昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
「プラエ、何したらいい? プラエ、ネプギアお姉さんの為なら何でもするよ!」
プラエが元気よくそう言うと、「気持ちはわかるけど、今日は休んでなきゃダメだよ」とネプギアがたしなめるように言う。
続けてNギアでアナライザーを起動してプラエを再び解析すると、Nギアにプラエの状態が映し出される。
NAME:プラエ
ELEMENTAL:ICE
CLASS:エスパー
LV:1
HP:150/150
MP:200/200
ST:25/50
CONDITION:FATIGUE【LV1】
ネプギアは先程と比べて、クラスが判明したことと、スタミナが半分まで回復し、ファティーグのレベルが下がっていたことに、「ほっ……」と安堵のため息をつく。
「今日一日休めばファティーグも治ると思うから、ネプギアンダムと一緒にゆっくりしてて」
ネプギアが優しい声で言うと、「……うん」とプラエは素直に頷く。
「マスター、オショクジヲトッテクダサイ。アト10プンデ、ハングリーノバッドステータスガフヨサレマス」
今まで黙っていたネプギアンダムがネプギアに言う。
その声は機械的ではあったが、ネプギアを心配するように聞こえる。
「あっ……、ごめんね。プラエのせいでご飯遅くなっちゃったよね」
プラエが申し訳なさそうに小さくなって謝ると、「今から食べれば全然平気だよ」とネプギアが優しく微笑む。
「プラエサマハワタシニマカセテ、ハヤクオショクジヲ」
ネプギアンダムがそう言うと、「ありがとう、ネプギアンダム。それじゃあ、食べてくるね」とネプギアがプラエとネプギアンダムに小さく手を振って部屋を出ていく。
プラエとネプギアンダムが手を振り返すと、ネプギアはゆっくりと部屋のドアを閉める。
「お姉ちゃんといーすんさんは食べたかな?」
ドアを閉めたネプギアはそう呟くと、テレビとゲーム機が置いてある女神用のリビングに向かう。
****
「ネプテユーヌさんっ!」
ネプギアがリビングの扉を開けると同時に叱りつけるような大きな声が聞こえてくる。
声の発生源は部屋の中で浮いているイストワールのようだ。
「ちょっと、聞いているんですか!」
イストワールが再び怒号を向けた先にはネプテユーヌと呼ばれた小柄な少女がテレビゲームに夢中になっていた。
髪は紫色で、ショートカットだが前髪の両サイドだけ首の辺りまで伸ばしていて、全体的に癖あって跳ね上がっている。
頭にはネプギアと同じ十字型のゲームコントローラーのような髪飾りを左右に二つして、瞳の色は紫色。
肌はネプギアと同じ薄橙色だが、ネプギアに比べると僅かに濃く、良く言えば健康的に見える。
身長は140センチ程度で、白い生地に紫色の模様が入ったパーカーを着て水色と白のストライプのニーソックスをはいていた。
パーカーがワンピースのようになっているのでズボンやスカートの類は穿いていない。
ある意味刺激的な姿であったが、何故か違和感はなかった。
そのネプテユーヌはイストワールの怒号を意にも介せず、ゲームのコントローラーを握りしめ、顔もゲーム画面に釘付けである。
「今日が期限のお仕事はどうしたんですか!」
なおもネプテューヌに詰め寄るイストワール。
小さいながらも浮いているので、その姿はネプテユーヌの顔の真横まで迫る。
「よっ! ほっ! たーーー!」
しかし、ネプテューヌはイストワールの問いかけにも、いかにも【聞いていませんよ】と言わんがばかりにテレビゲームに向けて掛け声を上げる。
そんなネプテユーヌの態度に、イストワールは怒りでわなわなと肩を震わせる。
「まあまあ、いーすんさん」
怒り心頭のイストワールとネプテユーヌの間にネプギアが割って入る。
「ネプギアさん」
イストワールはネプギアの存在を確認すると少し表情が和らぐ、怪我もなく帰ってきたのが嬉しいのだろう。
「お姉ちゃん、やる時はやる人ですから、その時が来たらキチンとやりますよ」
まずはネプテューヌを擁護するネプギア。
何度か前述はしているが、ネプテューヌを【お姉ちゃん】と呼ぶネプギアはネプテューヌの妹。
身長140センチ台の小柄なネプテューヌに対して150センチ台のネプギア。
落ち着いた雰囲気のあるネプギアに対して子供っぽいネプテューヌ。
どうみても姉妹逆なのだが、ネプギアが妹である。
「やる時とかその時とか、一体いつですか!」
ネプギアのフォローに対して、食ってかかるイストワール。
「えーと……、世界の危機とかにはちゃんと立ち向かってくれますし、ほら! この前の転換期を含めた一連の騒動も乗り越えられたじゃないですか」
イストワールの剣幕に圧されながらも、何とかしてネプテューヌを庇おうとするネプギア。
「女神様は用心棒とは違うんです! 平和でもやるべきことはいっぱいあるんです!」
だが、イストワールには焼け石に水どころか火に油を注ぐ結果になってしまっていた。
イストワールに予想以上の反論を受けて小さくなってしまうネプギア。
そして、我関せずの顔でゲームを楽しむネプテューヌ。
こう見えてもネプギアの姉であるネプテューヌは守護女神であり、このプラネテューヌの守護者であり統治者なのである。
「私は女神として最低限の責務を果たして下さいとお願いしているだけなんです!」
なおもネプギアに食ってかかるイストワール。
かなりストレスが溜まっているようで顔が真っ赤であった。
「それは分かりますけど……」
ネプギアはイストワールの剣幕に押されて続け、もう何も言えなくなっていた。
要はイストワールの言うことは全て正論であり、反論の余地がないのだ。
国や国民たちを守り導く守護女神、その仕事はゲイムギョウ界にとって非常に重要なもの。
イストワールはその仕事をせずに毎日遊んでいるネプテューヌを教祖として諫めているのである。
確かにネプギアのフォローするように、ネプテューヌはゲイムギョウ界に大きな事件があった時には、他の三国の女神やネプギア達女神候補生達と協力しそれを退けている。
「それを毎日毎日遊んでばかり! 書類の決裁とかモンスター退治なんて、もう山盛りなんですよ!」
しかし、ネプテューヌの不真面目さはそれを差し引いても余りあるもので、イストワールも堪忍袋の緒が切れているのである。
女神用の執務室にあった書類の山、あれは全てネプテューヌの女神としての仕事であり、放置しすぎてあんな状態になっているのだ。
「それに他の女神様達にも差を付けられる一方です!」
更にゲイムギョウ界は、平時は四つの国が切磋琢磨し競い合う関係なのである。
ネプテューヌがこうして怠けている間に他の三国は着々と国力を蓄えているのだ。
ゲイムギョウ界の四国の立場は基本的に対等であり、危機を乗り越えたのもネプテューヌだけの力ではない。
つまり、ネプテューヌだけがこうして仕事をせずにゲームに没頭しているのは十分な職務怠慢なのだ。
又、以前にネプギアが絵本で読んだように過去にゲイムギョウ界は何度も国家間の戦争が繰り広げられている。
今は戦争時ではないが、こんな状態で他国に攻められたら手も足もでないだろう。
「ごめんなさい! 私の力不足です!」
流石に庇いきれないと思ったネプギアがイストワールに向かって頭を下げる。
女神候補生であるネプギアは女神に近い仕事をしている。
今日の書類の決裁やクエストなどがそれにあたる。
ネプテューヌと違い真面目で勤勉なネプギアは自分の仕事を全部こなしつつ、たまにネプテューヌの仕事も肩代わりしている。
ネプギアはその力が足りなかったと感じたのだろう。
【仕事をしないネプテューヌが悪い】の一言で片付く問題なのだが、ネプギアはネプテューヌのことを慕っており事あるごとに姉を甘やかしている。
現に今もこうして、女神という立場に構わずネプテューヌの代わりにイストワールに頭を下げているのだ。
「あ、頭を上げて下さい! ネプギアさんの所為じゃありませんよ」
必死で頭を下げるネプギアに慌てるイストワール。
実際にネプギアはよくやっている。
物事の飲み込みが早く何でも要領よくこなすネプギアは候補生以上の働きを見せているが、それでも他国の守護女神には及ばない。
それに候補生では権限の及ばない仕事もある。