ハイスクールD×D Dragon×Dark   作:夜の魔王

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プール、もしくは水着回

 拝啓、安らかに眠る家族へ。

 夏に近づき、日差しが辛くなるこの頃、俺は近くにいる魔王と堕天使総督が怖くて夜しか眠れません。

 夏ということで熱くなったので、今日はオカ研の皆さんとプールを掃除をしたお礼で――正確にはプールを一番に使う条件でプール掃除をした――プールなのです。素晴らしいね。

 なお、木場は何が用事があっていない。

 

「気持ちは分かるが……だからといって、泣くなよイッセー」

「だってよ、だってよ」

「気持ちは分からないでも無いけどよ」

 露出面積の高い水着と、学校指定のスク水が二つずつである。胸が大きいのが好きな人も小さいのが好きな人も大満足でしょう。

 ちなみにイッセーが号泣したのは前者に対してである。後者には微笑ましく見ており、小猫が複雑そうな顔をしていた。

 そんな俺たちに、部長が小猫の肩に手を置いて言った。

「それで、お願いがあるのだけれど……」

 

 

 

「足は交互に動かして、苦しくなったら顔を上げて息吸ってー」

 そう言いながら小猫の手を引く。どうやら小猫は泳げないらしく、泳ぎを教えることになった。

 ちなみに隣でイッセーがアーシアに対して同じことをしている。

(しかし、小猫が泳げないのは猫だからかね?)

 今度黒歌を水に浸けてみよう。

「……ぷはっ。先輩、付き合わせてしまってごめんなさい……」

 端までたどり着いて足を着けた小猫がそう言った。

「構わないよ。どうせプールですることなんて、水死体の真似しかないんだから」

「……何ですかそれ……」

 おかしいかな。俺はこれで一度自分の命を救っているのだが。

「まあ、気にするな。そうそう、俺は謝罪よりも感謝の方が好みだ」

「……ありがとうございます」

「うん、どういたしまして。それじゃ、もうちょっと頑張って、一人で泳げるようになろうか」

「………お願いします」

(あれ? 今、普段よりちょっと間が長くなかった?)

 そんなに無茶なこと言ったかな?

 

 

 

「久しぶりに水に入ると、やっぱり疲れるな……」

 小猫が一応泳げるようになり、俺も少々泳いだのだが、やっぱり地上とは勝手が違い、結構疲れてプールサイドで休んでいる。

 そんな時、近くで休んでいたイッセーに部長の使い魔である赤いコウモリが近寄ったと思いきや、素早く部長の下に駆け寄って行った。プールサイドを走るなよ。

 その部長を見ると、手には小瓶を持っていた。おそらく、中身は日焼け止めだろう。

 取り敢えず、そちらを見てはならないので、背を向けて寝転がり、念のため目を閉じておく。

(こんな誰が見てるとも分からない場所で脱ぐなよなー)

 後ろから聞こえる喧騒(けんそう)を聞き流しながら、そんな事を思っていると、少々後ろが洒落にならないほど騒がしくなった。

「危ないな」

 滅びの魔力と雷が乱舞するプールサイドで寝ているアーシアと本を読んでいる小猫を守るべく、取り敢えず壁を創っておく。

「むっ……結構厚めに創ってるのに、結構削られるな……もう少し厚く広くするか……」

 ただの流れ弾から身を守るだけなのに、結構な苦労だった。

「はっ! イッセーがいないわ!」

 二人の争いは、部長のその一言で収まった。

「イッセーなら用具室に行きましたよ」

 それを聞いた二人と、いつの間にか起きていたアーシアが用具室に向かい、その後すぐに、イッセーが引きずり出されてきた。

(一体、何をしていたのだろうか……)

 それと、一つ気づいてしまったのだが――

「このプールの惨状、生徒会長に知られたら拙いのではないのだろうか……」

 

 

 

「んん?」

 着替え終わって外に出ると、学校の校門付近に独特のオーラを感じた。

「ドラゴンのオーラ……イッセーにしては強いから、ヴァーリか。この時期に何してんだ――って、あいつは別にそれでも構わないのか」

 そっちにはイッセーがいるが、さっき悪魔が二人向かったので、心配する必要はないだろう。

「だけど、釘を刺しておく必要があるな」

 

 

 

 

「という訳で、勝手なことされると困るんだよねー」

「何だ、朧か」

 学校からそれなりに離れた道で、ヴァーリの前に現れた。

「ヴァーリ、今は大切な時期なんだから、大人しくしててもらえる?」

「ちょっとした息抜きじゃないか」

 ヴァーリは肩をすくめた。

「それでも、お前が赤龍帝に接触したとなると、各方面が大騒ぎするんだよ。赤龍帝と白龍皇の戦いが何を起こすか知らない訳じゃないだろうに」

 現段階のイッセーではそんなことにはならないだろうが、禁手(バランス・ブレイカー)に至った両者が戦えば、この町程度は地図から消えてもおかしくないだろう。両者が『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』だったら、下手すれば日本が二つに割れる。ドラゴンの戦いとはそういうレベルだ。

「赤龍帝と戦いたいのなら作戦当日にさせてやるから、それまでは赤龍帝に接触するな」

「やれやれ。そういうのが窮屈だから息抜きに出たくなったんだが……」

「あ?」

「分かったよ。大人しくしていよう」

「分かればよろしい」

 最初からそう言えばいいんだ。

「本当にいいのか?」

 そう言って踵を返した俺の背に、ヴァーリが声をかけてきた。

「何がだ?」

「赤龍帝は友達じゃないのか?」

「そうだよ。だから、殺さないでくれると助かる。あいつが赤龍帝なのは、俺にとってはいい事だしね」

「殺すな、か……」

「お前も少しは、弱い順に相手をちょくちょく向かわせて勇者を強くする魔王の気分になったらどうだ? キャッチアンドリリースというやつだ」

「育てるのはどうも好きじゃないな。だけど、その忠告は覚えておこう」

 それを最後まで聞かず、俺は路地裏へと姿を消す。

 

「そう、台無しにされては困る。ようやく一人目を殺せるのだからな……!」

 


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