麻帆良の小さな戦士たち【旧版】   作:ハクアルバ

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ep.08 吸血鬼の噂

2003年4月 新学期

 

マジックダンボールの欠陥、新ルールの追加もどこ吹く風。LBXの人気はさらに広まり、メインターゲットの子供を中心に多くの人がLBXを手にしていた。

 

ネギが受け持つ3-Aの生徒にも、流行りに乗ってLBXバトルを始める者がいた。

 

「アキラ、LBXで対戦しよーよ。ホームルームまでまだ時間あるし」

「ゆーなもLBX持ってたんだ」

 

朝練を終えた裕奈とアキラ。彼女たちがLBXを始めたのはつい最近のことである。

 

「ジャンヌ・D! おとーさんの出張のお土産だよー」

「へぇ、カッコいいじゃん。じゃいくよ、トリトーン」

 

バトルスタート

 

「初心者だからお手柔らかにね」

「私も初心者だけどね」

 

ジャンヌ・D、中距離から二丁拳銃を連射する。トリトーンはダッシュで弾丸から逃げるが、二、三発被弾してしまう。

 

トリトーンは射撃に集中するジャンヌ・Dに接近し、アンカーを振るうが、

 

「おっと! この子身軽だから当たらないよ~」

 

ジャンヌ・Dは横ステップで回避し、トリトーンの攻撃を躱す。その直後、トリトーンに向けて発砲する。

 

トリトーンの攻撃を躱しては撃ち、躱しては撃ちの繰り返しだ。ジャンヌ・Dの一方的な攻撃により、トリトーンのライフは残り4分の1を切った。

 

「アキラやられっぱなしやん」

 

アキラの隣では朝練あがりの亜子が見ていた。

 

「この勝負もらったー!」カチッカチッ

 

「……あれ? 弾切れ?」

「チャンス!」

 

仕返しとばかりに、ジャンヌ・Dに容赦なくアンカーを振るう。

 

「うわっ、ちょっ、リロードできなっ」

 

ガァン!

 

アンカーの一撃がクリーンヒットした。

 

「あー! あとちょっとだったのにー!」

「見事な逆転負けやなー」

 

「悔しいから戦い方の勉強しよっと。Lマガに戦術論とか書いてないかなー? アキラー、Lマガ持ってるー?」

「はい」

「ありがとー! えーっと、二丁拳銃の戦術は……」

 

LBXマガジン、通称"Lマガ"は新商品の情報や、初心者向けの戦術指南が書かれた情報誌である。

 

「ウチもそろそろLBX買おかなー」

「亜子も興味ある?」

「だってみんな楽しそうやから」

「じゃまずは機体選びからだね」

 

亜子とアキラはLBXのカタログを開き、気になる機体を探す。

 

「ズール、ムシャ……うーん、なんかピンとこんなぁ」

「水中型とかどうかな? ナズー、シーサーペント、マッドロブスター」

「最後のエビやん! ん?この水兵みたいな子かわいくない?」

「マリーフェインだね。この子も水中型だよ」

「これにしよっかなー? そういや昨日、まき絵帰ってないんやけど、そっち泊まってない?」

「いや? 来てないけど?」

「連絡は?」

「電話しても繋がらんのや……」

「ってことは、行方不明!?」

 

まき絵が昨日から帰ってないと聞き、裕奈とアキラは不安の表情を浮かべた。

 

そのとき、しずな先生が3-Aの教室に入ってきた。

 

「みんな聞いて、まき絵ちゃんが桜通りで倒れてて、今学校の保健室にいるの」

「え!? まき絵が!?」

「様子見に行こ」

「「うん!」」

 

三人はLマガを読むのを止め、保健室に向かった。それからまき絵たち四人が不在のままホームルームが終わり、生徒たちは身体測定を始める。

 

多感なお年頃の女子たちの前で、柿崎はある噂話をした。

 

「ねえねえ、最近寮ではやってるあの噂、どう思う?」

「あ~、あの桜通りの吸血鬼ね」

「えー、なにそれ!?」

 

噂の真相を知ってる美空は反応が薄い。逆に噂を全く知らない桜子たちは興味津々だ。

 

「なんかねー、満月の夜になると出るんだって。桜通りの並木道に、化け猫の顔した血まみれの吸血鬼が……」

 

「キ…キャー!」

「こわいですー!」

 

「吸血鬼なのに化け猫? へんなの。そんなのデマに決まってるでしょ」

 

 

「先生ーー!大変やーー! まき絵が…まき絵がーー!」

「亜子さん!? どうしたんですか!?」

 

廊下を走ってきた亜子に呼ばれ、ネギたちは保健室に向かう。保健室では、まき絵が寝息を立てていた。

 

「桜通りで倒れてたんだって」

「ま、まさかあの噂の吸血鬼にやられて……」

「そんなのいるわけないでしょ」

 

(ほんの少しだけど、まき絵さんから魔力を感じる……この感じ、マジックダンボールが壊れた時の魔力に似てるような……)

 

「ん……あれ? なんでみんないるの?」

「あ、まき絵起きた!」

「よかったー。心配したんだからね」

 

「ていうかここどこ? 今何時?」

「学校の保健室だよ。今は朝9時」

「えええーーー!? 晩ごはんも朝ごはんも食べてないよー!」

 

「随分寝てたのね……なんかあったの?」

「えーっと……おっきな猫ちゃん見た気がするんだけど、その後は覚えてなーい」

 

まき絵はアスナの質問に曖昧にしか答えられない。事件当時の記憶のほとんどが飛んでしまったようだ。

 

その日の夜、部活を終え帰路につくアスナたちは、桜通りの近くを歩いていた。

 

「のどか、私たち書店寄るから先帰っててー」

「噂とか関係なしに、この時期は不審者が出やすいので気をつけるです」

「うん」

 

「……本屋ちゃん一人で大丈夫かな?」

「心配なん? 吸血鬼とかデマゆーたんアスナやろ?」

 

 

「あ、桜通り……か、風強いですね……ちょっと急ごうかなー。こ、こわくない~……」

 

怖さを紛らわすため鼻歌混じりに早歩きで通り抜けようとする。

 

(ちっ、いちいち()()()をぶっ壊すのは面倒だが、しょうがない)

 

突如、木々の合間から"ドォン!"という爆発音がした。

 

「ひゃあ!!?」

 

のどかは爆発音に驚き、その場で尻もちをついてしまう。

 

「LBCSコネクト、ヴァンパイアキャット。宮崎のどか、悪いけど少しだけその血を分けてもらうよ」

 

「キャアアアア!!」

 

そこにいたのは、猫の耳を生やした吸血鬼だった。

 

 

To be continued




裕奈はアーティファクトの二丁拳銃のイメージからジャンヌ・Dを持たせました。

アキラは水泳部で力持ちという設定から、水中型でハンマー使いのトリトーンに。

亜子のアーティファクトはナースなので、旧装甲娘で救護班だったマリーフェインを選びました。

そして、エヴァンジェリンは一番最初にヴァンパイアキャットと決めてました。
共通点は吸血鬼で、ミドルネームのキティの意味は子猫ですので。

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