ゲーム内時系列は勿論、公式マンガや、ゲーム内で集める書籍の内容やちょっとしたNPCの小ネタまで挟みながら、原神の楽しさを知ってもらうために一生懸命書きました!
頑張って更新しますね!
プロローグ
冒険者は、七国を含むテイワット大陸全域に広がっている組織、冒険者協会に登録している者達を指す。
彼らの目的は『冒険』つまりは、旅であり、人助けであり、雑用である。
冒険者協会にはさまざまな人材がいる。
曰く、伝説の冒険者、曰く、断罪の皇女、曰く、西風騎士団の栄誉騎士。
他にも個性的な人材は様々だ。
かく言う私も、そんな冒険者の一人だが……まだこれといった通り名はない、そこまで目立って活躍しているわけでもないからな。
所謂、一般人に限りなく近い冒険者だ。
「さて、これで依頼分のスイートフラワーは全部か。後はイグサと、ドドリアンも取っていこう、誰かが必要としてるかもしれないしな」
囁きの森にあるイグサの群生地を抜け、道に沿って星落としの湖に向かう。
ここらへんは
囁きの森のような、鬱蒼とした場所を抜けなければ来れない場所のため、七天神像があるとは言っても人通りは少ない。
来るとしても中継拠点を置く冒険者協会の会員か、もしくは
最近は何故か二十日に一度くらいの頻度で
「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
湖辺でドドリアンを摘んでいると、どこからか悲鳴のようなものが聞こえてきた。
なんだ?方角は……南か?
たしかこの方角には小さくとも丘々人の集落があったはず……。
考えていても仕方ない、道具袋の中に入れていた臭い消しで、簡易的であれ"人間の臭い"を消し、姿勢を低くしたまま音源に向かう。
滅多に人が来ないとはいえ、ここも一応
聞いた話では、以前、囁きの森周辺で赤い服を着た少女を見かけたという事を耳にした事がある。
幼い子供ですら、来ようと思えば来れてしまう場所なのだ。
この件についてはいつのまにか栄誉騎士殿が解決していたが、あの人にいつまでも頼っているわけにはいかない。
「ひぃ〜!やめて!誰か助けてくれ〜〜〜!」
目標物が見えた。
あれは……パラドか? こんなところで何をして……いや、今はそんなことはいいか。
救出対象は視認した、後はどう助けるかだが……。
丘々人の戦力を確認する。
見張り台は無し、こん棒持ちが4体、大盾持ちはいない……か。
「アンバーさんに教えてもらった方法を試してみるか」
その場で手ごろな石を複数個拾い、木の上から様子をうかがう。
丘々人は、知能が低く原始的な生活を続ける奴らではあるが、だれかれと構わず襲い掛かることはあまり進んでやりはしない。
武装した相手や、豊富な物資を持つ商人などには積極的に襲い掛かるが、何も持っていない相手には、大きく刺激しない限り怪我を負わせることはほとんどない。
だが、パラドは既に丘々人の縄張りの中に入ってしまっている。
いつまでも安全が保障されているわけではない。
なら……。
―――ヒュコッ!
「Ga gya!!」
「Muhe ye!?」
一体命中。
指ではじいた小石を遠距離から狙い撃つ。
神の目を持たず、元素力を操ることのできない冒険者にとっては、こういった小手先の技術もまた重要。
なにより危険を冒さずに脅威を排除できるのは遠距離攻撃様々だ。
「Zido! Zido!」
あわてた他の奴らが警戒するが……もう遅い。
―――カコッ!バキャッ!ゴツンッ!
俺はもう位置を変え、石を射出し、そして今命中したところだった。
……我ながら、卑怯で地味な戦い方だとは思うが、生存に特化し、無茶や無謀や計算外の要素をすべて排除した戦いというものは、得てしてあっさりとしたものなのが、世の常だ。
「大丈夫か?"うっかりパラド"」
「あ、あぁ!冒険者!助けに来てくれたんだな!ありがとう、君が助けに来てくれなかったら、今頃どうなっていたか……」
「たらればの話をしてもしょうがない、お前は冒険者としての危機管理能力に重要な欠陥がある。そんなお前が気を付けてどうなる話とは思っていないが、今後はなるべく丘々人の縄張りには近づかないことだ」
「あぁ、気を付けるよ、本当にありがとう!君は命の恩人だ!」
「礼はいい」
そういいながら俺は右手をパラドの前に差し出す。
それを見たパラドは、嬉しそうにこっちの手を握り返してくるが……そうじゃない。
「違う、私は何も握手したかったわけじゃないぞ」
「え?」
「仮にも冒険者が、無償で人助けをするわけないだろ、自分の危機に見合った報酬を払いな」
「え、あ、すまん!すぐに用意するよ!」
その後、あわてたパラドがモラの入った袋の中身をぶちまけたりすることもあったが、報酬として6000モラを受け取り、無事モンドに帰還した。