昂次元ゲイム ネプギア SISTERS GENERATION 2 作:ゆーじ(女神候補生推し)
教会のドアが開くと、「あれ~? ねぷちゃんだ~」と緩やかなパーマがかかった青紫色の髪をお下げにした少女が現れる。
身長はネプテューヌと同じぐらい。
赤紫っぽい瞳に、パステルカラーでオフショルダーになっているローブのような服を着て、ネプギアと同じようなストライプのニーソックスをはいている。
全体的にメルヘンチックで【ゆるふわ】な感じのする少女だ。
「おおう! ぷるるん。我が心の友よ!」
ネプテューヌは両手を開いてその少女をオーバーリアクション気味に歓迎する。
「こんにちわ、プルルートさん」
対してネプギアは丁寧に一礼して挨拶をする。
「こんにちわ」
ネプギアが挨拶すると立て続けにユニが挨拶をし、「「こんにちわー」」とロムとラムも挨拶をする。
「彼女は?」
ファミ通がイストワールにプルルートと呼ばれた少女のことを確認しようとする。
「彼女はプルルートさんです。この神次元のプラネテューヌの守護女神様です」
イストワールは簡潔にプルルートの紹介をする。
ちなみに【ぷるるん】はネプテューヌの付けた彼女のあだ名である。
「……ふぁ……」
プルルートが小さなあくびをする。
「ぷるるん、またお昼寝してたの? 相変わらずよく寝るねー」
「うん。朝起きて二度寝して~、顔を洗って三度寝~、朝ご飯を食べて四度寝、少しお裁縫をして五度寝~、今はお昼ご飯食べた後の六度寝して起きたところ~」
聞いてのとおり彼女はよく寝る。
気付けば寝ている。
明らかに起きている時間より寝ている時間の方が長い。
「プルルートさん、少しはお仕事をして下さい……」
神次元のイストワールは肩を落としながらプルルートに懇願する。
「えー……だって眠いし~」
しかし、プルルートはやる気なさそうな声で答える。
プルルートは見ての通りのんびり屋で、真面目に仕事に励むということは無い。
ネプテューヌが仕事をサボって遊ぶタイプに対して、プルルートは居眠りしてサボるタイプである。
「それに仕事なら、ぎあちゃんがしてくれるし~」
その為、超次元に帰った後もネプギアが神次元の仕事もしているのである。
神次元プラネテューヌの国民からの願いだからでもあるが。
「プルルートさん、あなたには女神としての矜持は無いのですか?」
イストワールがプルルートに少し厳しい言葉を浴びせる。
ネプギアが神次元の仕事をしているが為に超次元の仕事量が落ちてしまうのは事実。
ネプテューヌだけで頭の痛いイストワールとしては、いい加減プルルートには独り立ちして欲しいのである。
「きょーじ? なにそれおいしいの?」
意味を知ってか知らずかプルルートはお約束のボケをかます。
「わたし知ってる! お相撲さんの審判のことよ!」
「はっきょいはっきょい、のこったのこった」
ロムとラムの勘違いに、「それは行司」とやんわりとツッコミを入れるユニ。
「……ネプギア、きょーじってなに?」
どうやらネプテューヌは本気で知らないようで、イストワールに悟られて怒られないようネプギアに助け舟を求める。
「その立場にいる人の自尊心のことだよ。いーすんさんは【女神という立場にいる自信と誇りは無いのか?】って言ってるんだと思うよ」
ネプギアは丁寧にネプテューヌに説明すると、ネプテューヌは難しい顔をして腕組みをする。
「ふーん、何か難しいね。変身したわたしならありそうだけど、わたし自身は毎日がハッピーなら女神とかどーでもいいよ。お仕事面倒だし、いーすんもうるさいし」
ネプテューヌの答えに、「あはは……お姉ちゃんらしいね……」とネプギアは少し呆れたように言う。
「あ! でも、主人公の矜持なら全開バリバリであるから! なんてたって主人公オブザ主人公だし」
ネプテューヌは人差し指をビシッと突き出すと堂々と宣言をする。
「プルルートさん、貴女に対して国民のみなさんからお仕事のお願いが届いているんです。これを居眠りして放置して、国民のみなさんにどう顔向けするつもりですか?」
ネプギアとネプテューヌが話している間にイストワールは以前にネプテューヌにした質問をプルルートにぶつけてみる。
「ん~」
プルルートはあごに右人差し指を当てて少し考える仕草をする。
「お昼寝してて放置プレイしちゃった~。ごめんね~」
プルルートは悪びれもなく、しれっと言う。
「流石はプルルートさん、お姉ちゃんとほぼ同じ反応……」
ネプギアはそう言って肩を落とす。
「やっぱりぷるるんは、わたしの心の友だよ!」
ネプテューヌはそう言いながらプルルートに向かって駆けだすと盛大に抱き着く。
ネプテューヌは友人こそ多いが、アイエフのように彼女の仕事ぶりに対して苦言を言う者が多い。
しかし、プルルートはそうではないどころかネプテューヌと同じような考え方をしているのである。
そういう意味では彼女はネプテューヌとって特別な友人なのである。
「ねぷちゃん大胆~」
プルルートは特に慌てた様子もなくネプテューヌを受け入れる。
「今日は心ゆくまで飲み明かそうよ!」
ネプテューヌはそう言いながら元気よく右手に高々と掲げる、その手にはジョッキが握られていた。
中に入っているのは黄色いゼリーの上に黒いカラメルソースの乗った、どこから見てもプリンである。
これはネプテューヌ特注の【ジョッキプリン】である。
「おー」
プルルートもゆっくりと右手を上げてそれに同調する。
「それじゃ、レッツゴーイング! 48時間耐久プリン&ゲームパーティ! プレゼントバーイ、ネプテューヌ!!」
「わー。ぱちぱちぱち~」
ハイテンションで教会の外に駆けて行くネプテューヌに対して、テンションを変えずに歩いて付いていくプルルート。
彼女達はテンションこそ違うものの、お互いに良き理解者なのである。
「あっ! まだ話は……」
「……申し訳ございません、その辺りで矛を収めて頂けないでしょうか。プルルートさんを怒らせても大変ですし」
二人を止めようとするイストワールに対して神次元のイストワールが割って入る。
ああ見えてプルルートは怒ると怖い。
「そうやってご機嫌を伺っているから、プルルートさんが増長するのですよ?」
「返す言葉もありません。しかし、神次元の女神様は超次元と違って元は普通の人間だったということを分かって下さい」
忠告をするイストワールに対して、小さく頭を下げる神次元のイストワール。
神次元のイストワールの言う通り、超次元と神次元は似てはいるが女神の成り立ちが違うのだ。
超次元の女神は人々の信仰心によって生まれるのに対し、神次元の女神は【女神メモリー】というアイテムを適応する者が使うことにより誕生する。そして女神になった者の元に人々が集まる。
つまり信者と女神の生まれる順番が逆なのである。
その為、超次元の女神は生まれつき女神としての使命感を持っているものが多い。
それに対して神次元は自ら望んで女神になった者は使命感を持っているが、成り行きで女神になってしまったものはそうではない。
勿論、プルルートは後者であり、彼女はたまたま拾った女神メモリーで女神になってしまったのである。
「それは分かりますが……」
難しい顔をして言葉に詰まるイストワール。
「まあまあ、いーすんさん、私は全然気にしてませんから。それに神次元で仕事したおかげで私自身も成長できますし」
考え込むイストワールに対して、ネプギアがフォローに入る。
「なにより、ユニちゃん達と一緒にお仕事できますから」
ネプギアは続けてそう言うと、ユニが、「そうね。超次元ではこうはいかないものね」と言って頷く。
「そうだよねー。お姉ちゃん達がうるさいし」
ラムが腕組みしてそう言うと、ロムが少し悲しい顔で「こくえきとか立場とかよく分からない(しくしく)」と言う。
ネプギア達女神候補生が一堂に会してお仕事ができるのは、神次元だからであって超次元ではこうはいかない。
各国は競い合うライバル関係であり、互いの国益や女神としての立場があり安易に他国のお仕事ができないのである。
女神候補生達の意思は別だとしても、姉や教祖などがそれを許さない。
それに対して神次元は別次元なので、姉達も深くは干渉してこないのである。
ユニとロムとラムは月に一度のお泊り会という名目で神次元のプラネテューヌに来てネプギアと一緒にお仕事をしている。
「と、言うことでお仕事お願いします」
ネプギアは話を変える意味もあり、神次元のイストワールに仕事の催促をする。
「ありがとうございます。まずは書類の決裁からお願いします」
神次元のイストワールはネプギアの心づかいに感謝しつつ仕事の説明を始める。
「ハンコぽんぽんだね! 任せてよ」
「ハンコ楽しい(ぽんぽん)」
ロムとラムは楽しそうにハンコを押す仕草をする。
「ちゃんとアタシとネプギアが見たのから押すのよ」
ユニがそう言うと、ネプギアは、「じゃあ、行こう」と言って女神候補生達とイストワール達は執務室に移動する。
アイエフ達やアレスター家の面々もそれに付いて行く。
「……」
その最中、プラエは俯いて震えていた。
あんみつが心配そうに、「プラエ様、大丈夫ですか?」と尋ねると、「……あの、プルルートって言う人……怖い……心の色が赤黒くて気持ち悪い」とプラエは呟いた。