せめてクリスマスは誰かと過ごしたいんです。   作:Cyaegha

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次の日──


暴かれるtruth……

 一緒に寝れたお陰で深く眠れたが、逆にわたしの身体は寝過ぎて少し疲れてしまったようだ。

 体を起こすのに少し手間取るが、そのままのろのろと窓に向かう。

 

「う……いい眺めだなあ」

 

 昨日とは大違いの快晴! 隅々まで晴れ広がる空はまるでわたしたちを祝福しているよう。ちらちらと風に乗ってやってくる粉雪もサンビームに反射して輝いている。

 

 日光を十分に浴びたところで部屋の方に足を歩める……。

 

「あれ?」

 

 ピンクのリボンで結ばれた結構大きい白箱。ふたには「サンタクロースより」と書かれている。

 おお、やっぱりサンタさんはいたんだ! まさかリデルが準備したわけでもないしね。

 

 少し惜しい気持ちを抱えながら、箱を開けてみる。中には360日間ずっと捜していても見つからなかった服たちが入っていた。

 お菓子とかよりもずっと使えるコートの方がいいもんね。

 

 そうやって様々な服を取り出して見ていると奥底にさらにひとつ、黒い小さな箱があった。

 なんだろう? 気になって、手を伸ばそうとした。

 

 だけどその時、「お姉ちゃんご飯だよー」と呼ばれてしまった。プレゼントを見るのは後回しでもいいもんね、わたしは部屋を出た。

 

 昨日の残り(結局食べきれなかったから)だけどそれでもご馳走はご馳走である。やっぱり美味しい。

 

「なんか嬉しそうだね」

「うん? まあね、なんとサンタさんがわたしのところへ来たんだよ! 信じててよかった〜」

「……うん! よかったね」

「リデルは何かもらった?」

「いや? なにも?」

 

 やっぱりサンタはひどいやつだ。みんな平等にプレゼントを渡すべきだろう。

 

「あのさ」

「どうしたの?」

「一緒にプレゼントの中身見ていい?」

「あ……ひとつは開けちゃったけど、それでもいい?」

「十分」

 

 リデルはプレゼントがもらえなかった分不平等だもんね……。悲しみに浸れつつ朝食を食べ終えた。

 

 

 2人で部屋に戻って怪しい雰囲気を漂わせる小さな箱を開けてみよう。中身は……トランプと折り畳まれた手紙? 手紙を開いて見てみる。なんだか嫌な予感がしなくもないような……。

 

 予感は当たった。

 

 

サプライズ・レター! 

これダサいかな……

アリスのサンタ! リデル

 

 こんにちはお姉ちゃん。大切なおはなしがあります。

 あなたをこの誰もいない世界に閉じ込めたのは私です! 

 

 どういうことかわからないと思いますが、実際のところ、あなたと私だけを誰もいない並行世界に飛ばしただけなので安心してください。

 一緒に入っているそのトランプ、それを使うと1週間並行世界に行けるので、その度にお姉ちゃんの記憶をデスクロロクロザピンで楽しんでいました。(この楽しみをお姉ちゃんは知らないと思うので、隠しておきます)

 

 流石に本能的に学習したのか、一枚目の時よりは、かなりマシに私を追いかけられるようになったみたいですが、やっぱお姉ちゃんはお姉ちゃんなので最後まで泣いてましたね。可愛くてすきです。本当に。

 

 もちろん、ただお姉ちゃんを虐めたいだけで誰もいない世界に飛ばしたわけではないよ。

 これはお姉ちゃんを守る為にやっているのです。

 

 考えてみてください。わたしより身体が小さくて、ちょっぴり怖がりで天然、守ってあげたくなるかわいいお顔。女の子としては素晴らしいけど、お姉ちゃんとしては失格です。大人になったら誰かに騙されるかもしれない。だからわたしが守る必要があったんですね。

 

 安心してね、妹の素質があるのはわたしがこの目で確認したよ。「お姉ちゃん妹化計画」は大成功です! 

 では、これから妹としての自覚を持ってもらいます! 

 

 

「何……え……?」

 

 わたしとリデルしかない世界を作ったのはリデル……? わたしを守るため……? 妹としての自覚……? 

 

「リデル……おかしいよこんなの……」

「リデル? 違うよね、()()()()()でしょ?」

「ひゃ……ぅ、ダメだよこんなの」

 

 その瞬間、「おしおき」の声とともにトランプのカードが頭に強く刺された。

 

「ぅんぁっ……あ、あ、あ、あ……」

 

//────

 ──アリスちゃんは可愛いなあ、寝たらすぐ絶対に起きれない。

 ──ふふ、お寝坊さんかな? ご飯作ってあげないとね〜。

────//

「なに……これ」

「アリスが妹だっていう証拠だよ」

「ダメ……そんなの」

「じゃあ……スリーカード」

「ぅんぁっ……あっあっあっあっあっ」

 

//────

 ──『うっ……寂しかったよぉおおお】

 ──はいはい落ち着こう? 

 ──『ひゅう、ひゅう、はあ……」

 ──ほらぎゅーっとしてあげるから。

 

 ──『ん……頭撫でないで……』

 ──なら私より大きくなってよアリスちゃん。

 

 ──『まるで……リデルがお姉ちゃんみたい』

────//

「どう? これでもダメ?」

「…………」

「選ばされてあける」

 

 ……そうしてお姉ちゃ……リデルは、私にトランプを見せてきた。

 

「今、元の世界の52枚目、最後のカードを使ったところなんだよね」

「でもここにもトランプがある。並行世界にあるもの」

「これを使わないでお姉ちゃんでいるか、これを使って妹になるか」

「…………」

 

「わからないかあ……ファイブカード」

「おっ? えっ? あっあっっあっlp!? えぁあ……」

 

 

 

 

 

()()()?」

「妹になるよ……お姉ちゃん」

 

 えっ!? あれわたし間違えてリデルのことお姉ちゃんって……。

 その瞬間お姉ちゃんがわたしのことをぎゅーっとしてくれて。

 

「えらい!」

「えらい……?」

「じゃあ、早速行こうか! 2人だけの世界に!」

 

 お姉ちゃんがカードを天に捧げると、わたしたちの身体は光に包まれていった。

 

 


 

 

 ああ……本当に可哀想で、惨めで、無様で、可愛いなあ……アリスちゃん。

 実の妹に洗脳されて自分が妹だと信じ込むなんて……あはっ。

 

 この世界で私は1番優れた姉だし、アリスちゃんは世界一ダメな妹……。そう思うとなんだか笑いがこみ上げてしまう。

 いつになったら気づくのかな、もしかしたら永遠に気づかない? だったらまた私が教えてあげよう。

 

 いつもの、着飾って碧眼を輝かせて笑顔でいる姿も好きだけど、絶望に囲まれて目のハイライトが消える瞬間も大好き。

 あのすごい誰かに守って欲しそうで、自分の非力感を感てそうな表情……全て私の手のひらの上……あはははっ。

 

 実をいうと、これは8回目のループに値する。すでに同じトランプを8回使ったし、8回ネタバラシして表情やセリフを見てきた。恨みがあるわけではないけど、見ていてとても爽快だった。実妹の裏切りなんてなかなか現実でみないもの! 

 

 1月1日になったらまた記憶を消去して、彼女はお姉ちゃんになってもらう。だってループの為だもの。

 

 アリスちゃんへの絶望で9枚使ったけど、まだ40枚程度使用済みのトランプがあって、それらはその間に起きた出来事を記憶してくれる。

 どうしようかな……次はこれを全部刺して精神壊して変な声出させるのもいいかも。お姉ちゃんのどこか未熟で可愛らしい声が壊れる瞬間……いいね。

 

 私は妹のアリスと戯れながら、そんな平和なことを考えるのであった。




お幸せに。

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