風鎧の冒険者   作:天魔宿儺

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無相の交響曲始まりましたね。
あれ、全部の報酬獲得しようと思ったら全てのボスを3000ポイント台で倒さないといけないらしいっすよ?
無理じゃね?風で心折れたんだけど。
制限時間の縛り付けるなら、せめて遅延技修正して欲しかったわ。
まぁクリアするんですけど。


天賦

「その時、私は何かの気配に気付き、振り向くと、そこには盾持ちの丘々人(ヒルチャール)が5体もいた!」

「おぉー、それは大変だ!どうやって切り抜けたんだい?」

「奴らの盾が炎元素に弱いってのは有名な話だ、それに(いしゆみ)持ちが居ないなら話は単純、私は火矢を放ち、奴らが盾の炎上に慌てふためいている間に、一体ずつ頭を打ちぬいてやった! 討伐後の仮面が破損しちまったのは痛いがな」

「あっはは!確か、仮面が割れていると価値が落ちて、もらえる報酬額が減っちゃうんだって?」

「そうだ、だからと言って完全に無傷ってのは至難の業なんだが、依頼主に文句でも言ってやりたいものだ」

 

あれからしばらく、ちょっとした冒険話をウェンティに話して聞かせていた。

どれもこれも、『(はなし)』というにはお粗末な、田舎の少年が狩りで猪を仕留めたと話す程度の、なんてことない話だったが、それでも彼は楽しそうに聞いていてくれた。

俺はそれが嬉しくて、ついつい語りにも力が入ってしまう。

 

「そういえば、君は弓を使うんだよね?」

「何故疑問系で聞くんだ?実際に弓使いだし、さっきまでの話でも弓を使っていただろう?」

「いや、君の手」

「ん?私の手がどうしたんだ?」

 

気になって自分の手を見ても、いつもと同じゴツゴツとした手があるだけだ。

 

「ボクもこれで一応は人を見る目はあるからね。君の重心の位置や筋肉のつき方は、明らかに弓使いとは異なるって事は分かるさ」

「それは……」

「ベント、君は剣も使えるんだろう?もしくは、長い期間使っていた事があるとか」

「……違う」

「違わないさ、君の纏うそれは、長い間柄を握り剣を振るったものの放つ剣気だ。手にマメが出来ても握り、血が滲んでも振るのをやめなかった努力の証」

 

翠緑の瞳が全てを見透かすようにこちらを見つめる。

まるで心を覗き見られたように感じて、咄嗟に目を逸らす。

だが、自分に嘘は付けない、それに、何故か彼には打ち明けてもいい気がした。

 

「ありがとうなウェンティ、だが本当に違うんだ。確かに私は剣を振るった事がある、なんなら今でも日常的に振り続けている。だが、それはあくまで個人的な趣味であって、実戦に使えるものじゃない……」

 

物語(フィクション)への憧れを捨てきれず、剣を振るい敵を打ち倒す勇士にならんとする努力を怠った事はない。

それこそ、幼い頃から独学で剣を振るい続けていた程だ。

だがそれは……"俺の努力"は"俺の才能"に負けた。

 

「こればかりは天賦の問題なんだろうな……どれだけ努力しても、剣の腕は弓の技量を超える事は無かった。それは、私がどれだけ努力しても物語のヒーローのようにはなれないと、自分自身に言われているようで……」

「でも君は諦めていない、だろう?」

「っ……あぁ、そうさ、笑うか?」

「いいや、君は素晴らしい人間さ、それこそ、君を主人公とした詩を作ってもいいくらいにね」

「冗談だろう?」

「いいや、本気さ、君はそれほどの人間だ」

 

風が吹く。

『自由』を象徴する風が吹く。

ウェンティは帽子が飛ばされないように押さえながら、俺に手を差し出す。

その手には、灰色ながらもキラキラと光る石があった。

 

「君へのプレゼントだ、ベント、受け取ってくれるかい?」

「これは……?」

「それは星屑、まだ運命の定まっていない『名も無き星屑』きっと君の役に立つだろう」

 

有無を言わせないようにその星屑を俺に押し付けると、ウェンティは風に乗って、風の翼を広げて飛び立つ。

 

「モナという占星術師がいる!彼女はとても偏屈だけど、きっと君の『冒険』の役に立つだろう!尋ねてみるといいよ」

 

不自然に発生した上昇気流に乗りながらこちらに語りかけてくる。

 

「またね、『冒険』を夢見る『冒険者』よ」

 

そういうと、彼はもう遠くの空へと飛び上がっていった。

思い出したかのように腹がグゥと鳴り、空腹を伝えてくる。

いつの間に話し込んでいたのか、夕焼けまでとは言わないまでももう昼を過ぎて日が傾いており、鹿狩りの人混みも無くなっていた。

こんな時間になってしまったが、とりあえずは飯の時間にしよう。




※ウェンティのセリフの一部を変更しました。

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