ハイスクールD×D Dragon×Dark   作:夜の魔王

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sabotage
かつてあったいつかの話


 さてさて。失った腕の代わりを、クローンだのiPS細胞だので作る間暇なので、少々昔話をしよう。俗に言う回想編という奴だ。

 語られるのは今より少し前。この俺、黒縫朧が中学生の時の事であり、『禍の団(カオス・ブリゲード)』が存在する前の話だ。

 ぶっちゃけ、オーフィスとイチャイチャしているだけの話なので、読み飛ばして貰っても何ら支障はない。

 

 オーケー、それでは始めようか。世界は何事もなく平和に見えて、しかし裏では陰謀が進み、されど俺とオーフィスが幸せに暮らしていた時の事を。

 

 

 

 

 朝起きる。ただそれだけの行為が億劫(おっくう)になったのはいつからだろうか? 小学生になった時か、一人で眠るようになった時か、それともあの時からか――

 それがたとえいつだろうと、人間は朝起きなければならない。学校や仕事があるからだ。学生を職業と考えるなら仕事でまとめられるが。

「……あ、今日学校休みだ」

 ならば起きる必要もない。布団の中にいるもう一つの存在を腕に抱いて、再び惰眠を(むさぼ)る作業に戻ることにしよう。

 

 

 結局、その日は昼近くまで寝ていた。

 再び目を覚ました俺は、腕に抱く存在を一度脇に避けて、一度大きく背伸びをする。

「オーフィス、起きてくれ」

 先ほど脇に避けた存在――オーフィスを何度か揺すると、彼女はすぐに目を覚ました。

「おはよう、オーフィス」

「朧、おはよう」

 起きた俺たちは朝の挨拶を交わすと、歯を磨き、顔を洗うために洗面所へと降りた。

 

 余談ではあるが、オーフィスの寝相はとても良く、ピクリとも動かない。下手すると死人と見間違うほどである。体温も低く、心音もほとんどないので、一般的な観点から見て、オーフィスが寝ているか死んでいるかを判別するのは困難極まりない。といっても、オーフィスが死ぬ事なんて一切想像できないんだが。

 

 歯を磨き、顔を洗い終えると、朝食――といっても、もう昼の方が近いのでその二つを兼ねたブランチになる――を作り始める。

 トーストとハムエッグという失敗することもない簡単なメニューだ。パパッと二人前作ってオーフィスの前と俺が座る席の前に置く。俺が椅子に座ると、オーフィスは挨拶もそこそこにフォークを使って目の前のハムエッグを口に運ぶ。

 食事中は無言であり、どちらも美味(うま)いとも不味(まず)いとも言わない。俺としては、『無限』であるオーフィスにとって食事が必要なのか、味覚はあるのかさえ怪しいが、たとえそうだとしても自分の分だけ作るわけにもいかないので、毎回二人分作っている。

 

 食べ終えると食器や調理器具を洗う。ついでに洗濯などもするが、基本的にオーフィスの服は彼女の皮膚と似たような物なので、洗うのは俺の物だけだ。

 それを終えるとほとんどする事がなくなるので、オーフィスを膝の上に乗せて髪を()く。オーフィスの髪は長いのでこれが結構大変である。

(こうしていると思い出すな……。妹も自分の身だしなみには無頓着だったし。――そうだ)

 懐かしい事を思い出したので、一度をオーフィスをその場に残し、自室に戻る。

「えっと、確かここに……あった」

 お目当ての物を見つけて戻ると、オーフィスが若干頬を膨らませて待っていた。そんなオーフィスの頭を謝罪の意を込めて数度軽くポンポンと叩くと、オーフィスは普段通りに戻った。

 再びオーフィスを膝の上に乗せ、先ほど思いついた事をする。まずはオーフィスの髪を――

 

「できた」

 最近はやっておらず、オーフィスの髪が長いので少々時間がかかったが、オーフィスの髪は一つの三つ編みになっており、端は薄紫色のリボンで結ばれていた。

「これ、何?」

「三つ編み。妹にしてあげてた事を思い出してね。といってもあの子には一つにまとめていた訳じゃないけど、オーフィスにはこっちの方が似合うだろうから」

(本性は(ドラゴン)だし)

 オーフィスは変わった感覚を確かめるように何度か首を傾げたり振ったりする。その度に尾のような三つ編みが左右に揺れて可愛い。

「どう?」

 自分の姿が見えるように手鏡を渡しながらそう尋ねる。

「悪くない」

 オーフィスの口角がほんの少しだけ釣り上がる。どうやら気に入ってもらえた様だ。

 

「えーと、もう夕方か。夕飯の支度(したく)しないと。まだ材料残ってたかな?」

 冷蔵庫の中身を確認し、夕食の献立を考える。それが決まったら下ごしらえや、作るのにある程度待ち時間がかかる物の調理を行う。

 それが済んだら風呂を沸かし、とっくに洗い終わった洗濯物を乾燥機に入れる。そして料理の続きに移り、完成したらすぐに夕食を再び無言で食べる。

 

 食後の休憩中に食器と調理器具を洗い、乾燥機内の洗濯物を空き部屋に干しておき、それが済んだら着替えを持ってオーフィスと一緒に入浴する。我が家の湯船はそこそこ広いので一緒に入っても何ら問題はない。

 誤解が無いように言っておくと、一緒に入る理由はオーフィスの裸を見たいからではない。オーフィスを一人で入らせると、長い髪をそのままにしているから湯船に浸かるし、更には湯船に潜るので、目が離せないのである。

 それと、オーフィスは一人で頭を洗えないので俺が代わりに洗っている。なお、オーフィスが目を閉じてくれないのでシャンプーハット着用である。

 風呂から出たら着替えて就寝する。無論オーフィスと一緒の布団で寝る。

 

 

 

 

 ふむ。こうして振り返って見ると、何とも睡眠時間の長い生活だな。それは今も余り変わらないのだが。

 いやはや、一日も早くこんな生活に戻りたいものである。

 


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