Mercenary Imperial Japan   作:丸亀導師

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北米戦役3:万象の砂

1942年4月

 

米国への侵攻を開始する。非常に広大な領土である、それ故に敵はかなりの長距離に防衛戦を構築していると、参謀たちは話していたが実際はそうでもないだろう。

街や村等へは一切の眼もくれず、我々は直進すべきだと彼らに言うがそんな事をすれば背後から突かれると言われる。

 

普通に考えればそうであろうが、寧ろ街を取ればそれによって、我々は内部から攻撃されること必至である。向こうは開拓者つまりは野蛮人の集まりだ、法も関係もなく我々に銃を突き付けること請負だ。

 

ならばと仕方なく方針を転換せざる負えない。街を、取るならば折角だ鉄道を利用させてもらう。

補給線が心許ないのが、この広大な大地のせいかなにもないのにも関わらず、こんなにも広い土地を持つと言う欲に駆られた亡者共か?。

 

なんにせよ、かつての戦いでも街には一切の攻撃をしなかったのだが、大袈裟な不死鳥の名を関する都市これを取るのは至難の業に違いはない。市街戦程苦しいものはないのだ。私の名により、市中に対する戦術爆撃の命令書を出しておいた。後は裁量によって如何なく殲滅してくれる事を望む。

 

 

1942年6月

 

戦線があまり前に進むことなし、やはり都市部への攻撃によって向こうも後に引けない。

維持になって持久戦に持ち込んでいる、一応のメキシコへの支援もあることだから部隊を南進させることにしたのだが、それでも攻勢に耐えるだけこちらにも犠牲者は出てくる。

 

ならばだ、いっその事街ごと燃やしてしまえば事足りる。そう思ったが急げというものだ、すぐにでも準備を始めさせた。こんな一月も待っていられない、今すぐにでも焼き払ったほうが良い。

やはりというか、開拓者である事から皆銃を手に持ってこちらの兵を攻撃しているという。

 

非正規戦は組織的な軍隊では最も苦手としているところも多いが、もうその心配も無いだろう。

降伏する文書を空中投下した一週間後に、爆撃を決行するよう指示を出した。これでまだ降伏しないのであれば、もはやそれまでだ。

 

それと、上官の首を献上してくるのならば更に便宜を経っても良いと、付け加えた。

 

 

 

1942年7月

 

件の街は文字通り地図から消えた、瓦礫だらけとなった街からは死んだ人々が横たわり、熱波から逃げようとしたのだろう黒焦げた遺体が見つかるばかりか。

さて、この街からの離反者は大凡10分の1で留まったようだ、まぁまぁだろう。まったく便衣兵と言うものはつくづくやっかい極まりない。やはり街ごと焼くのが良いだろう。

 

死にたくなければ致し方ない、これで街にいた米軍は確実に死んだ筈である。

瓦礫だらけの街は戦車でも踏み潰して進むことができるから、掃討戦も楽になること間違いなく、これで期間から遅れて2ヶ月の侵攻は進み始める。

 

機密資料の一部が発見されたようだ、『天の光を生み出すには?』等という訳のわからぬ事が書いてあるらしく、異様な気配を醸し出している。

 

 

 

1942年8月

捕虜の聴取文を読んだのだが、着実に我々の事が伝播していっているようだ。

例えば

『日本兵は歯向かうものに容赦せず、投降者には非常に甘い。』

『街に兵を匿うと、街が滅ぶ。』等だろう、その中で一番際立っているのが私関連だ。

 

『ダイスの悪魔が囁いている、次の出目で街を滅ぼそう。人々悪魔に懇願し、忽ち仲間を切り捨てる。「どうか街を無くすのはお辞めください」と。』

だろう。敵は私の事を悪魔とでも思っているのだろうか?

 

まったく、虚像は大きい方が良い。それを隠れ蓑に様々なことをやったとしても全て、私の命令通りに出来るのだから。

だからもっと楽しませてくれると良いのだが。

 

さて、それから気象予報士の観測によって得られる、気象予報は実に精度が高いものとなった。それもこれも、あの周波数変位電探のおかげか最近では、航空機での爆撃効果が大きくなっているのを実感できるだろう。

 

現に再計画よりも数日早く戦線を押して行けているのだ。だが問題は、中央西側を抜けた辺りであろう。

向こうさんの迎撃が段々と少なくなっている事から、前線の防衛戦をある程度放棄している可能性が高い。

 

となれば後方に行けば行くほど、防御がより強固となっているに違いない。また、あの周辺は竜巻発生地域だ。軍の動きは逐次確認し、潔く後退させるかさもなくば東海岸からの揚陸が望ましいのだが…。

 

 

1942年10月

 

また街に立て籠もる、持久戦を我々に強いているのだと容易に想像つくところを見ると、米国も割と頑固なものだ。

仕方のない事だがこれ以上の将兵の犠牲は出したいものでもない、兵糧攻めへと移行させていただく。

 

今の世の中食い詰めた環境というものは殆どがないものとばかり、そんな中で生きてきた我々に昔人のような忍耐力はそれ殆あらず。一月もすれば必ず投降するものだ。

 

さて、久々にという書き方は少々語弊もあるだろうが野戦病院を拝見してきたのだが、まあやはりと言うか酷い匂いをする我が国の患部に対する処置は欧米からすれば、かなり未開なのか?いや、北欧でも盛んに目にしたのだから未開というのはおかしな事だ。昨今では外科的なものが多いが、だがこれが最善なのは確かな事だ。

 

幹部にある憑けものがウゾウゾと蠢くさまは慣れるものではないが、それの後には綺麗な患部が見えるのだから侮れるものではない。が気持ちの良いものではないのは事実であろう。

 

私が司令室から出てこのような所にいるという事は、戦線が安定化しているという事だ。

米軍は、自然を味方に付ける。必ずそれを実行するだろう、と同時に北米大陸南部に対する攻勢を停止するように下知を下そうとしている時だからだ。

 

次の南部の攻勢はしばし間隔を開けようと思う、向こうの戦力が整うのは後半年は必要な筈だ。それらが前線に揃ったあたりに全面攻勢に踏み切るべきだろう、敵の完全な装備の崩壊をもってこの戦争に終止符を打たねば、連中は納得しない。

 

それに…国内には敵が多いからな。こちらが相当数の人死を出さなければ講和の席にすら着こうとしない。これはまずい事なのだこのままやり過ぎれば我が国は一大列強になってしまう。そうなれば、あるのは破滅だけだ。

 

 

2000年4月

ここまで高祖父の手記を読んで一つだけ気になった事がある。高祖父は、戦争を早期に終わらそうと画策するような人物であった、と言うのが私の見解だ。優しい人というよりかは、どちらかと言えば利己的な観点で自らが所属する国家に仕える。そんな軍人だ。

 

だけれども現在の研究者たちの見解とは違う。高祖父は、超人のように例えられる。妻子に対して浮ついた話もなければ、何かをしでかしたというものも無い。

前線に立てば敵を完膚なきまでに叩き潰し、退却戦を指揮すれば敵を屠って退却する。

 

そんな事ばかりが書かれていて、確かに戦果は凄いとしか言いようが無いものの、それ相応の損害をある時期を堺に増やしている。明らかなのは戦闘の仕方が変ったと言うところだ。

慎重な立ち回りだったのが、急に強引なものへと変わった。

 

つまりはこの月記の記す通り、わざと損害を増やしたのだ。国家を覇権国にしたくない為に?でも何故だろうか、軍人であるならば最善をつくすはず。もし、このまま行けば国家がどんなふうになってしまうと、考えていたのだろうか?

いや、考えていたのだろう。

 

インターネット等ではこの時期から高祖父は無能扱いされる。だってそうでしょう、損害が目に見えて増えたのだから。

それでも、戦闘では勝っている。相対的な評価というべきだ。

 

 

 

 




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