ハイスクールD×D Dragon×Dark   作:夜の魔王

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回想 ~出会い~

「あー……本気で気持ち悪い……」

 当時から戦闘狂のコカビエルを潰して、当事まだ年齢が二桁に達していないヴァーリを蹴散らし、バラキエルの雷光を突破し、アザゼルのバカデカイ光の槍に吹き飛ばされた所まで回想したところで、過去と今の気分の悪さの相乗効果で危うく吐くところだった。

(ええと……あの時はどうしたんだっけ……)

 あの冷静に狂っていた時はどうやって戻ったのかと思い出して背筋が凍った。

(思い出した……吹き飛ばされた時に近くにいたオーフィスに襲いかかって……)

 ああ、思い出すのも恐ろしい。理性がないって怖いね。

「全力でオーフィスにぶっ飛ばされたんだよなぁ……」

 生涯の中で一番死ぬかと思った時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませんでした」

 土下座であった。360°どこから見ても恥ずかしくないDO☆GE☆ZAであった。

 

 だが、土下座している相手がどう見ても十そこそこの少女というのはどうだろう。些か他人に見られたら評判が悪くなりはしないか?

 しかし、今の俺にはそんな事はどうでもいいのだ。というか、目の前の少女の正体を知ったら全員が納得してくれるだろう。

 いや、当事の俺はそれを知らなかったのだが、何を隠そうこの少女こそ、満場一致で世界最強の存在。『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスなのである。

 それに対して、見るや否や襲いかかって体の半分を消し飛ばして、残った右腕の一撃で冥界じゃ無かったら大気圏突破していたほどの高さまで吹き飛ばされて自由落下して地面にクレーターを作った当事の俺も大概(たいがい)であるが。正しく黒歴史である。

 あの時は落下後の数十分間は身動き取れなかったし、異常なほどに増加したオーラと悪意が根刮(ねこそ)ぎ持っていかれるという、通常時の俺にされたら殴られた箇所が一瞬で吹き飛ばされただろうという自信がある。

 その御陰で正気に戻れたんだが、同じ状態になっても二度と経験したくない出来事である。次は死んでもおかしく無い。冗談一切抜きで。

 ああ、付け加えておくと、俺が襲いかかった時には老人の姿であり、落下してきた後に少女の――何故か妹に似ていた――姿へと変わっていたのだ。

 俺は狂っていても少女に手を出す外道ではないのだ。Yes,ロリータ、No,タッチの信条はいつ如何なる時も揺るがないと自負している。

 

 閑話休題。

 

 土下座している俺の前には、オーフィスがペタリと座り込んでいた。

「誰?」

 ペシペシと頭を叩かれながら尋ねられる。その力加減が人間並みで助かった。先程と同等だったら首がもげていた事だろう。

「あ、私、黒縫朧と申します」

「朧?」

「はい、そうです」

 オーフィスは感情の映らない瞳で俺を見ると、俺の頭をペチペチと叩く手を止めて、その手で俺の頭を()(いだ)いた。

(首がねじ切られそうだったり、頭潰されそうだったりでマジ怖いです)

 普通に考えればご褒美なのだが、先ほど殺されかけた当事者としては恐怖の方が強かった。殺そうとしたのはお互い様であるので文句は一切言えないのだが。

「あのー……」

 何故このような事をするのかと訊こうとした俺ではあったが、それは叶わなかった。

「くー……」

(寝た!? この状況で!? 俺の首が大ピンチのままで!)

 オーフィスは俺の頭を抱き枕代わりにして寝てしまったのだ。体を半分ほども吹き飛ばされた事を考えれば無理もなかったことではあるが。

 顔には柔らかな太ももとドロワーズの布地が当たって……正直気持ち良かったです。

 でも格好にはツッコミどころ満載でした。

 何で服の前面がないのかとか、何でそもそもドロワむき出しなのかとか(ドロワって下着の一種だったはず)、そして何より、何で胸にバッテンのシール(?)が貼ってあるかを小一時間ほど問い詰めたくなった。

 姿が妹に似ているとかどうでも良くなるほどに。

(後この状況は呼吸していいの? 呼吸していいの!? 相手の性別すら不明だけど呼吸していいの!?)

 当事の俺は迷ったものだ。十分ぐらいは。今なら躊躇(ためら)わずに息を止める。それで寝る。

 

 ……本当の事を話すと、俺はこの後酸欠で気絶した。あの頃は若かったんだ。

 

 

 

 

 

「いいか? 年頃の若い娘さんが男に対して慣れ慣れしくしてはいけません。況してや抱きついたりとかは論外です」

 起きたオーフィスに当事の俺は説教をしたわけだが……今の俺が取り敢えず言いたい事は、何で説教したんだろうという事だ。

 仮にも殺そうとした相手で殺されそうになった相手である。というか数十分前のシリアスさが欠片も感じられない。

 それほどまでに放っておけない雰囲気を出していたという事だろうか。

(はぁ……どうしようかな、この子)

 先ほどまで老人だった相手に子というのはどうかと思うが、でも子供に見えるからしょうがない。後子供の姿が嵌り過ぎているのだからしょうがない。

「……?」

 小首を傾げるオーフィスが可愛いのでお持ち帰りしました。異論は認めない。

 

 

 

 

 

 家にオーフィスを連れて帰ったら(経過は覚えていない)、家族が死んだ事を思い出してまた黒い感情が湧き上がった。

 この状況で発生するする黒い感情は何に向くか? それは勿論オーフィスであるが、暴力的だと死ぬ。普通に死ぬ。てか実際に死にかけた。

 なので学習力のある俺としては、全身全霊で暴力的な欲求は退ける事に成功した。

 

 ここで余談ではあるが、人間の三大欲求は食欲・睡眠欲・性欲である。

 

 そして現在のオーフィスは幼いながらも美少女である。つまり――

「オーフィスちゃーん♡ 私と楽しいことしましょー♡」

 俺は小脇に抱えたオーフィスを連れて自室(正確には俺と妹の部屋)へと駆け込んだ。

 ……ここで一つだけ弁明をさせてもらうのなら、当事の俺はオーフィスの正体を知らなかったのだ。だからちゃん付けしている――以上。

 ああ、R18要素とかないよ? あくまでも部屋にある妹の服で着せ替えしただけだよ。二三(にじゅうさん)度全裸にしたからR15要素はあるけど。

 

 そして、そのままオーフィスは家に住み着き、しばらくの間は平和に暮らしました。

 


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