昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
「貴様! そこでなにをしている!」
兵士を連れたアレスター家のレイが駆けつけてくる。
兵士達はレイの服より装飾の少ない中世の騎士のようなコートを着ている。
恐らくレイの部下の警備兵だろう。
「ちっ……もう来たか」
舌打ちをするボーク。
「貴様はボーク! 性懲りもなくまた女神様に背くか!」
レイはボークのことを知っているような口ぶりだった。
「背いているのは貴様だぁ! この地をアイリスハート様に還すのだ!」
ボークがややヒステリックにレイに叫ぶ。
「このプラネテューヌの創始者がアイリスハート様なのは否定しない。だが、今現在国民を護り導いて下さるのはパープルシスター様達だ」
それに対してレイは落ち着いて反論するが、ボークは更に興奮しながら、「だから、そのパープルシスターなどは三流以下の神……いや! アイリスハート様の立場を奪った魔女なのだ!」と叫ぶ。
「……貴様、言わせておけば」
レイは腰の剣に手を当てる。
ネプギア達を貶されて激昂したのも理由だが、脅しも意味も含まれている。
「ちょっと待ちなさいよ」
アイエフがレイとボークの間に割って入る。
その姿は冷静で落ち着いており、先程の怒りの影響はみられないようだった。
レイはアイエフの姿を確認すると、ひとまず剣から手を離す。
「誰だ貴様は!」
ボークが忌々しそうにアイエフを指を差す。
すると、アイエフは口の端を吊り上げながら【フッ】と鼻で笑うと、「貴方から言わせてみれば魔女を信仰する邪教徒って言ったところかしら?」と堂々と言い放つ。
「あー……魔女とか邪教徒ってワードが、あいちゃんの中二病スイッチを押しちゃったよ」
ネプテューヌは呆れながらアイエフの後ろ姿を眺める。
ネプギア達を庇いたい気持ちは本物だが、魔女や邪教徒と言う背徳的な言葉が中二病の彼女の琴線に触れたようだ。
「きぃぃぃ! 貴様もか! なぜアイリスハート様とパープルハート様の素晴らしさを理解しない!」
ボークは歯ぎしりをしながらアイエフを睨む。
その敵意に満ちた視線はアイエフを怯ませるどころか、背徳者を演じたい彼女を満足させるものだった。
「アンタこそ、ネプ子とプル子……じゃなくて、アイリスハートとパープルハートが何をしてくれたっていうのよ」
アイエフはボークに厳しい視線を返すと彼に質問をする。
「あの方々に仕えることこそ信者としての悦び! それ以上になにがある!」
ボークは両手を広げると、さも当然かのように言い放つ。
「それじゃあ、国政はどうなるの? モンスター退治は?」
アイエフはボークの態度に内心呆れつつも質問をする。
「そこは我々信者が高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応すべきことだ」
ボークは自信満々にそう言うが、「なによそれ? もう少し具体的に言えないの? 抽象的すぎるわ」アイエフは即座に切り返す。
「だから熟考を重ねた綿密な作戦を立てて……」
ボークがそう言って少し口ごもると、「要するに、行き当たりばったりということ?」とアイエフがズバリと斬り捨てる。
「その通りだ。ボークは弁舌だけの男だ。政治も軍事も何も分かっていない、過去プラネテューヌの重職だったが、いい加減な指示だけを飛ばすだけの質の悪い信者だった」
アイエフの言葉に合わせてレイがボークを糾弾するように言い放つ。
「なにおぅ! 私は軍事学校のエリートで……」
ボークは顔を真っ赤にして抗議しようとするが、話の途中でアイエフが、「なら、アンタの言う柔軟性や臨機応変で、モンスターと戦った兵士が死んだらどうするつもり?」と質問する。
「それこそ神に仕える者の名誉ある殉職! その魂はアイリスハート様とパープルハート様の元に召され永遠の安息を約束されるだろう!」
ボークはアイエフの質問に声高々にそう叫ぶが、即座に、「ふざけないで! 人に死を強いる指導者のどこに真実があるのっ! 寝言を言わないで!!」とアイエフが怒鳴り返す。
「な、何を言う……私は真理を述べているのだぞ……」
ボークはアイエフの剣幕に圧されて腰が引けてしまう。
「私の言うことに異論があるなら、弁舌はなく実績をもって示せば。他人に強要するようなことが自分にはできるかどうか、やってみたらどう?」
アイエフは畳み掛けるようにボークにそう言い放つ。
「やってみろとは……?」
ボークは狼狽しながらもアイエフに質問するが、アイエフは素早く街の外を指差すと「今すぐ、アイリスハートとパープルハートの為にモンスターと戦って来なさいよ」と言ってボークを睨みつける。
「む、無茶を言うな……」
ボークは逃げるように後ずさりながらそう言うと、今度はレイが、「前線にも立たず、安全な場所から指示していただけの貴様に何ができる」と責め立てる。
「あああああ! 違う違う違う! どいつもこいつも私の足を引っ張る愚鈍な奴らだからだ!」
ボークは両手で後頭部を抱えるとヒステリックな声を上げる。
「私の思う通りにすればゲイムギョウ界中が美しく華麗なアイリスハート様とパープルハート様の信者で溢れかえるのだ!」
ボークはかぶっていたベレー帽を掴んで地面にたたき落すと子供のように地団駄を踏んでそれを踏みつける。
アイエフとレイは冷めた目でそれを眺めていた。
「ふぅふぅ……あの魔女達を見てみろ! 地味で発展途上で美しさの欠片もない! 世の中に必要なのはアイリスハート様とパープルハート様のようは唯一無二の美しさだ!」
ボークは地団駄を踏むのに疲れたのか肩で息をすると、手を振り上げて再び女神候補生達を魔女と罵る。
「アンタが今安全かつ豊かに暮らせているのはパープルシスター様のおかげなのよ」
アイエフが冷静にそう言うと、レイも、「国民が女神様に求めているのは美しさだけではない。公平で平和な世の中と自分たちを護り導いてくれることだ。パープルシスター様の治世はそれを十二分に満たして下さる」とそれに続く。
「ちがぁーーーーう! あの魔女さえ来て余計なことさえしなければ、このプラネテューヌはアイリスハート様とパープルハート様の楽園だったのだー!」
ボークは再び地団駄を踏み絶叫を上げる。
「貴様、私達の為にパープルシスター様が身を粉にして下さったことを余計と言うか!」
レイは激昂して、再び腰の剣に手を当てる。
超次元に帰ってもなお神次元の仕事してくれるネプギアの姿をよく見ているレイにはボークの発言は我慢できるものではないようだ。