Mercenary Imperial Japan   作:丸亀導師

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4式陸上戦闘機

【挿絵表示】


日本軍初の実用的ジェット戦闘機。
その機体形状と、エンジンの配置は後の世の戦闘機に多大な影響を与えるも、時代に不釣り合いなその形状から低速領域での戦闘に非常に不向きであり、後に誘導噴進弾の開発によって一応の対応を見せるも、基本的には高速度領域のプロペラ重戦闘機や高高度爆撃機、自機と同じジェットエンジン機の迎撃を主任務として20年ほど運用される。




終戦:始まり

1945年1月9日

瓦礫の山となったノーフォーク港へと、一隻の古臭い弩級戦艦が入港してくる。

そのマストに掲げられしは、赤と黄が特徴的なそれは中立国

 

(ここで言う中立国とは、スイス・スペイン・ポルトガル・デンマーク・イラク・カザフスタン・チベット・キルギス・ペルー・ボリビア)

 

の中で唯一まともな〘戦艦〙というものを保有している国、スペインの艦艇である。

それが何故こんなところにいるのか、それは至極単純な事である。米国の降伏文書調印の為だ。

 

当時、米国は外部の国家との連絡手段が完全に遮断されており、中立国であるスイス等へと連絡を取ることは愚か渡航する事すら出来ない。

連合国のそのあまりにも悲惨な攻撃は、米国のインフラを尽く破壊し尽くし火力発電は愚か、水力、風力に至るまで徹底的に破壊せしめていた。もはや、焦土と言っても過言ではない。

 

その為、現在米国における発電は専ら政府官邸ばかりに注力されており、海底ケーブルとの接続は完全に絶たれていた。

 

更に、終戦の為の降伏文書を国連軍に受諾する事を通達したのは良いものの、それを受け取る側と受け渡す側の中間となる国が北米大陸には、存在しなかった。

南米には少なくとも存在していたが、北米のそこまで行くほどの経済力もなければ、信頼に足るものもない。

そこで白羽の矢が立ったのが、一応の欧州での中立国の盟主へとなりつつあるスペイン王国であった。

 

この当時、スペイン王国はある種危機的状況にあったが為に、世界大戦に参戦する事なく、中立を宣言した。

英国からの勧誘も一切を断り、内部の地盤を固めていたのだ。

カタルーニャ地方での民族独立運動が激化し、それに呼応するかのように地方へと波及していった問題に、頭を抱えていたからだ。

 

だが、カタルーニャ地方やその他の地方でも独立するのは流石に嫌だ。と言う、声が独立運動を緩和させていく。共にどちらが欠けても国として成り立たなくなる。

経済的に依存しあっているのが、この当時のスペインの情勢でもあったのだ。

緩やかな自治領としての名を与えつつ、国情を安定化させた当時の英雄の名は、フランコ。軍人であり、政治家である。

 

さて、そんな内情の為に軍拡もおちおち出来ずにいたスペイン。気が付けば戦争も終盤戦となりつつあり、どちらに味方すれば上手い汁を啜れると言うのは簡単に分かる事だが、もしもここで勝ち馬に乗ればきっと国際社会から爪弾きにされるだろう。

『勝ちが確定した段階で来やがって』と思われるに、違いはない。

 

であるならば、中小国が大半をしめる中立国の纏め役としての顔を持てば良いのではないか?と、フランコは考えた。

そして、それが直ぐに実現されたのがこの米国の降伏文書調印である。

 

実のところ、中立国としてまともな海軍を保有するのはこのスペインだけであった。隣国ポルトガルは沿岸部の守備だけ行う、漁業海軍。

他の国々はあまりにも貧弱な国力の為か、はたまた海がそもそも存在しておらず海軍を持たない。そんな国ばかりだ。

だからこそ、スペインだけが米国へと乗り込んだ。

 

スペインがそこに乗り込んだとき、そこには自国の艦船とは比較にならない程に巨大で、大規模な艦隊。

空にはプロペラ音とは違う、轟音を響かせながら空を切るように飛ぶ航空機。

示威行為甚だしい事だが、それでも臆することなく進んだのは意地があったらかだろう。

 

たった一枚取られた写真、それは米国の完全な敗北を決定づけた。

 

この敗戦で米国は以下の文言を受諾し、国家として1からの再建を余儀なくされた。

 

1.その所在地に関わらず米国軍全軍へ無条件降伏布告。全指揮官はこの布告に従う。

 

2.米国軍と国民へ敵対行為中止を命じ、船舶・航空機、軍用非軍用を問わず財産の毀損を防ぎ連合国軍最高司令官及びその指示に基づき米国政府が下す要求・命令に従わせる。

 

3.公務員と陸海軍の職員は、米国降伏のために連合国軍最高司令官が実施・発する命令・布告・その他指示に従う 非戦闘任務には引き続き服する。

 

4.合衆国大統領及び米国政府の国家統治の権限は、本降伏条項を実施する為適当と認める処置を執る連合国軍最高司令官の制限の下に置かれる。

 

5.米国政府は捕虜として抑留している連合軍将兵を即時解放し必要な給養を受けさせる。

 

基本的な5つの文章からなるこれらは、降伏文書を調印した場所つまりはスペインの軍艦であるエスパーニャから、

 

エスパーニャ宣言

 

と言われることがしばしばある。

 

この宣言により、第二次世界大戦という大きな枠組みの中での戦争は一応の完結を成し得た。

のだが、それ程単純な事ではないのだ。

 

この宣言の後、米国は合衆国改め共和国となることにより、自分たちはもう違う国です。と言う、所謂アピールの形を取るとともに議会の再編がなされた。

まず、全国への選挙を行うにしろ治安の悪化が非常に早く、誕生した瞬間、米国内は完全に分裂状態となった。

 

そして、当初部分的割譲のみであった米国の国土は最初の13州までの影響力しかなくなってしまっていた。フロリダは反政府ゲリラが闊歩し、完全に政府の手を離れ独自に正当政府を名乗り独立。フロリダ民主共和国(1945〜1954)の誕生である。

 

そして、アパラチア山脈以西においては日本国の影響が非常に強く、プレイン合衆国(平原の国々)(1945〜)と名乗り日本国の実質的傀儡政権が樹立する。

それに英国が反発するなど、情勢は荒れに荒れた。

 

 

だが、そこに来て日英、両国にはある問題が勃興していた。度重なる戦費、そして戦場になることのなかった本土と現地の乖離。戦争は終わり経済が停滞を始めていたのだ。

だが、それでも国債を買ってくれなければこのままでは、国として立ち行かなくなる。

 

互いに互いを意識をより強く持ち、そして互いにそれをぶつける相手を睨んだ。

そう、冷戦の始まりである。




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