電子の世界であいましょー   作:青いカンテラ

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その1:始めの始め。

【○月×日/晴】

 

 思い立ったが吉日、という言葉がある。物事というのはやろうと思ったその日に初めてしまえとかなんとか、なんだかんだそういう意味だったような気がする。

 違うかもしれないが、そういうことにしておこう。ふふふ、言葉とは生き物でありそれの内包する意味もまた時代と共に移り変わっていくものだからな。そして言葉の意味を変えていくのは次世代を担う若人なのだ。

 

 とまあ、そんなわけでだ。

 私は、九頭竜哀歌はじーびーえぬというゲームを始めたいと思った次第なのである。

 

 TVでCMバンバン流してるし、クラスのみんなもなんか楽しそーにしてるし、何ならうちの姉ちゃんもハマっているとなれば、気にならないわけがなく。

 そしてわたしはししゅんきとくゆうのあれだとか、流行に乗って周りに迎合したくないとか言ってるひねくれぼっちだとかでもないので普通に興味がある。興味自体はあるのだが、じーびーえぬを遊ぶ上で不可欠なガンプラというものにはあまりいい思い出がない。

 

 自分の日記で、自分に対してもったいぶるのも変な話なので、それについてはさらりと簡潔に書くけれど。

 まあ、よくある話と言えばよくある話。じーびーえぬが流行る前に流行っていたガンプラバトルシミュレーター、通称GPD。そのGPDでひどい目にあった。それだけの話。

 

 

 

【○月×日/晴】

 

 何かおススメのガンプラってありますか?

 

 その言葉を試合開始のゴング代わりにして始まるのは、おススメのガンプラをおススメするバトルだ。

 まずガンプラといってもその数は星の数ほど・・・は言いすぎだとしても、何百何千と種類があって、同じガンプラでも新旧があって、さらに古くなるとパーツの色分けはされてないわ間接は固定されてるわそもそも組むのに接着剤が必要だったりする。

 

 とかく種類が多いというのはそれだけ、ガンプラには長い歴史があるということに他ならない。GBNを始めるにあたって、まず用意するのはガンプラだ! と意気揚々とガンダムベースに来たのはいい。

 けれどわたしを出迎えたのは、ワゴンや棚に山と積まれ多種多様とはつまりこういうことだとばかりに種類豊富なガンプラの箱。箱。箱。ガンダムといえばSEEDとダブルオーくらいしか知らないわたしには、それ以外は同じに見える。

 オウフ・・・サブカルチャーを知らない一般人の気持ちがほんの少しわかった気がするぜ・・・。ほんの少しだけね!

 

 それで、まあ、どれがいいとか悪いとかよくわからねぇな困った、となったわたしはガンダム談義に花を咲かせていた見るからに背景モブみたいな(超絶失礼)オトコノコ二人に最初の質問を投げかけた次第なのである。

 

 その結果は書かなくてもわかるだろう。

 戦争、戦争である。片ややたらとガンダムをプッシュしてくるひょろい眼鏡くん。片やザクやゲイツといった量産機を押してくる前髪で目元が隠れている中肉中背なメカクレくん。

 

 二人は次第にヒートアップしていき、ついにはわたしを置いてけぼりにして危険な領域へと突入する・・・!!

 

 ガンプラバトルで決着をつけようぜ! といってどこかに行ってしまった。ドウイウコトナノ。

 まったく、わたしという美少女を置いて自分たちの世界に入り込んでいってしまうとはなんてやつらだ・・・。

 

 

 

【○月×日/曇り】

 

 鉄血のオルフェンズ、という作品がある。

 ガンダムシリーズとしては新しいほうの作品で、なんとこの作品、MS戦では必ずと言っていいほどに出てくるビーム兵器がほとんど出てこないのである。

 それというのも、オルフェンズの世界ではMSや戦艦といった兵器には装甲に特殊なコーティングが施されていて、ビーム兵器を弾くらしい。そのせいで効果の薄いビーム兵器はいつしか廃れていき実弾や実体剣といった物理攻撃が主流になったのだとか。

 

 当たれば即死なビーム兵器がないからか、敵も味方もやたらと固く、実弾や実体剣や鈍器で殴り合うというのはなんとも新鮮で、わたしはオルフェンズのMSを使いたいと思い始めていた。

 実弾、いいよね。ビームが強いから押され気味だけど、高火力になればなるほどエネルギーをドカ食いするビーム兵器と違って、実弾兵器はエネルギー消費が少ない。実際たくさん積めばたくさん撃てるのだ。実弾兵器のパワーはすばらしいぞ。

 

 そんなわけで、ガンダムベースで買ってきましたわたしのガンプラ! 鉄血のオルフェンズに登場するテイワズ? とかいう組織の量産機、漏影(ろうえいと読むらしい。一部のMSの名前が漢字表記なのもオルフェンズならではっぽい。カッコいい)。

 それと、ガンダムベースの入り口んところでショーケースに入れられてた小さなオンナノコ(えるだいばー? とかなんとか言ってた。よくわからん)にススメられたへびーあーむずいーげる装備? とかいうのも買っておいた。

 わたしはガンプラには詳しくないからよくわからないが、カワイイオンナノコに買って損はないですよ~、と言われて買わないという選択肢はないのだ。例えそれが営業スマイルなのだとしてもな・・・!!

 

 わたしはカワイイオンナノコの笑顔にめっちゃ弱いのである。仕方ないね。

 

 

 

 ・・・あ、しまったニッパー買うのを忘れた。




TIPS:

九頭竜(クズリュウ) 哀歌(アイカ)
 本作の語り部。日記をつけている子。GPDでボロ負けしたことが切っ掛けで、しばらくガンプラから離れていた。
 連日のようにTVCMが流れるGBNに興味を持ち、ガンプラの壊れない世界でもう一度ガンプラバトルをするために、最寄りのガンダムベースへと赴く。そこでたまたま目に付いた『鉄血のオルフェンズ』に登場するMS『漏影(ロウエイ)』と、ELダイバーの少女にお勧めされた『ガンダムヘビーアームズ(イーゲル装備)』を入手する。

 強力だがその分燃費の悪いビーム兵器よりも、たくさん積めてたくさん撃てる実弾兵器の方が好み。



【ELダイバーの少女】(守次 奏さん作:【ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ】【ガンダムビルドダイバーズ アナザーテイルズ】)
 ご存じ、銭ゲバロリことチィである。実弾系の武装を積んでいる機体で何かいいのは何かと聞かれたため、余っていたヘビーアームズ(イーゲル装備)をお勧めした。

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