幼馴染と一緒に迷宮探索者になる   作:猫仔猫

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第31話

23XX年7月16日(金) 日本時間8:30

 

「みなさんおはようございます。今日は1学期最終日で終業式だけです。

明日からは夏休みとなりますが、期末試験で赤点を取った人は来週に補習と追試がありますから忘れないように予定を確認する事。

夏休み中は帰省したり外出したり出来るようになりますが、探索者カードは学校限定の物なので校外では使えませんから気を付けるように。

この後9時から式が始まり、終わったらそのまま解散になります。良い夏休みを……問題を起こさないようにね」

 

相変わらず最低限の連絡だけで終わる。

普通の学校と違って担任との距離が遠いからか、クラスメートの一部では不評だ。

俺は無駄に長話をされるよりは良いと思うし、それに高坂先生は強制依頼で先生をやらされているだけで、生徒の事を大切にとか考えていないのを知ってるからな。

 

 

「雪兎も家に帰るよな?」

「ん~、盆に墓参りするくらいしか戻らないよ」

 

式までの空いた時間に信也が聞いて来たので、帰省の予定を答えた。

家には誰も居ないし、クランハウスの方にも顔を出すけどそんなに長い時間居るわけじゃないし。

それに1駅だから日帰りでも全然問題無いんだよね。

 

そういうわけで、夏休み中でも迷宮の1階層で過ごす時間が多いだろう。

 

「え~、じゃあ私も残ろうかな~?」

「明日香はダメよ。下の子たちが待っているし、ママたちから色々聞かないといけないんだから」

 

明日香の希望は涼子に却下されたようだ。

クランハウスの下の子はまだ小学生だし、明日香が抜けると涼子やひかりの負担が増えるから仕方ないよな。

 

明日香は家に帰るとして、後の3人はどうするのかな?

 

 

 

23XX年7月16日(金) 日本時間12:00

 

終業式の後の借りた部屋で5人、裸でくっつきながら横になっていた。

4人とも早ければ今日、遅くても明日には家に帰るからと、こんな事になっている。

 

借りた初日の夜に全員同意の上でこういう関係になったから、問題は無いのだけどね。

 

 

「わたくしはお盆明けには戻って来る予定ですわ。神奈川ですから遠くもありませんし」

 

左腕を抱きしめている美咲が、何時ここに戻って来るのかという俺の質問に答えた。

 

そうか、美咲は盆明けに戻って来るのか。となると17日かな?

それでも今日帰るから30日以上にはなるんだよな。

 

「ワタシは7月中は旅行で8月には戻ってきますヨ」

「ボクの家は8月の頭から10日間海外に行くんだ。だから、その2~3日後には戻って来れると思う」

 

ソフィーとレオナの家はお盆関係なしなのか。って、欧州の家系で仏教徒じゃないし、当たり前か。

 

戻ってくるのは明日香が8月末、美咲が盆明け、ソフィーが8月頭、レオナが盆前って感じか。

ソフィーの帰りが早いから、思ったより一人で居る日は少なさそうだ。

 

 

ちなみに右腕が明日香で左腕が美咲、右脚がソフィーで左脚がレオナらしい。……合体ロボか何かかな?

泊り授業の晩の態勢にレオナが増えただけとはいえば、たいしたことが無いように思えるけど、両手足を固定されると大変なんだよ。

 

 

 

その後みんなでお風呂入って遅めの食事をとると、美咲が家に帰るので校門まで見送った。

それから少しすると明日香の帰る時間だ。一緒に帰る信也、涼子、ひかりの事も一緒に見送る事になる。

 

「じゃあ、先に帰ってるからな」

「忘れずに帰ってくるのよ?」

「待ってるから」

「早く帰ってきても良いんだからね~?」

 

家が近場の生徒達が帰るのが多い時間帯だったらしく、クラスメートの他にも先輩方にも見られる中の見送りになってしまった。

ソフィーやレオナの金髪は目立つから視線が集まるのは仕方ないけど、俺に殺気を投げるのは止めてください! 2年や3年にも欧州系の美少女が居るの知ってるんですよ!

 

 

残ったソフィーとレオナは明日の午前に出る予定なので、今日の残り時間となる晩御飯までの時間は迷宮に行く事にした。

ぶっちゃけ他にする事も無いんだよね、遊ぶなら夜でも良いわけだし。持ち込んだゲームも3か月以上遊んで飽きたからね。

せっかく外出できる夏休みなんだし、明日は新しいゲームでも買いに行こうかな。

 

3人で迷宮に入って、何時もの如く1階層の森へと向かう。

手頃な場所の木を伐ってスペースを作り、板の間を配置する。そこで俺が生産をして、他のみんなが近くでスキル上げをするのが最近の過ごし方だ。

 

ソフィーはおしゃべりしながら近くに沸いた大兎を狩り、レオナは適当な目標に魔法を打ち続ける。

レオナのMPが切れたら微魔草を採取して、低級MP回復ポーションを作って飲ます。

パーティメンバーにも採取の効果を及ぼすから、二人が摘んでくる微魔草の品質低下も無いからありがたい。

 

それにしても、今日は美咲が居ないから安心して作業ができるな。

美咲はたまに透明化の訓練とか言って、透明になった上に裸になって胸を顔に押し付けて来たりするようになってしまった。

関係を持ってからは、積極的どころか完全に肉食系お嬢様だ。

 

 

「ユキトー! ワタシ、オーラを出せるようになっちゃったヨ!」

 

声のする方を見ると、ソフィーの右手が金色っぽい何かに包まれていた。

あれがソフィーの言うオーラだろうか?

 

そのソフィーは俺と目が合うと、近くにあった木の幹を殴った。

 

すると『ゴォォォン!』と凄い音が鳴って、殴った場所が抉れるように凹んでいた。

恐らく格闘のアーツなんだろうけど、軽く小突いたような拳であんなになるなんてな。

 

「Oh……MPが半分になっちゃいました」

 

どうやら消費が激しいようだ。必殺技か何かかな?

固定値でも割合でも連発できるようなものではないという事か。後衛と違って前衛はポーション飲む余裕なんて無いだろうし。

HP回復ポーションと違って、MP回復ポーションは飲まないといけないのがネックなんだよな。飲み過ぎるとトイレも近くなるし。

 

 

そしてヨーコはいつも通りに大兎を狩っては、俺の所にドロップ品を持って来てくれている。

御褒美は焼いた肉ではなく、学食で買ったお稲荷さんだ。アイテムボックスにしまってあるから、作り立てのままだしね。

 

大量に注文したので変な目で見られてしまったけど、ヨーコが喜んでいるからそのくらいはね。

 


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