幼馴染と一緒に迷宮探索者になる   作:猫仔猫

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第24話 泊り授業③

やってきたのは綺麗な金髪を編み込みハーフアップにしている、イギリス系美少女のソフィーだった。

板の間に辿り着くとバッグの中からビニール袋を取り出して見せた。

 

その袋の中身はクッキー。多少は形が残っている物も有るけど、大半は粉々になっている。

 

「外にぶら下げてたから、誰かに嫌がらせされたと思うのヨ」

 

悲しそうな表情だ。瞳に浮かぶのは悲しみの涙か悔し涙か……

 

「まぁ、酷いですわね。ソフィーさん上がっていらして。雪兎様いいですわよね?」

 

美咲の言葉に頷くと、ソフィー靴を脱いでいそいそと地火炉の側に寄って来た。

 

「他のみんなはどうしたの~?」

「今日はみんなバラバラよネ? ユキトたちは一緒だけど良いノ?」

「パーティをばらけただけで、一緒に行動してはダメと言われてないよ。先生は『何をするも自由』って言ってたじゃない。他にも固まって動いている人たちは居たし」

「Oh……」

 

串焼きを追加で焼きつつソフィーに話を聞くと、先生の話が終わってすぐに何時ものメンバーはバラバラに行動を開始したらしい。

 

その後森の入り口で採取をしていたのだけど、荷物は木の根元に置いていたらしく、ある程度採取して戻ったらクッキーが粉々になっていたと。

 

重さや大きさ的観点から見て、1階層で取れる中では微魔草が一番優れているから、それ狙いで採取していたのかな?

で、その隙を誰かに狙われてしまったと。

 

「きっとソフィーちゃん狙いの子がやったんだよ~」

「あぁそうか。珍しく一人で行動しているし、食事を分けてあげるとか言ってお近付きになろうとしたって事か」

「そうなると他の3人も心配ですわね」

 

ソフィーみたいに隙を見せなければ、声をかけられる程度で済むと思うけどね。授業中だし、入り口の所には先生も居るし。

ちなみに迷宮高校ではいじめは無い。命がけで迷宮に入るのだから、報復で事故を装って殺されてしまうかもしれないのだ。大人しくひ弱そうな子でもスキル補正で力があったりするし、人型の魔物を倒しているから人間相手であっても身を守る為に力を振るうのを躊躇ったりはしないだろう。

 

 

串焼きを食べて淹れたお茶を飲む。葉ではなく粉のお茶だけどね。

まったりしていると、ソフィーがソワソワしながら明日香と美咲に話かけた。

 

「アノ、ふたりはトイレどうしてるノ?」

「そっちの小さい方がトイレだよ~?」

「流石に水洗ではありませんから、雪兎様にお願いしないといけないのですけどね」

「エッ、ユキトにキレイにして貰うノ!? そ、それはユキトに舐めて貰うとかカシラ? ……イヤン、そのまま初めてを体験しちゃうのですネ」

 

ソフィーは両手を頬に当てて体をクネクネと動かし始めた。

いや、そんな事はないからね? そもそも舐めてキレイにするとかありえないから! それから二人も期待するような目でこっちを見ない!!

 

「生活魔法でキレイにするだけだよ」

「Oh……ワタシの勘違いでしたカ」

 

ソフィーはそう言うと、トボトボとトイレに入っていった。

 

 

 

出てきたソフィーとトイレに生活魔法の<清浄>を使用してキレイにする。

小屋に使用すれば全部キレイにしてくれるから、中に入る必要は無い。わざわざ臭いを嗅ぎたいとも思わないしね。

 

「そういえばみんな夜はどうするんだろうね」

「女子は先生の近くで寝るんじゃないかな~?」

「ワタシもそうするつもりだったデス」

 

パーティなら交代で夜番をしてとなるんだろうけど、今日は違うからな。

中にはグループでそうやっている所もありそうだけど、先生の近くが一番安全か。

 

 

22時、ちょっと早いけど寝る事にした。今出来る事は明日でも出来るからさ、わざわざ暗い中でする事は無いもんね。

 

「暗くなってから森の中をここまでくるようなやつはいないと思うし、夜番無しでも良いかな」

 

もし誰か来ても扉の内側に閂を付けておけば開けれないだろうしな。

紐で囲って、近付く者がその紐に触れたら音が鳴る仕掛けも出来なくは無いけど、ここは大兎さんが無邪気に跳ね回っているから、役に立たなさそうなんだよね。

 

トイレに行く時だけ気をつけて貰えば良いって事で。

そもそもがこの迷宮に居るのはクラスメートだけだし、何かある可能性は限りなく低いし。

 

 

板の間はアイテムボックスにしまう。トイレは誰か夜中に起きるかもしれないのでそのままにするけど、キレイにしてあげる事は出来ないので、そこは各自で何とかして欲しい。

 

「火が無くなると真っ暗だね~」

「外と違って月や星明りが無いからね」

 

小屋の中に入ると、そこも真っ暗だ。

うん、灯りなんて魔道具を作らなきゃ油のランプや蝋燭だしね。現時点でそんな物を作れる材料はない。

 

閂をかけて、靴を脱いで、羽毛マットにダイブ!

ふっかふかだぁ~~~~!!

 

明日香とソフィーも続いてダイブしてきたけど、美咲は膝を着いてお淑やかに横になったようだ。流石はお嬢様だな。話す内容は全然お嬢様っぽくないけどね。

 

なんて思ったけど、ゴロゴロ転がって寄ってくるのは全然お嬢様じゃないね!

 

「雪兎様、雪兎様! 服は脱いだ方がよろしいですか?」

「何もしないから着てなさい」

「仕方がありませんわね、今日の所は大人しくしておいてあげますわ」

 

「ゆ~君はいい加減ママのことを諦めた方が良いと思うよ~?」

「まぁ、雪兎様は明日香さんのお母様の事がお好きだったのですか?」

「ワタシ知ってますヨ、人妻スキーとか言うのですよネ? デモ、不健全デス」

 

いや、初恋は小学生の頃に終わっているから。それから特定の誰かに恋心を抱いていないってだけだよ。

それに人妻だから好きになったわけじゃないから、そこは勘違いしないで欲しい。

 

「だからゆ~君が私たちを受け入れてくれるように、二人とも協力してね~」

 

そういうのは俺の聞いてないとこでやってね。

 

吾輩は疲れた、もう寝るぞ。

 

 

 




何か書いているうちにソフィーが「金剛デース」とか言いそうにかんじてきたのだが……

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