昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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#135 四女神会議

 ネプギアが開拓計画をするという会議から三日が経った。

 

G.C.2019年6月20日 木曜日。

 

先日と同じプラネタワーの会議室に、今度は九人の女性が集まって円卓を囲み椅子に座っていた。

 

ネプギアにネプテューヌ、イストワール、それにユニとロムとラムにノワール、他にも二人の女性がいる。

 

 

「みなさん、お集りいただきありがとうございます」

 

 

 まずはイストワールが一礼して口を開く。

 

 

「やー、みんなご苦労」

 

 

 ネプテューヌがそれに続き、右手をシュタッと上げると自分が目上の存在のように全員を労う言葉を掛ける。

 

 

「あなたの為に集まったんじゃないわ」

 

 

 即座にノワールが切り返す。

 

 

「はい、お約束のツンデレ台詞いただきましたー! 流石はノワール」

 

 

 ネプテューヌは右手の指をパチンと鳴らすとニヤニヤと笑う。

 

その様子は予想通りと言わんがばかりだった。

 

 

「本当にあなたの為じゃなくて、ラステイションの為なのっ!」

 

 

 ノワールは机をドンと叩きながら否定をするが、ネプテューヌはニヤニヤと笑うのを止めず、「そんなこと言ってー、本当は誘ってくれて嬉しかったんでしょー」とからかうように言う。

 

 

「そそそ、そんな訳ないでしょ! 女神の仕事だから仕方なくよ!」

 

 

 ノワールは必要以上に慌てて取り繕う。

 

少しは心当たりがあるようだ。

 

 

「あなた達はいつも騒がしいのよ」

 

 

 その横で茶色いショートヘアに白い大きなマフィンのような帽子を被ったネプテューヌと同じぐらいの背丈の女性が、ネプテューヌとノワールの騒ぎ声を迷惑そうに言う。

 

強気な印象を受けるノワールと違い、無表情で青い瞳を持つ彼女は冷静なイメージを受ける。

 

服は白いワンピース型のキャミソールを着て、同じく白い色のコートを羽織っていた。

 

背丈はネプギアより低いが、その落ち着いた雰囲気にはネプギアより年上の貫禄があった。

 

 

「もー、ブランはテンション低いなー。久し振りに女神が全員集まったんだから楽しくやろうよ」

 

 

 ネプテューヌは明るく言うが、ブランと呼ばれた女性はそれを無視するように小さな文庫本を読み始める。

 

 

「私もルウィーの為に仕方なく来てるのよ。あなた達の漫才に付き合ってる暇はないわ」

 

 

 ルウィーの為と言う彼女はルウィーの守護女神ホワイトハートであり、ロムとラムの姉でもある。

 

 

「でも、ネプテューヌの言う通り楽しいに越したことはありませんわ」

 

 

 ネプテューヌとブランの会話に金髪のロングヘアーの女性が割って入る。

 

青く柔和な瞳を持つ彼女は、包容力に満ちた大人の女性を思わせる。

 

オフショルダーの緑色のドレスには豪奢な金色の装飾が施されている。

 

身長はノワールと比べて更に一回り高く、更に胸はかなりの大きさだった。

 

雰囲気もそうだが、成人女性と言って問題無い大人の女性だ。

 

 

「そうだそうだー!」

 

 

 ネプテューヌも金髪の女性の言うことに乗ってブランに抗議する。

 

 

「ブランも広い心を持ちませんと」

 

 

 そう言うと金髪の女性は組んだ腕に乗せた豊満な胸を揺らすと、「……そこで胸を揺らす必要があるの?」とブランの眉が少し吊り上がり声色も少し変わる。

 

先述したように金髪の女性は胸が大きくグラマーであった。それに対してブランはお世辞にも胸が大きいとは言えない幼児体系であった。

 

 

「やっぱり、広い心は大きな胸に宿るものかなぁと」

 

 

 金髪の女性は余裕を持った笑みで言うと、ブランは机をドンと強く叩いて、「ベール! テメェ! 私の胸が小さいから心が狭いって言ってるのか!」と怒鳴り散らす。

 

ブランは普段は物静かだが、ストレスが溜まると性格が豹変する。特に気にしているスタイルの話になると沸点が低くなる。

 

ベールと呼ばれた金髪の女性は自分のプロポーションに絶大な自信を持っており、事あるごとに、ひけらかすので、ブランとベールはこの手の話で争いが絶えない。

 

 

「いやー、ブランもベールも催促みたいだね」

 

 

 ネプテューヌはブランとベールのやり取りに満足そうに頷くが、「お姉ちゃん、それを言うなら息災じゃないかな?」と間違えた言葉をしっかりネプギアに訂正される。

 

 

「でも、四女神がこうやって集まるのは久しぶりだねー」

 

 

 ネプテューヌはそう言って、しみじみと頷く。

 

四女神。

 

超次元の4国、プラネテューヌ、ラステイション、ルウィー、リーンボックスそれぞれの守護女神、ネプテューヌ、ノワール、ブラン、ベールを指してそう呼ばれている。

 

つまり、ベールはリーンボックスの守護女神グリーンハート。

 

この場にいるイストワールを覗く八人が超次元に住む女神全員である。

 

 

「みんな聞いてよー。この作品ってばわたしの扱いが悪いんだよー」

 

 

 ネプテューヌは不満そうにノワール、ブラン、ベールの三人の女神に愚痴をこぼし始める。

 

 

「少し食べすぎたぐらいで太ったり、仕事しないぐらいでいーすんやあいちゃんが冷たかったり、動画撮ったら炎上するとか、わたしってこんなキャラじゃないよね?」

 

 

 口を尖らせて抗議するネプテューヌだが、「「「それはギャグで言ってるの?」」」と三人の女神は口を揃えて即答する。

 

どうやら三人のネプテューヌに対する認識は同じようだ。

 

 

「えー! みんな冷たいよ。わたしって居るだけで主人公パワーで何でも解決しちゃうキャラでしょ?」

 

 

 ネプテューヌは三人に対して抗議するが、ベールは、「流石にそれは言い過ぎではないかしら?」と言うと、続けてブランも、「そんなチート能力今どきラノベでも流行らないわよ」と冷ややかな視線でネプテューヌを見る。

 

 

「主人公パワーとか言って、大半は私達が無理矢理ネプテューヌに巻き込まれるパターンじゃない」

 

 

 そして最後にノワールが腕組みをしながら呆れかえる。

 

 

「それに主人公なら、笑いをとる為に体を張るものよ」

 

 

 ブランが変わらず冷ややかな言葉でそう付け加えると、「わたし、ギャグマンガの主人公じゃないから!」とそれを必死で否定するネプテューヌ。

 

 

「ネプテューヌなら、ギャグマンガの主人公にピッタリですわ」

 

 

 ベールがそう言ってブランに同意すると、「あなたが高い所から落ちても無傷なのってギャグマンガ補正だと思ってたわ」とノワールも同意する。

 

 

「この作品はギャグじゃなくて【ねぷねぷ】だよ!ほら、ジャンルにだって【ねぷねぷADV】とか【ねぷねぷアクションRPG】とか【ねぷねぷマルチアクション】って書いてあるでしょ」

 

 

 ネプテューヌお得意のメタ発言。

 

確かに彼女達が出演している一部のゲームには何故かそういう個性的な表記がある。

 

 

「また、ネプテューヌが意味不明なこと言いだしたわ」

 

 

 ノワールは付き合っていられないと言わんがばかりに、お手上げのポーズをして首を横に振る。

 

 

「そもそも、ねぷねぷってどんなジャンルですの?」

 

 

 ベールは少し興味があるように口元に指を当てるとネプテューヌに質問する。

 

 

「よくぞ聞いてくれました!ねぷねぷとは、わたし中心で回ってる、わたし至上主義作品のことだよ。あ、もちろんベール達も出番あるよ、引き立て役がいないと主役が光らないからね」

 

 

 ネプテューヌはドヤ顔でベールに説明するが、ベールは呆れ果てた顔で溜息を漏らすと、「そんな作品辞退いたしますわ」とキッパリとそう言い放つ。

 

 

「あなたはどうしてそこまで自己評価が高いのよ?」

 

 

 ノワールは心底不思議そうに質問するが、「だって主人公だもーん」とネプテューヌはピースサインとウインクをしてポーズを決めて即答する。

 

 

「それよ! どうして自分が主人公だって思うのよ?」

 

 

 ノワールはそんなネプテューヌの態度を気にも止めずにネプテューヌをビシッと指差すと厳しく質問をするが、「え? それ説明が必要?」とネプテューヌはノワールを思いっきりバカにしたような態度で答える。

 

 

「くっ……いいから説明しなさい!」

 

 

 ノワールは怒りをこらえてネプテューヌに説明を促す。

 

 

「わたしってば、元気で明るく可愛らしく誰とでも仲良くなれる抜群のコミュ力持ったスーパーポジティブなキャラ!」

 

 

 ネプテューヌは元気よく身振り手振りで自己アピールしながら自信満々に言い放つ。

 

 

「しかし、変身後はクールでセクシー! しかも、ちょっとお茶目な一面も!」

 

 

 今度は後頭部に両手を当てて、腰をくねらせてセクシーポーズ決める。

 

 

「つまりギャップ萌えかつ幅広い需要に対応できる! だから、みんなわたしが大好き! アンチなんていない! と、言うことでわたしが主人公なのはコーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実!」

 

 

 最後に腰に手を当てて、胸を張ってドヤ顔を決め込む。

 

 

「空気読めずにウザ絡みする二重人格キャラじゃないの?」

 

 

 しかし、ノワールは冷たく突き放す。

 

ちなみにネプテューヌの変身後は性格がガラッと変わる上に、ネプテューヌ本人も変身中のことはよく憶えていないらしい。

 

ノワールはそれを揶揄して二重人格と言ったのだ。

 

 

「そーゆー根暗で陰キャラな思考してるから、いつまでもボッチなんだよ」

 

 

 ネプテューヌは【やれやれ】と言わんがばかりに首を振って答える。

 

 

「わたしをシンデレラなアイドルで言うと、本田美代と三つ葉杏と鷹鍵楓の最強無敵のユニットだよ! 全人類がファンになって、チケット倍率0.000000001%! 電池で動く人造人間メカの起動確立と同レベルだよ!」

 

「お姉ちゃん、チケット倍率って言うのは高いほど競争率が高いんだよ。百人中一人の場合が百倍ってふうに」

 

 

 ネプテューヌは大人気アイドルゲーム【アイドルマイスターシンデレラストーリーズ】の人気キャラの名前を持ち出して自分の凄さを表現するが、チケット倍率をガチャの最高レアの排出率か何かと勘違いしているようで、ネプギアにやんわりとツッコミをされる。

 

 

「じゃあ、五千兆倍!」

 

「世界の人口が七十七億人だから、一人しか入れない客席に全人類が応募しても五千兆倍にはならないよ。それに五千兆人も人が居たら地球がすし詰め状態になっちゃうよ」

 

 

 ネプギアのツッコミに言い直すネプテューヌだが、またもネプギアのツッコミを受けてしまう。

 

 

「とにかく! わたしは不動の主人公!! 人気投票やったら、一位から十位までわたしで埋まっちゃうぐらいの主人公オブ主人公! 神に感謝、妥当な順位ですね、だよ!!」

 

「お姉ちゃん、投票って言うのは一人一枠しかないんだよ」

 

 

 ネプテューヌが人気投票でお決まりの某鼻毛漫画のネタを持ち出すが、ネプギアには通じなかったらしく丁寧に一人で複数枠を持てないことを伝える。

 

 

「ううっ……真人間を相手に噛み合わない会話をしているオタクの気分……ネプ子さんのライフはとっくにゼロですよ……」

 

 

 ネプテューヌは古今東西様々なネタを用いて自分をアピールするものの、ネプギアの至極真っ当なツッコミの連続に精神的ダメージを受けたようだ。

 

 

「ご、ごめんね、なにか傷つけちゃった?」

 

 

 ネプギアは理由も分からずガックリと肩を落とし項垂れるネプテューヌに心配そうに声を掛ける。

 

 

「ネプギアは細かいよ~! こーゆーのはノリと勢いが大事なの!」

 

 

 ネプテューヌは顔を上げると不満そうに唇を尖らせる。

 

 

「そうなんだ……ごめんね、空気読めなくて」

 

 

 ネプギアは何も悪くはないのだが、ネプテューヌのことを尊敬している彼女は素直に謝ってしまう。

 

 

「姉妹漫才はそれぐらいにしてもらえるかしら?」

 

 

 ノワールは片方のツインテールをかき上げると不機嫌そうに言う。

 

 

「ネプテューヌ、そんなに私TUEEEEがしたいなら一人でやってちょうだい。私達を巻き込まないで、迷惑だわ」

 

 

 ブランはそう言うと話は終わりと言わんがばかりに文庫本のページをめくる。

 

 

「そうね、付き合うのも馬鹿馬鹿しい」

 

 

 ノワールはそう言うとそっぽ向いてしまうと、「時間の無駄ですわ」とベールも呆れ果てて話を切り上げる。

 

 

「ぶーぶー!」

 

 

 ノワール、ブラン、ベールと三者三葉に塩対応されて露骨なブーイングを飛ばすネプテューヌ。

 

 

「みんなして冷たいよー! 何かあった?」

 

 

 ネプテューヌはブーイングを止めると机に両手を置いて三人に詰め寄る。

 

 

「心当たりがまったく無いって訳じゃないでしょ?」

 

 

 ノワールは腕組みをしてネプテューヌを見つめるが、「え? なんのこと?」とネプテューヌは何のことだかサッパリ分からない顔をする。

 

 

「動画で私達のことを公然とディスたことよ」

 

 

 ブランは文庫本を読みながら冷静に説明をする。

 

三人の女神は謝りもせずに、いつものペースで話を進めるネプテューヌに辟易していたようだ。

 

 

「ああ、あのこと。まだ根に持ってるの? みんな心が狭いなー」

 

 

 しかし、ネプテューヌが謝るどころか呆れたように三人を見る。

 

 

「あなたねぇ! 怒り狂う信者達を抑えるのに私達がどれだけ苦労したと思ってるのよ!」

 

 

 ノワールは両手で机をバンッと叩きながら立ち上がると不機嫌そうに言う。

 

 

「いやー。めんごめんご、許してチョンマゲ」

 

 

 ネプテューヌは両手で頭の上にチョンマゲを作るような動作をしながら、軽いノリで謝る。

 

 

「テメェ! そんなフザケた死語で謝ってるつもりか!」

 

 

 本を読んでいたブランが豹変して握り拳で机をドンッと叩きながら怒鳴る。

 

 

(あうぅ……やっぱり皆さん、もの凄く怒ってるんだ……お姉ちゃん、どうして素直に謝れないのかな……お姉ちゃんらしいと言えばらしいけど……)

 

 

 ネプギアはノワールとブランを見ながら、ネプテューヌをフォローしようにも空気が険悪すぎて口を挟めずにいた。

 

ネプテューヌの明るく自信満々で強気な態度は、いつもネプギアに勇気を与えてくれるが、こういう時はしおらしく謝って欲しいと思ってしまう。

 

イストワールと他の候補生達も口を挟めず黙って事の成り行きを見つめている。

 

 

「罪を憎んで人を憎まずって言うじゃなーい」

 

 

 ネプテューヌはそんなブランの豹変も慣れた様子で受け流すと、いけしゃあしゃあと言い放つ。

 

 

「ネプテューヌにしてはまともなこと言ってるけど、それは止むを得ない事情があった上にキチンと罪を反省している人に当てはまるのよ。それに罪を犯した当人が言うことじゃないわ」

 

 

 ノワールはネプテューヌを厳しく睨みつける。

 

 

「反省してるってば~、なんなら今度はスライディングからのジャンピング宙返り土下座を見せてあげようか?」

 

 

 ネプテューヌはそう言うとスライディングの助走をつける為か部屋に端に移動する。

 

その姿は反省しているどころか、バク転などを見せつけて自慢したい子供のようだった。

 

 

「なんでこの子は素直にごめんなさいが言えないのかしら……」

 

 

 呆れ果てて頭を抱えるノワール。

 

 

「サルでも反省はできるのにね。これじゃあ、サル以下……いえ、以下ではサルに失礼ね。サル未満だわ」

 

 

 ブランは落ち着きを取り戻して、ネプテューヌをなじるように言う。

 

以下ではサルと同等の可能性もある為に、未満と言い直したのだ。

 

 

「不思議な事に申し訳ないという気持ちが一ミリもわいてこない!」

 

「なんだとテメェ!!!」

 

 

 しかし、ネプテューヌのあっけらかんとした切り返しに即座にキレてしまうブラン。

 

 

「だって、主人公ならこれぐらい許されるでしょ。友達の彼女を寝取っても全然OKなんだし。やめてよね……本気でケンカしたら、みんながわたしにかなうはずないでしょ!」

 

 

 ネプテューヌが平然とそう言うと、「ならやってみる!?」とノワールが挑発に乗り、ブランも「ボコにしてやんよ!」と殺気立って椅子から立ち上がる。

 

 

「まあまあ、ノワールもブランも落ち着いて」

 

 

 ベールは喧嘩腰のノワールとブランを宥めるようにそう言うと、「鳥頭のネプテューヌに対して数日前のことを責めても仕方ありませんわ」と諦めたように言う。

 

 

「そうそう。アルツハイマー型認知症かつ痴呆症のわたしにそんなことは無駄無駄無駄ァ! どれぐらい無駄かって言うと三十秒に渡って無駄無駄ラッシュしちゃうぐらい!」

 

 

 ネプテューヌはシュッシュッとシャドウボクシングの真似をするが、即座に「……って!わたし、そんなボケ老人じゃないよー!」とベールに抗議をする。

 

 

「わたくし、そこまでは言ってませんけど?」

 

 

 ネプテューヌの前のめりなノリツッコミにも慌てず対応するベール。

 

真面目なノワールとブランとは違い、ベールはややお茶目な一面を持っており、ネプテューヌに思考も近いので彼女の扱いも心得ている。

 

とは言え、ネプテューヌに比べれば十分真面目ではあるが…。

 

 

「感謝してほしいですわね。わたくしが止めに入らなかったら、主人公は主人公でもナイスなボートの主人公になってましたわよ」

 

 

 ベールが優雅に髪をかき上げてネプテューヌに感謝を求めると、「ええっ!? わたし、ブランにめった刺しで殺された挙句、精神病んだノワールに首ちょんぱされてボートで遊覧しちゃうの!」ネプテューヌは頬に両手を当てて顔を青くし物騒な展開を連想する。

 

 

「オイ! 何だその配役は!」

 

「誰が精神病むのよ!」

 

 

 ノワールとブランはそのネプテューヌの連想した展開に抗議をする。

 

抗議はするが先程のように殺気立ってはいない、ベールの横槍で毒気を抜かれたようだ。

 

 

 ちなみにナイスなボートと言うのは、18歳未満はお断りの【R18アイランド】で発売されたゲームの話である。

 

学園を舞台にしたほのぼのラブコメシチュエーションかと思いきや、話しが進むにつれて主人公を巡ってドロドロの愛憎劇が展開され【学園昼ドラもの】と呼ばる。

 

そして、アニメ化をされた際に主人公はネプテューヌの言うような凄惨な末路を迎える。

 

 

(今なら皆さんも話を聞いてくれるかも!)

 

 

 ネプギアはベールのお陰で険悪なムードが一瞬薄まったと感じて、勇気を出して立ち上がる。

 

 

「み、みなさん! お気持ちは分かりますけど、お姉ちゃんも悪気があった訳じゃないんです! 悪い人に騙されてあんなことしちゃったんです」

 

 

 ネプギアはそう言うと、神次元で出会ったボークのことと、それに乗せられたネプテューヌの話を三人の女神に話す。

 

 

「なるほど、あの動画はネプテューヌとプルルートの狂信者が指示したものなのね」

 

「ネプテューヌはお調子者ですから、少しおだて上げればコロっと騙されそうですわね」

 

「ブタもおだてりゃ木に登るとも言うしね……」

 

 

 ノワール、ベール、ブランと順々にネプギアの話に納得してくれたようだ。

 

その様子にネプギアはホッと胸を撫でおろす。

 

 

「もー! みんなしてヒドイなー。人のことをサルだの鳥だのブタだのって、桃太郎のお供じゃないんだよ」

 

「お姉ちゃん、落ち着いて。それにブタは桃太郎のお供じゃないよ」

 

 

 先程から動物と揶揄されて不満顔のネプテューヌをネプギアが優しく宥める。

 

 

「そんなに犬がお望みなら言ってあげる……今回の件は犬に噛まれたと思って早く忘れることにするわ……」

 

 

 そんな二人の様子を見ていたブランが静かに口を挟む。

 

 

「おお! ブランが珍しく知的なこと言ってる」

 

「あなたとは認識のズレがあるようね。私は常に知能派よ」

 

 

 茶化すネプテューヌに対して冷静に答えるブラン。

 

 

「それって脳味噌に血が上りやすいって意味で、血脳派ってことだよね」

 

「なんだとゴラァ! 人が水に流してやるって言ってるのに、ブッ飛ばされてぇのか?!」

 

 

 更に茶化すネプテューヌに対して、やっぱりキレてしまうブラン。

 

 

「確かにブランの言う通りね、ユニ達の手前もあるし、私も水に流してあげるわ」

 

 

 ノワールはブランに同調す形でそう言う。

 

妹達の前で、これ以上険悪な会話をしても見苦しいと思ってのことだろう。

 

 

「それにネプテューヌは単純でお調子者だから扇動とか催眠とか洗脳とか、そういう類の耐性全然なさそうだもんね」

 

 

 ノワールは呆れた目でネプテューヌを見ながら、付け加える。

 

 

「そんなことないってばー! わたしの鋼の意思は何者にも曲げられないよ!」

 

「鋼? 針金の間違いではなくて?」

 

「ネプテューヌなら催眠をかけようとして、自分でかかってしまうぐらいのお約束はやりそうね……」

 

 

 ネプテューヌはノワールに反論するが、すかさずベール、ブラン順々にツッコミを受けてしまう。

 

ネプテューヌ自身メンタルは強いのだが、おだてに乗りやすく気楽な性格であまり物事を深く考えないため、ひたすら褒めちぎる相手に騙されやすいのは確かである。

 

実際のところは、騙したとされるボーク自身は本気でネプテューヌを賛美して他の女神を貶めたからなのだが。

 

 

 ネプテューヌをからかう三人の女神の姿は、先程の塩対応とは違って明るい雰囲気だった。

 

 

「この話はもう終わりにしましょう。事情もよく分かったし、代わりに無償でネプギアのシェアエネルギー効率化システムを教えて貰ったし」

 

 

 ノワールは機嫌を直し、話を締めくくると、落ち着いて椅子に座る。

 

イストワールが言ったように先日のパナンジャングルで見せたシェアエネルギーの効率化の無償公表は効果抜群であり、イストワールの謝罪とこれの公表で三人の女神は事を穏便に済ませてくれたのだ。

 

 

「ところで、あれってどういう原理なの?」

 

 

 ノワールはネプギアに質問すると、「NG粒子とシェアエネルギーが結合することにより、シェアエネルギーが強化されることが発見されたんです。それを利用して効率化をしたんです」とネプギアが答える。

 

 

「なるほど……」

 

 

 ノワールがあごに手を当てて納得したように頷くが、「でも、シェアエネルギーが強化されるなら、効率化より単純な強化でも良かったんじゃないかしら?」と再びネプギアに質問する。

 

 

「それは私も考えましたけど、現時点の技術では難しいんです。NG粒子によるシェアエネルギーの強化をそのまま試すと、過負荷による体への負担がかなり大きいんです」

 

 

 ネプギアはそこまで言うと、Nギアを出して画面からホログラムを浮かび上がらせる。

 

 

「従来のシェアエネルギーの量でNG粒子を結合させると、一時的に約1.2倍の力を得ることが出来ますが、過負荷により約3分しか戦えなくなります」

 

 

 ネプギアが説明をすると、「……割が合わないわね」とノワールが渋い顔をするが、「でも、そーゆーリスクありのパワーアップってカッコよくない? 海王剣ーーー! とか言っちゃってさ」と気楽そうにネプテューヌが言う。

 

 

「お姉ちゃん、それだけじゃないんだよ。過負荷による後遺症で全身が凄く痛くなっちゃうんだよ」

 

 

 ネプギアが諭すように言うと、「え……どれぐらい?」ネプテューヌが不安そうに質問する。

 

 

「歯医者さんより痛いかも」

 

 

 ネプギアが真剣な顔で答えると、「ええっ!? それは嫌だよー! 歯医者キラーイ!」とネプテューヌが嫌そうに言う。

 

 

「実際のところはその程度じゃ済まないのよね?」

 

 

 ノワールが質問すると、「はい。ですから、効率化を優先で研究を進めたんです。実用化までのプログラム作成に少し手間取りましたが、ようやく完成しました」とネプギアが答える。

 

 

「お詫びとは言え、あんな画期的な発明をタダで貰ってよかったのかしら? プラネテューヌで独占すればゲイムギョウ界の勢力図が大きく変わったかもしれないのに」

 

 

 今度はブランが不思議そうな顔でネプギアに質問する。

 

プラネテューヌの最先端技術は時に世界のパワーバランスを崩すこともある。

 

以前にイストワールが開発したプロセッサユニットもそれに当たる。

 

ブランは今回の件もそれに値するとの見解のようだ。

 

 

「シェアエネルギーの効率化はゲイムギョウ界全体の繁栄に繋がります。だから、プラネテューヌの一国で独占してはいけないんです。それに全ゲイムギョウ界で研究をすれば私一人で研究するより良い結果が得られると思います」

 

 

 ネプギアは落ち着いてブランの質問に答える。

 

ネプギアはプラネテューヌが優位になるより、ゲイムギョウ界全体の発展を選んだのだ。

 

 

「まあ! ネプギアちゃん、なんて良い子なの! ぎゅ~」

 

 

 ベールはネプギアに素早く近づくと強く抱きしめる。

 

 

「べ、ベールさん苦しいです~」

 

 

 大きな胸で圧迫されて苦しそうな声を出すネプギア。

 

ベールは妹がおらず、事あるごとに女神候補生達を妹のように可愛がっている。

 

特に素直で真面目なネプギアがお気に入りで、隙あらば自分の妹にしようと企んでいる。

 

 

「本当に出来た妹ね」

 

 

 ノワールはネプギアの殊勝な態度に関心を示すと、「本当に血が繋がっているのかしら」とブランはネプギアとネプテューヌを見比べる。

 

 

「ヒドイなー! よく似たもの姉妹って言われるんだよ」

 

「どのあたりが?」

 

 

 ネプテューヌの抗議にノワールが真顔で質問する。

 

 

「髪の色とかー、瞳の色とかー、肌の色とかー」

 

「それは、見た目以外はまったく似ていないと言う認識でいいのかしら?」

 

 

 ブランはネプテューヌの言うことを冷静に分析する。

 

 

「やっぱりネプギアちゃんはわたくしの妹なのですわ!」

 

「「「それはない」」」

 

 

 さり気なくネプギアを自分の妹と主張するベールに三人の女神が素早くツッコミを入れる。

 

 

「皆さん、つれないですわ~、しくしく……」

 

 

 ベールは両手を目に当てて、わざとらしい泣き真似をする。


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