Mercenary Imperial Japan   作:丸亀導師

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善意の誤算

日本帝国の植民地に対する統治方法を知っているだろうか?

植民地の統治方法には大まかに分けると6つ存在している。

 

地域の租借と治外法権のみを行うもの

 

先住民統治の元、駐留軍を駐屯させるもの

 

現地王侯貴族を通じて統治する間接統治

 

本国から総督等が派遣されてくる直接統治

 

外交防衛を本国が行い、統治は現地に委ねる自治領

 

自国への完全な併合

 

である。

 

そして、この中で日本帝国が行った統治方法としては、全てに当てはまる。

彼等は多種多様な統治方法をその場その場で構築していった、と言う歴史を持っている。

 

元々国がないのなら自治領としたし、近郊部ならば併合を行い、王侯貴族がいれば間接統治を行なった。

元々官僚的な国であったからこそ、このような事になったのであろう。徳川幕府が当時行った基本的な運営方法は、意外にも成功したのだ。マニュアル作りから始める徹底ぶりに我々研究者も驚きを隠せない。

 

多神教の国であったからこそ、そんな事が出来たのかもしれないし、おおらかな国柄はそれを可能にしたのだろう。

一神教の国は基本的にアジア、南北米大陸には存在しなかった事から、現地の神々に対する社の建立等によってこれらを進めていったに相違ない。

 

つまりは多神教の原住民達とは非常に馴染みやすく、統治機構自体も多様化しやすかったのが、この日本帝国型のチャンポン植民地形態であろう。

現に日本帝国の植民地であった国々はその尽くが、多神教へと帰教しており、一神教であるキリスト教等とは相容れないものとなっている。

 

何を言いたいのかと言えば、それは中東を中心に広がっているイスラームにも該当すると言う事だ。

特に日本帝国は、トルコとの共同経営という建前で間接統治を一部行っていたところを、第一次大戦大戦の結果完全に領有する形となったのだ。

 

さて、ここで大きな問題になったのがアラビア半島の統治方法である。今まで一神教が多く存在していた土地に、いきなり多神教の概念をねじ込んだ場合どうなるだろうか?

そう、文化の衝突が発生し大規模な混乱を招く危険性がある。

 

そして、それは起きるべくして起きた。まず、トルコが中心として作成していた法律、特に自治領としての基本的な憲法に関する部分だ。これには日本帝国は、コーランの中にある偶像崇拝の禁止やイスラーム以外の宗教の禁止を無くすと言う手段で自らを主張した。

 

人権として、基本的に男女ともに関係なく平等に参政権、と容姿の自由が加えられたこと。その他大小様々な部分をコーランとは殆ど被らない状態となった。

それに伴い、これから20年程すると女性のより活発的な政治運動を始める者たちが出現する。

これはイスラームに限ったことではなく、世界的な事であったのだが、厳しい法律からより柔軟な法律に変わったことで爆発的に広がってしまったのだ。

 

こうしたことから、昔を懐かしむ人々がチラホラ出てくる。例えば女性に対する性犯罪数だが、法の改定から女性が肌を露出することが多くなった頃から次第に増え始めていた。統計的に見れば、人口増加に伴う変調ではないか?と言う専門家もいるが、それにしても10年で2倍に増加するのは、やりすぎだろう。

 

つまりは意外なことに最初にイスラム原理主義を声高に叫び始めたのは、女性側だった。特にその時期の成人女性の服装は現代でさえも目に余るほどの薄さで、正直な話裸により近い。

私であれば絶対に着るのを拒否するぐらいだ、だいいち日差しがあれほどある場所でこの様な格好をする方がおかしいだろう。

 

一理ある事を言う壮年の女性から端を発したこれ等は、勢力を拡大していき、一時期は自治政府の党を形成するほどにまで膨れ上がる。しかし、そこで大きなことが巻き起こった。そう、第二次世界大戦である。

 

世界大戦の為に言論の締め上げが行われ、反政府的な言論は一時制限され、多くの者たちが投獄される。

戦後になってそれ等の者たちが再び外に出てみると、世界はより一層羽目を外していた。

 

それを見た彼等は怒り狂うが、今の自分達には何もない。指示する人々も、懐古する老人たちもいない。もはや滅びるしか無いのか、イスラームの真実を教える事が出来ないのかそうなったとき、一筋の光が西から射した。

 

それは、善意の光ではない。中東という、非常に大量の原油が出てくる金鉱を掘り当てるための、実に悪意に満ちた汚らしい光であった事だろう。そこを手に入れる為には、形振り構わない。

かつては味方であった国であるが、今や全く違うイデオロギーを持つ敵国。容赦をする必要などどこにあるというのだろうか?

 

私は、ロマノヴァに籍を置いているから言えるが、この当時の大日本帝国と大英帝国の間柄を客観的に言えば、離婚寸前の夫婦と言った感じである。

勿論私の故郷もこの当時、日本帝国の保護国のようだがそれでもまだ客観的に記されている資料は幾ばくかはある。

 

この事態に関わらず日本帝国と英国の間柄は後に1990年代まで、このようにいがみ合いを続けていく。

そして、その隙をついて欧州連合が動き宇宙開発の時代の先駆けとなる。

 

 




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