ポケットモンスター アルカディア   作:聖家ヒロ

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四話『凍てつくジムバトル』

 あれからベッドに寝転んでいると、いつの間にか眠りについていた。

 朝が来て、暖かい日差しを浴びながら服を着替える。

 髪を束ねながら、朝食を取ろうとポケモンセンターのレストランへと向かった。

 ポケモンセンターを利用して思った事は、一生ここにいたいくらい快適だと言う事だ。

 施設は基本無料だし、宿泊もできる。完璧な場所だ。何日もいたら、当然追い出されてしまうのだろうが。

 レストランの席についた彼女は、メニュー表を見て眉を寄せる。

 

「……すいません、フレンチトーストセットをお願いします」

 

 しばらく悩んだ結果、朝限定のフレンチトーストセットを頼んだ。

 渡された水を啜りながら、料理の到着を待つ。

 

「……あの、相席良いですか?」

 

 声を掛けられて、水を飲みながらを視線を向けた。

 そこに居たのは、一人の少女だった。艷やかな水色の髪を後ろで三編みに束ね、瞳の色は澄んだ青色だった。白のハイネックセーターに、黒い短パンを着込んでいる少女は、メリアと向かい合わせになるようにして座った。

 

「ねぇ、あなた、昨日男の子とバトルしてた子でしょ?」

「え? あぁ、見てくれてたんですか」

「私、ジムリーダーの『レナ』って言うの」

 

 ジムリーダー、その言葉を聞いて思わず水を吹き出しそうになってしまった。

 

「ジ、ジムリーダー?!」

「驚かせちゃった? ごめんごめん」

 

 スレナは笑いながら謝った。彼女はウェイターを呼び、コーヒーを一杯注文した。

 

「あなた、名前は?」

「私はメリアっていいます」

「よろしくね、メリア。……ねぇ、あなたの相棒ポケモン。ちょっと見せてよ」

「相棒を? いいですよ。……暴れちゃうかもしれませんけど」

 

 メリアがモンスターボールを取り出し、ボタンを押して中にいるオンバットを自分の隣に出した。

 

「わぁ、オンバットかぁ」

 

 オンバットはスレナの方を向いて不思議そうな顔をして首を傾げている。

 レナの肩から、水色のポケモンが顔を覗かせた。しんせつポケモンのグレイシアだ。

 

「そのポケモンは……?」

「あら、出てきちゃった。この子は私の相棒のグレイシアよ」

「グレイッ」

 

 グレイシアはニコッと笑い、オンバットと挨拶を交わした。オンバットは少し嫌そうな顔をして引き下がった。

 

「こ、こらっ。そんな顔したら失礼でしょ!」

「ははは。仕方ないよ。ひこうタイプもドラゴンタイプも、こおりタイプが苦手だもの」

「え、そうなんですか?」

 

 メリアは驚いて聞き返した。

 

「えぇ。彼にとって、こおりタイプは最も苦手な相手よ。ジム戦では、あまり活躍できないかもね……」

 

 オンバットはメリアの膝に乗って翼を畳んだ。今まで彼の事を一番よく分かっている、と勝手に思っていたが、何も知らなかったのだ。申し訳無い気持ちになり、オンバットの額を優しく撫でた。

 

「でも、彼にもできる事があるかもしれないわね。どんなに苦手な相手でも、勝利への方法を見つけだす……それがポケモンバトルだと思うの」

「……勝利への方法を、ですか。難しいですね、ポケモンバトルって」

 

 レナは膝に乗ったグレイシアの頭を撫でる。ジムリーダーである彼女のアドバイスは、今のメリアにとっては難しく聞こえた。

 そうこうしているうちに、注文したコーヒーとフレンチトーストが運ばれてくる。

 届いたフレンチトーストを一口頬張って咀嚼する。ひかえめな甘さが口の中に染み込んでいく。

 

「ん〜、ここのコーヒーはいつも美味しいわね」

 

 そんな事を言われたが、苦い物は苦手な為共感はできなかった。

 

「相席させてくれてありがとう。はい、コーヒー代置いとくわね」

 

 レナは自分の飲んだコーヒー代をテーブルに置いて、レストランを出ていった。

 

「……あれ。百円足りない……」

 

 

 

 

 

 腹が満たされたメリア。コーヒー代が百円足りなかったのは少々不満だが、目を瞑ることにした。

 

「じゃあ、行こっか。ジムバトルに」

「オンクルル」

 

 オンバットをボールへ戻し、彼女はジムに向かって歩きだした。

 手持ちポケモンは三体。こおりタイプに特別強いポケモンを持っている訳ではないが、それでも勝利への勝ち筋を見つけて必ず勝とう、そう思っていた。

 

 

 

 

 

 ジムに到着した。挑戦の受付を済ませた後、バトルコートへと足を踏み入れる。鼓動がとんでもなく速くなってくる。本格的なバトルコートでの、本格的なバトルは初めてだからだ。

 

「ようこそ、キリアジムへ」

 

 バトルコートの奥でレナが両手を広げて歓迎してくれた。

 

「よ、よろしくお願いします!!」

「おっ。もう準備万端ね。早速始めちゃおうよ」

 

 レナはボールを取り出すも、ハッとして再び口を開いた。

 

「忘れてた。ジムバトルでは、お互い同じ数しかポケモンを使用できないのよ。私は二体だから、あなたも二体。選んでおいてね」

「二体……ですか」

 

 メリアは一つのボールをポーチの奥底に詰めて、勝負の体勢を取った。

 

「よしっ、じゃあ始めるよ」

 

 大きな機械音で試合の開始が告げられた。

 

「頑張ってね! ラクライ!」

「行くよ、ニューラ!」

 

 メリアが繰り出したのはラクライ。対するレナが繰り出したのはニューラだ。

 

「ラクライ! でんじは!」

「躱しながらだましうちよ!」

 

 ラクライが吠えると、円状の電磁波が放たれる。ニューラは避けて、だましうちでラクライを攻撃した。

 

「そこ! たいあたり――」

「でんこうせっか!」

 

 ラクライがたいあたりをお見舞いしようとすると、ニューラが俊足で距離を詰めて爪で引っ掻いた。

 ラクライは怯んで攻撃を相殺され、もう一度牽制をして電磁波を放つ。

 ニューラの身体が痙攣し、麻痺状態になる。

 

「やるね、でもうちのニューラはそんなんじゃくたばらないよ」

 

 ニューラは一声上げると、大きく息を吸って吐き出した。その息は凍てつく冷気となり、ラクライを襲う。

 

「こごえるかぜ、素早さが下がる技よ」

「くっ……!」

 

 さすがはジムリーダーと言ったところだ。強い。舐めてかかった自分を責めた。

 

「ラクライ! 大丈夫?」

 

 ラクライにそう声をかけても、彼は返事をしてくれなかった。

 

「……ラクライ! にらみつける!」

 

 ラクライは目付きを鋭くしてニューラを見つめた。ニューラは身震いをして顔を青ざめる。

 

「もう一度たいあたりよ!」

「こごえるかぜ!」

 

 ラクライの体当たりを、ニューラは凍てつく冷気を吐いて中断させる。そして電光石火でラクライを地面に投げ出した。

 

「ラクライっ!」

 

 メリアは唇を噛み締め、ラクライをボールへと戻す。

 その様子を、レナは何かを考えるようにしてじっと見つめていた。

 

「お願い……オンバット!」

 

 オンバットがバトルコートへと解き放たれた。

 

「行くよ! ちょうおんぱ!」

「躱しながらみだれひっかき!」

 

 オンバットは大きな耳から音波を放つ。

 パウワウは華麗に避けながら、オンバットに向けて爪を振るった。

 目が回るような技の打ち合いを制したのは、オンバットだ。ちょうおんぱが見事に命中し、ニューラは混乱してしまい、自分の顔を引っ掻いてしまう。

 

「まだ行けるよね、ニューラ」

「ニューラ!」

 

 ニューラは首を縦に振って、息を吸った。再び冷気を放出する。

 冷気の中を潜り抜けるオンバットは、ニューラと徐々に距離を詰めていく。

 

「そこよ! すいとる!」

 

 ニューラに最接近した直後、ニューラの腹にオンバットの牙が突き立てられた。

 ニューラは苦痛の声を上げる。

 その間にも、オンバットはニューラの体液を吸い取っていった。

 刹那、ニューラがオンバットの牙を引き抜いて彼を地面に叩きつける。動けなくなったところを、こごえるかぜでトドメを刺した。

 

「オンバット!」

 

 メリアは動かなくなったオンバットに近づいて、抱きかかえた。目を回して、ぐったりとしている。

 彼をボールへ戻していると、レナが近づいてきた。

 

「メリア、あなた勝つことだけを考えたりしてない?」

 

 レナに真剣な眼差しでそう言われた。

 

「もちろん勝つ事も大事だけど、何より大事なのは自分のポケモンの事を思う心よ」

「今のあなたには、それが足りないわ」

「思う心……」

 

 メリアはモンスターボールを見つめながら涙を堪えた。

 

「この街に来て、すぐジムに来たんでしょう? ポケモン達もあまり経験が積めないまま、自分より強い相手と戦って、辛かったと思うわよ」

 

 自分の哀れさに、涙が零れそうになった。

 

「……すいません。私も経験が足りませんでした」

「いいのいいの。足りない経験は、積めばいいのよ」

「ここら辺に、“がんせき山”っていういい修行場所があるの。そこでたっぷり経験を積んで、また来て」

「……はい!」

 

 持っていたモンスターボールをギュッと握りしめて、彼女は威勢よく返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レナ

性別 女
年齢 14歳
髪色・よくする髪型 水色・三編み
瞳の色 青

キリアジムのジムリーダー。こおりタイプ使い。多くのトレーナーが初めに訪れるジムという事もあってか、責任を感じている。明るく活発な性格で、トレーナー達を笑顔で迎える。


ジム戦で使うポケモン

ニューラ

???


















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