京都に着いてからアミに電話しようと思ったら、圏外で繋がらない……?
おかしいなー、今朝は電話できたのに……
「花咲さん、ながら歩きは危ないですよ?」
「あ、ネギ君、悪いけどあたしの友達探すの手伝ってくれる? 清水寺で待ち合わせなんだけど、連絡が取れなくて……」
「相手のバッテリー切れですかね……花咲さんの友達ってどんな人ですか?」
「いつもイヤーマフを着けた人だよ。川村アミっていうんだ」
「わかりました。境内は広いので、3-Aの皆さんにも協力してもらいましょう」
30人もいれば、誰か見つけてくれるよね?
「ここが噂の清水の舞台!」
「誰か飛び降りれっ!」
「おやめなさいっ!」
本堂からの見晴らしはいいんだけど、アミは見当たらないなー。
「この先は恋占いで女性に人気の地主神社があるです」
「恋占いですって!?」
「ホラ、ネギ君行こ行こー!」
参拝のついでにアミを探してほしかったんだけど、みんないつの間にか占いや運試しに夢中になってる。
真面目そうなネギ君はクラスのテンションに振り回されてるし……
でも、修学旅行の邪魔しちゃ悪いよね。
「あれがかの有名な"音羽の滝"です。三本の滝はそれぞれ学業、縁結び、健康にご利益があると言われてるです」
せっかくだからあたしもご利益頂戴しますか。
クラスの大半が縁結びの滝に集中してるけど、あたしはやっぱ健康かなー。格闘家は体が資本だからね。
「酒樽の設置、完了しました。これより帰還します。」
「あれ? あの人……もしかして……」
「のどか? 飲まないですか?」
「何これおいしー!」
「美味ですわ。なんでしょう、この未成年が飲んではいけないような味は」
「いくらでも飲めそう!」
縁結びの水っておいしいの? 健康の水はただの水って感じだったけど。
「いいんちょ、しっかりしなさいよっ!」
「はひー?」
……ん? みんななんで倒れてるの?
「こ、これはどうしたんですか!?」
「縁結びの水を飲んだ人だけが、酔いつぶれてしまったみたいです」
は? 酔いつぶれた!? お酒でも入ってたの!?
「皆さん起きてください! 他の先生にバレたら修学旅行中止の上、停学ですよ!」
「あ、あら? みんなどうかしたの?」
「しずな先生!? こ、これはその……」
「えーと、一部の生徒が疲れて寝てしまって……」
「バスに押し込みますから、旅館に向かいましょう! 花咲さんも手伝ってください!」
え、清水寺の参拝は終わり?
まだアミに会えてないんだけど!?
…………
………
……
…
結局アミと合流できないまま、旅館に着いた。こんなはずじゃなかったのに……
「花咲さん、少しお時間よろしいですか? 話したいことがあるです」
「うん、どうしたの?」
「音羽の滝でのお酒の混入事件について、のどかが不審者を見かけたそうです」
「イヤーマフを着けた女性が滝の近くにいたんです……花咲さんに言おうと思ったけど、すぐにいなくなってしまって……」
アミ、やっぱり清水寺にいたんだ。でも、いなくなったってどういうこと? 今朝電話で待ち合わせの約束したのに。
「誰かと電話してたんです……酒樽を設置したって言ってました」
「お酒を混入させたのは、あなたが探してるイヤーマフの人というわけですね。悪さをする人があなたのご友人なのですか」
「はあ!? アミはそんなことしないよ! あたしはアミの正義感の強さ知ってるんだから!」
「そもそもあなたは麻帆良の生徒ではないですよね? 私たちの修学旅行にいること自体不自然です。あなた、一体何者ですか? 私たちに何をする気ですか?」
この子、あたしを疑ってるの!?
「ユエー、そういうのやめようよー……イヤーマフの人はともかく、花咲さんが関わった証拠は無いよね?」
「……そうですね。花咲さんに尋問してもしょうがないです。部屋に戻りますよ」
「あっ、待ってよー……」
アミが悪さなんてするわけないのに。
……でも、音羽の滝にいたのならなんで合流してくれなかったんだろ?
相変わらずアミと連絡取れないし、これからどうしたらいいの?
「…………」
「なに? あんたまだいたの?」
「その……ユエのこと、嫌いにならないでください。修学旅行楽しみにしてたから、予定が狂って機嫌を損ねたみたいで……」
「別に夕映ちゃんのことは気にしてないよ」
あたしだって予定狂わされてるんだけどなー。別世界に飛ばされるし、友達とはぐれるし、合流するはずのアミはいないし……
「そういえば、花咲さんってどこの生徒ですか……?」
「神威大門装甲学園って知ってる? 自慢じゃないけど、そこの特待生なんだ」
「カムイダイモン……? 聞いたことないです……」
有名校の神威大門を知らない……別世界って、これまでの常識が通用しないってことか。LBCSも人前で使っちゃダメって言われたし、なんかややこしいなぁ。
「みんな酔い潰れてるから静かでござるな。このか殿、暇潰しにLBXで対戦するでござる」
「ええよー。でも分身はやめてな?」
「あたしたちも気晴らしにバトルしようよ。ここでも流行ってるんでしょ?」
「私は持ってないんです……自分のLBXは欲しいんですが、"これ"というのが見つからなくてー」
「ふーん、考えて決めるタイプなんだね」
「はい……」
「のどか、そろそろお風呂の時間です。ハルナたちはまだ動けないので、私たちだけで入るです」
もうそんな時間か。
「花咲さん、あなたも一緒に入るです」
「え? あたしも?」
「ネギ先生はお忙しいので、代わりに私があなたを監視するです。怪しい人物を放置すると、何をしでかすかわかりませんので」
「はぁ……あたしのこと疑っても無駄だからね?」
ここのお風呂は露天風呂だ。夜空の星を眺めながらのお風呂って、風情があっていいねえ。
あたしと夕映ちゃんは素っ裸になったけど、のどかだけタオルで体を隠してる。
「タオルなんて取っちゃえば?」
「そ、外で裸になるのって初めてで……覗かれたり、しないよねー……?」
「どうしたの?」
「のどかは恥ずかしがり屋なのです。特に男性が苦手みたいで」
男嫌いってこと? あたしだって男に裸を見られるのは嫌だけど。
「じーーっ」
「な、なに……?」
女同士でも、ジロジロ見られるのは恥ずかしいんだけど……
「ユエー、失礼だよー?」
「体は細身なのに筋肉がついてるです。花咲さん、格闘技を習ってますか?」
「うん、実家が空手の道場なんだ」
「格闘家とは予想外でした。ここで何かされたら、武術経験ゼロの私とのどかではひとたまりもないです。体力バカのアスナさんと一緒に入るべきでした」
夕映ちゃんはあたしから距離を取った。技掛ける気なんかないってば。
「……ねえユエー、あれなんだろー?」
「LBX……でしょうか?」
インビットだ。なんで露天風呂に?
「あ、木の上にも……」
「どうやら、LBXに覗かれてたみたいです」
「盗撮LBXなんかぶっ壊してやる! いくよ、ミネルバ改!」
LBXを悪用する輩ってどこにでもいるんだね……まあ、現れたら倒すだけだけど!
バキュンバキュンバキュン
「一機撃破! 次!」
バキュンバキュンバキュン
「花咲さん、LBXの手際がいいですね」
「うん……どう見ても熟練者の動きだよ」
「よし、殲滅完了!」
「すごい……もう倒しちゃった……」
ずっとミネルバと一緒に戦ってきたからね。これくらいは余裕かな?
「ひゃあああーー!」
今度は更衣室で悲鳴!?
「今の声、木乃香さんです」
待ってて、今助けてあげるから!
To be continued