二度目の人生をリリカルで   作:D,J

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※注意
今回の話はかなり「きたない」のでご注意ください


第12話

 ホモ怪人の噂が流れてから、しばらく。

 事態は収まる所か、更なる悪化を見せていた。

 

 ある日は、ある生徒が学校の帰りの途中、川の土手の下で茶色い何かを塗り合う全裸の親父達を見たという話を聞いた。

 

 ある日は、スポーツジムで筋肉ムキムキの外人の男達が互いのパンツを奪い合うレスリングのような光景に出くわしたという話を聞いた。

 

 ついには、留学生の「朴秀(ぼく・ひで)」少年が、下校中におじさんに捕まり、虐待の末に性的暴行を受けたなんて話も。

 

 海鳴市の至る所で、ホモが盛るという異常事態が起きていたのだ。

 警察も犯罪でなければ動けないし、時系列的にもまだ登場してない時空管理局に助けを求める事もできない。

 他の転生者も、ホモ怪人を恐れているのか動きを見せない。

 

 ので。

 

 「結局、俺達が行くしかない、と………」

 

 噂の場所である八点公園の前に立つ拓海は、ゴクリと息を飲んで呟いた。

 

 学校の人達の安全を考慮すると、もう拓海が動くしかないのだ。

 

 ホモ怪人………転生者と思われるそれとの戦い。

 初の対転生者戦という不安はあったが、それでもやらなければならない。

 

 『危険だと判断したら、すぐに逃げるでございますよ!』

 「わかった、それじゃ………」

 

 覚悟を決める、拓海とストレイジ。

 そして。

 

 『ご唱和ください!我の名をッ!』

 「ストレイジ!セーーットアーーーップ!!」

 

 ストレイジをセットアップし、いざホモ怪人退治に。

 まあ、掘られるのは嫌なので、危なくなったら逃げるんですがね。

 

 

 

 

 

 

 

 八点公園は緑が多い場所でも知られている。

 だが、それ故に薄暗く、死角が生まれ易い。

 

 なるほど、怪人の隠れ家にはもってこいである。

 

 全身の神経を集中し、辺りを見回しながら進む拓海。

 ストレイジも、ジャミングゴーグルを通したセンサーにより、辺りを索敵している。

 

 すると。

 

 『………マスター、見つけたでございますよ』

 「本当か?」

 『ええ、左の方に二人、男が居ます!』

 

 ストレイジが早速見つけたようだ。

 身を隠し、ストレイジの言った方向に目をやる。

 そこには………。

 

 

 

 

 

 

 

 ………道下は、幸せだった。

 

 大学に入ってから、自らがホモである事も相まって、寂しい日々が続いていた。

 どういう訳か海鳴はどこもかしこも美少女だらけで、彼好みのいい男は見当たらなかったからだ。

 

 だが、それももう終わった。

 ようやく、自分好みの「兄貴」に出会えたからだ。

 

 「所で、俺のムスコを見てくれ、こいつをどう思う?」

 

 目の前で逞しきモノを見せつけている、この男。

 名を「阿部(あべ)」というこの男は、ツナギ姿から解るように、普段は自動車整備工をして働いているらしい。

 

 あの日、彼に「やらないか」と誘われた事から、道下はこの八点公園のトイレが海鳴に住む数少ないホモ達の出会いの場………つまる所の「ハッテン場」だという事を知った。

 そして、トイレではじめて男同士でサカリをした事で、道下の文字通り薔薇色の日々が始まったのだ。

 

 ………まあ、その「はじめて」の内容事態は、気持ちはよくともグダグダというか、なんというか「くそみそ」な結果に終わったのだが。

 

 「すごく………大きいです………」

 「嬉しい事言ってくれるじゃないの、それじゃ、とことん楽しませてやるからな」

 

 今日は、道下の提案で野外で楽しむ事になった。

 阿部の阿部はガッチガチ。

 さっそく、大自然でのジョイント・ゴーをしようとした。

 

 「………と、その前に」

 

 だが、その直前阿部はジョイントをやめてしまう。

 どうしたのだろう?と道下が不思議そうな顔をしていると、阿部は背後に向けて一言。

 

 「隠れてないで出てきたらどうだ?」

 

 まさか?!

 気配を消していた拓海は、阿部に感付かれたと気付いた途端に、冷や汗が出てきた。

 

 自分の隠れ方が未熟なのもあるが、まさかこの男は転生者なのか?

 

 ………ならば。

 

 「………っだぁぁぁぁぁ!!」

 

 もうヤケクソである。

 ストレイジを振りかざし、阿部に向けて飛びかかる。

 

 非殺傷設定ではあるが、気絶ぐらいはいけるだろう。

 そう思い、何の迷いもなく振り下ろした。

 

 が。

 

 「ふんっ!」

 「な………ッ!?」

 

 拓海は、目の前の光景を疑った。

 阿部は、なんと素手でストレイジの一撃を受け止めたのだ。

 非殺傷設定とはいえ、魔力で強化された一撃を。

 

 「受け止めた!?何者だアンタ!」

 「ただの………自動車整備工さ!」

 

 バキィンッ!

 

 金属音………平成仮面ライダーで剣と剣がぶつかった時のようなあの音と共に、拓海は弾き飛ばされた。

 

 「くっ!」

 

 なんとか体制を崩し、地面に着地する。

 その睨む先では、道下を庇うように立った阿部が、不敵な笑みを浮かべながらツナギのホックを元に戻していた。

 

 「熱烈なアプローチをありがとう、でも、俺は子供には興味ないんだ、大きくなってから出直しな?」

 

 阿部はあくまで余裕の表情。

 デバイスでの攻撃を防いだ事を考えると、やはり転生者か?

 拓海は、そう結論付けた。

 

 「見境なく男を襲うのは止めろ!皆ホモが増えて怖がってるんだぞ!」

 

 相手は恐らく転生者。

 けれども、拓海はただでは引かない。

 ホモを相手にするのは怖かったが、自分の周りの幸せが破壊されるのはもっと怖かった。

 だから、生身でデバイスの攻撃を受け止める相手でも果敢に立ち向かうつもりでいた。

 

 「おい、ちょっと待て、見境なくとはどういう意味だ?」

 「へっ?」

 

 だが、阿部のストップが入る。

 

 「いやあんた………ノンケでも構わず食っちまうんじゃなくて?」

 「バカな事を言うな!俺はそんな強姦魔のような事はしない!」

 

 怒った阿部は、嘘を言っているようには見えなかった。

 噂と食い違う意見に、拓海は少々混乱しているようにも見えた。

 

 ………じゃあノンケかどうかを確認せずに道下にやった「やらないか」はどうなるんだとも思うが、それはそれ、これはこれだ。

 

 

 拓海は、阿部と道下にいきなり襲いかかった事を謝罪した。

 そして、今海鳴で起きている事と、人々を騒がせているホモの怪人の事についてを話した。

 

 「ノンケさえも襲うなんて、なんて奴だ!」

 「ただでさえホモは偏見で見られやすいのに、許せませんね」

 「ああ!そんな奴はホモの風上にも置けないな」

 

 阿部と道下は、ホモの怪人の悪行に怒りを燃やす。

 二人はホモだが、悪人では無さそうだ。

 

 「あなた達以外に、この公園で誰か見かけませんでしたか?」

 「そうだな、うーん………」

 

 拓海からの質問に、ここに来るまでの事を考える阿部。

 ホモの怪人が八点公園に出るなら、何か手がかりがあるかも知れない。

 

 「………そういえば」

 「そういえば?」

 「俺達の他にもう一人、公園に駆け込んできた男が居たな」

 「他には?」

 「いや、会ったのはそいつだけだ」

 

 ようやく手がかりらしい手がかりを見つけたと、拓海は喜んだ。

 だが。

 

 「でも、そいつは違うと思う」

 「えっ?」

 「だってそいつは、何か逃げているみたいだったからな」

 

 阿部の話によると、道下と今日のプレイの事を話しながら公園を目指して歩いていると、八点公園に駆け込んでくる一人の若い男を見たという。

 

 自分達のようにホモの相手を探しているのか?とも思ったが、どうも様子がおかしい。

 何かに怯えるような、もっと言えば何かから逃げるような表情を浮かべていたという。

 

 「でも、もしかしたらその人が、怪人の何かを知ってるかも………」

 「流石は道下、鋭い指摘だ」

 「えへへ………」

 

 阿部に誉められ、嬉しそうな道下。

 たしかに、あからさまに怪しいその男なら、ホモの怪人の何かを知っている可能性がある。

 その男を探そうと拓海が考えていた、その時。

 

 

 「ンアーーッ!!」

 

 

 突如響く、甲高い男の悲鳴。

 ここには、拓海と阿部と道下、そして件の男しかいないハズ。

 なら、あの声は。

 

 「あの男が走っていった方角だ!行ってみよう!」

 「はい!」

 

 まさか、今度こそホモの怪人が?

 拓海達は、声のする方へと駆け出した。


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