この素晴らしい世界に二人の探偵を!   作:伝狼@旧しゃちほこ

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「ヒロインの英語表記をHERO-INにしてヒーローが一番守りたい存在って意味にしたいけどどうかな」

「勝手にしろと思ったけどちょっといいなって思って悔しい」


Gに気を付けろ/崩れ去る日常

 『緊急!緊急!冒険者の方々は直ちに正門に集まってください!特にサトウカズマパーティーの一行は大至急お願いします!』

 

 魔王軍幹部が初めて襲来し丁度一週間が経過した朝、こんな放送とともに目を覚ました。

 

 昨日は久しぶりに探偵っぽい仕事が舞い込んできて張り切ったせいか未だに疲れが残っている。

 

 「……行くか?」

 

 「本心を言えばもう少し眠っていたい」

 

 フィリップのわがままに同感してしまう。実際、戦いになれば厳しいものがある。

 

 だが、問題を引き起こしたのはあいつらだ。自分達の問題は自分達でなんとかすることがけじめみたいなものもある。ここではもう大人扱いらしいしな。

 

 「ま、お子さまには変わらねぇか」

 

 ゴソゴソと身支度を整え始める。最後に覚悟の帽子を被り気合いを入れる。

 

 「せめてウィズの店に移動しておいてくれよ」

 

 フィリップは何も言わず右手を挙げる。今日の依頼はーーいつもの日常を守れ、だ。

 

 

 

 正門に到着する頃、いつもの鎧を着て同じところに向かっているダクネスの姿が見えた。

 

 「事態は分かってるよな?」

 

 「ああ。恐らくあのデュラハンだろう。私達が起こした問題だ、自分達で何とかする」

 

 自分達のせいだという自覚はあるようだ。よっぽど、ダクネスはあのパーティーじゃ最年長だ。性癖さえどうにかなれば真面目で頼りにはなる。

 

 問題はアクアとめぐみんの二人だ。めぐみんは喧嘩っぱやいし、アクアは面倒事も去ることながら少し自信過剰なところもある。能力は高いがそれに据えてサボるタイプだ。

 

 群衆の最後尾に到達すると、あのデュラハンの声が聞こえた。会話の内容を聞くにどうやら仲間を見捨てたことにご立腹のようだ。まぁ、間違っちゃいない。呪いをかけたのはお前だけどな!

 

 「や、やぁ……まさか敵側から心配されるとは思わなかった」

 

 人々をかき分け、ダクネスが前に出る。平気な姿にデュラハンの素頓狂な叫びが轟いた。

 

 「プークスクス!もしかして呪いが解けたことも知らずにずっと城で待ってたの?うけるんですけどー!」

 

 アクアの小馬鹿にした言い方に呆れたため息をついてしまう。お前、そういうののせいで問題を起こしてることいい加減学んだらどうだ。

 

 「えっと……デュラハンでいいよな」

 

 「お前は確か、まともに話が通る冒険者だったな」

 

 そんな覚え方されてんのかよ。ま、怒り心頭だったあいつが少し冷静さを取り戻したならそれでいい。

 

 「俺達としては呪いが解けたなら行かないに越したことはないからな。悪いことをしたっていうと変な感じになるけど……それで、調査とやらは終わったのか?」

 

 「それならもう終わっている」

 

 普通に話してるけどこれおかしいよな?例えりゃドーパントの犯罪者を説得してるみたいなもんだ。それで止まるならどれ程良かったか。

 

 チンピラ冒険者なんかよりよっぽど話が通じてるっていうか……人間の闇なんてたくさん見てきたつもりだったけどまだまだあまいみたいだ。

 

 「実はこっちもこっちで都合が悪くてよーー」

 

 「そうよ!あんたのせいでろくにクエストも受けられなくて困ってるのよ!おかげで借金まみれの私をどうしてくれんのよ?!」

 

 不良の言いがかりみたいなこと言うんじゃねぇ。

 

 「そんなこと知らんわ!大体、私がここに来たのはもう一つ理由がある。なぜ爆裂魔法を撃つのを止めん!」

 

 俺とカズマはほぼ同時にめぐみんに視線を送った。自分は悪くないと、そんな態度でめぐみんも目を反らすとカズマの制裁が下った。

 

 「いたっ、やめっ、止めてくだひゃい!」

 

 「反省が出来ねぇのかお前は!大体お前撃ったあと動けなくなるだろうが。てことは共犯者がいるだろ!」

 

 「言っておくけど私じゃないからね。私がそんなことするはずないじゃない。女神だし、ここ毎日ずっと朝から夕方までアルバイトだったんだから」

 

 早々に否定する奴が大抵犯人だってこと知らねぇのかこいつは。しかしアリバイがあるならーーなんで身内で犯人探ししてんだ。

 

 「アルバイトは昼からじゃなかったのか?てっきり朝は遊びに行ってるものだと……」

 

 ダクネスの証言によって一発でアリバイが崩れ去る。そしてーーめぐみんは静かにアクアを指差した。

 

 「ふざけてんのかお前は!」

 

 「ち、違うのよ!元はと言えばあんなところでうろちょろしてクエストをさせないあいつが悪いんじゃないのよ!」

 

 自称女神が言うことかよ。やっぱりそんなこと言う奴にろくな奴はいない。

 

 「無視するな!」

 

 デュラハンの怒りの声が響いた。やばい、どう考えてもこっちの分が悪い。クエストが少なくなったのはあいつのせいだけどそれで一時的に平和になったのは事実だし、何よりあいつから手出ししてない。

 

 「もう許さん……全員切り捨ててやる!」

 

 大量のアンデッドを従え襲いかかる。ボロいとはいえ一端の鎧と剣を携えている。一方の俺はといえば防具も着けずに格闘術だ、勝てる手段が見えない。

 

 「おい、アンデッドって何が効くんだよ?」

 

 「プリーストが使う浄化魔法か聖水が基本だ!」

 

 だからアクアの奴、あんなに強気だったのか!

 

 「だったら俺がこの間成り行きで覚えた魔法も……!」

 

 「あっ、おい!」

 

 「【プリュフィケーション】!」

 

 骸骨の首根っこを掴み唱える。しかしなに食わぬ様子で止まるとまるで効いていないように動き出す。振り上げられた剣を避けて俺は再び逃げ始める。

 

 「ダメじゃねーか!」

 

 「幹部の部下だし当たり前だろ!それにプリュフィケーションは状態異常を治すのが目的だ!」

 

 「早く言え……よっと?!」

 

 自分でも驚きの反射神経で剣を真剣白羽取りで止める。火事場の馬鹿力って言うけど、やれば出来るもんなんだな……

 

 僅かな鮮血を感じながらも強引に蹴り飛ばす。体制を崩したが深追いはしなかった。

 

 「浄化ってことはアクアならなんとか出来んだろ、あいつはどうしたんだよ!」

 

 「誰かー!」

 

 アクアの声が聞こえ、二人で見るとそこには他の人達よりも遥かに多くのアンデッドに追い回される姿があった。あれじゃ魔法を撃つ隙もねぇな……

 

 「カズマ、俺は聖水を持ってくる。アクアと協力して数を減らせ」

 

 「なんで俺なんだよ!翔太郎の方が強いだろ!」

 

 「っても同じ冒険者なんだからそこまで変わらねぇだろ……確かにスペックで言えば俺が上だ。でもあいつらを扱うにはお前の方が長けてるだろ。それに冒険者だからこそ出来ることがある」

 

 前方から接近するアンデッドナイトの攻撃を避け、翔太郎は渾身のハイキックを、カズマは体重を乗せたショートソードの一撃を見舞った。

 

 「普段は邪険扱いされる俺達だ。でもここぞという場面で逆転への一手になる。俺が保証してやる。お前は切り札だってな!」

 

 「……しょーがねぇなぁぁぁ!アクア、こっちに来い!めぐみんは町の外で爆裂魔法の準備!」

 

 翔太郎からの熱い声援に背中を押され動き出すカズマ。すぐに救援に向かうから少し堪えてくれ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 聖水があるらしい教会。しかし、既にほとんどの冒険者や町の人々が協力してくれたおかげか残っておらず誰もいなかった。

 

 しかし寧ろ好都合。俺はダブルドライバーを装着する。

 

 【Joker】

 

 【ジョーカーメモリ】を起動させると同時に、ダブルドライバーの右側に【サイクロンメモリ】が送られてくる。それを装填し、左手に握ったジョーカーメモリを装填する。

 

 「変ーー」

 

 ドガァァァン!

 

 遠方からの轟音に驚きバランスを崩す。今のはめぐみんの爆裂魔法だな……じゃあ尚更急がねぇとな。

 

 『少しだが怒りの感情が見える。邪魔されて怒ってるのかい?』

 

 「んなわけあるか。変身!」

 

 【Cyclone×Joker】

 

 もう一つの姿に変身した翔太郎達は風を纏い教会を飛び出す。屋根を伝っていきながら地上での様子を伺うと、各々の冒険者が必死に戦っている。

 

 『助けにいきたい気持ちは分かるが、今はデュラハンを先決しよう』

 

 「分かってるっつーの!」

 

 スピードを速め一気に正門にたどり着く。先程の爆裂魔法に少し巻き込まれたのか、カズマとアクアの二人がデュラハンの目の前で倒れている。めぐみんは言わずもがな。

 

 「おい、アクア!」

 

 「分かってるわよ!喰らいなさい、【ターンーー】」

 

 「遅いわ!」

 

 振り下ろされる大剣がアクアに迫る。が、なんとか間一髪でアクアの救出に成功しデュラハンの攻撃が空振る。

 

 地面に着地しデュラハンを睨む。突然の出来事にアクアは瞳をパチクリさせている。

 

 「……何者だ。緑と黒の半分のモンスターなど聞いたことないぞ」

 

 「だったらちゃんと教えてやる。俺達はW(ダブル)。この町の涙を拭う二色のハンカチにして、仮面ライダーだ」

 

 アクアを下ろし両手をはたく。

 

 「…………」

 

 『どうしたんだい?』

 

 「いや、今回に関しちゃ言えるのか迷ってよ……」

 

 『これは相手だけに投げ続ける言葉じゃないだろう?』

 

 「そうだったな。んじゃ、行くぜ相棒」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

 

 

 

 

 

 

  


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