昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
ひよこ虫を退治してクエストを達成したネプギアはプラエの手を引いてギルドへ向かっていた。
「すごーい。ネプギアお姉さんは本当に女神様なんだね。強いし、いっぱいの人に好かれてる」
暫くしてプラエが興奮しながら言う。
しかし、ネプギアは、「みんなが私を信仰してくれるから、みんなを守る力が貰えるんだよ。わたし一人だけが凄いんじゃないの」と落ち着いて声で答える。
ネプギアは子供の世話をしたことがあるので、子供は基本的に強い人が派手で自信満々の態度を好むのは知ってはいるが、彼女の謙虚さは子供の前でも失われない。
しかし、プラエはネプギアの言葉に少し困ったような顔をする。
(ちょっと失敗しちゃったかな……せっかく褒めてくれたのに)
ネプギアは内心でそう思う。
見せかけだけでも、そういう態度をとった方が人々も安心するし、子供が喜ぶとは分かっていても、真面目過ぎてそれが出来ないのだ。
彼女自身もそういう柔軟さが無い自分の性格を少し自己嫌悪していたりする。
「ネプギアお姉さんはこんなに凄いのに、何で自慢しないの?」
プラエが心底不思議そうな顔で小首を傾げる。
ネプギアの態度に不満があるようではなく、本当に不思議なようだ。
「うーん、そういう性格だからかな? あと、私って調子に乗るといい事ないから出来るだけ自重してるの」
プラエがガッカリしてないことに少し安心したネプギアは自分なりの考え方を彼女に伝える。
プラエは相変わらず不思議そうな顔で、「調子に乗るといいことないの?」と尋ねる。
「私はね。お姉ちゃん達はその勢いで何でもできちゃうけど、私はダメみたい」
ネプギアが続けて質問に答える。
彼女の姉であるネプテューヌを始めとする守護女神は強気でテンションが高く、勢いに任せて無理難題もこなしてしまうことが多い。
対してネプギアは純粋さからくる感情的な面はあるものの、基本的には冷静な彼女は無理難題に挑む前に、どうしても理知的に分析をして慎重な行動を取ってしまう。
「どんなふうにダメなの?」
プラエが更に質問を続ける。
ネプギアは眉を八の字にして苦笑いをして困ってしまう。
(うーん……これを話すのは少し恥ずかしいんだけど)
ネプギアは心の中で呟く。
説明するには、自分の失敗談を話すことになるので、少々恥ずかしいのである。
(でも、プラエちゃんも自分の秘密を話してくれたんだし……)
ネプギアはそう思いながら、ちらりと左腕の時計見る。
時計は十一時五分を示していた。
(お昼にはまだ時間はあるし、ギルドで調べてもらってるプロテノールさんの件もまだ時間かかるだろうから、少しお話しする時間はあるかな?)
そう判断したネプギアは、「少し長くなるけどいいかな?」とプラエに問いかける。
プラエは素直に頷くと、「うん、ネプギアお姉さんのお話聞きたい」と即答する。
「それじゃあ、あっちの公園でお話しよっか?」
ネプギアが今歩いてる方向とは別の方向を指差すと、プラエが、「うん」と頷く。
****
ネプギアとプラエが向かった先はプラネテューヌの中央公園。
綺麗に整備された芝生と木が並び、爽やかな草木の匂いがする。
中央には大きな噴水があるプラネテューヌ市民の憩いの場だ。
お昼前ということもあり人はまばらで、ネプギアは噴水の前の日当たりの良いベンチを指差すと、「あそこでお話しよっか?」と言う。
プラエが、「いいよ」と頷くと二人はベンチに移動する。
ベンチに着いたネプギアは、「ちょっと待ってね」と言うとセーラーワンピのポケットから白いハンカチを取り出す。
ネプギアはハンカチでベンチの汚れを払うと、そのハンカチをベンチに敷く。
「ここに座って」
ネプギアがハンカチを敷いた場所にプラエを座らせると、プラエはニコニコと微笑む。
高級そうな服が汚れないようにとのネプギアの些細な気遣いがプラエには嬉しかったようだ。
ネプギアはプラエの隣に座ると、「今日はあったかくて気持ちいいね」とプラエに話しかける。
プラエは空を見上げながら、「うん、あったかい」と目を細める。
「プラエちゃんは犯罪組織マジェコンヌって知ってる?」
ネプギアがプラエに質問をすると、プラエは【ぷるぷる】と首を左右に振り、「知らない」と答える。
「簡単に言うと、人の物を盗む悪い人達なの。今から十年前その人達のせいでゲイムギョウ界はめちゃくちゃにされちゃったの」
ネプギアが簡単に犯罪組織の説明をすると、プラエは興味深そうにそれを聞いている。
ネプギアはプラエが話を聞いているのを見ながら、「私はその犯罪組織に負けて捕まったお姉ちゃん達を助ける為に友達と協力して旅をしてたんだ」と話を続ける。
「色々あったけど、旅は順調に進んで、私も少し自信が付いて来た時に、調子に乗って失敗しちゃったの」
ネプギアは少し恥ずかしそうに眉を八の字にする。
「リーンボックスって国で、教祖に変装した犯罪組織の人に私が凄く優秀で噂になってるっておだてられたら、その気になって一人で強いモンスターに戦いを挑んじゃったんだ」
ネプギアが少し自嘲気味に話を続ける。
プラエは少し意外そうな顔をして、「それでどうなったの?」と質問する。
ネプギアは相変わらず恥ずかしそうな顔で、「全然敵わなくて、友達に助けてもらったの」と答えると苦笑いする。
「ネプギアお姉さんがそんなことするなんて、意外」
プラエはポカンとした顔でネプギアを見る。
ネプギアは照れくさそうに、「私って、よくしっかりしてるって言われるけど、全然そんなことなくって、周りの人に助けてもらったり、いっぱい失敗したりしてるんだよ」と答える。
「ネプギアお姉さんがいっぱい失敗するの?」
プラエはまたもポカンとした顔でネプギアを見る。
出会ってから優しくて頼りがいがある上に女神であった女性が失敗ばかりというのが信じられないようだ。
「私、機械をいじるのが好きで色々作ったりするんだけど、それも成功より失敗の方が多いんだよ」
ネプギアはそう言うと、「何度も何度も失敗して、数えられないぐらいのトライアンドエラーを繰り返してようやく成功するの」と続ける。
そして恥ずかしそうに右手の人差し指で頬を掻くと、「女神なんて言われてるけど、私はほとんど普通の女の子と変わらなくて、お姉ちゃん達みたいなスーパーマンじゃないの」と言う。
「ごめんね。少しガッカリさせちゃったかな?」
ネプギアが申し訳なさそうに謝ると、プラエは激しく首を左右に振って、「そんなことない」と即答する。
更にプラエは、「もっと、ネプギアお姉さんの話聞きたい」と願い出る。
「でも、そろそろお昼の時間……」
ネプギアがそう言って左腕の腕時計を見ると、時計は十一時十五分を示している。
ネプギアは不思議そうに首を傾げる。
彼女の感覚では先程時計を確認してから、三十分近くは経っているだろうと思ったのに、その三分の一しか過ぎていないのだ。
(おかしいな……そんなに急いで話したつもりはないのに……)
ネプギアがそう思っていると、「時間ならまだあるよ」とプラエが言う。
しかし、その直後にプラエは、「こほっこほっ……」とせき込んでしまう。
「大丈夫!?」
ネプギアはとっさに両手でプラエの両肩を持つ。
プラエはやや辛そうな顔をしているものの、「大丈夫だよ。お話して」と再びネプギアにお願いをする。
ネプギアは数秒考えた後に右手をプラエの額に当ててる。
「あっ……」
プラエはそう呟いて恥ずかしそう頬を赤く染める。
ネプギアは少し安心したように、「お熱はないね」と言うと右手を引っ込めて、今度はポケットの中に入れると、あめ玉を一つ取り出す。
「のど飴だけど、舐める?」
ネプギアがプラエに質問すると、プラエは返事の代わりに恥ずかしそうに小さく口を開ける。
ネプギアは少し戸惑うものの、プラエの可愛らしいお願いに【クスッ】と微笑むと、飴の包装を剥がして、右手であめ玉をプラエの口の中に入れる。
「おいしー」
プラエが嬉しそうに飴を舐めると、「それじゃあ、もう少しお話しよっか」とネプギアが言う。
プラエは飴を舐めながら、「うん」と元気よく頷く。