幼馴染と一緒に迷宮探索者になる   作:猫仔猫

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第11話 初迷宮で生産

森の入り口で小振りの枝を折ったり、蔦植物を採集していると明日香と美咲がやってきた。二人の手には肉や毛皮が山盛りだ。

やっぱりアイテムボックス持ちでないとすぐにアイテムで手が埋まるよな。

 

「ゆ~君、持ちきれないよ~」

 

明日香の持っていた毛皮4枚を取り錬金で大兎の革x4にして、それを使用して大兎の革(特大)を作る。

そして採集していた蔦を縄にして、ボストンバッグもどきを作り上げた。下半分が革、上半分と持ち手部分が縄網仕様だ。下半分が革だからきちんと入れれば魔石が落ちる事も無いだろう。

 

美咲の分も同じ物を作るが、その間に二人にはみんなの所に見せに行って、欲しければ毛皮4枚持ってくるようにと伝えて貰う。

先程の女子グループ8人も近場に居たら、ついでに見せてても良いと言っておく。一緒に行動していたし、敢えて教えずに入学早々嫌なグループとは思われたくないしな。

 

バッグを作り終わっても二人はまだ戻ってきていないので、後から作ろうと思っていた物を作ってしまう事にした。

木の枝と石、蔦を使用して美咲の石斧、石からひかりの石のナイフを作る。ついでに石釘も何本か作っておく。涼子の槍と雛子の木剣は枝からじゃなくきちんとした木材から作ってやりたい。

本来錬金だけでは武器を作れないし、鍛冶や木工だと加工する道具が必要なんだけど、錬金と生産スキルを両方持っていると錬金で作れるようになる。調合と錬金のポーションと同じだな。錬金だけだと素材の加工や変換がメインだからね。

ちなみに錬金のスキルカードはアイテムボックスが付かないので他の生産スキルカードより出易いらしく、小母さん――ひかりのお母さんたちは調合と錬金、料理と錬金を持っているらしい。

 

美咲用に作った石斧だけど、これで伐採出来るんじゃないか?

石斧で木を伐りつけるとスキルのおかげか、かなりの伐り込みが入った。反対側から石斧を振るうと見事に木が傾きだした。本当なら危険だけど、木に手を当てて倒れる前にアイテムボックスに回収する。

 

木を元に丸太、木材、板材と作っていく。小母さん曰く、錬金で木から丸太を作る時に乾燥されるからすぐに素材として使えるらしい。

 

まだ戻って来ないので、ついでに3本ばかり木を伐った。これで木を使う物は大体作れるだろう。

木材、石、蔦を使用して涼子の石槍。木材から木剣を2本、雛子と信也用だな。板材から盾と大楯。恵と健一用に杖。……これで一通りは出来ただろうか?

 

草原の方を見るとみんなが纏まってやって来た。順番で来た方が待ちが少なくなるだろうに……

 

 

「なぁ、雪兎。お前のアイテムボックスにしまって貰うのじゃダメなのか?」

「誰から何を何個預かったなんて覚えていられないし、明日明後日はどうするつもりだ? ずっと一緒に付き合えってか?」

 

着いて早々の信也の疑問に答えてやる。

パーティでの行動なら売却時に均等割りすれば良いけど、1階層の内は個別行動になるだろうしな。

 

「うっ、そうだよな……」

「毛皮4枚使うから売ったポイントで良いバッグを買えるかもしれないけど、迷宮素材を使っているからか<重量軽減・小>の効果が付いているし、今日は有った方が良いと思うぞ」

 

美咲の分を作った後に鑑定して見たら<重量軽減・小>が付いていたんだよな。作った武器とかには<耐久値上昇・小>とか<追加ダメージ+1>が付いていた。

耐久値はステータスでなく武器の耐久っぽいけど、俺の鑑定では耐久値を見れなかった。

 

美咲のバッグに預かっていた魔石と肉を入れて渡し、石斧と木の盾も渡す。

 

「スキルは使わないと上がらないしな」

「嬉しいのですけど、今日は素手では無いのですか?」

「先生は魔物を倒せないとダメ、大兎なら素手でも倒せるって言っていたけど、武器や道具を使ってはダメとは言ってなかったはず。それにみんな一回は素手で倒しているんだし、後は自由行動だから問題ないでしょ」

 

美咲は今日はずっと素手だと思っていたんだな。

もしかしたら先生もそのつもりだったかもしれないけど、自由行動でやれることをやってるだけだし大丈夫だろ。

 

順番にバッグを作ってやり、装備も押し付ける。

 

「真也は武器スキル無いから木剣な。使ってみてダメそうなら斧や槍を作ってやるから」

 

受け取った信也は左手に木の大楯を持ち、右肩にバッグをかけ手に木剣を持ち草原に戻って行った。

 

「う~ん。片手ならあれで良いけど、両手だと背負う方が良いか?」

「1階層のうちはこれで十分ですよ。入れるのに背負いなおすのも大変ですから」

 

信也の後ろ姿を見ながら呟いたのが聞こえたのか、美咲が答えた。

みんなも否は無いようなので同じバッグを作っては、武器も一緒に渡していく。

 

「紅葉には石釘な。大きめに作ってあるから棒手裏剣の代わりになると思う。ダメなら諦めて木の小刀か、購買で買うかだな」

「う~ん、とりあえずこれでやってみるね」

 

「健一には杖を作ってみたけど、付与術だからなぁ。大兎を倒すのは今の方法と変わらないだろう」

「で、ですよね。でも自分に付与をすれば、す、少しは楽になるになるんじゃないかな……」

 

「恵にも杖な。俺らの中で唯一の攻撃魔法使いだから、期待してる」

「ありがとー。恵ちゃんちょ―パワーアーップだよ♪」

 

俺たちのグループに渡し終えると、涼子とひかり、紅葉と健一、雛子と恵のペアで草原に戻って行った。

明日香と美咲はここに残るそうだ。明日香は戦闘で上がるスキルがないけど、美咲は斧も楯もあげれるんだけどなぁ……。まぁたった数時間だし、初日から張り切り過ぎる必要もないか。

 

 

「じゃあ、みんなの分も作って行こうか」

「はい。助かります」

 

女子グループに話しかけると、リーダーというか中心人物になってしまっている子が答えてくれた。

ちょっと行動力ある子の近くにちょっと消極的な子が集まって出来てしまった、いわば寄せ集めというか流れで一緒に居るみたいな集団だ。これがちゃんとしたグループになるかは、これから次第って感じか。

 

順番にバッグを作りながら、希望の武器を聞いて作っていく。

槍と剣が多かったけど杖の子も居たし、珍しいところでは小刀二刀流。カッコいいよね、中二病心が擽られる!

 

最後の子は何と錬金と革細工持ちの子で、作り方を教えて欲しいとお願いされた。

両親は一般人だし生産持ちの大人が近くに居なかったので、生産スキルでどんな事が出来るのか知らないらしい。

俺も小母さんたちに聞いていなきゃ知らないままだっただろうしな。学校では生産について何時教えてくれるのだろうか?

 

材料の調達からという事で、この錬金と革細工持ちの子――朝倉市華ちゃんと蔓を取りに行く事になったのだけど、そこにもう一人斧スキル持ちの後藤巴ちゃんも同行したいと言う。

話を聞くと伐採スキルも持っているらしく、それなら手間でも無いので一緒に行く事にした。

 

女子グループの他の6人は揃って草原に向かい俺と市華ちゃんに巴ちゃん、それに明日香と美咲の5人で森の中に入る。他に女子が居た方が二人も安心だろう。

 

移動しながら微薬草や微魔草を教え、みんなで摘んで行く。戦闘スキルを上げるなら大兎を狩った方が良いと思うけど、狩るだけが金策じゃないからね。

 

 

「蔦は木の根元の方を切って、そこを掴んでアイテムボックスに回収すると、どんなに木に絡んでいても平気だからね」

「これは楽で良いですね。全部外さないといけないのかと思ってました」

 

蔦を採集して見せると、市華ちゃんは喜んで回収し始めた。

 

「一度切り込みを入れて、逆の方から同じ高さで伐りつける。木が揺らいだら倒れる前に触れてアイテムボックスに回収するか、巻き込まれないように伐り込みと別の方に逃げる事」

「そっか、アイテムボックスがあると倒れるまで待たなくても良いんですね!」

 

巴ちゃんも俺たちと少し離れた場所で伐採を始めた。俺たちの方に倒れないように、きちんと考えてやってくれているのが素晴らしい。

生産、採取系持ちはアイテムボックスが付いて来るから……って、市華ちゃんが最後だったから巴ちゃんにもバッグを作ったような……でも今は伐った木をアイテムボックスに入れているよな??

 

 

「雪兎様、少しお伺いしたい事が有るのですが宜しいでしょうか?」

 

二人が離れて採集を始めた所で美咲が聞きたい事が有ると言うので、俺が答えられる事ならと美咲の話を聞く。

 

「わたくしたちは装備を作って頂きましたけど、明日香さんに無いのはどうしてなのでしょうか?」

「あぁ、明日香にはこれをあげようと思ってね。渡しそびれていたんだ」

 

アイテムボックスから<堅木の杖>を取り出して明日香に渡す。

 

「この杖って、あの時のだよね~?」

 

初回のガチャ産だ。持っていても俺は使わないしな。

 

「ゆ~君の手作りのが嬉しいけど~、ある意味ゆ~君の初めてを貰っちゃったぁ」

「ゆ、雪兎様の初めて……」

 

はい、そこ。変な想像をしない。視線を下げない! まだ新品だよっ!

そんな目の前で意識されると、俺だって意識しちゃうだろ! 二人の胸を意識しておっきくなったら困るんだよ、一緒に採取している今日初めてあった子も居るんだからさ。

 

「あ、あぅぅ……。そ、そうでした、もう1つ。雪兎様が倒した2匹は2つもドロップ品がありましたけど、わたくしたちは倒しても1つしか落とさなかったのです。何か違いが有るのでしょうか?」

「それはコレのせいかな」

 

アイテムボックスからナイフを取り出して見せる。

<堅木の杖>と同じ初回ガチャで出た<剥ぎ取りナイフ+1>だ。剥ぎ取りナイフの効果はドロップ数の増加で、+1だと確実に一個増えるらしい。

このナイフの名前と効果を二人に教える。

 

「パーティならともかく、個別行動の時に誰か一人に貸すわけにもいかないからな」

「大兎ですと単純に倍になりますものね」

「ゆ~君はそれ作れないの~?」

「鉄にオーククラスの革と魔石があればだけど、多分プラスは付かないぞ。運が良ければ増えるかもって効果だし」

 

クラフトだと低ランク品しか作れないからなぁ。スキルレベルが上がれば高品質で+1とか付くかもしれないけど……

 

「購買で材料を買うにしても高そうですわね」

「元を取るのにどれくらいかかるかだよな」

「無くても2~3年生は進級できるんだし~、大丈夫だよね~」

 

全員の平均がマイナスでなければ、委託販売を利用してポイントを渡すという手もあるしな。

 

 

 

 

 


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