昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
昼食をとったネプギアとイストワール。
二人はプラエに会う為にネプギアの部屋を訪れていた。
休息の為にベッドに座った状態のプラエの側でネプギアとイストワールが立って会話をしている。
「なるほど……。話はわかりました」
イストワールが納得したように小さく頷く。
プラエ本人を交えた三人で今までの経緯を事細かにイストワールに話したのだ。
「それでプラエちゃんのこと暫く預かりたいんですけど、どうでしょうか?」
ネプギアがイストワールに尋ねる。
イストワール少し申し訳なさそうな顔をして、「申し訳ありませんが快諾は出来ません。身元を始め不明な要素が多すぎます」と冷静に答える。
「……っ」
プラエはイストワールの言葉に、しゅんと縮んでしまう。
ネプギアもガックリと肩を落とし、「そんな……」と呟く。
「分かってください。私は教祖として女神様の安全を最優先する義務があるのです」
イストワールはそう言うと、「最低でも、本人か保護者の身分証明書を提示していただきませんと」と続ける。
更にプラエを見ると、「プラエさん、貴方は何者なのですか? 時間を操る超能力者であり、外見も十歳以上に見えません」と質問をする。
「プラエはプラエなの。気付いた頃から時間と友達なの……」
プラエがハの字眉毛の困った顔で質問に答えると、イストワールもハの字眉毛の困った顔で、「やはり、保護者と思われる、葛切あんみつさんからお話を伺うしかないですね」と言う。
「幸い、葛切あんみつという名前には聞き覚えがあります」
イストワールが続けて言うと、ネプギアもプラエも驚いた顔をし、「そうなんですか?」とネプギアが尋ねる。
イストワールは小さく頷き、「はい、フィナンシェさんから伺ったことがあります」と答える。
フィナンシェとはルウィーに勤めるメイドで主に守護女神のブランとロムとラムの世話をしている女性だ。
イストワールとも交流があり、何年も前からメル友として交流をしている。
「今からすると十年以上前の友人で犯罪組織の暴漢から逃げる時に囮になって自分を逃がしてくれたと。その後音信不通で探し続けているけど見つからないと嘆いておりました」
イストワールの説明に、「それなら、フィナンシェさんも大喜びですね」とネプギアがフィナンシェとあんみつが再開できることを、まるで自分のことかのように喜ぶ。
「ええ、それにフィナンシェさんにあんみつさん本人であることを確認出来た上で、あんみつさんに身分証明書を提示していただければ、身元の保証が出来ます」
イストワールがそう言うと、ネプギアは明るい声で、「そうすれば……!」と言う。
イストワールはネプギアの言葉に頷くと、「はい、お二人のご希望を叶えることが出来るでしょう」と微笑む。
「そうなの!」
プラエは喜びの声を上げると、「プラエどうしたらいい? 何したらいいの?」と逸る気持ちを抑えられないかのようにイストワールに問いかける。
イストワールは右手で軽くプラエを制すると、「できれば、あんみつさんのお写真などをいただけないでしょうか? フィナンシェさんをお呼びするにも何か証拠が欲しいので」と言う。
「あんみつの写真ならあるよ!」
プラエはいそいそと服の下に入っていたペンダントを取り出して外そうとする。
「んしょんしょ!」
逸るあまりペンダントを上手く取り出せないプラエを見かねたネプギアは、「プラエちゃん、落ち着いて。深呼吸」と優しく語り掛けながら彼女の肩に右手を置く。
「うんっ……すぅはぁすぅはぁ……すぅぅぅ……はぁぁぁぁ……」
プラエは素直にネプギアの言うことを聞いて深呼吸を始める。
「しょっと、……このペンダントの中にプラエと姉さま、それと、あんみつが写ってる写真があるよ」
深呼吸のおかげか、落ち着きを取り戻したプラエはスムーズに服からペンダントを取り出し、首からそれを外すと、「これだよ」とネプギアに手渡す。
「それじゃあ、ちょっと見せてもらうね」
ネプギアはそう言いながらペンダントを開ける。
そこには一枚の写真が入っており、今とまったく変わらない姿のプラエが椅子に座り、その右隣に長身で赤いゴスロリ衣装の銀髪の女性、左隣に黒髪で和服の女性が立っていた。
「この黒い髪の人があんみつさん?」
ネプギアは写真の和服の女性を指差してプラエに尋ねる。
プラエは、「うん」と頷き、「あんみつはプラエと姉さまに仕えるメイドで、大和魂の大和撫子で武士道なの」と答える。
「確かに、和メイドって感じだね」
ネプギアが頷きながら納得する。
よく見ると、着物の上にエプロンを付けてヘッドドレスを付けている。
その姿はお洒落な甘味処の店員によく見られる和メイドの姿であった。
「大和魂の大和撫子で武士道……フィナンシェさんの言っていた口癖とも一致します。同一人物である可能性が極めて高いですね」
イストワールが右手にあごを当てながら頷く。
ネプギアはその言葉に笑顔を浮かべると、「それじゃあ、この写真を画像データにして、見やすいように加工したら、いーすんさんに送りますね」とNギアを操作する。
「反対側の銀髪の方がプロテノールさんですか?」
イストワールがプラエに尋ねると、「うん、姉さま。見たことあるの?」とプラエが期待を込めた声で尋ねる。
イストワールは少し困った顔をして、「申し訳ありません。今の私のデータベースに該当する方はおりません」と謝ると、プラエは、「そうなの……」とガックリとうなだれてしまう。
「しかし、十年前の無名だった頃のネプギアさんを知り、ネプギアさんが今の理想を持つであろうことを見抜いていた人物……謎ですね」
イストワールが難しい顔で腕を組んで首を傾げる。
「それにしても、二人とも綺麗な人だね」
Nギアの操作を終えたネプギアがプラエにペンダントを返しながら言う。
続けてイストワールに、「写真のデータ送りました」と伝えた。
「了解しました。早速フィナンシェさんにメールを送っておきます」
イストワールがそう言うと同時に、彼女の目の色が薄い緑色になり瞳の中に電波のような波が描かれる。
これは人口生命体であるイストワールが機械的な能力を使う時に現れる現象である。
フィナンシェへのメールを作成し、それを送信しているのだろう。
「あんみつさんは、綺麗で長い黒髪に着物が似合ってて素敵だし、プロテノールさんは褐色の肌にプラチナに近い長い銀髪が神秘的で凄くカッコいい」
ネプギアが再度、あんみつとプロテノールの容姿を褒めると、「うん、あんみつも姉さまも素敵な人だから」とプラエが自分のことのように嬉しそうに微笑む。
そしてプラエは両手でネプギアの右手を握ると、「姉さまの肌の色を差別しないネプギアお姉さんは、やっぱりいい人」と言う。
「肌の色? 差別???」
ネプギアが心底不思議そうに首を傾げる。
するとプラエはネプギアからゆっくりと手を離し、「本当はプラエもよく分からないんだけど、姉さまのように黒やそれに近い肌の人はカラードとか呼ばれて差別されるって言ってた」と説明をしてくれる。
「そんな肌の色だけで……」
ネプギアが悲しそうな顔をすると、「悲しい話ですが事実です」とメールを送信し終わったイストワールが話に加わってくる。
「人は自分と違う者を恐れ排他する習性があります。そして、黒や灰色の肌は悪魔や魔物を連想させると蔑まれるのです」
イストワールがそう言うと、「姉さまは強く気高い人だから自分の肌の色に誇りを持って、差別された人達の拠り所になって戦い続けてるって言ってた」とプラエが言う。
イストワールは右手をあごに当てて考える仕草をすると、「そのあたりから、何かの事件に巻き込まれた可能性もありますね」と呟く。
「そんな……」
プラエが悲しそうに言うと、ネプギアは優しい声で、「きっと大丈夫だよ。プロテノールさんはプラエちゃんを置いて行ったりしないよ」とプラエを励ます。
プラエを励ましつつ、ネプギアは別のことを考えていた。
(確かに私の親しい人達って、私と同じ黄色人種かベールさんやプラエちゃんみたいな白色人種だ……)
ネプギアは次に黒や灰色の肌の人物がいないか記憶を探るが出てきた四人は全員ネプギアと敵対した者だった。
(黒い肌はクロワールさん、灰色の肌は下っ端にマジック・ザ・ハードとマジェコンヌ……)
クロワールは今はある人物に捕まって改心してるかもと思える。
マジェコンヌは神次元に限っては改心したと言うか、ナスの栽培にハマっている。
マジック・ザ・ハードはネプギアに敗れ死亡。
下っ端は未だに指名手配犯で逃げ回っていると、友人のアイエフから聞いている。
どれも完全に改心したという確証のある人物はいない。
ネプギアはそこまで考えると、肌の色に人格が関わっているのかもと思ってしまう。
(……そんな筈ない。肌の色だけで人格が決まるなんて、そんな差別的な考え方よくないよ)
そんなふうに思っていると、プラエが心配そうな顔でネプギアを見てくる。
「ネプギアお姉さん、どうしたの? 何か辛そうな顔してる」
プラエの言葉に、「……心配させちゃってごめんね。ただ、私の会った灰色の肌の人達は前に言った犯罪組織の関係者が多くて……」とネプギアは少し落ち込んだ声を出す。
「姉さま言ってたよ、差別されると人格が歪んで悪い人になっちゃうって。だから、姉さまはその悪い連鎖を断ち切る為に戦うって」
プラエがそう言うと、ネプギアは【ハッ】とした顔になり、「そっか、プロテノールさんってカッコいいだけじゃなくて立派な人なんだね」とただ沈んでいた自分に対して、行動をおこしていたプロテノールを尊敬するように言う。
プラエは誇らしげに、「うん、姉さまは立派な人」と言うが、すぐに声のトーンを落として、「でも、姉さまのやり方だけじゃきっとダメなんだと思う。だから、姉さまとネプギアお姉さんを合わせて二人の力で調和と協調の道を探して欲しいと思う」と続ける。
「そっか、私もプロテノールさんに会って色々お話したいな。そうすれば、私の迷いや弱いところも改められる気がする」
ネプギアが心の底からそう思い頷きながら答える。
「お話は変わりますが、あんみつさんと連絡を取る方法はありますか? 出来れば今すぐにスマホか携帯ゲーム機で直接話せれば良いのですが……」
イストワールが話を、あんみつのことに戻す。
プラエは申し訳なさそうに、「ごめんなさい。プラエ、スマホも携帯ゲーム機も持ってないの」と答える。
イストワールは、「あんみつさんは?」と尋ねるが、「あんみつも持ってない……と思う。プラエ達、森の中に隠れるみたいに暮らしてるから」とプラエが答える。
「でも、お家にはプラネテューヌの街に行ってきますってメモしてきたから、お買い物から戻ってきた、あんみつがそれを見てプラエを探しに来てるかも」
プラエの話に、「そうですか……」とイストワールは肩を落とす。
しかし、すぐに頭を切り替えて「街やみんつぶで、ネプギアさんとプラエさんのことは話題になっていましたし、ギルドや衛兵達にも、あんみつさんを見かけたら連絡するようお願いしておきましょう」と提案する。
同時にイストワールの目が先ほどと同じ薄い緑色になり通信モードに変わる。
ギルドや衛兵へ連絡をしているのだろう。
「オハナシチュウモウシワケアリマセン。プラエサマニヒロウノイロガミラレマス。キュウケイサレルコトヲテイアンシマス」
今まで黙っていたネプギアンダムがそう言うと、「プラエ別に疲れてなんか……」とプラエが抗議しようとするが、「無理しちゃダメだよ。ネプギアンダムのメディカルチェックは優秀なんだから」とネプギアが右手でプラエをベットに寝かせるように優しく制する。
「……うん……ちょっと疲れたかも」
プラエはそう言いながら、ネプギアに促されるままにベッドに横になる。
「それでは、プラエさんはネプギアンダムに任せて、私達はクエストへ向かいましょう」
通信を終えたイストワールがそう言うと、「行っちゃうの?」とプラエが少し寂しそうに言う。
「ごめんね。また困ってる人がいるから助けに行かなきゃいけないの」
ネプギアがそう言うと、「うん、わかった。プラエいい子で待ってるから早く帰ってきてね」とプラエは素直に聞き分けをしてくれる。
「……本来なら、ネプテューヌさんが行くべきクエストで、ネプギアさんはプラエさんを診るなり、あんみつさんを探すなり出来た筈なんですけどね……」
そんな二人を見ながら、イストワールが肩を落とす。
ネプテューヌの放蕩ぶりは勿論、それを止めることの出来ない自分の無力さを嘆いてるようだ。