たとえ、小さな輝きでも   作:ロウ・トウヤ

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あけましておめでとうございまスー、作者です
新年早々ヘンテコな回の投稿となります、御影兄弟の話です、一応ヒロインは出ますので。

……あと、文章力の無さが今回謙虚に出てると思います。

そして評価をくれた方々、ありがとうございます、新年も変わらず私は頑張っていきますので、応援してくれると幸いです。

それでは、ご覧ください


兄と退院と居候と……

あのあと、病院内に戻った俺と令王那を待っていたのはたった2人の医師と看護婦だった、医師曰く、このことはあまり騒ぎにはしなかったらしく内密に処理を行ったらしい、

 

俺はそこから約2週間の入院を命じられ、その日まで大人しくリハビリをしながら病院で時間を過ごし続けることにした。

 

……入院費は、なんか、心配ないよと言われて以降、気にしないようにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇2週間後◇◆◇

 

 

 

個人病室、仕切りのカーテンを閉め切り、ベッドの上で上体を起こして手を動かすリハビリを行う、リハビリと言っても、僅かに動く指先を更に動かそうとするだけ、というかこれしかできない。

 

これを暇な時間ずっとやっているため、1日の半分以上はこれをやっていたりする。

 

そうやって日課を行っているとドアが開く音がして、足音が近付いてくる。そしてカーテン越しの向こう側で止まるとカーテンが音を立てて開き、もはや見知ってしまった男が現れた。

 

 

「グッモーニン御影クン、加減はどうかな?」

「最悪」

「わぁ辛口」

 

入ってきたのは俺の担当医を名乗る男、白衣とボッサボサの茶髪のダサい男。名も名乗らず、先生と呼びたまえよとか言ってちょくちょく顔を出してくる。

そんな適当な男なのに、俺の手術を全て請け負っているらしく、俺の指がぴくりとでも動くのはこいつの手腕が最高のものだから……らしい。

 

質問に対し俺が選んだ言葉は男の言う通り辛口、それはなぜか。

 

 

「なんで最悪なんだい?娯楽はないけど新聞はある。窓から外の景色も見える、待遇も個室を用意され、仕切りのカーテンも目に痛くない優しい色をしている。

食事もできる限りバランスを考え、君の好みのモノを出しているはずなのに」

 

「それだよ、なんでお前俺の好みのモノとか知ってんの?

新聞もいつも俺が読んでたものだ、それはまだマグレと言える、だけど好みの食材ばかり出てくるのは異様としか言いようがない。

帰れ、飯だけ持ってこい」

 

 

深く詮索して踏み込むのも嫌なので短く言い捨て、帰れと告げる、相手の距離が近いのだからこれくらい荒い言い方でもなんら問題はない。

 

ただ今回、男は帰ろうとはしなかった。

 

「今日はそうはいかない、なぜなら今日、君は退院するんだから」

「……退院?」

「そう、時期が来たんだよ」

 

男はそう言って、どこからか丸椅子を引っ張ってきてそれに座る、そして足を組み、嫌々なオーラを出しつつ俺の疑問に対して話を続けた。

 

「僕としては治るまでここに居て欲しいんだけどさぁ、貴重な個室を無駄に使うなって院長に怒られちゃって」

「無駄に、か。

俺の手は、治らないと」

 

「それは間違いないね、繋ぎ直すのは僕でさえ技術が不足している。

いっそ切り落として別の生きた患者の手を無断で移植してしまおうかとも考えたけど、院長に止められちゃって」

「院長の命令とかお前聞くんだな」

 

「地味に酷いね?

僕は有効活用しようとしただけなのになぁ、君にはそれくらいの才能があるんだから」

「……俺は、他人から奪って手に入れる才能なんて俺は嬉しくない。

それで結局、俺はどうなるんだ?」

 

「へぇ……まぁいいか。

鳰原さんの家に引き取られるよ」

「……………?

 

 

すまん、聞こえなかった、もう1回言ってくれ」

 

「 鳰 原 さ ん の 家 に 引 き 取 ら れ る よ 」

 

 

 

 

……嘘だろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「嘘なわけないでしょ、ほらコレ背負って!」

「腕でバランス取るしか無いんだからやめてくれないか…!」

 

 

話のあと、善は急げと言われて個室から連れ出された、幸いというかあの部屋に私物は無かったため良かったが、ロビーまで来ると男が突然どこからか持ってきたリュックを俺に背負わせようとしてきた、相当重い。

 

 

「人様の家に行くんだから用意ぐらいするでしょ!必要最低限のものは入ってるから!」

「なんでこんなに重いんだ……!?」

「服!たくさん要るでしょ!」

「制服と白シャツとズボンしか要らないぞ」

「それおかしくない??」

 

ぎゃーぎゃーとロビーで喧嘩じみたことを言い合いながらリュックを押し付け合う……というか、背負わせ合う。そして視線が痛い。

 

…というか、こんな大声を出したのは久しぶりな気がする。

 

 

 

「くそ……分かったよ」

 

最終的に俺が折れてリュックを背負う、手は使えないため背負わせてもらったが正しいかもしれないが、こいつに借りを作るのは何か嫌だ。

 

俺にリュックを背負わせると男は満足気に俺から離れ、白衣をピシッと整え、どことなく真面目な雰囲気を漂わせながら言葉を紡いだ。

 

「鳰原さんに迷惑かけちゃダメだからね、早寝早起きとか、必要最低限のことはやるんだよ?ただでさえ君は私生活が常人とかけ離れてるんだから」

「だから、なんでお前がそんなこと知ってんだよ」

「……んー、なんでだろうね?」

 

…真面目に答える気は無いらしい。

 

 

「なら、俺はもう行く、くだらない世間話をする気もない、余計な世話ももうごめんだ」

「そっか〜、じゃあ、行ってらっしゃい。

の、前に」

 

男はそう言って、小さな紙袋を俺のリュックに放り込んだ。

中身を確認は行ってからでも行えると考え、とりあえず、これは?と聞いてみる。

 

 

 

「お兄ちゃんからの選別だ、行っておいで」

「余計な世話だって───兄?

……お前、もしかして」

 

 

 

 

なにかに気づいて、奴の一言を問い詰めようとした矢先、背後から足音が聞こえて。そして、聞きなれた、だが最近聞けていなかった声で話しかけられる。

 

「先輩」

 

いつも通りの呼び方をされて振り返ると、そこに制服を着て、カバンを持った令王那が居た、恐らく学校帰り。

 

「お、来たね、時間ぴったり、事前に話を進めておいてよかった」

 

それを見て、当然の如く前から話を進めていたと口走る男、いや、兄と呼ぶべきだろうか。本人を抜いて話を進められるのは大変気分が悪いが、令王那の前だ、大人しくしておこう。

 

ぺこりと頭を下げて、令王那は俺の隣まで歩いてくる、多少距離が空いているが俺は気にしない。

 

 

 

「こんにちは、(ふみ)さん……先輩って、今日退院…ですよね」

「そうだねぇ、本人も納得したし、早く連れてってあげて」

「いや納得とかしてないし聞きたいことまだあるんだが」

 

郁さん、と、いつから名前呼びになったとさらに問い詰めたいところだが、またもや俺抜きで話が進んでいた。

 

当然このまま逃がす訳にも行かず言葉で引き留めようとする、聞きたいことはまだまだある、そしてきっとコイツは色々なことを知っている。

 

しかし、男はそんな俺の呼び掛けを無視し、既に廊下の奥へと歩き出していた。

 

「残念だけど僕これから手術の予定があるからさ、ごめんね〜」

 

男は軽口を叩き、俺が引き止める暇もなく足早に目の前からいなくなってしまう、令王那を置いて追いかける訳にも行かず、そのまま見失った。

 

そして、令王那と二人、ロビーに取り残される。

 

 

少し考えた末に諦めて短く息を吐き、くるりと入口の方を向いた。

 

「……もう、行くか」

「追いかけなくていいんですか?お兄さん、なんですよね」

「…あんなやつ知らん、 いいから行くぞ」

「えっ……あ、先輩、待ってください…!」

 

知りもしない兄を追うだけ馬鹿らしい、あいつが何を知っていようと俺には何も関係ない、何も関係ないはずだ。

 

そう、自分に言い聞かせて歩き出した、遅れて令王那が着いてくる。

行き先は、まだ納得いかないが令王那の自宅、承認は得ているらしいし、遠慮……は、一応しておこう。

 

何せ、俺は単なる居候に過ぎないのだから。

 

 




読了ありがとうございます。
次回からヒロイン出番爆増間違いなしなので、楽しみに待っていてください、いやそもそも読者に我慢を求めてはいけないのですが……。


いや本当に、次回は直ぐに投稿するので!楽しみに待っていてください!それでは!また!




〔御影 郁 ミカゲ フミ〕医師

御影くんを病院に入れて、入院代を支払って、食事を注文して、内密に処理して、無理を通して、新聞を取ってきていた張本人、そして兄。
身内贔屓がものすごく、何より過保護。
御影くんと顔を会わせるのは実に5年ぶりであり、それまではメールでやりとりをしていた(全くしない)

親の血を引いていて他人をアッサリ見捨てる、身内贔屓があるだけまだマシと言えるが、赤の他人がどうなろうとどうでもいいと考えている、しかもそれが当然だと、何もおかしくはないと思い込んでいるナチュラルボーンクズ、メインの出番はこれで終わり

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