第4話
23XX年4月6日 日本時間07:30
真新しい国立第三迷宮高校の制服を身に纏い、家の戸締りをする。
全寮制で今度はいつ帰ってくるか判らないからな。一応叔母さんたちが掃除にしに来てくれるらしいけど、戸締りはしっかりしとかないと。
「ゆ~君おはよ~」
玄関の鍵が締まっているのを確認して振り向くと、何時の間にか明日香が門の所に立っていた。
同じく三校の制服姿だ。手には学生鞄を持ち、準備万端のようだ。
「あれ~、ゆ~君は手ぶらだけど大丈夫? 忘れ物とかない?」
「あぁ、書類とか筆記具なんかは全部アイテムボックスに突っ込んであるからね」
ちょっと調べたんだけど、アイテムボックスの容量は1辺スキルレベルx5メートルの立方体くらいらしい。
受験後に小母さんたちに教えられて調合と生産をやっていたから、おれのクラフトスキルのレベルは2に上がっている。つまり元の大きさから8倍になっていて、俺の部屋の物を全部収納しても余裕がありまくっているのだ。何なら家にある家具を全て収納する事も出来るだろう。
「ふぇ~、便利だね~。私も何か生産スキル覚えられないかな~」
「明日香の鞄も入れてやろうか?」
「ううん、いいよぅ。迷宮に入る時じゃなくて普段もお願いしちゃうと、ゆ~君を便利屋扱いしているみたくなっちゃうからね~」
並んで歩きだすと道の角から後の3人がやってきた。
勿論全員が三校の制服を着ている。幼馴染5人、揃って無事合格出来たんだよね。倍率は高かったけど、全ての迷宮高校は全寮制だから好きな地方の学校を受験する人も多い。同じ東京ならお台場にある一校の方が人気で、八王子にある三校は全国で見ても人気が低いんだ。
23XX年4月6日 日本時間08:10
「ん~、入学式の日なのに普通じゃね? 他の学校だと親が一緒に来て記念写真とか撮るらしいのに」
入学手続きの時の説明では9時までに受付を済ませて教室に来る事を書かれていたので、まだまだ時間があるしな。
「迷宮高校は普通の学校とは違うからでしょ。入学式であっても敷地内に入れないのよ」
「ん、敷地内には関係者しか入れない」
「ランクが低いと言っても敷地内に迷宮が3つもあれば、そりゃ立ち入りは禁止するよなぁ」
昔親父に話を聞いたんだけど、三校の敷地内にはFランク迷宮1つとEランク迷宮2つがあるらしい。
そりゃあ一般人を立ち入り禁止にするよねって話だ。受験や説明会も別会場だったし。
校門から入って正面の建物に行くと長机があり、スーツを着た人が数人いた。
話しかけるとここが受付の場所だった。手続きを行うを生徒カードを渡されて4階の教室に行くようにと言われた。
教室に入るとそこは体育館並みの広さの部屋に机が並べられていた。
机に上にはパソコンのモニターが置かれていて、黒板も見当たらない事からこれで授業が行われるのだと思う。
「好きな場所に座れと言われても、これは迷っちゃうね」
「15x20で300人」
中学校の教室なら窓際の後ろとかあるんだろうけど、前を除いた3方向全てに出入口が3箇所ずつあったのだ。
「教壇もないしモニターを使うならどこでも一緒だろうね。扉に近すぎない壁際で良いんじゃね?」
俺が提案すると異論はないようで、入ってきた扉から少し離れた場所に陣取る事にした。
「早く来てよかったね~。おかげでみんな固まって座れたしね~」
「母さんたちが早くいった方が良いと言ったのは、これが理由かも」
早くいった方が良いと言われて、理由を聞いても笑っているだけで教えて貰えなかったんだよな。その時は受付の時間が掛かるかと思っていたんだけど、こっちが本命だったようだ。
「後の方になると真ん中らへんしか残って無いんじゃね?」
俺たちと同じように早めに来た生徒が壁際の席から座って行くのを見て信也が言った。
知り合いで並んで座ったりして壁際2列目までは埋まって行くけど、それより内側は全然だもんな。
そしてその予想が当たり、10分前になると中央3列にしか空きは無くなっていた。
入ってくると、みんなの視線を受けながら教室の真ん中に歩いて行く事になるのだ。普通の広さならまだしも、この大きさだからなぁ……
そして9時なると前の壁にスーツを着た女性が映し出された。
「入学おめでとう、私は皆さんの担任となる高坂です。先ずは机の上にある箱型の装置にカードスロットがあるので、そこに生徒カードを差し込んでください」
高坂先生の指示通りにモニターの横に有った装置のカードスロットに生徒カードを差し込むと、モニターの電源が自動で入って前の壁に映し出されている映像と同じく、高坂先生の姿が映し出された。
「……はい。全員揃っている事を確認しました。通常授業の出席もこれで確認する事になります。カメラも付いていて、こちらからも皆さんの事を確認出来ますので、居眠りや内職も分かっちゃいますから気を付けるようにね」
まぁ300人なんて一々確認してられないけどね。という言葉が小さく聞こえた。たしかに授業を進めながら確認なんてしていられないよね。
「授業でも迷宮の探索をしますが、その際はパーティを組む事になります。皆さんが交流し易くする為に、迷宮高校では1学年1クラス、席は自由となっていますので、積極的に交流するように」
「次に授業についてですが8時半からHR。その後9時から50分授業、10分休憩を国語、英語、数学の3教科を行い、11時50分から1時20分までの1時間半は昼休み。それから迷宮座学もしくは実習となります。3時と4時から日替わりで化学や地理歴史といった授業が特別教室で行われますが、任意ですので受けたい人は授業予定を確認して受けてください。これは進級の判定には関わらないので、受けたくない人も安心してね」
「最後に今日の予定ですが、この後は9時半から入学式で、それから迷宮でステータスカードを作ってお終いです。では9時半まで10分程ありますから、トイレに行きたい人は今の内に行っておくように。あ、そうそう、生徒カードを挿したままならモニターで敷地内の地図を見る事が出来るから、寮の場所は確認しておくようにね。自分の部屋番号も確認しておかないと大変だから気を付けてね」
何か最後は慌ただしかったけど、ようは寮の場所と部屋番号を自分で調べておけって事だろう。
ざっと見た感じ男が7割くらいか? 200人としても3学年で600人か。相部屋だとしても300部屋。これは調べておかないと大変そうだ。
モニターの『校内図』をタップして表示すると校門の北に校舎があり、その北にはグラウンド。グランドの東側に男子寮、西側に女子寮がある。グラウンドの北に迷宮が3つ並んでいるようで、さらにその北には小さな建物が多く並んでいるが、これらには説明が書かれていなかった。
そして今日から住む事になる男子寮だが、第1から第6まで並び立っている。で地図の男子寮をタップすると、ポップアップで自分名前と『1―1020(第1男子寮10階20号室)』と表示された。10階……エレベーター朝とか込んでいて大変そうなんだが……10階が最上階なら嬉しいなぁ。
「おーい、雪兎は寮の部屋何処だった? 俺は1の0715だったぜ」
「俺は同じ1の1020だな。10階の20号室らしい」
「あたしは4の0101で1階の1号室ね。覗かれないか心配だよ」
「お前のなら覗いた方が残念がるかもしれないけどな」
信也が涼子と明日香の胸を見比べて言った。そして始まる口喧嘩。
涼子の胸とひかりの身長については弄ってはいけないというのに、それをよりにもよって明日香の胸と見比べるとはバカな奴め。
「ゆ~君、私は6の1020だったよ。お揃いだね~」
「ゆー、私は1の0310。何時でも遊びに来て良い」
「いや、普通は異性の寮への出入りは禁止だからね?」
「え~っ! そうなんだ~?」
何で男子寮と女子寮を離して建てているのかを考えなさい。
とは言っても、こいつらは俺とは違ってクランハウス暮らしだから、そのあたりの感覚がチョットずれているんだよな。
9時半になると入学式が始まった。
先程と同じく席に着いて、モニター画面に映された校長先生の話を聞く。
気を抜いて聞くだけだし、楽で良いねこれ。
校長先生の話を要約すると『普通の高校と違って職業訓練校みたいなものだから、やる気のない者は容赦なく置いて行かれる』『数年に一度は死亡者も出ているので、無理だと思った者は早めに転校を考えなさい』『真面目に頑張る生徒は応援するので、困った時、悩んだ時は先生方に相談するように』という事だ。
これを無駄に長話にするから校長先生の話は嫌になるんだよな。
ストックはここまであとは書けたら投稿
入学手続きの時に授業での迷宮内での死亡について説明が有り、本人と保護者の同意書を提出しています。
国英数については毎日授業が有るので12月までには終わるスケジュール。
授業時間数の規定は現実と違います。
暫定(東京以外は変更有るかも?)
一校:東京(お台場)
二校:奈良(生駒市)
三校:東京(八王子)
四校:北海道(札幌)
五校:長崎(平戸)
六校:静岡(浜松)
七校:岩手(盛岡)
八校:広島(広島)
私立①:茨木
私立②:長野
私立③:石川
私立④:沖縄