昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
ギルドを後にしたネプギアとイストワールはプラネテューヌの街を出て、クエストの目的地であるバーチャフォレストに向かう。
バーチャフォレストはその名の通り自然溢れる森である。
「んー! 天気が良くて気持ちいいですね」
ネプギアが太陽の光を浴びながら、気持ちよさそうに伸びをする。
するとイストワールが、「そうですね。今度ピクニックで来ましょうか」とにこやかに提案する。
「わあー! いいですねそれ。私、お弁当作りますね」
本当に嬉しそうに同意するネプギアを見ながら、「ふふっ……楽しみです」と微笑むイストワール。
大きさで言えば圧倒的にネプギアの方が大きいのだが、ネプギアに接するイストワールの姿は保護者のようだった。
実際に昔から生きているイストワールの方が年長者なのだが。
「いーすんさん、機嫌直ったんですね」
微笑むイストワールを見て機嫌が直ったことを安堵するネプギア。
先程まではネプテューヌをフォローするネプギアにでさえ食って掛かるほどにいきり立っており、常に怒りの漫符が付いていた程だ。
「ネプギアさんのおかげです」
イストワールは目を閉じて胸に両手を当てながら、ネプギアに感謝の言葉を述べる。
ネプギアは、「え? 私何かしましたか?」と頭に?マークを浮かべながら首を傾げる。
ネプギアの中に特に心当たりになる行動や言動は思い浮かばないようだ。
「ネプギアさんが素直で良い子に育ってくれて本当に嬉しいのですよ」
イストワールは今日のネプギアの何気ないが素直で真面目な行動に心癒されていた。
それがネプテューヌの不真面目さに対する負の感情を上回ったようだ。
「私、そんなに良い子でしょうか? 普通だと思います」
ネプギアは唇に右手を当てながら不思議そうに言う。
彼女は自分のことを特別良い子だと思えなかった。
当たり前のことをしているだけだと思っている。
「その普通が出来ることが大切なのですよ。ネプギアさんならきっと良い女神様になれます」
イストワールはネプギアに優しく微笑む。
しかし、逆にネプギアは表情を曇らせると、「……そうでしょうか……女神様って言うのは私みたいに地味な子じゃなくて、お姉ちゃんみたいに強くて明るくて綺麗な人じゃないと務まらないと思います……」と自信なさげに答える。
ネプギアにとって姉は女神の理想像であった。
それに比べて自分な華が無いと思っているのである。
「ネプギアさんにはネプギアさんの良いところがあります。それにネプギアさんはまだまだ成長段階です。自信を持ってください」
イストワールはそんなネプギアを優しく励ますと、ネプギアは元気を取り戻し、「はい、私、少しでも立派な女神様になれるよう頑張ります」とイストワールの励ましを素直に受け取る。
その心中には大好きなゲイムギョウ界を守る女神として精進しようという決意が秘められていた。
「頑張って下さい。私も教祖として母としてネプギアさんを導きますから」
イストワールはネプギアに満面の笑みを向ける。
「ありがとうござい……え? 母?」
お礼を言おうとしたネプギアだが、途中でイストワールの発言を不思議に思い小首を傾げる。
「し、失礼しました! つい! 女神様に母などとおこがましいことを……」
イストワールが顔を真っ赤にして頭を下げると、「い、いいんですよ! その……嬉しかったですし……」と素直な感想を伝えるネプギア。
嘘偽りの無い彼女の本心だった。
「嬉しかった……」
ゆっくりと頭を上げるイストワールに、「はい! 私もいーすんさんのことお母さんがみたいに思ってます」とネプギアはイストワールにしっかり目を合わせて自分の思いを伝える。
ネプギアにとってイストワールは、小さいころから見守ってくれて色々教えてくれた、母のようで先生のような存在であった。
面白く奔放なネプテューヌとは別の意味でネプギアの育ての親と言っても過言でない。
イストワールの失言もネプギアを娘のように愛していることの表れであった。
その気持ちを察したネプギアは本当に嬉しかったのである。
「そう言っていただけると、心が救われます」
イストワールは笑顔でそう答えると、「じゃあ、お母さんって呼んで甘えていいですか?」といきなり踏み込んだ提案をするネプギア。
「……え?」
突然かつ大胆な提案に少し引き気味のイストワールに、「早速お願いします」ネプギアはイストワール向かって頭を突き出す。
「???」
ネプギアの行動がイマイチ分からないイストワール。
「頭を撫でて褒めて下さい。お母さんみたいに」
ネプギアはそんなイストワールに素直に言葉で要求をするが、「ええと……」とイストワールは困惑してしまう。
「さっきの採取クエストで活躍したから褒めて欲しいです」
ネプギアが更にイストワール向けて頭を突き出す。
イストワールは観念したかのようにネプギアの頭に右手を伸ばした。
「えらいえらい。ネプギアさんが良い子に育ってくれて、お母さん嬉しいですよ」
イストワールはそう言いながら、ネプギアの頭を優しく撫でる。
色々な葛藤はあったようだが、いざ撫で始めるとイストワールも嬉しそうに右手を動かしながら微笑んだ。
「えへへ……お母さんの教育のおかげです」
嬉しそうに目を細めるネプギアに、「しっかり者のようで、まだまだ甘えん坊さんですね」とイストワールは呆れつつもどこか嬉しそうであった。
「だって……お姉ちゃん、忙しくて構ってくれない時があるし……」
ネプギアは恥ずかしそうに両指をいじる。
真面目でしっかり者の優等生ネプギア。
一見隙の無いようだが、実はかなりの甘えん坊だったりする。
ちなみにネプテューヌの忙しいは勿論【遊ぶのに忙しい】である。
現にゲームしてる時に、カーペットにジュースをこぼしても、ゲームに手いっぱいと言ってネプギアに拭かせることもある。
「ふぅ……ネプテューヌさんはダメなお姉さんですね。妹にこんな寂しい思いをさせるなんて」
イストワールがネプギアの頭を撫でながらあやすような声で言うと、「そうですよ」と珍しくネプギアがワガママになる。
「お姉ちゃんは私を一日三回甘やかすことって法律作って下さい」
普段のネプギアなら絶対に言わないようなワガママだが、甘えモードに入った彼女は平気でそれを言ってくる。
勿論、本気ではなくイストワールなら冗談と分かってくれるから言っているのだ。
イストワールもそれを分かってくれており、叱ったりツッコミをせず、「ふふっ……」と優しい微笑みを浮かべる。
「ダメですよ。そんな法律を作ってしまったら、ネプギアさんが甘えん坊な子になってしまいますし、何より私の可愛いネプギアさんがネプテューヌさんに取られてしまいます」
イストワールもイストワールで母親役にノリノリなようで、撫でるだけじゃ足りないのか右手を止めると、ネプギアの頭に抱擁するように抱きつく。
ネプギアの鼻にイストワールの優しく甘い母親の匂いが漂ってくる。
「いーす……お母さん……」
ネプギアは少し驚いたようだが、素直にイストワールの抱擁を受け入れると、目を閉じて気持ちよさそうにイストワールに身を委ねる。
その姿は大好きな飼い主に抱かれている子猫のようだ。
十数分ほどそうしていた後に、ネプギアはゆっくりとイストワールから離れて、「うーーーーーん」気持ち良さそうに伸びをし、「充電完了です。いーすんさん、ありがとうございます」とイストワールにお礼を言う。
彼女の中の【甘えん坊成分】のようなものが十分にチャージされたらしい。
「どういたしまして」
イストワールはそう言って微笑むと、「疲れたら、いつでも私のところに来てください」とネプギアに言う。
「はい!」
ネプギアが嬉しそうに頷く。
「ただし、甘えてばかりだと、お母さん怒りますよ」
イストワールは少し真面目な顔でそう言うと、ネプギアも真面目な顔で、「はい、気を付けます」と返事をする。
その姿は本当の仲良し親子のようであった。