「進んで……進んでるって。多分」
「いつから探偵からストーカーにジョブチェンジしたのかしら」
「ジョブチェンジした覚えはねぇ。どっちかっつーと俺が受ける仕事にお前が来てるだけだ」
デストロイヤー騒動が終わって一週間も経過しない頃。未だアクセルの町は歓喜に包まれていた。
だが俺達に休みはない。今日も今日とて警備の依頼をこなす。むしろ盗賊職はこういう落ち着かない時を狙ってくる。
「これで三回目かしら」
「四回目だな。お前だったら俺をぶつければとりあえずなんとかなるだろって思われてる」
そんな風に思われてること自体腹が立っている様子のメリッサ。今はそんなことではない。
「サシでやらせてくれって頼んでるから応援は来ねぇ。……メモリ、どこで手に入れた」
「関係ないでしょ」
「関係ある。メモリがどれだけ危険か教えたよな」
「ええ。多少のリスクぐらい当然よ。それだけの価値はあるわ」
胸元から取り出し、愛おしそうにメモリに口づけをするメリッサ。既に魅了されてしまっているようだった。
「今まで手加減してきたが、今回は本気でいかせてもらう」
「今までも本気だったんじゃないの?」
【Queen】
全てを掴みとるように、メモリが掌に侵入する。【クイーン・ドーパント】に姿が変わり、向こうも容赦しない姿勢を見せる。
「
いないと、というより力は必要だ。あいつは今屋敷にいる。急に変身の為に倒れたりでもしたらカズマらが焦るだろう。何より先に攻撃を仕掛けてくる。
しかもここ以外には監視の目も多い。秘密にしている以上ばらす訳にはいかない。
「本気なのかよ」
「もちろん。協力関係がなくなるのは残念ね。あの子の頭脳は優秀だったし。でも、元に戻るだけ」
薄いバリアを展開し自らの手で砕き、破片をこちらに仕向けてくる。攻撃より防御特化のメモリだ、そっち方面は乏しいだろう。
しかもあのデストロイヤーの熱暴走を耐える耐久力を誇っている。
「冥土の土産に教えてあげるわ。これ、カジノで手に入れたの。ちょっとした仕事よ。確か……クイーンのロイヤルだったかしら」
「丁寧な説明をどうも」
正直な話、盗賊もといトレジャーハンターが職業になっていて、それの活躍で助かってる奴らがいるってことに驚きを隠せない。
そもそも強盗や殺人犯の相手はしてきた。けどトレジャーハンターってのは風都博物館の館長の響子さんぐらいしかパッと思い付かねぇし、あの人にもスイッチがある。どっちかっつーと冒険家だし。
こいつに現場で顔合わせするのは何回もあるし、誰かを殺したとか、そういう経歴もない。俺のハードボイルドがそうであるように、あいつにもトレジャーハンターの美学がある。
でもーーメモリを手にしてしまった以上、殺めてしまう可能性はある。
こういう展開、なんかのドラマで見たことあるな……ああ、ライバルが負けそうになるのを助けるとかそういうのだ。
「お前を捕まえるのは俺だ。殺人犯としてじゃなく、な」
【Joker】
ジョーカーメモリを起動させ身構える。飛んでくる破片が服や皮膚を切り血が滲み出る。それにも構わず俺はロストドライバーを装着する。
「変身!」
【Joker!】
いつぶりかの単独変身。仮面ライダージョーカーに姿を変えたクイーン・ドーパントは警戒を強める。
素早い接近にすぐさまバリアを展開させる。しかし渾身の右ストレートはバリアを割り、生半可のものでは無理だと分からせる。
連撃を入れられる前にジャンプし空中へ避難する。足場のバリアに向かって翔太郎も飛び上がり、なんとかバリアの片隅を掴んだ。
「離しなさい!」
「離さねぇ。確かに俺とお前は犬猿の仲だ。でもな……」
ガンガン踏みつけてくる痛みに堪えながら無理やり振り払い、同じ土壌に立った。
俺はどうすることもなく、ドーパントのメリッサの両肩を掴んだ。
「例えなんであったとしても、それは必ずお前を壊す。だからメモリをーー」
「鬱陶しい!」
凪払いに遭い、翔太郎はバリアの足場から転落する。負けじと立ち上がるも、そこには既にクイーン・ドーパントの姿はなかった。
変身を解除しようとするもその場で手を止める。俺はあいつに対してどうしたいんだろうか。ときめの時と同じように全うに生きろ、なんて程簡単なことじゃない。
俺が探偵に誇りを持っていることと一緒に、あいつもトレジャーハンターに誇りはあるはずだ。じゃなきゃやらないはず。
「それでも
改めてドライバーに手をかけると照明が当てられる。いきなりのことに顔を覆うと、そこには何人かの警備が構えていた。
こりゃまずいパターンだ。デュラハンの一件以来、未確認モンスターとして見られてる以上懸賞が懸けられている。
一斉に【バインド】を発動してくる警備達。当たり前だ。今の俺を見て探偵だとは思わない。
俺は逃げ去るように森の中に入っていった。
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メリッサを逃がして翌日。街中を探し回ったが姿は見つからなかった。まぁ、当たり前っちゃ当たり前か。
流石にデストロイヤー討伐に関しての一件も収まり日常が動き始めた。またしばらくは……それよりメリッサの情報収集がない分、こっちから動き始めるしかない。
一旦探偵家業を休みにしてメモリ回収を優先するか。冬場はモンスターも少なくなるらしいのでこれといった依頼もないらしいからな。
そんなことをフィリップと話しながらギルドにやって来ると、何やらいつもと違った雰囲気を醸し出していた。
「来ましたね」
「あんたは確か……セナさんだったな。こんなところでどうしたんだ?」
セナさんは検察官を勤めている。これでも警察とは繋がりがあるのでちゃんとした面識はないもの、人相絵程度は見たことがあった。
「左翔太郎。貴方を国家転覆罪の容疑で逮捕します」
「はぁ?いやいや、仮にも探偵だぜ。そんなことするかっての」
仕事に厳しい人と聞いていたが何を言ってるのか分からなかった。今までだって警察とは協力してきたし……だからと言って本当だったらあれだけどな。
「先日倒されたデストロイヤーについて、原動力であるコロナタイトが貴族アルダープ邸に送られた。指揮者は貴方ともう一人、サトウカズマだと聞いている」
覚えしかなかった。
「死人は?」
「先に避難をしていた為に怪我人も出ていない。最近の貴方の活躍はこちらにも入っていますが残念です」
言葉では言うものの、瞳の奥は少し冷たさを感じた。テロリストとは戦ったが今度はこっちがテロリスト側かよ。
ここで弁明したところで状況は変わらないだろう。実際に被害が出ている以上何を言っても意味はない。
「全体の指揮者は俺だ。カズマもそれに従っただけ。連れてくのは俺だけにしろ」
背後で先程まで問い詰められていたあろうカズマに視線で合図を送る。何も言うなと、一種の圧力だった。
「いいでしょう。しかし不十分と見なした場合、サトウカズマにも動向して貰います」
「最後に一言ぐらいいいか」
セナは表情を崩さぬまま頷いた。俺は相棒の元に近づき耳打ちする。
「頼りっぱなしで悪い」
「謝罪は必要ない。君はやれることをやったんだ」
兵士二人の間に挟まれ、俺はセナの後をついていく。
ギルドから翔太郎らが出ていくと同時にカズマが口を開いた。
「翔太郎も俺も、ここにいる皆が町の為に戦ったのにあんな仕打ちはねぇだろ!」
また自分のせいで濡れ衣を着せられたように感じたのか、怒りの感情を吐き捨てる。
「落ちつきたまえ。まだ確定した訳じゃない。容疑ということはまだこれから取り調べがあってそれから裁判だ。そこでひっくり返せばいい」
「しかし取り調べなんて二日もあれば終わってしまいます。それまでに反論材料が集まるでしょうか」
さぞ自分は知能が高いですよアピールをするめぐみん。無理やり爆裂道に引き入れた癖にそんなこと言うな。
一考するフィリップ。ここにいる全員は何かしら二人に世話になっている奴らが多い。協力すればどうにかなるかもしれないが証拠集めとなると難しい。
「それだったらダストが軽犯罪やってごねれば一日くらい猶予が延びるんじゃないか?」
カズマの予想外の提案に全員が引いた。確かにチンピラとして悪名高いがそれはないだろう。
「まぁ、宿無しの時はわりかしやるからな。報酬が出るならやるぜ」
「やらなくていい。少し考えるから、誰かアルダープという人物について知ってることはあるかい。本名だけでもいい」
誰も手を上げない。まぁ、ここにいる一般の冒険者が貴族と接触するなんて世程ない。
「アレクセイ・バーネス・アルダープだ。あまり評判は良くないようだが……それで何か分かるのか?」
ダクネスだった。フィリップは少し悪い微笑みを浮かべる。
「充分さ。さぁ、検索を始めよう」
フィリップ無双回になります
アルダープの結末は?
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原作通り+a
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フィリップによる論破
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上二つを上回る最悪の結末