幼馴染と一緒に迷宮探索者になる   作:猫仔猫

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前半説明、後半新キャラ登場。これで当面の主要キャラは登場になるはず。






第5話

入学式が終わるとモニターには再び高坂先生の姿が映し出された。

 

「はい、皆さんお疲れ様した。次は本日最後の予定であるステータスカードの取得をして貰いますが、その前に少し説明があるので聞いてください。

知っている人も多いでしょうが、全ての迷宮は入ると広間になっていてそこにはモニュメントが存在しています。このモニュメントは地域によってある程度決まっているようで、日本だと狛犬やお稲荷さんが多いです。沖縄だとシーサーだったりしますけどね。

このモニュメントに初めて触れると台座からステータスカードが排出されます。カードの説明は明日の授業で説明するのでここでは省きますが、それを持って事務課に行き探索者カードを発行して貰ってください。発行される探索者カードはこのような物です」

 

先生の言葉が途切れるとモニターにカードの絵が表示された。

名前にNo、そしてD.E.Pの3行でNoとD.E.Pの横には数字が書かれていた。

 

「名前は説明不要ですね、Noは探索者協会が管理している15桁の番号ですので覚える必要はありません。重要なのは最後のD.E.P。ダンジョン・エクスプローラー・ポイントの略ですが、単純にポイントと呼ばれる事の方が多いです。

迷宮内で獲得した魔石やドロップ品等を協会に売却する際に、お金でなく1ポイント10円換算で支払われる事になります。またこの際、売却額の10%が税金として引かれます。どんなに稼ごうがこれ以外の所得税を納める必要が無いので、これが探索者優遇制度の一つとなるわけですね。

カードに貯められたポイントは協会や協力店での支払いに使用でき、協会や銀行でお金と交換することも可能です」

 

両親の銀行貯金はほぼ0に近かったのに、遺産相続で大金が振り込まれてきた理由はこれか。

免許証と電子マネーカードが一緒になったものと考えれば良いのかな?

 

「そして重要な事ですが、迷宮高校内での支払いは全てポイントで行われます。学食での食事――今日のお昼ご飯を食べるのにも必要ですからね。迷宮高校内では支払いのポイントが足りない場合は自動で借入……ポイントがマイナスになります。2月時点でもマイナスの場合は探索者として生活出来ていないとみなされて退学処分となりますので注意してください。

授業で迷宮に入るまではマイナス生活ですが、その後は放課後や休日にも迷宮に入る事が許可されますから、余程の事が無ければ年間でマイナスになる事は無いはずです」

 

探索者としての疑似生活で年間で赤字になったらアウトって事か。それにしても今日の昼ごはんでマイナスからの生活になるとはね。

小母さんたちから聞いた話だと生産物は売る事が出来るらしいから、俺は全然問題なさそうだけど……タンクをする事になるだろう信也と、メインアタッカーとなる涼子は装備代が掛かりそうだから協力してやらないとな。

 

「後、この絵ではポイントが書かれていますけど、実際には名前とNoしか記載されていません。ですので、他の人に見られても自分のポイントを知られる事は無いので安心してね」

 

他人に所持ポイントを知られる事は無いのか。まぁ普通に考えたら貯金額を見られるようなもんだし、流石にそれは無いよな。

 

「生徒カード、ステータスカード、探索者カードの3枚は迷宮高校の生活で必須です。再発行は不可で、無くしたら退学となりますから十分気を付けるように。

そうそう、事務もお昼になると休みに入りますからね。1時間半もあるけど300人も居るから時間がかかるので、早めにカードの発行を終わらせるように。毎年数人は初日のお昼を食べ損なってますが、今年は全員終わらせられると信じています。

最後に、荷物は寮の各部屋の前に置かれている筈ですから、今日中に部屋の中に入れてね。明日からは普通授業が始まるので8時半のHRに遅れずに来てください――以上で今日の説明は終わりになります。お疲れ様でした」

 

先生が〆の言葉を口にすると、モニターから先生の姿が消えてメニューが表示された。

 

 

「じゃあ、早速ステータスカード取りに行こうぜ!」

 

後ろの席に座っていた信也が話しかけて来た。周りの生徒たちも席から離れて我先にと教室を出始めている。

 

「まぁまて。迷宮の場所は式の前に確認したから知っているけど、事務課の場所は知っているのか?」

 

俺が聞くと真也は首を振った。だよなぁ……朝校舎前で受付してそのまま教室に来たんだし、式の前のあの時間で事務課の場所まで調べていないよな。女子たちに顔を向けると、3人とも同じように首を振っている。

 

「誰も知らないなら調べて確認してからの方が良いと思う。出遅れてしまうけど、その後さまようよりは良いだろう?」

 

「お、良い事言うねぇ」

「事前調査は探索者の基本だよねー?」

 

そう言ってメニューから地図を表示させると、言葉が聞こえていたのが少し離れた場所に居た二人組が話しかけて来た。

声の方を見るとポニーテールの少女二人組がこちらに手を振っていた。会釈で挨拶を返して、モニターに表示された地図で事務課の場所を探す。

 

「これは……毎年食事に有り付けられない生徒が出るのも仕方ないな」

 

校門から入って左側にある体育館の2階に事務課と購買が有った。

まさか職員室とは別の建物の、しかも2階なんてちょっと歩いて探すだけじゃわからないぞ。

 

「罠というか、態と分かり辛い場所に有る感じだよね」

 

背の低いショートカットの少女が前の方から俺たちの方に近寄って来ながら話しかけて来た。この少女も事務課の場所を確認していたのだろう。

背が低いと言ってもひかりより背が高いから150弱かな? だけど胸の大きさはひかりの勝ちのようで、ブレザーに隠れて判らないくらいの大きさしかないようだ。

 

「あっ、ボクは丹羽紅葉。知り合いが居なくてさ、良かったら一緒させて貰えないかな?」

 

「なら私たちも良いかな?」

「友達は早く増やしたいもんねー」

 

ポニテ少女たちも席から立つとこちらに歩いてくる。

片方の子は涼子より少し低いくらいだから160ちょっとで、もう片方の子はそれより少し低くて150後半ってところか? 二人とも制服の上からでも膨らみが分かるので、それなりにはありそうだ。脱いだら凄い! も有りそうな予感。

 

「横浜から来た小早川雛子だ、よろしく」

「雛ちゃんと同中の橘川恵。よろしくねー」

 

俺たちは3人の少女に立ち上がって応える。

友達と言えるほど仲良くなれるかは別として、300人のクラスメートが居るなかで早めに知り合いが増えるのは良い事だ。

先生は交流を持てるようにと言うけれど、グループが出来てしまうとどうしても固まってしまうだろう。俺たちも態々離れて座ろうなんて思わないし。

 

 

 

「へぇ~、5人は親が同じクランの幼馴染なんだ」

「良いなぁー。ボクの親は転勤族で幼馴染なんて言える子いなかったし」

 

お互いの事を話しながら歩き始めた所で、入り口の近くに男子と女子のペアらしき二人がこちらを見ているのに気付いた。女子の方は俺と同じか少し高い170前半はありそうなのに、男子の方は紅葉なみしかなく、同級生で無ければ姉弟かと勘違いしてしまったかもしれない。

教室から出ようとした所で目が合うと、向こうから話しかけて来た。

 

「少し宜しいでしょうか? わたくしの名前は真田美咲と申します。出来ましたらわたくし達も一緒させて頂けませんか?」

 

お辞儀に合わせて揺れる胸に視線が吸い寄せられる。うちの乳神様には及ばないが、それでも素晴らしいものをお持ちのようだ。

明日香の胸と美咲の胸を交互に見比べた信也が涼子に制裁を食らっているのを見ていると、男子の方が緊張した顔つきで一歩前に出て来た。

 

「こ、こんにちは。村上健一です、お願いします」

 

チラチラと涼子の顔を確認しているけど怖くないよー。理由もなく叩いたりしないからねー。

そんな健一の様子を見た涼子が優しい口調で自己紹介を始めた。相手の緊張を取るには良いのだろうけど、どうせすぐに元の口調に戻るんだろうな。

涼子の後は女子たちが自己紹介を始めたので俺と信也はそれが終わるのを待つ、そして信也の自己紹介が終わったので俺が口を開く。

 

「最後になったけど俺は月見里雪兎、よろしくな。で、美咲さんは少し前から俺たちの事を見ていたよね?」

「美咲と呼び捨てくださいませ。村上さんとは同じ学校出身なのですが、見ての通り身長が低いうえに気弱ですので、一人にしておくのも男子グループに放り込むのも心配でして……。かと言って女子グループに連れ込むのも問題が起きそうな気がしまして」

 

美咲の言葉に健一は身を縮めてシュンとしている。

怯えた小動物とか合法ショタというイメージがピッタリだな。確かに女子グループに連れ込んだ場合は玩具扱いになる可能性が有るな。

 

「そんな時に雪兎様たち、男子も女子も複数人居るグループを見つけたのです。紅葉さんや雛子さんたちも一緒された事から、わたくしたちも混ぜて頂けるでは無いかと思い、お声をかけさせて頂きました」

「ボクが話しかけたのも、男女混合ってのが大きいかな。もちろんちゃんと事務課の場所を調べていたっていうのが有ったからだけど」

「男子だけのとこだと勘違いされるし、女子だけだとそれこそ勘違いハーレム野郎が寄ってくるからな」

「女子が少ないうえに、学校から外出できるのは長期休みだけだからねー。恋愛対象がクラスメートになるのは仕方ないにしても、最初からそれ目的だと困るよねー」

 

話しかけて来た4人は混合グループに混じりかったようだ。理由はどうであれ、これから上手く付き合って協力していきたいな。

それにしても5人がグループに加わると、男3の女7か。クラスの男女比の逆だから、他の男子たちから嫉まれないか心配になるな。イケメン君が複数人の女子を囲ってハーレムパーティを作れば、そっちにヘイトが行くんだろうけど……

 

 

話しながら校舎から外に出ると向こう側に人だかりが出来ていた。地図で見た通りグラウンドの北側に迷宮が有るのだろう。東側から順に――男子寮寄りにDランク迷宮、中央にEランク迷宮、女子寮寄りにFランク迷宮だったはずだ。

 

「なんでEランクの迷宮の所に固まっているんだろうな? 俺たちはFランクの迷宮で良いよな?」

「むしろそれが正解?」

 

みんなに聞くとひかりが同意してくれたし、他のみんなも異は無いようなのでグラウンドを北西に向かって歩き出した。

 

「これも罠の1つかもね」

「その心は?」

 

グラウンドの中央まで来たところで紅葉が呟いたので、どうしてそう思ったのか聞いてみた。

 

「先生は迷宮のモニュメントに触れて。と言いましたが、どの迷宮でとは言ってないですよね?

それに迷宮前にはゲートがあって探索者カードが入れませんから、誰かの手引きが無いと入れない筈なのです」

「つまり、ゲートを開く為に誰かに――先生とかにお願いする必要が有るって事か?」

「1年生が入れるのはFランク迷宮だけ。そこに先生が居ると思う。だからゆーの選択は正しい」

 

各迷宮の間は離れているうえに、その間には木が植えられていて見通しが悪くなっていた。

これじゃEランク迷宮に行った人はFランク迷宮の前に先生が居ても気付かないかもな。

 

俺たちが迷宮の前に着いたタイミングで、ゲート前に高坂先生と8人のクラスメートらしき生徒が現れた。

 

「ステータスカードを貰った人は女子寮側から戻るようにね」

 

先生はグランドから見る事が出来ない女子寮の向こう側を指さして言うと、俺たちの方へ振り返った。

 

「う~ん、まだこんな人数しか来てないのかぁ……。仕方ないけど、入って入って」

 

そう言うとゲートにカードをかざし、開いたゲートを潜って行ってしまった。その先生を追いかけるようにみんなもゲートを潜っていく。

 

「雪兎様に話しかけて正解でした。これからもよろしくお願いいたしますね」

 

最後の方まで残っていた美咲が俺の腕を取り、耳元で囁くように言って進んで行った。

腕に残ったぽよんとした感触と耳が蕩けるような声に動けなくなってしまったが、明日香に手を取られて引っ張られたので門が締まる前に中に入る事が出来た。

 

あぶないあぶない。

 

 

 

 




生徒カード:学校
ステータスカード:迷宮
探索者カード:探索者協会(指定学校事務課で仮発行可能)

と発行元が分かれているのです。



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