昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2   作:ゆーじ(女神候補生推し)

53 / 450
#41 大丈夫! ファミ通だよ

 ネプギア達の50メートル程先に、先程イストワールがホログラムで見せてくれたシカベーダーが三体立ちはだかる。

 

厚みが無い為に立てないので、僅かに宙に浮いている。

 

 

「来ます!」

 

 

 

 ネプギアがそう言うと同時にシカベーダーの一体が宙を滑るようにネプギア達に近づく。

 

ネプギアは、「みんなは私が守ります」と言うと同時に前進をして、シカベーダーの前に立ちはだかる。

 

進路を塞がれたシカベーダーは、「ベーダー!」と不機嫌そうに唸るとネプギアに体当たりで攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「くっ!」

 

 

 ネプギアに147のダメージが当たるとHPゲージが二割ほど減少する。

 

更にもう一体のシカベーダーがネプギアに追い打ちしようと動き出した。

 

 

「おっと、そうはいかないよ」

 

 

 ファミ通はその動きに合わせて前進をすると、ネプギアを守るように立ち塞がった。

 

予定が狂ったシカベーダーは怒りの声で、「ベダダー!」とファミ通に体当たりを仕掛ける。

 

 

「これぐらいっ……」

 

 

 ファミ通に164のダメージが当たり、HPゲージが三割減少する。

 

レベルが1低い為かネプギアよりダメージが大きいようだ。

 

 

「ファミ通さん!」

 

 

 ネプギアがファミ通を心配するように叫ぶと、「この程度でやられないよ。残り二体は私が足止めするから、そっちの一体撃破しちゃって」とファミ通は冷静に答える。

 

ネプギアに攻撃をしたシカベーダーを分断して、各個撃破しようと言うのだろう。

 

 

「わかりました!」

 

 

 ネプギアはそう言って頷くと、「プラエちゃん、あんみつさん、いーすんさん。連携攻撃で一気に決めましょう」と叫ぶ。

 

プラエが、「うん」と頷くと、ネプギアを襲ったシカベーダーに向けて右手を突き出す。

 

同時にプラエの親指から一本の白銀の鎖が、シカベーダーに向かって伸びていく。

 

 

「時の鎖(クロックチェーン)。一時! 敵を切り裂いて!」

 

 

 プラエが叫ぶと同時に直進していた鎖が蛇行を始める。

 

 

「べだ!?」

 

 

 真っ直ぐに向かってくると思った鎖が急に不規則な動きを始めたことに動揺するシカベーダー。

 

その隙をついて蛇行していた鎖が、シカベーダーを上空から襲う。

 

 

ザシュッ!

 

 

 シカベーダーを切り裂く音が響き渡る。

 

鎖の先端には切れ味の良さそうな刃物が付いており、これがシカベーダーを切り裂いたのだ。

 

シカベーダーに157ダメージが当たりHPゲージが二割減少する。

 

 

「脇が甘い!」

 

 

 同時にいつの間にかシカベーダーに肉薄していた、あんみつが刀を振り下ろす。

 

シカベーダーが鎖の不規則な動きに気を取られている間に接近したのだ。

 

 

ザシュッ!

 

 

 先程のプラエのものより豪快な切り裂く音がする。

 

袈裟斬りに切られたシカベーダーは、「べだぁー」と悲鳴を上げ277のダメージを受けるとHPゲージが一気に半分以下になる。

 

 

「行きます、龍昇拳!」

 

 

 更に今度はネプギアのかえる跳びアッパーが当たると、シカベーダーは229のダメージと共に上空に吹き飛ばされる。

 

シカベーダーのHPゲージは残り一割程度まで減少していた。

 

 

「これでトドメです!」

 

 

 今度はイストワールが上空のシカベーダーに向けて、右手を突き出すと、そこから水流が伸びる。

 

 

「ウォーターガン!」

 

 

 水流がシカベーダーを貫くと、シカベーダーは247のダメージを受けHPゲージがゼロになり戦闘不能になる。

 

そのまま地面に落ちるシカベーダー。

 

 

 その間に最前線で二体のシカベーダーを相手にしているファミ通のHPゲージが残り三割以下になっていた。

 

ファミ通も、「くっ……」とやや苦しそうな表情を浮かべている。

 

 

「ファミ通さん!」

 

 

 ネプギアが叫ぶ。

 

このまま二体を相手にし続けたら間違いなく戦闘不能になるだろう。

 

ネプギアは素早くファミ通に向けて右手を向けると、「ヒール!」と叫ぶ。

 

 

「えっ……」

 

 

 驚きの声を上げるファミ通。

 

同時に彼女のHPが六割程まで回復する。

 

 

「ベダーーー!」

 

 

 予想外の回復行為に怒ったシカベーダーがファミ通を放ってネプギアに突進してくる。

 

モンスターの多くは回復行為を嫌い、それを行った者は優先的に狙われることが多い。

 

 

「時の鎖(クロックチェーン)。二時! 敵を貫け!」

 

 

 プラエの右手の人差し指からもの凄い勢いで白銀の鎖が伸びていく。

 

今度は蛇行もせずに真っ直ぐに、ネプギアを襲おうとするシカベーダーに向かう。

 

その先端には鋭利な穂先が付いていた。

 

 

「浅慮!」

 

 

 更にあんみつも同じシカベーダーに側面から切りかかる。

 

 

ザクッ! ザシュッ!

 

 

 プラエの鎖がシカベーダーを貫くと同時にあんみつの横切りがシカベーダーを切り裂き、合計で429ダメージが当たる。

 

更に、「ウインド!」とイストワールが叫ぶと同時に風の刃がシカベーダーを切り裂き251のダメージが当たる。

 

 

「べぶだっ!?」

 

 

 怒涛の三連攻撃に、シカベーダーの突進が止まる。

 

HPゲージも一気に残り一割以下になる。

 

 

「ごめんなさい!」

 

 

 その隙を付いてネプギアが正面から袈裟斬りでシカベーダーを切り裂くと、205のダメージと共にシカベーダーのHPゲージがゼロになって戦闘不能になる。

 

 

「グラビティカット! ファミ通さん、敵を打ち上げて下さい」

 

 

 立て続けにネプギアがファミ通に向けて叫ぶ。

 

ファミ通はやや慌てた様子を見せながらも、「う、うん!」と頷くとゴルフスイングの構えを取る。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ファミ通のエビのスイングが、残った一体のシカベーダーに炸裂する。

 

194ダメージ受けたシカベーダーは、「ベーダー!」と悲鳴を上げながらサッカーボールのように十メートル近く上空に打ち上げられる。

 

 

「あんなに飛んだ……!」

 

 

 吹き飛ばしたファミ通自身も驚きの声を上げる。

 

続けて、「そうかグラビティカットで敵を軽くしてくれたのか……」とやや落ち着きを取り戻して呟く。

 

 

「ナイスです!」

 

 

 ネプギアはファミ通に称賛を送ると、彼女を追い抜きシカベーダーを追って上空に飛び上がり接近する。

 

ゲイムギョウ界の住人は身体能力が高い者が多く、女神とまでになると五メートルぐらいは軽々と飛び上がり無事に着地することが出来る。

 

しかし、弱いものはとことん弱く、自分の膝くらいの高さから落ちるだけで死んだり、コウモリのフンに当たって死ぬこともある。

 

 

 更に、ゲイムギョウ界には無属性魔法に重力を操作する魔法と、風属性に大気を操る魔法があり、それによりジャンプ力アップと滞空時間の増加をすることが出来る。

 

他にも巨大な敵を浮かしたりするときにも重力魔法と大気を操る魔法が役に立つ。近接攻撃も魔法も得意なネプギアはこれを活かした空中コンボを得意とする。

 

以前に見せたエアリアルレイヴもその類だ。

 

 

「ラピッドラッシュ!」

 

 

 空中で身動きの取れないシカベーダーに、ネプギアの連続攻撃が炸裂する。

 

【ラピッドラッシュ】は素早い五連続攻撃。

 

右手のビームソードと左手のパンチによる交互の攻撃で40前後のダメージが四回当たり、シカベーダーのHPゲージが残り四割まで減少する。

 

 

「ていっ!」

 

 

 ネプギアは最後に連続攻撃の締めの回し蹴り入れると同時にシカベーダーに向けて、「グラビティアペンド」と叫ぶ。

 

グラビティカットの逆で重力を追加させる魔法だ。重力が増したシカベーダーが回し蹴りの勢いで急速に地面に向けて落下する。

 

 

ドカン!

 

 

 激しい音と土煙と共にシカベーダーが墜落すると112ダメージが当たる。

 

同時に、「計算通りです」とイストワールが言うと、続けて「シャイン!」と攻撃魔法を発動させる。

 

イストワールの手から飛んだ白い光線がシカベーダーを貫くと278のダメージが当たり、total:751と表示される。

 

ファミ通の打ち上げからの連携攻撃の合計ダメージだ。

 

当然のようにシカベーダーのHPゲージが真っ赤になる。

 

 

「べ……だ……」

 

 

 最後のシカベーダーが戦闘不能になると、三体全部のシカベーダーが消滅する。

 

同時にネプギアが地面に着地すると、「やりました大勝利です!」と笑顔を見せて右手でVサインを決める。

 

 

「やったー!」

 

 

 プラエも笑顔を浮かべながら小さく飛び跳ねて、拍手をする。

 

イストワールもあんみつも初戦の勝利に安堵の笑顔を浮かべていた。

 

 

「はぁ……。勝った……の」

 

 

 しかし、ファミ通はどっと疲れた顔で片膝を付いてしまう。

 

 

「ファミ通さん?」

 

 

 ネプギア達は不思議そうな顔をしながら、小走りにファミ通に駆け寄って行った。

 

ファミ通は近づいてきたネプギア達に、「いやぁ……、実戦って緊張するものだね。まだ手が震えてるよ」と乾いた笑いを浮かべた。

 

 

「プラエも初めての時は緊張したよ。でも、平気だった。ネプギアお姉さんが守ってくれるって言ったし、あんみつも隣に居てくれたから」

 

 

 プラエが少し誇らしげに言う。

 

ネプギアは微笑んで、「うん、プラエちゃんは凄く頑張って偉かったよ」と言いながらプラエの頭を優しく撫でてあげる。

 

プラエは、「えへへ」と嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

 

「適性があるとは言え、初の実戦でタンクは厳しかったですよね。ごめんなさい」

 

 

 ネプギアがファミ通に向かって丁寧に頭を下げる。

 

タンクは最前線に立つので一番危険が高く、その分実戦の恐怖も大きい。

 

ネプギアはそのことを気にして、ファミ通に謝った。

 

しかし、ファミ通は慌てて、「そんな! ネプギア様は何も悪くないよ。VRジムのインストラクターにもタンク一択って言われてたし」と言って両手をあわあわと左右に振る。

 

 

「私が実際の戦いに尻込みして、ヒールドリンクを落としたりしなければ、もう少し余裕があった筈なんだ」

 

 

 ファミ通はそう言いながら足元に落ちている栄養ドリンクのような瓶を拾う。

 

これは【ヒールドリンク】と言い飲むことで迅速にHPを回復できる優れモノだ。

 

ファミ通は戦いの最中にこれでHPを回復する予定だったが、誤って落としてしまったことでHPが三割まで減少してしまったようだ。

 

 

「しかし、最初の分断からの判断は初心者とは思えませんでした。私も思わず攻撃に回ってしまいましたし」

 

 

 イストワールがそう言うと、「これでもそれなりに立ち回りの研究もしてきたんだ。でも、知識はあっても実技が追いついてなかったよ」とファミ通は肩を落とす。

 

あんみつはそんなファミ通の肩を叩くと、「それぐらいの失敗なら、我々で助けられます。あまり気を落としてはいけません」と励ます。

 

 

「今の戦いでシカベーダーの能力も大体測定できましたし、暫くの間はタンクは私一人でいきましょう」

 

 

 ネプギアが落ち着いた声でファミ通にそう言うと、「ファミ通さんは中衛でアタッカーをしながら、戦闘の空気に慣れて下さい」と続ける。

 

【アタッカー】とは、攻撃に集中して敵に対して大きなダメージを与える役割。

 

先程の戦闘では、プラエやあんみつの立ち回りがそれに当たるだろう。タンクに比べれば敵の攻撃を受ける機会は少なく安全と言える。

 

 

「いいの? ネプギア様一人でタンクなんて大変じゃないかな?」

 

 

 ファミ通が少し遠慮気味に言う。

 

彼女としても、一度中衛に下がって落ち着きたい気持ちはあるものの、ネプギアのことが心配のようだ。

 

 

「大丈夫ですよ。こう見えてもブランさんにタンクの立ち回りとか心得とか教えてもらっているんですから」

 

 

 ネプギアは小さくガッツポーズをしながら言う。

 

ルウィーの守護女神のブランは守りの硬さに定評があり、その力はゲイムギョウ界最硬とも呼ばれている。

 

ネプギアは人の良い点に目を向けて、尊敬できる面があれば取り入れ必要であれば師事をお願いする。

 

以前には一流の冒険者であり剣の達人であるファルコムという人物に剣の特訓を頼んだこともある。

 

ブランに関してもそれと同じで、タンクとして他の女神候補生であるユニ達を守る為に、タンクとして尊敬するブランに頭を下げて師事をお願いし学んで来たのだ。

 

 

「ブランさん程の硬さはありませんけど、足りない分はダミーバルーンとか小手先の技で補いますし」

 

 

 ネプギアが更に自己PRを続ける。

 

ブランの硬さは天性の才能もあるので、そこまでは出来なくても、ネプギアなりの方法は色々と考えていると言いたいのだ。

 

 

「それならお願いしちゃおうかな……」

 

 

 ネプギアの好意に素直に甘えるファミ通、「でも、危なかったら言ってよ。初心者だけど頑張ってタンクするからさ」続けてファミ通はそう言いながら、ペンとメモを取り出して色々と書き始める。

 

 

「何を書いてるの?」

 

 

 プラエがファミ通に尋ねると、「ネプギア様の優しさと気配りの良さだよ」とファミ通が答える。

 

更に、「私の失敗はカッコ悪いけど、記事としてはいい感じに書けそうだよ」とファミ通が微笑む。

 

 

「今のも記事にされるのですか?」

 

 

 今度はあんみつがファミ通に質問をすると、「当然だよ。私の失敗を隠すために、ネプギア様の良さをみんなに伝えられないなんて記者失格だしね」とファミ通が即答する。

 

 

「良い記者の方のようで安心しました」

 

 

 イストワールがそう言うと、「これぐらいは当然。週刊ファミ通の歴史に泥を塗る訳にはいかないしね。ミスはするけどウソは付かないが私の信条だからね」とファミ通は答える。

 

 

「ミスはするんですか?」

 

 

 少し不安そうにネプギアが尋ねると、「大丈夫! ファミ通の記事だよ」とファミ通が爽やかかつ力強くサムズアップする。

 

 

「あはは……」

 

 

 ファミ通のハイテンションなリアクションに若干引き気味のネプギアは、乾いた笑いを浮かべると、「できるだけミスはない方向でお願いします」と続けた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。