昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

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#08 時指

 ネプギアはプラエと手を繋いで老婆の家に戻りインターホンを鳴らす。

 

 

「お帰り。どうだったかの?」

 

 

 玄関を空けた老婆が質問すると、「大丈夫です。これで直りますよ」とネプギアは老婆を安心させるように言う。

 

 

「そっちのお嬢ちゃんは?」

 

 

 プラエに気付いた老婆が不思議そうに首を傾げる。

 

ネプギアは、「お姉さんを探しているそうなんです。おばあさんの時計を直し終わったら手伝ってあげようと思って」と簡単にプラエのことを説明する。

 

 

「そうなのかい? お嬢ちゃんは働き者だねぇ」

 

 

 老婆はネプギアに対して感心の声を上げると、今度はプラエの方を見て、「お嬢ちゃん、お菓子食べるかい?」と質問をする。

 

老婆は小さくて人形のように可愛らしいプラエのことが気に行ったようだ。

 

 

「……いいの?」

 

 

 プラエがやや遠慮気味に言うと、「いいよ、たくさん余ってるから、いっぱいお食べ」と老婆が微笑む。

 

 

「それじゃあ、その間に時計直しちゃいますから、プラエちゃんはおばあさんとお話してて」

 

 

 ネプギアはそう言うと、Nギアを取り出して、ポケットアプリを使い、先程ジャンクショップで購入した歯車と、自分用の工具を呼び出し手に取る。

 

プラエは老婆に別の部屋に案内され、お茶とお菓子をご馳走になっているようだ。プラエは老婆のことも気に入ったようだが、六本指は気付かれないように隠していた。

 

 

 それから十数分後……。

 

ネプギアは古時計の修理を終えて、その蓋を閉じる、

 

工具を片付けて、老婆の居る部屋に行くと、「直りましたよ」と老婆に伝える。

 

 

「本当かい?」

 

 

 老婆は嬉しそうに時計を見に来ると、「おお、ちゃんと動いておる」と動いている時計に感激の声を出す。

 

 

「よかったですね、おばあさん」

 

 

 ネプギアは自分のことのように微笑むと、「その時計さん、凄く長い間生きているんだね」とプラエが時計をまじまじと眺める。

 

 

「そうだよ。おじいさんが生まれた時に買って来たらしいよ」

 

 

 老婆が少し誇らしげにプラエに説明をする。

 

プラエはニッコリと笑うと、「……うん、おじいさんが居なくなって寂しいけど、これからはおばあさんと一緒に時を刻むって言ってるよ」と言う。

 

 

「そうかいそうかい。ありがとよ、お嬢ちゃん」

 

 

 老婆はプラエの言葉を本気で信じているわけではないが、彼女の励ましの言葉が嬉しくて、【うんうん】と頷きながら答える。

 

 

「それじゃあ、お代を……」

 

 

 老婆がネプギアの方を向くと財布を取り出す。

 

しかし、ネプギアは、「報酬はギルドからもらいますから、おばあさんは後でギルドから連絡が来たらお支払いをお願いします」と老婆に説明をする。

 

ギルドは基本的には成功報酬となっており、クエストが成功するとギルドが冒険者等に報酬を支払い、後日にギルドが依頼者に料金を請求する形になる。

 

 

「そういえば、お嬢ちゃん名前は?」

 

 

 老婆が思いついたようにネプギアに尋ねる。

 

ネプギアはややためらいながらも、「ネプギアです」と正直に答える。

 

すると老婆は驚いた表情になり、「おおう! 女神様だったとはこれは失礼しました」とかしこまる。

 

ネプギアはそんな老婆を見ながら、「そんなにかしこまらないで下さい。私は当然のことをしただけですから」と言う。

 

だが、老婆は両手を合わせて、「ありがたや、ありがたや……」とネプギアを一心に拝む。

 

 

「おばあさんの気持ち、ちゃんとシェアエネルギーになって伝わってきます」

 

 

 ネプギアは胸に手を当ててしみじみとそう言う。

 

シェアエネルギーは人々の信仰心から生まれ、その大きさや強さに応じて女神の力が左右される。

 

その為、老婆の強い信仰心が力になるのをネプギアは感じられるのだ。

 

これで彼女の信者がまた一人増えたことになるだろう。

 

 

「これは次の老人会で、みんなに話してあげないとねぇ」

 

 

 老婆が嬉しそうにそう言うと、「それじゃあ、私はこれで失礼しますね」とネプギアは一礼し、隣にいたプラエの左手を右手で優しく握ると、「プラエちゃん、行こう」と言う。

 

ネプギア達は老婆に玄関まで見送られ、ギルドへの帰路につく。

 

 

****

 

 

 

「……ネプギアお姉さんは女神様だったの?」

 

 

 プラエが不思議そうな顔でネプギアを見上げながら尋ねる。

 

 

「うん、まだ候補生なんだけどね」

 

 

 ネプギアが気恥ずかしそうに言うと、「女神様って、悪いモンスター達からみんなを守る凄い人なんだよね」とプラエが目を輝かせながら言う。

 

ネプギアは相変わらず恥ずかしそうに、「凄いのはお姉ちゃん達で、私はそんなに凄くないよ」と謙遜をする。

 

真面目で謙虚な彼女は、女神だからと言って自慢したり偉ぶった態度をすることがない。

 

むしろ、自分のような特徴のない子が女神なんて、おこがましいとすら思っているところがある。

 

 

「ネプギアお姉さんは凄いよ。プラエ、ネプギアお姉さんと一緒にいると、心がフワッとして胸がポカポカする。これ女神様の魔法?」

 

 

 プラエが不思議そうにネプギアに尋ねると、「それは好きな人と一緒にいるとなるんだよ。私もプラエちゃんと一緒にいると心が温まるよ」とネプギアがニッコリ笑いながら答える。

 

人を安心させて信頼させる。これは優しく穏やかで真面目なネプギアの人徳によるものだが、彼女はそれを当たり前のことだと思い特別視をしていない。

 

 

「そういえば、プラエちゃんは時計さんとお話が出来るの?」

 

 

 ネプギアが話題を変える。

 

先程、老婆の家で言ったプラエの時計と会話できるような発言、ネプギアはちゃんと信じており、どういうことなのかと本人に聞いてみる。

 

 

「時計じゃなくて、時間とお話が出来るの。プラエは時間とお友達なの。あの時計の側にあった時間が、おばあさんと時を刻みたいって言ってたの」

 

 

 ネプギアの問いかけにプラエは真面目な声で答える。

 

ネプギアも同じように真面目な顔で頷くと、「そうなんだ。プラエちゃんはどうしてそんなことができるの?」と興味深そうに質問を続ける。

 

 

「分からない。生まれた時から出来るの」

 

 

 プラエはそう言って首を左右に振ると、「姉様やあんみつは、この六本目の指のことを【時指(ときゆび)】って呼んでいて時間に干渉できる力があるって言ってるの」と説明を続ける。

 

 

「そうなんだ……時間と同じ十二本のある指が関係しているのかな?」

 

 

 ネプギアは頷いて自分なりに思ったことを言うと、「ところで、あんみつって誰のこと? お友達」と別の質問をする。

 

プラエは少し困ったように首を傾げると、口を開く。

 

 

「えっと、あんみつは、葛切あんみつって名前でプラエは友達だって思ってるけど、あんみつは自分のことをプラエに仕えるメイドだっていつも言ってる……」

 

 

 プラエは少し寂しそうに答える。

 

 

「大丈夫だよ。プラエちゃんが友達だと思ってるなら友達だよ。きっと、あんみつさんはお仕事があるからそう言ってるけど、本当にプラエちゃんのこと大事にしてるんだよ」

 

 

 ネプギアは優しく励ますように言う。

 

彼女としても何の根拠も無い訳では無く、素直で育ちの良いプラエを見て大事に育てられているんだなと思っての発言だ。

 

 

(やっぱり、一人で暮らしてるって訳ないよね)

 

 

 ネプギアは心のなかで呟く。

 

 

(多分、あんみつさんも心配してるだろうから、プラネタワーに戻って、いーすんさんとプロテノールさんのこと調べながら、探し人のクエストとかもチェックしてみよう)

 

 

 ネプギアは続けてそう考えるとプラエの願いである姉を探しつつ、保護者と思われるあんみつのことを調べることに決めた。

 

彼女がプラエに今まで保護者のことを尋ねなかったのは、プラエが真剣に姉を探しているという気持ちを最優先していた為である。

 

保護者の心配も分かるが、プラエも真剣なのだから、まずはそれに答えてあげよう。

 

その為に、保護者のことを聞くのは家に帰されると思わせてしまうので今まで聞かなかったのだ。

 

 

「……あのね、時指のことは本当は秘密なんだけど、ネプギアお姉さんいい人だからお話したの」

 

 

 プラエが顔を赤くして少し恥ずかしそうに言う。

 

六本目の指のこともあまり隠そうとしなかったし、時間のことも重要な秘密であろうが、彼女はネプギアのことを相当気に入ったらしく素直に話してしまったようだ。

 

 

「うん、ありがとう。じゃあ、私も秘密にしておくね。誰にも言わないよ」

 

 

 ネプギアもその事に気付いており、プラエの信頼に応えるように優しく言いながら力強く頷く。

 


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