングで鍛えているので、ニ~三分で到着することができる。
「ラムちゃん、プラエちゃん足止め重視に!」
ネプギアがラムとプラエに指示を飛ばす。
「わかったわ! いくわよプラエ」
ラムがプラエに向かって言うと、「うん、ラムさん」とプラエが頷く。
ラムは素早くフェンリルの右正面に行き、プラエはフェンリルの左正面に行って、「「クルクルフルフリーザーフローズン……」」と呪文を唱える。
「「アイスホールド!」」
ラムとプラエが魔法を唱えると、フェンリルの足元が凍りつく。
ギガベーダーとの戦いで、イストワールが使ったのと同じ魔法である。
左右から仕掛けることで、相手の足元をまんべんなく凍りつかせたのだ。
「スワンプトラップ!」
続けてネプギアが魔法を唱える。
今度はフェンリルのいる地面が沼のようになり、両足の凍ったフェンリルは逃げることが出来ずに沈んで行く。
【スワンプトラップ】は、相手の地面を沼にして足元を不安定にして足止めする地属性の魔法。
「ナイスよ、三人とも!」
走って来たユニが、ロムの少し後ろに到着する。
そして、再び銃を構えると、今度は別の弾を呼び出して銃に装填をする。
「ユニちゃん、とびでるよ!」
膝撃ちに構えるユニに、攻撃力アップの補助魔法を掛けるロム。
ユニの銃が赤く光る。
「あんまり飛ばないけど、威力はあるわよー」
ユニがスコープを覗き込む。
「ユニちゃん、今だよ!」
前衛のネプギアが、ユニの為の射線を開ける。
「まずは尻尾を貰うわ!」
ユニは銃を動かして、レティクルの照準を尻尾に合わせる。
ズキューン!
銃から弾が発射され、見事に尻尾に着弾する。
ズズズズズキューーーーン!
弾は尻尾に張り付くと球状に膨れ上がり、その球から何発もの短いレーザーが四方八方に放たれる。
「ギャォォォン!」
フェンリルが悲鳴を上げると2,525ダメージが当たり尻尾に亀裂が入る。
この亀裂が入った状態が部位破壊の印である。
「グゥレイトォ! 流石は内蔵破壊弾ね」
【内蔵破壊弾】ラステイション防衛隊極東支部に伝わる秘伝の弾である。
当たった場所に張り付き、射程は短いが高威力のレーザーを連続発射し、集中的に破壊するため内蔵破壊弾と呼ばれている。
威力は抜群だが一発ずつしか撃てないのが難点である。
「ガアアアア!」
部位破壊をされたフェンリルは怒って、ユニに向けて大声を上げる。
麻痺は解けたようだが、凍りついた足元と地面の沼で上手く動けずによろめく。
「たあっ!」
更に、ネプギアが足止めにとフェンリルに切りかかる。
キン、カキーーン!
ビームソードとフェンリルの爪が競り合う。
その間に、ユニは排莢を確認すると、新しい内蔵破壊弾を込めてライフルを構える。
「第二射行けるわ」
ユニがそう言うと、「いいよ、ユニちゃん」とネプギアは素早くユニの射線を開ける。
「大喝采を聞かせてやるわ!」
ズキューン!
ライフルから内蔵破壊弾が発射され、今度の弾はフェンリルの右の前足に張り付く。
ズズズズズキューーーーン!
「グワァァァ!」
内蔵破壊弾の2,500以上のダメージで、フェンリルの右前足に部位破壊の亀裂が入る。
フェンリルはバランスを崩し前のめりに倒れ、沼に体半分が沈んでしまう。
「わー! 凄いユニちゃん!」
「凄い凄い(ぱちぱち)」
ロムとラムがユニの言ったように大喝采する。
「さあ、次でラストよ!」
ダウンしたフェンリルに対して、ユニは落ち着いて内蔵破壊弾をライフルに込めて、狙いを定める。
ズキューン!
内臓破壊弾が、フェンリルの頭部に命中する。
ズズズズズキューーーーン!
「アォォォォォン!」
フェンリルの雄叫びと共に、頭部の左側に亀裂が入る。
「やれた! すっごーい! こんなアタシを愛しちゃう!」
見事に三発で全部位を破壊したユニは、ウィンクしながら自分に褒め言葉を贈る。
「うん、私もユニちゃんのこと愛してるよ」
ネプギアがユニのノリに乗って答えると、「な、なに言ってるのよ!」と必要以上に慌てるユニ。
「え? 私変な事言った?」
首を傾げるネプギア。
「ユニちゃん、お顔が赤いよ?」
ユニの態度に首を傾げるロム。
「ユニちゃん、照れてる~」
ラムは指差して、からかう。
ユニとってネプギアは素直になれない自分の心を開いてくれた上に、気も合い趣味も合う唯一無二の親友である。
誰にでも分け隔てなく優しいネプギアに合わせて、少し距離を置いてはいるが本心はもっと仲良くなりたいのだ。
そんなネプギアに、その場のノリとはいえ愛してると言われて戸惑ってしまった。
「うるさいわね! さっさと決めるわよ!」
ユニは照れ隠しに大声を出す。
ネプギアは素直に、「うん!」と頷くとプラエの方を向いて、「プラエちゃん、時間を!」と叫ぶ。
「時間さん、ネプギアお姉さん達の時を速くして!」
プラエがそう言うと、「わぁ! すごい。全部が遅く感じる」とロムが驚き、「これなら、いつもよりガンガン攻撃を叩き込めるわ!」とラムが叫ぶ。
ユニが、「ネプギア、アレをやるわよ」と言うと、「うん、コード、スペリオルアンジェラス!」とネプギアが指示を出す。
「ウゥゥゥ……」
フェンリルは、部位破壊からのダメージから立ち直れずにふらついている。
更に一気に大ダメージを受けた上に、部位破壊をされたことで【恐慌】状態に陥っているようだ。
基本的にはモンスターはダメージを与えると怒るが、短時間で過度のダメージや連続の部位破壊などを受けると恐怖して、すくんでしまう。
この状態になると弱腰になる上に能力もダウンしてしまう。
「怯えろ! すくめ! ガッツの性能を活かせぬまま、倒されなさい!」
ユニは、更にフェンリルに向かって脅しをかけながら走り出すと、ネプギアの背後に着く。
「お願いユニちゃん!」
ネプギアがユニにそう言うと、ユニは頷いて、「近接援護するわ! ネプギア!」と答える。
ズガガガガガ!
ユニはライフルを連射モードに変えて、フェンリルに対して弾幕を張る。
先程言ったように、ネプギアが接近するのを援護する為だ。
ユニの弾幕を盾に、素早くフェンリルに接近するネプギア。
「たああっ!」
ネプギアの袈裟斬りがフェンリルを切り裂く。
「はあああ!」
続けて、返す刀で斬り上げ、袈裟斬り、斬り上げ、袈裟斬りのコンビネーションを連続するネプギア。
ユニは、そのすぐ後ろで援護射撃をする。
その弾は、前に居る筈のネプギアに一切当たらずに的確にフェンリルだけを撃ち抜く。
ネプギアの斬り上げと、ユニの援護射撃の度に攻撃の衝撃でフェンリルの巨体が浮いていく。
ズキューン!
ユニはライフルを単発モードに素早く変更すると、浮かび上がったフェンリルを撃ち抜く。
ドカーーン!
撃ち込んだ弾は榴弾であり、着弾すると同時に爆発を起こす。
爆発の衝撃で更にフェンリルが宙に浮く。
「はあっ!」
その爆発に合わせて、今度はネプギアが龍昇拳のように体全体を使って、思いっきり斬り上げる。
フェンリルの巨体が大きく上空に打ち上がる。
「そこっ! もらったーー!」
打ちあがった瞬間にユニは、ライフルの射撃モードをビームライフルモードにチェンジする。
キィィィン! ズキューーーーン!
銃口に短いエネルギーの溜めがされた後に巨大なビームが発射される。
上空に浮き上がったフェンリルをビームが貫く。
「アォォォォォン!」
ビームに焼かれながら絶叫を上げるフェンリル。
そのまま落下をすると、それに合わせてロムとラムが並んでフェンリルに向かってジャンプで飛び込む。
「次はわたし達よ!」
「がんばる!」
ロムとラムが魔法を唱えると、地面から無数の氷の棘が突き出し、落下したフェンリルを貫く。
「これで終わりじゃないわよ!」
「ついげき(どかん)」
ロムとラムがそう言うと、周囲に無数の氷のキューブが出現する。
「「えーーーい!」」
ロムとラムの声に合わせて、氷のキューブは容赦なく雨のようにフェンリルに降り注ぐ。
「ネプギアちゃん……! お願い!」
ロムはラムと向き合うと、両手を突き出す。
ネプギアが二人の間を駆け抜けると、ネプギアの体が光に包まれ、ビームソードが巨大化する。
ロムとラムの援護魔法でネプギアの攻撃力が大幅にアップしたのだ。
「はあああああ! 一閃!!!」
ネプギアは巨大なビームソードを縦切りに振り下ろす。
ズシャッ!
一刀のもとにフェンリルを真っ二つに断ち切る。
真っ二つなったフェンリルは合計で30,000以上のダメージを受けて、【Over kill】の表示と共に消滅する。
「ふぅ……」
消滅するフェンリルを見ながら一息付くネプギア。
【スペリオルアンジェラス】とは、女神候補生達が心と力と技を合わせて放つ高速かつ強力な連携攻撃。