あれ、全部の報酬獲得しようと思ったら全てのボスを3000ポイント台で倒さないといけないらしいっすよ?
無理じゃね?風で心折れたんだけど。
制限時間の縛り付けるなら、せめて遅延技修正して欲しかったわ。
まぁクリアするんですけど。
「その時、私は何かの気配に気付き、振り向くと、そこには盾持ちの
「おぉー、それは大変だ!どうやって切り抜けたんだい?」
「奴らの盾が炎元素に弱いってのは有名な話だ、それに
「あっはは!確か、仮面が割れていると価値が落ちて、もらえる報酬額が減っちゃうんだって?」
「そうだ、だからと言って完全に無傷ってのは至難の業なんだが、依頼主に文句でも言ってやりたいものだ」
あれからしばらく、ちょっとした冒険話をウェンティに話して聞かせていた。
どれもこれも、『
俺はそれが嬉しくて、ついつい語りにも力が入ってしまう。
「そういえば、君は弓を使うんだよね?」
「何故疑問系で聞くんだ?実際に弓使いだし、さっきまでの話でも弓を使っていただろう?」
「いや、君の手」
「ん?私の手がどうしたんだ?」
気になって自分の手を見ても、いつもと同じゴツゴツとした手があるだけだ。
「ボクもこれで一応は人を見る目はあるからね。君の重心の位置や筋肉のつき方は、明らかに弓使いとは異なるって事は分かるさ」
「それは……」
「ベント、君は剣も使えるんだろう?もしくは、長い期間使っていた事があるとか」
「……違う」
「違わないさ、君の纏うそれは、長い間柄を握り剣を振るったものの放つ剣気だ。手にマメが出来ても握り、血が滲んでも振るのをやめなかった努力の証」
翠緑の瞳が全てを見透かすようにこちらを見つめる。
まるで心を覗き見られたように感じて、咄嗟に目を逸らす。
だが、自分に嘘は付けない、それに、何故か彼には打ち明けてもいい気がした。
「ありがとうなウェンティ、だが本当に違うんだ。確かに私は剣を振るった事がある、なんなら今でも日常的に振り続けている。だが、それはあくまで個人的な趣味であって、実戦に使えるものじゃない……」
それこそ、幼い頃から独学で剣を振るい続けていた程だ。
だがそれは……"俺の努力"は"俺の才能"に負けた。
「こればかりは天賦の問題なんだろうな……どれだけ努力しても、剣の腕は弓の技量を超える事は無かった。それは、私がどれだけ努力しても物語のヒーローのようにはなれないと、自分自身に言われているようで……」
「でも君は諦めていない、だろう?」
「っ……あぁ、そうさ、笑うか?」
「いいや、君は素晴らしい人間さ、それこそ、君を主人公とした詩を作ってもいいくらいにね」
「冗談だろう?」
「いいや、本気さ、君はそれほどの人間だ」
風が吹く。
『自由』を象徴する風が吹く。
ウェンティは帽子が飛ばされないように押さえながら、俺に手を差し出す。
その手には、灰色ながらもキラキラと光る石があった。
「君へのプレゼントだ、ベント、受け取ってくれるかい?」
「これは……?」
「それは星屑、まだ運命の定まっていない『名も無き星屑』きっと君の役に立つだろう」
有無を言わせないようにその星屑を俺に押し付けると、ウェンティは風に乗って、風の翼を広げて飛び立つ。
「モナという占星術師がいる!彼女はとても偏屈だけど、きっと君の『冒険』の役に立つだろう!尋ねてみるといいよ」
不自然に発生した上昇気流に乗りながらこちらに語りかけてくる。
「またね、『冒険』を夢見る『冒険者』よ」
そういうと、彼はもう遠くの空へと飛び上がっていった。
思い出したかのように腹がグゥと鳴り、空腹を伝えてくる。
いつの間に話し込んでいたのか、夕焼けまでとは言わないまでももう昼を過ぎて日が傾いており、鹿狩りの人混みも無くなっていた。
こんな時間になってしまったが、とりあえずは飯の時間にしよう。
※ウェンティのセリフの一部を変更しました。