Mercenary Imperial Japan   作:丸亀導師

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ウ~ン難産、


軍縮下の整備計画

そこは富士の麓、ブラロロロとエンジン音が鳴り響き、丘の向こう側から現れたるは2台の戦車。

しかし、それらは嘗て使用していた《73式装甲戦闘車》とは明らかに違う。

 

形も速度も全く違う2台は、ある地点まで到達すると各自停車する。そこで2つの秒時計を所持しているものが、各車の時間を紙に書いていく。どうやら速度を競わせていたようだ。

 

「アレのどちらかが時期主力戦車か?大きさはだいたい同じようだが、確か装甲厚は3粍程度しか違わないんだったか?ならあのスマートな方が、良いんじゃないか?確か試製軽戦車だったな。」

 

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「はい、あの程度の装甲厚の違いだけであそこまで速力に違いがあると、どうしても速い方にしたくなります。火力に関して言えば、同37粍砲に換装できるそうですので。」

 

試製軽戦車と呼ばれた方を見て語った。

 

「なら、決まりだな。それにしても、良くもまあ軍縮だというのに新しい戦車か減った兵員分の予算額で色々と揃えていくのかな?」

 

「概ねその通りなのだと、小官は考えておりました。中佐はあまり良くお考えではないので?」

 

眉間に皺を寄せ渋々と言った感じで考えた。

 

「戦車は別にいいと思っているよ、現行の73式はもう車両としての限界だろうからな。見てみろアレを。」

 

指差した方向を見ると73式が先程の2両と競走していた。

試作車達と肩を並べて走っている姿を見ると、哀愁が漂ってくる。加速も登坂能力も足りず、速度は遅い方とどっこいどっこいで正直魅力らしい魅力は殆ど無い、正しく時代遅れの鉄の箱だ。

 

よく見ればあちこちで73式が比較対象とされている。特に目立ったのが12.7粍口径弾に対する抗堪性の比較、試作車輌は随所に新型装甲板を取り入れたことにより、至近距離でのものはともかく200米以上での貫通は不可能であったのに対して、73式はまず200米でさえ貫通される。これでは、前線では使えない。

 

そんなもの乗りたいとは思わないだろう?

私も、乗りたいとは思わない。そう考えれば上層部は、以外にも早い段階でこの事に気が付いていたのだろう。

だからこそ、欧州大戦は早いところ決着を付けたかったのかもしれない。これが露呈すれば優勢は崩れるから。

 

「あんなになるまで扱き使ったんだ、供養の一つでもしてやりたいな。」

 

「そうですね、首塚いや戦車塚でも作りますか?」

 

二人は足早に何処かへと向かう、きっと別の仕事があるのだろう。

 

 

 

 

時に1924年、軍縮による人員の削減は、日本帝国に戦力を見直す時間を与えた。それは時代とともに進化していくモータリゼーションが故に、今まで使用していた兵器が直ぐに陳腐化されていく中、焦りにも似たものが軍部を駆り立てる。

 

もしも、ここで時代に取り残されたらきっと植民地にされるのでは?という懸念、物量が効かなくなっていくという時代の流れ。

昔から日本は質によって物量を覆してきた、だが技術が発展し身体能力だけでは戦に勝てなくなる。

そういう時こそ、時代に沿った戦い方が求められる。

 

だからこそ、こうして兵器の開発や試験その結果を集積しフィードバックしていく。

最新の部隊編成は瞬く間に変わっていくのだ。

 

つい最近まで擲弾筒は歩兵小隊と共に行動を共にしていたのが、解除され、即応型の独立擲弾筒小隊となった。

その代わりと言ってはなんだが、30粍の擲弾発射器が開発された。いわゆるライフルグレネード、と言うよりも小銃の下に懸架して使用する着脱式擲弾器と言われるものだ。

 

83式30粍小銃擲弾器

 

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使用例

 

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なぜにこういう形式が採用へと繋がったか、それは擲弾筒の欠点である「直射には不向き」と言う点に尽きるであろう。

敵の火点を潰す際、上部からの攻撃が可能な擲弾筒はその点では優れていたが鋭角的な近距離での運用に適さない場合が多く、実際の戦闘ではそれが裏目に出ることがあった。

(それでも機動戦をやってのける辺り、途轍もない練度である)

 

そこでいつでも使えるようにと言う利便性から、擲弾器をライフルに装着して射撃可能としたのが本作だ。

30粍と小型ながら威力は手榴弾よりかはある、それに30粍ならばその反動を受けても何ら支障もなく、銃を構えながら撃つことが出来た。

それにトーチカを攻撃するには、丁度良い火力であるのだ。

 

ただ、全部隊員に配備するには重量等の関係上不可能に近く、一個分隊に一人の割合で割り当てられた。

弾の重量が50粍榴弾の800gから320gに減った。携行弾薬量に比しての重量が大幅に減少したことに加え、擲弾筒本体の重量4.7kgから1.6kgに減少したことにより単純機動力が増した。

反面一発の威力は減るが、それを即応の擲弾筒小隊が補うのである。

 

もっとも野戦という野戦には戦車や砲兵による火力支援と、航空機による爆撃が存在する事を大前提としての事である。

火力支援の乏しい中で、どれ程兵力を効率良く運用していくか、それに対する答えであった。

 

 

 

では小隊、もしくは中隊規模で火力を上げたいと言われる場合どうすれば良いだろうか?

軽機関銃がその答えであるが、現行の72式軽機関銃にはとある欠点が露呈した。

 

一度の装填で放てる銃弾が30発である事、特殊な機構であるために射撃速度に限界がある事だ。

ホッパー式はクリップが自重で落ちる速度が一定である為、発射速度の増加が難しい。

 

そこで、新規にベルト給弾機構を採用した全く新規の機関銃が必要となった。

そこで登場したのが82式軽機関銃であった。

 

 

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後に70年間主力に居座り続ける事になる機関銃が、ここに誕生した。

 

 

 

 

日本軍としては、機械化による大規模な組織的な展開に早急な対応をしていくのが急務である。

勿論、元々は自分たちの行った機動戦術なのだからそれの整備には念には念を入れる。

 

最初は歩兵の輸送手段からであるが、現行の輜重隊の車輌を借りた行軍は非常に非効率的である。

最近ではあのトラクター、既に型落ちの代物で足が欲しいと言う始末であるが、如何せん大量にあるが故に処分に困っていた。

 

そんなときに中華内戦が始まったゆえに、半額で売るという強硬手段に打って出ている。張作霖政権がそれで勝てば良し、負けても懐が潤うのでそれもよし。

 

と言う事で新たな車輌が開発されている、基本的には民生用のトラックを使用すると言う事になっているが、不整地能力が低いゆえに多少の手を加えると言うので契約が成立している。

 

さて、輸送手段の速度が上がると問題は護衛する車輌であるが、これも基本的には民生用から選ばれた。

それに装甲を取り付けて行く、ただそれだけだ。実際戦闘に必要な部分だけを残せば数を揃えるには、それが一番手っ取り早い。

 

このように雑多な内容で車輌を選定していく日本軍であるが、これが後々響いてくることになるのを、この時誰も予想だにしなかった。

 

 

 

 

だが、妥協しなかったものはある。それが戦車だ、本当ならば走攻守全てを揃えたものを作りたい。

だが、強力なエンジンも無い時代何かを犠牲にしなければならない。

 

速度のために装甲を削ぐのか、装甲のために速度を削ぐのか。

結論を言えば日本軍は、速度を取った。元来の機動戦術を生かすため、そのために輜重隊の車両も歩兵用の装備も可能な限り速度を求めたのだ。

 

限界ギリギリ、対戦車ライフルなんてものはそうそう動かせるものじゃない。基本的には据え付けて待ち構えなければならない、ならば小銃徹甲弾の貫通か、対戦車ライフルの遠距離狙撃から身を守れるならそれだけで良いと考えた。それが、現段階の限界…本当ならば全部揃えたい。

 

 

年間にして8400億円(一人頭月収平均35万円)支出が抑えられたことによりその、およそ半分を国庫に取られているにせよ4200億円が開発費や装備の更新に当てられる。

戦艦一隻作るならばそれだけで終わってしまうだろうが、今は軍縮時代。その利用方法は、どちらかと言えば陸軍に向けられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東北帝国大学のとある研究で一つの実験が行われた、本来よりも少し早いその実験は、凡そ20kmと言う距離の中で確実な作動を見せたそれは、確かに小さくも電波を送受信し声を届けた。

確実な作動を見せたそれは画期的な無線設備と言われ、後にその指向性からレーダーに使われるようになる。

 

その実験を海軍は遠くから眺めていた。

 




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そろそろ主人公?出すかなぁ?因みに女性です

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