元勇者と元魔王の転生雑談日々   作:李徴_RityO

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※この話は第壱話でありません。いわゆる前日譚となります。

それでも見ていただけると幸いです。

それでは、どうぞ。


プロローグ - 3000年前

最後の一撃が、ドラゴンの様な怪物の心臓に突き刺さる。

既に剣を突き刺した男はボロボロになりながらも、決死の顔をしていた。

その顔を見た怪物は、変身を解きながら後ろにある崩れた椅子に座る。

そして、剣を突き立てた男が語る。

 

「終わりだ、魔王。」

 

"魔王"。そう呼ばれた男は言葉を返す。

 

「…あぁ、"勇者"よ。これで世界は救われた。お前の使命は達成された。」

 

その"勇者"の目を最後まで見つめる。その目は哀愁に塗れた瞳の奥を感じられた。

"勇者"はふらふらとした身体のまま、"魔王"の傍へと歩み寄る。

 

「お前は、そのまま死ぬのか…?お前は、倒れるのか…?」

 

「フッ…もう動かん。勇者、貴様は死んでいく我を見て悲しんでくれるのか?」

 

「…俺はお前を倒す為に生きてきた。だが、お前が死んだら俺はこの世界で生きていく理由が消える。もう、何も意味が無い。」

「家族は全員死んでいる。俺を勇者と祭り上げた王国の奴らは、軽蔑の目をしていた。多分嘘だろうと、そう思ってるんだろう。」

「旅する行先ですべてから非難された。ある時は『お前がいたから私の息子が殺された』『お前が早く来なかったから被害が大きくなってしまった』。理不尽の嵐だ。」

「何も意味は無かった。救うために戦ったが、そんなものも無かった。」

 

「…醜いな。なら貴様は何故、言葉を返さなかった。」

 

「…信じていたからだ。時にくれた小さな言葉を、俺は忘れられなかった。同じ人間をずって信じていた。」

 

「…そうか、最後まで貴様は、勇者であったか。」

 

「……お前は何だ、何故世界を滅ぼそうとした。」

 

「理由なんぞ簡単だ。この世は寂しかった。」

「みな、我を見るたびに媚び諂う。子供の様な、対等の存在などいなかった。」

「敬う者もいた、だが自ら隣ではなく後ろに立っていた。」

「…共に語る"相棒"など、我にはいなかった。」

「そこで貴様が現れた。勇者であるお前が。」

「我は心底喜んだよ。魔王と対等に戦える者は勇者しかいない。そう世界は決まってしまっているからだ。」

「貴様が遂に目の前に現れた時は、初めて出会ったように感じなかった。運命の終着点に会ったように、即座に気に入った…。最初で最後の幸せな日々の戦いだったよ。」

 

「そうか…俺も、よく戦えた。まるで親友と喧嘩するようだった。」

 

「ハッハハ、そうかお前もか。…出会いが変われば、良かったものだな。」

 

落胆と共に、魔王の城は崩れ始めた…だが、勇者はその場に留まり続けている。

 

「おい、何故逃げない。」

 

「言っただろう、俺の生きていく理由が消えた。ならば…。」

「死んで新しくお前と共に生きるために転生する。」

 

「………クク、アッハッハッハッ!」

「転生!転生して我と次に共に生きることを望むか!我が転生することも分からぬというのに…何百年、何千年かかるか分からぬのに…!」

 

「生きてつまらない人生を過ごすより、死んでお前と生きた方が楽しそうだ。…"楽しい"という言葉なんて、久々に使ったな。」

 

「ハッハッハッ…そうか、ならば待て。死んだ後、魂となってもまた会えることを忘れるな。我は絶対に会いに行くぞ。貴様が忘れてもな…。」

 

「分かった。お前も早く"神"などという支配者から帰ってこい。いつでも待っている。」

 

「…あぁ、また会おう勇者よ。」

 

「また会おう魔王よ。」

 

魔王は最後に別れを告げ、命が途切れた。勇者は魔王を抱え、同じ椅子に座る。

…もう動けない、魔王と同じずっと消えていく蝋燭の様にギリギリを保っていた。

死ぬことに遂に意味を持った。そう、思いながら彼は『転生魔法』を発動する。

人としての存在を超えた勇者だからこそ手に入れて"しまった"魔法の一つ。

唱え始めると、椅子を中心に魔法陣が現れ、光りはじめる。

浄化、いや消滅するように身体は光の粒子となって消え始めた。

詠唱をせず、ただ目を瞑り終わるまで…。

 

何分、何時間経ったか分からない。そう考えた後、光は消えていった。

目を開くと、鈍く暗く温かい空間にいた。目の前には翼が生えた女。…神か天使か、または"何か"か。そう思いながらその彼女が口を開く。

 

「勇者様、お疲れ様でした。私は神の使いであります。いわば貴方達が言う"天使"という存在でしょうか。」

 

「…そうか。俺と同じここに来た男は、魔王様は何処にいる。」

 

「魔王様は現在、神の審判として我が主様の元にいます。そこで魔王様の次の転生までの年数が決定するでしょう。」

 

「…すぐとはならなかったのか?」

 

「こちらとしては『魔王を転生させる』自体前例のない出来事でしたから…。」

 

「何だ、上の奴らにも知らない事はあるか。」

 

「…例え転生までの年数が決まっても、私は貴方に伝えることはありません。私は貴方の転生すぐさま行う有無を聞きに来ただけです。」

「本来『転生魔法』は勇者様に残された最後の手段です。戦いに敗れてしまってもまた倒す為にすべてをやりなおす…聞けば悪いですが、それが最善手として用意されてました。」

「この話はいいでしょう、勇者様。すぐさま転生を行いますか?」

 

「あぁ、決まっている。却下だ。」

 

「…承知致しました。いつでもお呼びください。」

 

そういうと礼をし、目の前から消えていく、静かな沈黙が過ぎていく。

自分が装着していた剣や鎧を外し、床に置く。

これから何千年経とうが、彼と話したことは忘れない。

ずっと、ずっと、ずっと…。

 

―――

――

 

考えていた。不安という要素は溢れてくるだろう。

だが忘れるなど、裏切るなどの考えは一言も思い浮かばなかった。

たった一回だけ戦った相手に信頼を置けるだろうかと、そう思う奴がいるだろうかと。

 

人として、そんなものはもう無いと思っていた。

 

最後にもう一度、そういうことをしたかったと思った。

 

その言葉は、ある一言と共に、現実となった。

 

「…ふん、そんな上の空で我と戦った勇者と気張るか?シャキッとするがイイ!それとも忘れたか?」

 

気張った声に、嬉しさの混じった声で気付く。遂に出会えたと。遂にお前と過ごせると。

 

「…忘れるものか。お前こそ遅かったな。2434年だったか。」

 

「クハハ、そんなに経っていたか。早く行こうではないか、お前と過ごす日々は忘れることは無いだろう。」

 

「あぁ、天使。いるか。」

 

その言葉をやっと聞いたようにすぐに彼女は現れた。

 

「えぇ、まさか本当に最後まで待つとは思いませんでしたよ…。」

 

「神は人の限界をそこまでしか見てない事だろうな。間近で見ないから廃れるものだぞ?」

 

「言葉によっては再度やり直しにさせますよ、魔王様。」

 

「それはいかんな、遂に勇者と出会えたんだ。このことを取られるわけもいかんからな。」

 

「俺達はすぐに転生する。いつ何年に先になるんだ。」

 

「はい、ここから566年先へと転生します。…私の独断ですが、お二人が共にいられるように幼馴染として転生させますが宜しいですか?」

 

「我としては双子でも良かったが…まぁいい。」

 

「…いくぞ、お前と過ごす日々が楽しみだ。」

 

「あぁ、楽しく生きようではないか。ハハハ!」

 

天使が唱え、地面が光りはじめる。魔王は楽しみだと笑い、勇者はその姿に見せなかった笑みに新しい日々を願いながら、二人は消えていった。

 

―――この過去を忘れないように。進むように。

 




どーも。

この話は作者の脳内で書いている適当小説です。

文章下手ですがここまで読んでくれた方は感謝感激です。

不定期更新ですが、度々たまに書いていくので、こういうのもあったなぁ位に見ていただけると嬉しいです。

それでは次回に会いましょう。さようなら。

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