Mercenary Imperial Japan   作:丸亀導師

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連盟

1991年初等科6年12月歴史

 

「国際連盟というのは第一次世界大戦後、再びの世界大戦勃発を起こさぬように、世界平和と国際協力を行なう為に作られた組織です。ここまでは良いかな。」

 

国際連盟ね、でも確か役に立たなかった筈なのよね。だいたいあの時代の人達に協調性を求めても、それを守れるような精神性を持ち合わせていないもの。

良くて二国間の合意を守れるかどうか、それも怪しいのに…なにこれ、《日英同盟(1812年発行〜)》?

 

英ってあの英国の事よね、最近雑誌では何かと王室の事でスキャンダルがあったとかいう。

それと、地図にある英国連邦の首都列島多くの植民地を持っていた大英帝国。

 

各地で争いを起こし、闘争の果て領土を増やしていった大日本帝国。

領土を隣接し、利益を享受出来るような距離でもない相手とどうしてこうも長く同盟を続けていられれるのか、全く理解できない。

 

「おい、ペトロヴァ。ニーナ・ペトロヴァ、何をぼーっと考えてるんだ?」

 

ハッハッハと周囲から笑いが聞こえる、そんなに集中してたか。

 

「すいません、それで何でしたか?」

 

「国際連盟設立によって世界はどう変わったんだったか?」

 

どうって、あまり変わりはないんじゃないの?だって、条約無視の戦闘とか宣戦布告無き戦闘、戦場での虐殺行為。上げてみたらきりがないのでは?唯一の救いはICPOやMSF等の各種組織の設置くらいじゃないかな?

 

「そんな劇的な変化はありません、強いて言えば正規の戦争が起こりづらくなったくらいじゃないですか?」

 

「あー、お前の言っていることも最もだ。確かに正規の戦争は起こりづらくなった、だけど非正規の戦闘例えば他国の内乱を助長するような行為はこの時は大いに進んでいたそうだ。

だが、忘れちゃいけない事がある。初めて国際機関が出来た事により、その前からは幾分か世界は周囲を見始めたんだ。」

 

そりゃ意識せざるを得なくなるけど、結局第二次世界大戦を止められなかったんだから意味ないんじゃないの?

 

 

 

 

 

 

1925年 

国際連盟、国際軍事法廷において日ソの戦闘に関して重大な判決が言い渡されようとしていた。

国際連盟始まって以来の大規模な戦闘の結果を世界の国々が固唾を呑んで見守っている。

 

宣戦布告無き戦争行動は、国際連盟の検証のいかなる理由があろうとも罰せられるべきである。

もし、この戦闘に対してなんの制裁もなければ、国際連盟はなんのために存在しているのだろうか?

 

判決を下すのは理事国達、だがその中には日本の姿がある。あの戦争の勝者となった国は国連の常任理事国となったからだ。

まず、ソ連に対しての制裁として向こう十年間の軍事費の増加の停止、及び海軍艦艇の一部没収となる。

 

次に日本に対しては、中国大陸での利権特に明に対しての門戸開放を行うよう求めた(・・・)。しかし、日本はその事に対して条件付きの開放ならばと譲歩を引き出そうとする。

そして、それは叶った。

 

第1に明に対する対等貿易を行うこと。

第2に関税の権利は明が有すること

第3に大使館を除いた治外法権を適応しないこと。

第4に明国民に対する差別的扱いを行わない事。

 

以上の4つである。

これには米仏は驚いた、日本は確実に突っぱねるとばかり予想していたからだ。

だが、逆に先手を打たれた事に項垂れた。

 

工業製品で、米国は日本に太刀打ちできるものは無く、絹織物でフランスは日本に太刀打ちできるものは無い。

では軍事力はと言えば、世界を相手に充分戦える質と量を兼ね備えた帝国軍に二国だけではない太刀打ちできない。更にこれに英国が来ると苦しくなるのは必至である。

 

フランスからしてみれば煮え湯を飲まされ続けている相手。日英共に植民地関連の出来事からナポレオン戦争時、日本の傭兵団から受けた戦列歩兵を鎧終一触する見事な統制射撃、地形を城に見立てた野戦築城の戦いに、寄せ集めの軍隊では歯が立たない。

英国海軍との海戦による大敗北、いずれにせよこの二国はフランスにとっていつもの邪魔ばかりしてきた相手である。

 

そんな相手を蹴落とそうとする、実に愉快である筈だった。なのにである、それを逆手に取ってか条件付きの承諾だ。

しかも、明を一端の独立国として扱えと言う。これでは、植民地にする事は無論の事、日本の庇護かから脱させる事は事実上不可能となった。日本の事だ、直後に同盟を結び防備を固めさせるであろう。

 

米仏は政治的に負けたのだ、彼等は焦りすぎた。その結果、仲間意識と言わないでもない間柄のソ連は更に弱体化し、日本は更にロマノヴァへ力を入れて軍を強化するだろう。

もはや後戻りは出来ない。彼等はだんだんと協力し合うようになる、その傍ら日本は国連総会で次の発言をした。

 

『ドイツのヴェルサイユ条約内の艦艇及び戦車の開発の制限緩和』

 

である。

 

欧州の国々はその発言に驚愕すると共に、国土が蚊帳の外である日本に詰め寄り言う。

 

『本国が我らの土地に無いのだから言えるのだ。』と

 

それに対しての日本の回答はドイツ人には心地の良い響きであったであろう。

 

『自分たちの国を自分たちの手で守る術の無い国に、独立国を名乗らせておきてたくはない。ドイツは自分で立つことのできる国であろう。』

 

何を言っているのだ?と思う国がいる一方で東ヨーロッパの中小国は違った。ドイツに好印象を抱かせる事が出来れば、万が一ソ連と事を構えることになった場合、背後に気を付けることなく全力で事に当たれるのでは?と。

それに、今からドイツを仲間に引き入れる事が出来れば必ず役に立つ。恩を売っておいても良いかもしれない。

 

彼等、防共条約機構加盟国は日本の意見に関して肯定的姿勢を示した。

 

フランスとしては面白くない、何故かつての敵に塩を送るようなことをしなければならないのか、寧ろもっと絞り上げるべきではないか?と、でなければあの戦争で出した損失に割に合わない、とでも言いたげである。が、であるあの戦争で出した損害の9割は自業自得と言うものだ。

古臭い戦法に括り、自分たちは何時までも最強の陸軍を持っていると言う傲り、それが形となっただけだ。決してドイツだけのせいではない。

 

フランスは、フランスがソ連をけしかけた事を、日本が知っている可能性が高いと踏んでいた。

その為に、ドイツを日本側にする事でフランスと真向から戦える国を作り上げたいのだ、と考えていた。

だからこそ、ヴェルサイユ条約の緩和は断じて受け入れられない。

 

それに同調したのは、ドイツによる被害者。ベルギーと内部工作によって国が一度は2つに別れた、オランダである。

両国はフランスと共にこの案に対して大いに反対の意思を印す、

『我々はアレを忘れない』とでも言うような態度である。

 

この場において数少ない中立国はスイスと南米諸国となんとスペインであった。

南米が中立的なのは、欧米の事に頭を突っ込みたくない事と更に言えばこの事に関して、興味を示していないのが要因であろう。なまじ遠いからこそ出来る所業だ。

 

彼等の勢力を味方につけた方が今後世界を一歩先に進めることが出来る、そう言われても過言ではない。

まだまだ発展途上の南米に様々な輸出品を送り出すのは、南米に国土がほど近い国、それは日本とアメリカ。貿易による戦争が始まりつつある。

 

結局のところ国際連盟でのドイツの扱いはあいも変わらずであるが、ここに来て東欧とドイツは急接近していく事となる。

意外な者たちが手を取り合い始め、一つの共同声明を発することとなる。その組織の名はEEC〘東ヨーロッパ共同体〙と呼ばれる、共栄圏の確立であった。

 

この共栄圏の確立には、一人の建築家が牽引していたと言われている。どうやらその人物は、我が国に訪問した際、とある政治思想を持った青年と話をしたことにより、この方策を考えついたと言う。

彼の名はアドルフ・ヒトラー、芸術に傾倒し風景画をこよなく愛する、一人の建築家兼政治家である。

 




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