死してなお死ぬ少女   作:こっくん

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ストパン一期って宮藤による501攻略ギャルゲ感があるんですよね(クソ解釈)
というわけで攻略されました。


問題解決

 そのまた翌日は私と宮藤、エイラでの出撃になった。私にとっては久しぶりの夜間飛行となる。

 

「エイラさん。あの……。」

 

 ユニットを履き、ハンガーを出たところで宮藤はおずおずとエイラに手を差し出した。

 

「またか?しかたないなあ~。」

 

 口先ではそう言うけど、エイラは少し嬉しそうに手を取った。

 

「クリンはいいのか?」

「えっと……。」

 

 見るに夜間飛行に慣れていない宮藤は手をつないで先導してもらっていたらしい。エイラは私と手を繋がなくて良いのか聞いているらしい。

 そして宮藤はためらっていた。先日のこともあって少し思うことがあるのだろうか。だけど宮藤はすぐにこちらに近寄って私の手を取った。

 

「クリンさん。お願いします。」

 

 正直、宮藤を遠ざけたい私にとってはあまり嬉しくない申し出だった。

 

「私のこと、助けてくれませんか?」

 

 続けて宮藤はそう言う。乞うような目で私を見つめる。その仕草は私の心をくすぐった。

 

「……それぐらいなら。」

「ありがとう!じゃあ、行きましょう!」

「おいおい、お前が先行くなよー。」

 

 宮藤に引かれるように私とエイラは空に出た。

 

――

 

 雲の上まで出ると星々のみが私たちをささやかに照らしていた。新月だ。夜目だけでは隣の宮藤の顔もあまり見えない。

 

 夜間哨戒の任務は既定ルートの周回だ。敵が来なければ正直暇な時間になる。そのため哨戒任務に出るウィッチにはラジオ等の娯楽は黙認されることがままあった。

 しかし、私たちはこれといって準備をしていなかったから、自ずと会話をすることになってしまった。

 

「そういえばエイラさん。エイラさんってサーニャさんといつから知り合いなんですか?」

「サーニャとか?こっちの基地に来てからだな。」

「えー!てっきり幼馴染だと思ってました!」

「そうか?」

「だってこんなにも好きってわかりやすい二人今まで見たことないですから。」

 

 宮藤が素直にエイラとサーニャのことを形容してしまう。他意はなく友愛として伝えたのだが、エイラは別に受け取ってしまった。きっと真っ赤になっているだろう。

 

「みっ宮藤はどうなんだよ!」

 

 狼狽えるエイラは宮藤に話を振る。しかし宮藤は何のことかよくわかっていない。

 

「ほら、昨日は帰ってきたらすぐにクリンのところに戻ったじゃないか。そんなに好きなのか?」

「そ、そういうのじゃないって!リーネちゃんと一緒に入るから時間合わせてただけなの!」

「ふーん?じゃあクリンはどうなんだ?」

 

 エイラが私に振る。私にとって宮藤か……。なぜか私に優しいし、嫌いじゃない。

 

「嫌いじゃないわ。」

「そ、そうか。」

 

 結局、私の返事はそっけなくなってしまった。エイラも狼狽えることを期待していたのか、そっけない返事に拍子抜けだったようだ。

 

――

 

 その後もネウロイは現れなかった。お昼になってまた私たちは眠っていた。いや、私は眠れてないのだけど。

 目の前で宮藤は何の気兼ねもなくぐっすりと眠っていた。

 

「……嫌いじゃないのだけどね。」

 

 この数日、今までにないほど宮藤と一緒にいる時間が多かった。だからこそ、宮藤の厚意は私の心を侵食していた。

 だけど、今日宮藤の手を引いて雲の上まで昇ったとき、暗くて見えにくかったけど、開けた視界に感動する宮藤の表情はすごく嬉しそうで、私まで少し嬉しかった。

 そこで思ったのだ。宮藤の厚意に耐えられないならば少しずつでも宮藤に返してしまえばいい。……方法はあまり思いつかないけど、困った時は助けてあげよう。

 

「お母さん……。」

 

 宮藤が寝言でつぶやく。宮藤は優れた才能を持つウィッチだ。だけどただの14歳の少女でもあった。郷愁を覚えることもあるのだろう。

 私は宮藤の頭を撫でた。思わずだった。

 

「……んぅ。」

 

 宮藤が私の腕を枕にして私の胸にすり寄る。……私は母ではないのだけど。

 でも、宮藤のためになにかできていると思えて、少し嬉しかった。

 

――

 

 そして少しあと。宮藤は目覚めると誰かの胸に抱かれている事に気づいた。顔を上げると目を瞑ったクリンの顔が見えた。クリンはいつも疲れたような顔をしている。目の下のクマも酷いし、お世辞にも肉付きが良いとは思えない。

 そんなクリンに胸に抱かれているのは少し気が引けた。だから宮藤は寝ぼけながらクリンの頭を胸に抱いた。

 

 クリンは驚いたものの、害があるわけでもなし、素直に従った。

 

 その日のこと、クリンは久しぶりに夢を見た。雪道を走ったり、海の上を飛んだり、いろいろな場面を巡っていった。場面が変わって少しすると吹雪やネウロイ、ウィッチに襲われる。だけど危機が迫るといつも宮藤が来てくれて、クリンの手を引いて危険を退けてくれた。

 

――

 

「おーい、宮藤、クリン、起きろ。」

 

 夕方、先に起きていたエイラはお互いに抱きしめたまま眠る宮藤とクリンに呆れていた。

 

「これで付き合ってないんだから不思議なもんだよなー。」

 

 宮藤とクリンを揺する。もうすぐ出なくては間に合わない。先に起きたのは宮藤だった。

 

「ふぁ……おはようございます……。」

「ほら、いちゃついてないで早く準備するぞ。」

「い、いちゃついてなんてないですよ!」

 

 宮藤は飛び起きてクリンを起こす側に移る。今日の出撃は宮藤、クリン、サーニャだ。

 

――

 

 それから数日、サーニャが出撃した時は気配はあるものの、ネウロイとの直接戦闘には至らなかった。

 一度宮藤に抱きしめられた時には眠れたのだが、気恥ずかしさからこの数日は宮藤から離れるようにして寝ていた。治療によって不眠が解消されたのかと思っていたがそうではなく、結局寝られなかった。

 

 そして宮藤、エイラ、サーニャが出撃する日にネウロイは現れた。

 報告が入ってすぐに私は出撃した。

 

 無線にネウロイのものと思しき歌声が響く。私は全速力で三人の元へ向かった。そして、突然にその歌声は途切れた。

 サーニャからネウロイを倒したという連絡が入る。私の視界にも三人の誘導灯が見えていた。

 

「クリンさーん!」

 

 胸に飛び込んできたのは宮藤だ。それを受け止める。

 

「やりましたよ!クリンさん!」

「おいおい、宮藤はサーニャを担いでただけだろ?」

「でも、助かったわ。」

 

 えへへ。と宮藤が笑う。私たちはそのまま基地に戻った。

 

――

 

 帰投してすぐに全員が集められて報告会が開かれた。その場で夜間体制は解除、夜間専従班も解体することが決定された。

 そして私と宮藤はみんながシャワーを浴びている間に治療をし、時間を遅らせてシャワーを浴びて部屋に戻った。

 

「それで……クリンさんの部屋はもう少し奥ですよね?どうしてここで止まっているんですか?」

 

 自室に入ろうとする宮藤が立ち止まったままの私を不審がってそう言った。

 

「別に、気にしないで。」

「は、はあ。」

 

 宮藤が部屋に入る。そしてその後に続いて私も入った。

 

「クリンさん?」

 

 宮藤はこちらを振り向く。私は重い口を開いた。

 

「あの……図々しいお願いだとは自分でもわかってるのだけど……。でも、久しぶりにぐっすり寝れて、助かったから……」

 

 要領を得ない私の言葉に宮藤は困惑する。言いよどんでも仕方ないから、私は覚悟を決めて伝えることにした。

 

「私を抱きしめて、一緒に眠って……?」

 

 最初は何を言っているのか、といった様子だった宮藤だったが、すぐに真っ赤になってしまった。

 

「そ、そそそそいういうのは……!」

「お願い、宮藤さん。実は酷い不眠症で、あなたの腕の中でなら眠れたの。だからお願い。」

 

 このとき、私は心地よい睡眠に飢えていたのかもしれない。私の話は結局要領を得なかった。だけど宮藤は私が不眠症であること、一緒に眠れば症状が緩和するかもしれないことは理解してくれた。

 

「私で良ければ……よろしくおねがいします。」

 

 私は、その夜はぐっすりと眠れたのだった。


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